弁護士3年目。ジェネラリストとスペシャリスト両輪のキャリアで事務所を牽引
法律事務所ZeLo・外国法共同事業では、多様なバックグラウンドの弁護士が在籍し、リーガルサービスを提供しています。若手弁護士の活躍も幅広く、新卒3年目の弁護士も「エース」として事務所を引っ張る存在です。本企画は、新卒2年目の由井恒輝弁護士が抱いた「憧れである3年目の弁護士を紹介したい」という想いから始まりました。3年目にあたる修習期第72期の3名の弁護士に、由井弁護士がそれぞれの業務内容や今後のキャリア、これからのZeLoについて聞いていきます。第1回目は、様々な案件に幅広く対応しながら、一定の領域でスペシャリストとしても活躍する、島内洋人弁護士です。
2017年東京大学法学部卒業、同年司法試験予備試験合格。2018年司法試験合格。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。クロスボーダー取引を含むM&A、ストック・オプション、スタートアップ・ファイナンスなどコーポレート業務全般を手掛けるほか、訴訟/紛争案件も担当。また、AI、web3、フィンテックなどの先端技術分野への法的アドバイスを強みとする。主な論文に「ステーブルコイン・DeFiとCBDC」(金融・商事判例1611号、2021年)、「スタートアップの株主間契約における実務上の論点と対応指針」(NBL 1242(2023.5.15)号)など。
目次
「冒険するほうが楽しい人生になりそう」ZeLoの気概に惹かれジョイン
由井:僕は、2021年1月に島内さんの1年後輩として、島内さんと同じく新卒でZeLoにジョインしました。それから2年弱経ち、島内さんの対応範囲の広さや、スペシャリストとしての姿勢に日々刺激を受けています。日常的な法律相談対応、M&A、訴訟、ファイナンス、事務所運営など本当に幅広い業務を行いながら、ストック・オプション分野の責任者も務めていますよね。今日は、新卒でジョインしてからの業務や、今現在対応している業務、そして将来のキャリア像などについて話を聞かせてもらえたらと思っています。
最近も変わらず、幅広い業務に対応している印象ですが、どのような業務をしているか改めて教えてもらえますか?
島内:由井くんが入所してもう2年弱も経ったんですね。
最近は、複数のM&A、訴訟・紛争、スタートアップ・ファイナンス、ストック・オプション、Fintech・暗号資産関連と、様々な分野の案件に携わっています。事務所運営でいえば、由井くんも入っているリクルートチームに所属し、主に新卒弁護士のリクルート業務を担当しています。
対応している分野自体は1年目からそこまで変わっていません。若手から幅広い分野の案件にコミットさせてくれるZeLoのカルチャーがあるので、1年目からいろいろな案件業務に携わることができています。
由井:島内さんは、どのような経緯でZeLoへジョインしたのでしょうか。
島内:新卒として正式に入所したのは2020年ですが、2017年に2週間学生インターンに参加したのがはじまりです。当時は創業したばかりで、設備なども揃っておらず、今後の事務所の方向性がまったくわからない状況でした。しかし、若い弁護士が集まって「新しい時代のトップファームを創ろう」という強い気概が渦巻いており、そこが他の事務所にない独特の魅力で惹かれました。
また、創業当初のフェーズでジョインすることで、「何もないところから事務所を作り上げていく過程に深く関わることができるのではないか」という期待もありました。もちろん、想像もできないような様々な困難に直面すると予想できましたが、それをくぐり抜けて冒険するほうが楽しい人生になりそうだなと思ったんです。振れ幅のある経験を積むことで、弁護士としての力量にも深み・厚みが生じて、クールな弁護士になれるのではないかと、漠然と考えていました。
時には弁護士同士で議論を尽くす。日常法務からM&A、訴訟まで幅広く経験
由井:ZeLoには、クライアントの日常法務全般を対応する「LPOサービス(Legal Process Outsourcing)」部門と、M&Aや訴訟など個別案件の対応を行う「PLS(Professional Legal Services)」部門があり、新卒入所の弁護士はしばらく両部門を兼任しますよね。
現在、島内さんはPLS部門の所属に切り替わりましたが、入所後、LPO部門ではどのようなクライアントの相談に対応していましたか?
島内:スタートアップから上場企業、オーナー系中小企業やファンドまで、本当に様々なクライアントの日常的な相談を担当しました。クライアントによって関心のあるポイントや思考様式、ニーズなどがかなり異なっているので、十分に理解したうえで、ZeLoのサービスをカスタマイズして提供するように心がけていました。
今はPLS部門に所属していますが、引き続き日常法務を担当しているクライアントもいます。
由井:創業初期のクライアントも担当し、日常法務だけではなく資金調達まで対応されていましたよね。
島内:日常法務の延長で、個別案件のお話をいただくことも多いです。
資金調達などのスタートアップ・ファイナンス業務では、投資ラウンドだとシリーズAからシリーズC、調達の方法としては普通株式・優先株式・J-KISS型新株予約権によるものなどと、様々な性質の案件に携わっています。着金までの限られたスケジュールの中で、重要なポイントを見極めながらスピーディーに契約交渉を行うこと、全体のスケジュール管理や手続きを丁寧に行うことに注意しながら進めています。
由井:島内さんは、M&Aや訴訟でもメインに対応しているイメージが強いです。
島内:そうですね。M&Aでは、最初のデューデリジェンスから最後の契約交渉まで一貫して対応することが多いです。取引規模も数千万円から数百億円規模までと、大小様々ですね。案件によっては、主任としてプロジェクトマネジメントを行うこともあります。
訴訟では、会社法やM&A関連、株主間契約など、興味深い紛争に多数携わることができています。
由井:訴訟でいうと、島内さんと一緒に対応している案件がありましたね。入所当初から島内さんとは、戦略を練るために、何度も議論をさせていただきました。
島内:たしかに、由井くんとは資料を一緒に読み込んで、夜遅くまで議論したことも多々ありましたね。膨大な記録から重要なポイントを抽出し、説得的なストーリーを導く訴訟業務では、論理的思考力や分かりやすく伝える力が試されると思います。弁護士業務の中でも、特に、議論を重ねながら工夫を凝らすことができる業務なので、僕自身も面白さを感じていますし、ZeLoには議論が好きな弁護士が多いので、張り合いもあります。
由井:島内さんには、議論の中で毎回新しい視点に気づかされましたし、時間をとって丁寧にフィードバックももらえていたので、大きく成長させてもらえたと思っています。
これらの業務以外にも、先端的な分野へのキャッチアップもかなりしているような気がするのですが、この点はいかがでしょう。
島内: Fintechやブロックチェーンの分野に関しては、個人的に力を入れています。クライアントのサービス設計の立案サポート、規制法対応、行政との折衝などを行っています。外部発信の機会もあり、1年目には「ステーブルコイン・DeFiとCBDC」に関する論文の執筆、2年目にはDefiについて大学で講演もさせてもらいました。
横断的な業務経験やZeLoのカルチャーが生み出す、新しい視点
由井:弁護士のキャリアとして、M&AならM&A、訴訟なら訴訟などと一つの分野に特化したキャリアの積み方もありますよね。幅広い分野に横断的に携わるのはかなり大変だと思うのですが、その良さは何でしょうか?
島内:M&Aや訴訟、ファイナンスは一見違うものに見えますが、すべて繋がっているんですよね。たとえば、M&Aの案件対応をした後に、M&Aについての訴訟に携わると、取引の流れを知っているため、現場の感覚がわかり、ピンと来ることが多いです。
由井:ここまで聞くと、若手でもかなり多くの案件を任されるように見えるのですが、フォロー体制はどのような感じでしたか?
島内:ZeLoには、新人弁護士のレベルの向上のために、先輩弁護士が惜しみなくリソースを割いてくれるカルチャーが根付いています。自分が主担当として進めるプロジェクトでは、先輩弁護士が常に気にかけてくれており、必要なときに的確なアドバイスをくれました。関係者の巻き込み方やコミュニケーション方法、スケジュールの引き方など、実務のポイントについても丁寧な指導を受けることができるので、1年目でも安心して業務を行うことができると思います。
また、弁護士業務のひとつ、訴訟の準備書面や、法的論点に関する意見書、契約書などの書面作成では、先輩弁護士から妥協のないコメントがもらえます。ZeLoでは、クオリティの高い成果物を作り上げるために、先輩後輩関係なくフラットに議論することが推奨されているので、僕も疑問点や自分の意見は素直に伝えています。
由井:たしかに僕とやっている案件でも、たくさんコメントをもらって書面をブラッシュアップさせていきましたよね。
ストック・オプション分野を支える仕組みの構築。組織の発展を目指して
由井:島内さんはストック・オプション分野の責任者でもありますよね。事務所の発展も見据えて、積極的に勉強会を実施したり、効率化や仕組み化についても検討してくれたりと、実務を行う側としてもとても助かっています。
案件にも対応しつつ、事務所全体に影響を与えるスキームを構築していくのはかなり大変だと思うのですが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。
島内:僕は、もともと「弁護士業務の標準化」、「その先の組織としての高い品質の担保の実現」に関心があります。ストック・オプション分野でも課題に感じているところがあるため、スキーム構築のモチベーションになっているのかなと思いますね。
由井:「弁護士業務の標準化」「その先の組織としての高い品質の担保の実現」とは具体的にどのようなイメージですか?
島内:弁護士業務は、現状個々の知識や能力に委ねられている部分が多いですが、たとえ能力が非常に高くても、実現できるインパクトの大きさには限界があるのではないか、と感じています。そのため、組織の力を強くしていきたいんですよね。組織として高いクオリティを担保するために必要になるのが、システムの構築だと考えています。
弁護士業務のうち、システムや仕組みによって品質を統一できる部分は標準化させ、できない部分で個々の創造性やクオリティを高めていく。その流れの先に、事務所全体の業務品質の向上があるのではないかと思うんですよね。
由井:ストック・オプション分野も、仕組みを整えることで、よりサービスのクオリティを上げることができるということですね。
島内:スタートアップにとって、ストック・オプションは、今後の発展を左右する非常に重要なアクションです。そして、契約書などの法的なドキュメントが具体的な内容を決定するため、法律の影響力は大きいと考えています。
しかし、現行の法制度が全体最適になっているかというと、必ずしもそうではないのではないかという感覚を持っています。そのため、システムの構築・運用を通して、より最新の動向を把握しながら、正確、そしてスピーディーに対応できる体制を整えようとしています。具体的には、業務フローの明確化、分掌、ITツールなどによる自動化、そしてそれを組織でうまく回るよう持続的にインプットする仕組みです。法実務の知識のみならず、組織的視点やIT的発想も関わってきますね。
今後も、より多くの実務経験を積みながら観察・研究を行うことで、実務で抱いた感覚をより明確化・精緻化し、分野全体のクオリティを底上げしていきたいですね。
由井:個人的に、組織の成長を見据えた業務にやりがいを感じるので、とても共感しました。島内さんのように、大局的な仕事をしていきたいですね。
僕自身は、仕事のモチベーションとして、「自分の成長の先に何があるか?」「事務所や社会にどう貢献できるか?」を大切にしたいと思っています。司法試験で、成果の矢印が自分の成長だけに向かっていたので、モチベーションの維持で苦労したことがきっかけです。組織に自分が存在する理由を作り出し、自分が輝ける場所にいることで、事務所や社会に還元していきたいですね。
島内:ZeLoには、「事務所のためにみんなが頑張っているから自分ももっと頑張ろう」という循環があって気持ちいいですよね。
法務基盤を見据え、自分たちが描く事務所の未来
由井:本当に様々な分野で活躍されていますが、考えているキャリア像はありますか?
島内:すべての分野で突出した能力を備える弁護士を目指したいところですが、現実的ではないと思っています。そのため、まず、M&Aや訴訟/紛争、ファイナンスなど、企業にとって重要度が高い複数の領域で十分な能力・経験を持ちたいと考えています。そのうえで、ブロックチェーンなど特定の領域で一線の能力・経験を持つ弁護士になりたいですね。
また、システム化・組織づくりは、弁護士業界はまだまだ遅れを取っている分野と考えているので、一定の能力・経験を備えた弁護士として携わり、自分なりの方法論を開発できたらおもしろいだろうなと感じます。
由井:創業当初からZeLoに携わっている島内さんにとって、ここ数年の事務所の変化は目まぐるしいと思います。弁護士・弁理士・司法書士に加え、スタッフの人数も大きく増えましたよね。2022年に創業5年目を迎えて、「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」という新しいVISIONも掲げられました。今後、どういった事務所を作っていきたいなどの想いはありますか?
島内:組織全体が見違えるほどに充実してきたので、より社会に大きなインパクトを出せる組織を目指していきたいですね。メンバーが増えることで発生する変化を、うまく力にできるように、組織のあり方については模索していかなければならないと思っています。
ITツールの活用や、チーム間の協業など、活用できること・試せることはスピーディー、そして貪欲に実行し深めていき、VISIONの実現に向けて奔走していきたいですね。
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※掲載内容は掲載当時のものです(掲載日:2022年11月9日)
(写真:根津佐和子、文:高田侑子、編集:田中沙羅、ZeLo LAW SQUARE編集部)