多様な事業の成長を支える法務。ZeLoの「契約書アウトソーシングサービス」で実現する戦略的リーガルマネジメント―森永乳業株式会社
弁護士
金子 順事
弁護士、Web3部門統括
高井 雄紀
公正取引委員会(公取委)は、2025年12月9日、ライバー事務所4社に対して独占禁止法(独禁法)第19条(不公正な取引方法第12項(拘束条件付取引)又は第14項(競争者に対する取引妨害))の規定の違反につながるおそれがあるものとして注意を行いました。本記事では、本件の概要と実務への影響を、過去に公表されている実態調査報告書や指針も踏まえて解説します。
目次
公取委は、2025年12月9日、ライブ配信プラットフォーム「Pococha」において取引額が上位のライバー事務所である株式会社AEGIS GROUP、株式会社Colors、株式会社321及び株式会社WASABIの4社に対し、独禁法に違反するおそれがある行為について注意を行いました。(参考:(令和7年12月9日)ライバー事務所を運営する事業者に対する注意について)
4社は所属ライバーとのマネジメント契約において、合理的な理由がないにもかかわらず、ライバーの移籍や独立を牽制する目的で、契約終了後一定期間の事業活動を制限する規定を設けていました。具体的な制限は以下の全部又は一部とされています。
これらの制限は、営業秘密等の漏えい防止に必要な合理的な必要性かつ手段の相当性が認められないにもかかわらず、契約終了後の活動を制限するものであり、他のライバー事務所や新たに立ち上げるライバー事務所の取引機会を減少させ、ライバー事務所間の公正かつ自由な競争に影響を与えるおそれがあるとされています。
以上より、不公正な取引方法のうち、拘束条件付取引又は競争者に対する取引妨害の規定の違反につながるおそれがあるとして、このような状態を未然に防止する観点から注意が行われ、4社は、本件審査の過程で制限内容を見直す旨を申し出たとされています。
今回の注意は、公取委がクリエイター個人の創造性発揮を支援するために進めてきた、芸能分野の取引適正化に向けた継続的な取組みの一環として位置づけられます。
公取委は、アニメ・音楽・放送番組・映画・ゲーム・漫画といったコンテンツの競争力の源泉がクリエイター個人に移りつつあるという認識に基づき、2024年12月に「音楽・放送番組等の分野の実演家と芸能事務所との取引等に関する実態調査報告書」を公表しました(参考:(令和6年12月26日)音楽・放送番組等の分野の実演家と芸能事務所との取引等に関する実態調査 (クリエイター支援のための取引適正化に向けた実態調査)について)。
この報告書では、実演家と芸能事務所の取引をはじめとして、独禁法上又は競争政策上問題となり得る行為が整理されました。
公取委は、上記実態調査の結果を踏まえ、2025年9月に内閣官房との連名で「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」を策定しました(参考:(令和7年9月30日)「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」の公表について)。
この指針は、以下の点に鑑み、原則として、契約上、競業避止義務等を規定しないこと(既存の契約で定められている場合は競業避止義務等を定める条項を削除すること)を求めています。
今回の注意は、報告書や指針において問題となり得るとされていた行為に対してなされたものであり、公取委が具体的な事案に積極的に対処していく姿勢の表れと考えられます。
今回問題視された行為にとどまらず、その他の問題となり得る行為に対しても、今後、注意等がされる可能性は否定できません。以上を踏まえ、芸能事務所等は、以下のような点に留意して対応する必要があるといえます。
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