【インドネシアでの国際取引に影響あり】「言語法」に基づくインドネシア語契約書作成義務について
インドネシア法弁護士
フィエスタ ヴィクトリア
2023年12月、インドネシア共和国最高裁判所は、2023年最高裁判所全体会議の結果に関して、最高裁判所通達第3号(以下、「SEMA2023年第3号」という)[1]を制定しました。 SEMA2023年第3号は、一審裁判所及び控訴裁判所の全ての所長に向けたものとされており、インドネシア全域の裁判官に法の適用における統一性と、裁判所の決定の一貫性を確保するためのガイドラインとなります。この記事では、SEMA2023年第3号の要点についてコメントします。
2023年12月、インドネシア共和国最高裁判所は、2023年最高裁判所全体会議の結果に関して、最高裁判所通達第3号(以下、「SEMA2023年第3号」という)[1]を制定しました。
SEMA2023年第3号は、一審裁判所及び控訴裁判所の全ての所長に向けたものとされており、インドネシア全域の裁判官に法の適用における統一性と、裁判所の決定の一貫性を確保するためのガイドラインとなります。この記事では、SEMA2023年第3号の要点についてコメントします。
SEMA2023年第3号の主要な点は、インドネシア語の要件に関するもので、外国とインドネシアの双方の当事者がいる契約において、インドネシア語版がないという理由だけでその契約を無効とする判決を下すことはできないとするものです。ただし、インドネシア語版がないことが一方の当事者のbad faith(不誠実さ)によると証明される場合は除かれます。
ただし、この規定は、実質的に2015年の自身の判決と矛盾しています。
1.SEMA2023年第3号はインドネシアの裁判所にのみ適用され、仲裁機関には適用されません。そのため、通常、クロスボーダーの取引の当事者が選択する紛争解決手段としての仲裁を通じて解決される紛争に対して影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。
2.「bad faith(不誠実さ)」とは何を指すのかについての定義や説明はされていません。
3.大統領規則2019年第63号は、インドネシア「言語法」[2]の施行規則として、正式に機能しますが、本通達はインドネシアの裁判官に対する指針としてのみ機能します。通達の意図として、インドネシアの裁判所が判断を下す際のアプローチが統一されることは、安心感を与えるかもしれませんが、契約当事者に対する直接的な拘束力を持つものではなく、インドネシア語版の契約書を締結することについて、規則によって定められた義務について、正式に置き換えたり、覆したりするものではありません。
以上のことから、インドネシアの契約当事者と契約を結ぶ当事者には、インドネシア「言語法」の要件に従って、インドネシア語版の契約書に署名することを確保することが推奨されます。
法律事務所ZeLoでは、インドネシアのほかに米国やスイスの専門家が所属しており、日本法弁護士とチームを編成して対応するほか、現地法律事務所とも緊密に連携し、世界の法域を問わずリーガルサービスを提供しています。支援実績も、スタートアップから中小・上場企業まで多岐にわたり、企業規模やビジネススキームに合わせた、迅速かつ質の高いサービスを提供いたします。本記事のように、現地の最新動向をふまえた対応がとくに必要になる場合は、ぜひ一度ご相談ください。
本記事は、原文であるこちらの記事の翻訳であり、英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
本記事の情報は、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もないものであって、一般的な情報提供のみを目的とするものです。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。