スタートアップの急成長を支えてきた、スピードと実現性を両立する法務支援– 株式会社カケハシ
弁護士
松永 昌之
弁護士
竹下 晴哉
核融合エネルギーの実用化を目指し、商用発電の実現に挑む株式会社Helical Fusion。大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所の研究成果を基盤とし、核融合炉の設計・開発を通じて、持続可能で安定したエネルギー供給の実現に取り組むディープテックスタートアップです。法律事務所ZeLoは、こうした挑戦に対し、資金調達や契約対応を中心に継続的な支援を提供してきました。同社の共同創業者であり代表取締役CEOの田口昂哉さんに、法律事務所ZeLoのサービスの活用方法や導入されたきっかけ、同社の今後の展望についてお話を伺いました。聞き手を務めるのは、同社をサポートする小笠原匡隆代表弁護士と、伊藤龍一弁護士です。
法律事務所ZeLo代表弁護士。2009年早稲田大学法学部三年次早期卒業、2011年東京大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2017年法律事務所ZeLo創業。主な取扱分野はブロックチェーン・暗号資産、FinTech、IT・知的財産権、M&A、労働法、事業再生、スタートアップ支援など。
業界:エネルギー・ディープテック
従業員等: 52名(2026年6月現在)

目次
伊藤:まずは、貴社の事業について教えていただけますでしょうか。
田口:核融合エネルギー、いわゆるフュージョンエネルギーの開発をしています。太陽の中で起こっている核融合反応を、装置の中で人工的に再現して、そこから出てくるエネルギーを発電に使うというのが我々の実現しようとしていることです。
まずは発電という形で社会実装していくことを考えていますが、個人的には、従来のエネルギーとは少し違う位置付けの技術だと思っています。
伊藤:かなりスケールの大きい話ですね。
田口:そうですね。これまで人類は、自然に存在するエネルギーを取り出して使ってきたわけですが、それを自分たちで作り出すことができるようになるので、大きな転換点になると考えています。
小笠原:エネルギーの捉え方自体が変わる可能性がありますね。
田口:はい。今までは“受け取る側”だったのが、“生み出す側”になるという意味では、大きな変化だと感じています。だからこそ、これに挑戦しない理由が自分の中にはあまりなかった、というのが正直なところです。


伊藤:核融合にもさまざまな方式があると思いますが、その中で貴社が採用されている「ヘリカル型」の特徴について教えてください。
田口:ヘリカル型は、二重らせん構造になっているのが特徴です。いくつか核融合炉の方式はありますが、この構造の仲間が最も安定的にエネルギーを閉じ込められるとされています。
より実務的な話をすると、プラズマのエネルギーをドーナツ状の磁場で閉じ込める方式では、基本的に“ねじれ”が必要になります。ヘリカル型は最初から磁石自体をねじった構造にすることで、安定性を保ちやすいという特徴があります。
小笠原:長期間の運転を考えると、その安定性は大きな意味がありますね。
田口:そうですね。加えて、日本発の技術である点も特徴の一つです。以前は立体・曲線構造の製造が難しかったのですが、現在は3D CADやシミュレーション、加工技術の進化によって製造ハードルは大きく下がっています。
さらに重要なのは、発電所として成立するかという観点です。
伊藤:核融合を実際に発電所として使う際に、「ヘリカル型」に優位性があるということでしょうか。
田口:その通りです。核融合を実際に発電所として使うためには、エネルギー効率が高いこと、長期間安定して運転できること、メンテナンスが効率的にできること、という3点が不可欠です。ヘリカル型は、それらの観点において優位性があると考えています。
小笠原:特にメンテナンスの点は重要そうですね。
田口:はい。メンテナンスでは、消耗しやすい内部部品を迅速に交換できる構造が重要です。他の方式では装置が密集していて取り出しが難しい場合がありますが、ヘリカル型は内部空間に余裕があり、交換が比較的容易です。
そういったこともあり、今の技術で発電所を作るという観点から見ると、ヘリカル型が最も適していると考えています。

伊藤:貴社ではZeLoのサービスをどのようにご活用いただいているでしょうか。
田口:今、ZeLoさんに主にお願いしている内容は、大きく2種類に分けられるかと思います。
一つは、日常的な契約書についてのリーガルチェックです。当社が相手との関係を適切に結べるか、また、想定されるリスクに対応できているか、効率的に確認いただいています。こちらは法務を担当している者がフロントに立っています。
伊藤:場合によっては、法務の方だけでなく事業部の方も交えて直接お打ち合わせをして、具体的なイメージを持った上で検討させていただいています。
田口:そうですね。契約書は事業部の意思がないと作れないものなので、ビジネスとしてどうしたいのかをお伝えするためにも、事業部から直接ご連絡するケースや、私から直接お願いするケースもあります。ZeLoさんは良い意味で敷居が低いというか、相談しやすいですね。
伊藤:そう思っていただけているのは嬉しいです。我々としても、貴社の様々な方からフラットにご連絡いただけている感覚があり、ありがたいです。
田口:当社のご依頼として、もう一つ大きいのが、資金調達関係ですね。当初の投資関連の契約書の作成・交渉に加え、最近も継続的に追加の資金調達をしているため、会社法や投資関連契約に基づいて必要な手続の整理、スケジュールの管理、契約書のマイナーチェンジ、投資家ごとの契約書作成などを、スピーディーかつ丁寧に対応いただいています。こちらはコーポレート・財務の責任者と進めていただいています。
当社は資金調達のスパンがかなり短く、常に動いている状態です。急いでいるときは、週の終わりに「来週の頭までにお願いします」といった感じで私から直接ZeLoさんにお願いすることもあります。
伊藤:貴社の資金調達は、進行しているものの準備をしながら、クロージング後に控えているものも常に意識する必要があるのが特徴的ですね。各投資家の意思決定も流動的なので、様々なパターンを想定しながら、臨機応変にご提案させていただいています。
田口:そうですね。一般的な資金調達では、シリーズごとに1年半くらい空くケースもあるかと思います。ただ、当社の場合は必要な資金が大きいこともあり、不測の事態に備えて、意思決定ができたら迅速にクロージングを進め、できるだけ早期に着金するということを徹底しています。
その結果、短期間でクロージングが何度も発生することになり、担当メンバーには負担をかけているとは思うのですが、会社を安定的に運営するためには必要だと考えています。
小笠原:貴社は必要な資金規模が非常に大きいですし、マイルストーンも順次ずっと続いていくので、かなり特殊ですよね。
田口:そうですね。バリュエーションを大きく変えるには大きなイベントが必要ですが、当社で行っている事業自体が長期的なものであり、売上ベースで段階的に評価が上がるようなモデルではありません。どちらかというと、長期間にわたってコンスタントに資金調達を行うようなイメージです。

小笠原:当事務所にご相談いただく以前は、大手の法律事務所に依頼されていたのでしょうか。
田口:そうですね。今も付き合いはありますが、現在はほぼZeLoさんに一本化しています。やはりスタートアップ領域での経験や知見に加えて、レスポンスの速さやコミュニケーションの取りやすさは大きく違います。
重厚なリーガルの対応が必要な場合は大手の法律事務所も選択肢に入ってきますが、日常的に発生する課題については、スピーディーに、気軽に相談できることが非常に重要です。
小笠原:ありがとうございます。当事務所について、最も評価いただいている点はどのようなものでしょうか。
田口:やはりレスポンスですね。スピードが速く柔軟性があります。こちらの状況に合わせて対応していただける点が非常にありがたいです。
資金調達はスピードが重要なので、判断や共有が遅れると機会を逃す可能性があります。その中で、迅速に返信いただけたり、判断をするうえで重要となる先のスケジュールを早期に提示いただけたりするので、いつも助かっています。
小笠原:当事務所との取り組みの中で、何か印象に残っているエピソードや案件などはありますか。
田口:特定のエピソードがあるというよりは、常にやりとりしているという印象ですね。一般的な法律事務所との関係とは違い、インハウスのような感覚です。
法務は常に動きが発生する領域なので、資金調達に限らず、登記や株主総会なども含めて、日常的に関与いただいています。何か抜け漏れがあると大きな問題につながるため、リスク防止の観点でもよくご相談していますね。
小笠原:ありがとうございます。確かに、日頃からやりとりをしている印象です。当事務所のサービスをご活用いただいている中で、今後ZeLoに期待することや、改善点はありますか。
田口:ZeLoさんにそもそも「こうあってほしい」という視点はあまりなかったのですが、現時点で、従来の法律事務所のイメージを超えていると感じています。踏み込んだアドバイス・提案があり、社内法務機能の一部を補完できるレベルまで支援いただいています。

伊藤:以前は主に大手の法律事務所にご依頼されていたと伺いましたが、どのような経緯で当事務所にご依頼いただくようになったのでしょうか。
田口:小笠原先生とご一緒したLeading Startup Square[1]主催の「タイビジネス実践ツアー」[2]がきっかけです。タイのタクシーの中で小笠原先生から紹介いただいた企業から、最終的に当社に出資いただく形になりました。
小笠原:ありがとうございます。先ほど田口さんから「ZeLoは従来の法律事務所のイメージを超えている」と言っていただきましたが、投資家を紹介するというのも、法律事務所という枠にとらわれないZeLoの柔軟さといえるかもしれません。
田口:確かにそうですね。
小笠原:ご一緒した「タイビジネス実践ツアー」ですが、田口さんはタイで投資家を探すために参加されたと記憶しています。
田口:はい。仮説を検証すべく参加した、当社にとって初めての東南アジアへのアプローチでした。
アメリカやヨーロッパは、それぞれ自国で核融合技術を持っているので、日本企業に投資するインセンティブはそこまで強くないと考えました。
そこから、仮説として「資金はあるが技術は持っていない地域」―中東や東南アジアが投資家として適しているのではないかと考え、その仮説を検証するためにタイに行った、という流れです。その後2〜3回訪問して、この仮説は大きく間違ってはいなかったと感じています。

田口:核融合の技術はエネルギーそのものに関わるので、安全保障の観点でも重要だと考えています。最終的には大規模な投資が必要になるプロジェクトでもあるので、国としてどれだけ意味があるか、という点も常に意識しています。だからこそ、技術の中核は日本で完成させるべきだと考えています。
伊藤:確かに、貴社に出資したり事業連携したりしている企業を見ると、日本のモノづくりを担ってきた、様々な技術を持っている企業が多く参画している印象です。
田口:先月末には「公式パートナー」という枠組みも発表しました。これまであった個別の提携関係にとどまらず、ヘリックス計画を、Helical Fusionとパートナー企業がともに主体的に推進する関係に向けた仕組みです。資本参加とあわせて、技術・事業・想いも含めてコミットしていただく形です。
伊藤:「公式パートナー」の紹介動画[3]も拝見しましたが、とても印象的でした。
田口:ありがとうございます。あの動画は実際にパートナーとなる各社の拠点で撮影させていただき、言葉や音楽も細かく調整するなど、かなりこだわって作りました。
小笠原:日本の中でも、これ以上に一体感を生み出せるプロジェクトはなかなかないと思います。改めて、会社として伝えたいメッセージがあればお願いします。
田口:はい。当社が目指している壮大な目標は、1社や数社では実現できないと思っています。多くの方に知っていただき、共感や応援をしていただいて、それぞれの形で関わっていただくことで初めて成立するプロジェクトです。
核融合というと遠い存在に感じるかもしれませんが、エネルギーは生活していくうえで最も重要な基盤であり、食料と並んで社会の根幹といえるものです。
当社の事業について、これからの暮らしを支える持続可能なエネルギーを実現するために、自分も何かできないかという目線で見ていただける方が増えると心強いです。
小笠原:ZeLoも引き続き法律事務所という枠にとらわれず、ご提案できることはどんどんして、貴社の挑戦をサポートさせていただきます。本日はありがとうございました!

※掲載内容は取材当時のものです(2026年5月時点)
(写真:岡戸雅樹、取材:斎藤美緒・加藤茜、文:斎藤美緒)
[1] 「Leading Startup Square」(通称:LSS)
小笠原代表弁護士が2023年に共同設立した、時代を先駆け世界をリードするスタートアップが集う完全招待制コミュニティ。
[2] 株式会社Leading Startup Square「Leading Startup Square「タイビジネス実践ツアー」を開催 “Thai Business Practical Tour”」(PR TIMES、2024年12月9日配信)
[3]Helical Fusion「ヘリックス計画『公式パートナー』のご紹介」(YouTube、2026年4月28日公開)