商標権が取り消される?不使用取消を防ぎ商標権を維持するための実務ポイント
弁理士
後藤 公代
流石 光輝
「ビジネスモデルで特許を取得できるのか」「AIサービスは特許で保護できるのか」といった相談が近年急増しています。収益の仕組みとしてのビジネスモデルがユニークであれば、高価な製造設備などがなくても他社との差別化を図ることができ、特にスタートアップ企業にとっては強力な競争優位性を確保することができます。本記事では、「ビジネスモデル特許(ビジネス関連発明)」の基本から特許取得のための具体的なポイント、さらに生成AI時代におけるAI関連特許の最新動向まで、実務目線で解説します。
目次
「ビジネスモデル特許」という言葉は特許法上の正式な用語ではなく、「ビジネスモデルを実現するためのICT(情報通信技術)を活用した技術的手段」に対して認められる特許のことを指します。特許庁ではこれを「ビジネス関連発明」と呼んでいます。
インターネットを活用した電子商取引、スマートフォンアプリ上の取引、AIを用いた業務自動化システムなど、ビジネスの仕組みがICTと一体となって実現されている場合に、その技術を特許として保護できる可能性があります。
特許庁が2025年に公表した調査によると、日本におけるビジネス関連発明の特許出願件数は2023年に19,870件に達し、2000年の出願ブーム時の件数を上回って過去最高を記録しました。

2000年代前半に一時的なブームがあったのち一旦は下火となり、2011年には年間約5,000件まで減少しましたが、2012年以降は一貫した増加基調に転じています。スマートフォンの普及、クラウドサービスの拡大、そして近年の生成AIブームが出願増加の背景にあると思われます。
特許査定率の改善も顕著です。2000年出願分のビジネス関連発明の特許査定率はわずか13%でしたが、その後着実に上昇し、2023年には80%超に達しました。審査実務の成熟とともに、出願内容自体の質が高まっていることによるものと考えられます。

さらに分野別で見ると、2023年に出願されたビジネス関連発明の上位3分野は「サービス業一般」、「管理・経営」、「EC・マーケティング」でした。
注目すべきは「教育」分野で、2020年まで年間100件以下だった出願件数が、2023年には前年比約6倍に急増しました。これは生成AIを活用した教育サービスの急増が背景にあると考えられます。

ここで逆説的なお話ですが、実は「ビジネスモデルそのもの」で特許は取れませんのでご注意ください。
特許法第2条第1項では、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。販売管理や物流、マッチングなどのビジネス方法のアイデアそのものは「自然法則を利用したもの」とは認められないため、特許の保護対象にはなりません。
たとえば以下のようなものは、単独では特許の対象外です。
一方、これらのビジネスを実現するためにコンピュータやネットワークを使って具体的に実装された技術システムは、ビジネス関連発明として特許保護の対象となります。鍵は「ビジネスのアイデア」ではなく「そのアイデアをITCで実現した技術的手段」にあります。
ビジネス関連発明として特許を取得するための主要な要件として、以下の3つの要件を満たす必要があります。
最初の関門はそもそも「発明」に該当するかどうかです。コンピュータやネットワークといったハードウェアとソフトウェアを一体として用い、処理が具体的に実現されている必要があります。
出願時点で、国内外を問わず公開されていない発明であることが必要です。自社サービスのリリース前・プレスリリース前・学会発表前に出願することが鉄則です。一度でも公開してしまうと、原則として新規性を喪失します(一定期間内であれば「新規性喪失の例外」規定を使える場合がありますが、あくまで例外です)。
新規性があるだけでは足りず、その技術分野に通常の知識を持つ者が既存技術から容易に発明できないものである必要があります。ビジネス関連発明の審査で最も問われる要件の一つです。
ビジネス関連発明の審査において審査官が重視するのは、ビジネスのアイデアではなく技術的な工夫とその効果です。出願前に「自社サービスのどの技術的工夫が競合と異なるのか」、「その工夫によって何が解決されるのか」を言語化しておくことが非常に重要です。
たとえば「スマホ写真1枚で出品できるフリマアプリ」の場合、特許にすべきは「スマートフォンのカメラで撮影した画像から商品情報を自動認識し、カテゴリ・推奨価格を自動入力するサーバ処理システム」という技術的手段です。
特許の「保護範囲」を決めるクレームが狭すぎると、競合他社が少し仕様を変えただけで簡単に特許侵害を回避できてしまいます。一方で広すぎると審査を通過できません。
有効なビジネスモデル特許を取るためには、「競合他社が真似をしたくなる核心部分を保護する広さ」と「審査を通過できる具体性」のバランスが必要です。
スタートアップがゼロから知財ポートフォリオを構築する場合、以下のようなフェーズ設計が有効です。
単一の特許に依存するのではなく、コア技術を複数の特許で多角的に保護し、商標・意匠・営業秘密と組み合わせた知財ポートフォリオを構築することが、長期的なビジネス保護につながります。特許は制度上、内容が一般に公開されるため、詳細な実装ノウハウは営業秘密として社内に留めておく、という「公開と秘匿」の組み合わせも有効です。
分かりやすいものとして、いくつかビジネスモデル特許の登録事例をご紹介します。
クラウド会計ソフト「freee」を提供する同社が取得した特許で、銀行・カード明細をウェブから自動取得し、学習済みのデータベースを利用して適切な勘定科目を推定して自動登録するサーバシステムに関するものです。
単なる「入力不要の会計ソフト」というビジネスアイデアに留まらず、「データ取得→明細の解析→自動仕訳の提示」という具体的なデータの処理手順(アルゴリズム)として権利化しています。
freeeは創業2年目の2014年に本願を出願し、競合他社に対するクラウド会計SaaS市場での優位性を築く基盤となった可能性があります。スタートアップが創業初期から知財を意識し、事業の差別化(参入障壁)に直結させた事例です。
スキマバイトアプリ「タイミー」を運営する同社が取得した特許で、ユーザーの第三者評価による評価スコアを活用し、規定の評価を満たしたユーザーには業務開始前のマッチング完了時点で給与相当額を受け取れる「働く前に給料」の仕組みを権利化しています。
単に「求人情報を掲載する」というアイデアではなく、評価スコアによる事前評価から給与の立替払いまでを、サーバ装置・データ処理手順として技術的に構築した点が特徴です。
タイミーは2017年の創業後まもない時期から、出退勤管理(特許第6667918号)など中核となる特許を計画的に取得し、後発の競合に対する参入障壁を築いたスタートアップの教科書的な事例です。
MECHAKARIは、各種人気ブランドの新作アイテムが「定額で借り放題」というコンセプトのファッションレンタルサービスです。1回に1点から新品アイテムを借りることができ、何度でも借り換え可能で、気に入ったアイテムは60日間借り続けるとそのままプレゼントされます。この特許はそのサービスについて登録されたものです。
物理的なビジネスでもICTが絡めばビジネス関連発明になりえますが、本事例はICTを使わないステーキの提供システムに関する珍しい特許です。
顧客ごとに肉の重量を計量機で計量し、計量した肉の量とテーブル番号をシールに記載して出力することにより、顧客間の肉の混同を防ぐ提供プロセスが権利化されました。
本件特許は、異議申立により一度は取り消されましたが、知財高裁が「他のお客様の肉との混同を防止する技術的手段」として発明該当性を認めたことで、特許が維持されました。
ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及するなか、「AIを活用したサービス」の特許出願が急増しています。特許庁が公表するデータでも、ビジネス関連発明とAI関連発明が融合した出願が2023年以降に顕著に増加していることが確認されています。
ただし、「生成AIを使った」というだけでは進歩性は認められません。「どのような技術的工夫によって、どのような課題を解決したか」を具体的なシステムや構成として示せるかどうかが権利化できるか否かの判断の分かれ目です。
特許庁は2024年3月、「知財推進計画2023」の短期目標に基づき、AI関連技術に関する特許審査事例をさらに10事例追加しました。進歩性・記載要件・発明該当性についての判断指針が明確化されており、AI関連の出願を検討する際の有力な参考資料となっています。
AI関連発明に関する特許を取得するには、このような資料を参考にしつつ、具体的な登録事例をいくつか確認して、特許取得可能性についてのイメージを持っておくことも重要です。以下記事でも登録事例を紹介しています。
法律事務所ZeLoの知財部門では、ビジネスモデルについての特許出願に限らず、特許出願・活用戦略、出願前の調査や侵害調査、企業内部で行われた発明の取扱いを定める職務発明規程の作成、出願管理業務・そのノウハウの提供、特許紛争まで、企業の知財部として必要とされる様々な業務をワンストップで対応します。
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