【2025年12月通知】アートメイク施術の取締り強化と対応のポイント
弁護士、ヘルスケア部門統括
早乙女 明弘
2025年12月5日、「医療法等の一部を改正する法律」が参院本会議で可決・成立し、同月12日に公布されました。本改正では、高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、各種措置が講じられています。本記事では、新たに導入される「オンライン診療規制」や「美容医療規制」を中心に、医療法等改正のポイントと現時点で想定される実務への影響について解説します。
目次
2025年12月5日、医療法等の一部を改正する法律(以下「改正法」といい、改正後の医療法を「改正医療法」といいます。)が参院本会議で可決、成立しました。改正法は同月12日に公布され、順次施行することとされています。
国内の人口構造は、生産年齢人口が減少する一方で、85歳以上の高齢者人口は2040年頃まで増加し続けると見込まれています。これに伴い、医療・介護の複合的なニーズを有する高齢者が増加し、救急搬送や在宅医療の需要が拡大することが予測されています。
また、人口減少地域においては医療提供体制の維持自体が困難になるおそれがあります。そのため、地域ごとに将来を見据えた持続可能な体制を構築することが喫緊の課題となっています。
こうした状況を背景に、厚生労働省の各検討会において、将来的な医療提供体制に関する議論が進められてきました。令和6年(2024年)12月25日には「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」(以下「本意見」といいます。)が公表されました。
今回の改正(以下「本改正」といいます。)は、本意見での提言を踏まえたものです。将来的な高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築することを趣旨としています。改正法は、主に以下の4項目から成り立っており、順次施行される予定です。
本記事では、3の「オンライン診療」および「美容医療」に関する規制に焦点を当てます。改正に至る背景を踏まえた上で、改正のポイントと現時点で想定される実務への影響について解説します。
オンライン診療は、これまで厚生労働省の指針等[1](以下「オンライン診療指針等」といいます。)に基づく法令の解釈運用により実施がなされてきました。一方で、法的な位置付けが不明瞭であり、必ずしも指針等が遵守されていない状況が問題視されていました。
こうした状況下で、本意見では、現状の指針等での解釈運用には課題があるとしつつ、現行制度の運用を活かす形で、医療法にオンライン診療に関する規定を設けるべきとの意見が付されました。
また、オンライン診療の受診の場を定義し、当該場の設置者は所在地の都道府県知事に届け出ることした上で、オンライン診療の受診の場の設置者は必要な事項を公表する旨の意見も付されました。
本意見での提言を踏まえ、本改正では、以下のとおり、改正医療法上に「オンライン診療」が定義されました。加えて、オンライン診療指針等により示されてきた適正なオンライン診療の実施に関する基準について、改正医療法上で明確に定められることとなりました。
なお、オンライン診療に関する規制の施行日は、2026年4月1日からとされています。
第2条の2 この法律において、「オンライン診療」とは、医師又は歯科医師の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この項において同じ。)と患者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用し、映像及び音声の送受信により、医師又は歯科医師及び遠隔の地にある患者が相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法による診療をいう。
医療法上、医療機関においては、その開設時に所定事項の届出が必要とされるほか、開設時の届出事項に変更が生じた場合も届出が必要とされます(医療法第8条、同規則第4条、同施行令第4条)。
省令案によると、かかる届出事項に「オンライン診療を実施している旨」が追加される予定です。
そのため、今後医療機関の開設時には、オンライン診療の実施有無に関する届出が必要となります。また、現在オンライン診療を実施している医療機関においても、その旨の届出が必要となります。
なお、令和8年(2026年)4月1日時点で現にオンライン診療を実施している医療機関については、令和9年(2027年)3月31日までに届出をすれば足りるよう、経過措置が設けられる見通しです。
オンライン診療を実施するにあたり遵守すべき基準は、これまでオンライン診療指針により示されてきたところですが、本改正により、改正医療法上で明確に示されることになります。
第14条の3 厚生労働大臣は、厚生労働省令で、オンライン診療の適切な実施に関する基準を定めなければならない。
2 前項の基準は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 オンライン診療を行うに当たり病院又は診療所において必要な施設及び設備並びに人員の配置に関する事項
二 患者がオンライン診療を受ける場所に関する事項
三 オンライン診療を行うに当たり患者に対して行う説明に関する事項
四 他の病院又は診療所との連携その他の患者の病状が急変した場合において適切な治療を提供するための体制の確保に関する事項
五 その他オンライン診療の適切な実施に関し必要な事項
3 オンライン診療は、第一項の基準に従つて行われなければならない。
第14条の4 オンライン診療を行う医師又は歯科医師が勤務する病院又は診療所(次条において「オンライン診療実施病院等」という。)の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該医師又は歯科医師が行うオンライン診療を前条第一項の基準に適合させるために必要な措置を講じなければならない。
具体的な基準については今後省令により定められますが、現時点で公表されている「医療法施行規則等の一部を改正する省令案について(概要)」(以下「省令案」といいます。)や、厚生労働省医政局「オンライン診療について」(第124回社会保障審議会医療部会 資料1、以下「本部会資料」といいます。)によると、オンライン診療指針における「最低限遵守する事項」を基本として基準を定めることとされています。
そのため、オンライン診療指針からの大幅な変更がなされる可能性は低いと想定されます。
また、改正法の施行に合わせ、従来のオンライン診療指針や、厚生労働省医政局「「オンライン診療指針」の遵守の確認をするためのチェックリスト」(令和6年3月29日)等についても見直しがなされる予定です。
従来、居宅等(=患者が療養生活を営むことができる場所)を除き、本来的には医療を提供しない施設(公民館・駅ナカブース等)でオンライン診療を実施する場合は、診療所としての開設許可等が必要とされていました。
もっとも、デジタルデバイスに明るくない高齢者等の医療の確保の観点から、厚生労働省の通達(「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」)により、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設も特例的に認められていました。
しかし、依然として診療所の開設許可を要するものであり、活用実績の少なさが指摘されていました。
こうした状況を踏まえ、本改正では、オンライン診療のさらなる推進・円滑化の観点から、オンライン診療の実施が認められる場所として、従来の居宅等及び医療提供施設に加え、改正医療法上に「オンライン診療受診施設」の類型が新たに創設されました。
これにより、従来オンライン診療の実施に際して診療所の開設許可を要すると解される場所においては、以下のとおり「オンライン診療受診施設」としての届出を行うことで、当該施設において、患者がオンライン診療を受けることが可能となります。
第2条の2 (略)
2 この法律において、「オンライン診療受診施設」とは、当該施設の設置者が、業として、オンライン診療を行う医師又は歯科医師の勤務する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に対して、その行うオンライン診療を患者が受ける場所として提供する施設をいう。
第8条 (略)
2 オンライン診療受診施設の設置者は、設置後十日以内に、オンライン診療受診施設の所在地の都道府県知事(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長)に届け出なければならない。
また、本改正により、オンライン診療受診施設の設置者においては、今後省令で定められる事項の公表が義務付けられますが、省令案によると、以下の事項についてウェブサイトへの掲載その他適切な方法により公表することと定められる予定です。
第14条の5 オンライン診療受診施設の設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該オンライン診療受診施設が第十四条の三第二項第二号に掲げる事項に係る同条第一項の基準に適合する旨その他のオンライン診療実施病院等の管理者のオンライン診療受診施設の選択に資するものとして厚生労働省令で定める事項を公表しなければならない。
(省令案より)
・当該オンライン診療受診施設が、患者の所在に関する基準に適合すること
・当該オンライン診療受診施設で用いられるシステムに、十分な情報セキュリティ対策 に関する措置が講じられていること
「オンライン診療受診施設」に関しては広告規制が導入され、今後省令で定められる場合を除き、原則として広告が禁止されます。
かかる規制は、「何人も」してはならないとされるため、医療機関のみならず、オンライン診療受診施設を設置する事業者等においても注意が必要となります。
第6条の7の2 何人も、オンライン診療受診施設に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、広告をしてはならない。
なお、省令案によると、オンライン診療受診施設に関する広告が可能な場合としては、「医療を受ける者が、オンライン診療受診施設が医療を提供するものではない旨を理解できる方法により明示した上で、医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない事項を広告する場合」と定められる予定です。
これによると、「オンライン診療受診施設」に関する広告を行う場合は、医療を受ける者に対して、オンライン診療受診施設が医療を提供するものではない旨を理解できる方法により明示することが求められます。
もっとも、基本的には、現行の医療法上の医療広告に関する規制(医療法6条の5等)に準じて定められるものと想定されます。
なお、かかる広告規制に違反した場合も、医療広告規制と同様、(行政指導を踏まえたうえで、)立入検査や是正命令がされることになります(医療法第6条の8)。
オンライン診療に関しては、医療機関と患者の二者間の関係にとどまらず、近時、事業会社が主導となって、医療機関と提携したり、医療機関を設立する等して、医療機関によるオンライン診療において得られた診療代金を事業会社に還元する、という動きが見られています。
その結果、収益を優先するあまり、オンライン診療指針等を遵守していない運用も散見される状況にありました。
今般の法改正により、オンライン診療指針等の内容が省令に引き上げられ、かかる内容に違反した場合には立入検査・是正命令等が講じることができることが法令上明確になりました。
これにより、医療機関等においては、本改正を踏まえたオンライン診療の提供体制の見直しや運営体制の構築が求められます。
また、患者がオンライン診療を受ける専用の施設として、新たに「オンライン診療受診施設」が位置付けられました。
例えば、公民館、郵便局、駅構内等の交通施設や、県等の単位ごとで届出を行うことで車両自体をオンライン診療受診施設として位置付けることが可能になる等、事業者においては、これまで以上に、地域課題解決等に向けた、様々な参入方法が考えられることになります。
なお、保険薬局内でのオンライン診療受診施設の設置可否については、保険医療機関および保険医療養担当規則や、保険薬局および保険薬剤師療養担当規則における、保険薬局と保険医療機関との間の一体的な構造・経営の禁止等に係る規制との関係を踏まえた議論が進められています。[2]
もっとも、「へき地」等では例外的に設置可能とする動きも見られるところですが、引き続き動向を注視する必要があります。
近年、需要の高まりにより、美容医療を提供する医療機関が増加している一方、身体に危害を受けた相談事例が増加していること等が問題視されていました。
また、美容医療を提供する医療機関における院内の安全管理の実施状況・体制等を保健所等が適切に把握できていないことが課題とされていました。
こうした状況下で、厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」において議論が進められ、「美容医療の適切な実施に関する検討会報告書」(以下「本報告書」といいます。)では、適切な美容医療が安全に提供されるようにするための対応策の一つとして、美容医療を行う医療機関等の定期的な報告・公表の仕組みを導入することが示されました。
ア 美容医療を行う医療機関等の報告・公表の仕組みの導入
○ 厚生労働省において、美容医療に係る報告・公表の仕組みを導入し、美容医療を提供する医療機関の管理者を対象として、当該医療機関における安全管理措置の実施状況等について、年1回の頻度で、都道府県知事等に対して定期的な報告を求めることとし、また、その報告内容のうち患者が相談できる連絡先など必要な内容を都道府県知事等が公表することを検討すべきである。
○ 具体的な報告内容としては、医療法(昭和 23 年法律第 205 号)に基づく安全管理措置の実施状況等に加え、医師の専門医資格の有無、合併症や後遺症等の問題が起こった場合に患者が相談できる連絡先(連携先の医療機関を含む。)等を含むものとすべきであり、治療に伴うリスクの程度も踏まえ、引き続き検討を行うべきである。
○ 報告・公表の具体的な方法は、例えば、医療機能情報提供制度等の仕組みも参考としつつ、関係者の意見も聞きながら実務的に検討すべきである。
出典:厚生労働省社会保障審議会医療部会(2024年11月)「美容医療の適切な実施に関する検討会報告書」12頁より抜粋、太字引用者
本改正により、改正医療法上、美容医療を提供する医療機関においては、新たに安全管理措置の実施状況等、医療の安全の確保のために必要な事項について、都道府県知事等への報告が義務付けられます。
具体的な報告事項については今後省令で定められますが、本報告書では、「医師の専門医資格の有無、合併症や後遺症等の問題が起こった場合に患者が相談できる連絡先」等も報告内容として含むべきとされるため、こうした事項も盛り込まれることが想定されます。
なお、報告義務に関する規制の施行日は、改正法の公布日(2025年12月12日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされます。
第6条の12の2 美容を目的として人の皮膚若しくは歯牙を清潔にし、若しくは美化し、身体を整え、又は体重を減ずるための医学的処置、手術及びその他の治療を行う病院又は診療所であつて厚生労働省令で定めるものの管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、前条に規定する措置の状況その他の医療の安全の確保のために必要な情報として厚生労働省令で定める事項を当該病院又は診療所の所在地の都道府県知事(診療所にあつては、その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。以下この条、第十五条第三項及び第十八条において同じ。)に報告しなければならない。
2 前項の規定による報告をした病院又は診療所の管理者は、同項の規定により報告した事項について変更が生じたときは、厚生労働省令で定めるところにより、速やかに当該病院又は診療所の所在地の都道府県知事に報告しなければならない。
3~5 (略)
本改正により、美容医療を提供する医療機関においては、かかる報告義務への対応に向けた体制整備の検討が必要となります。
また、報告を適切に実施しない場合には、都道府県知事等により報告・是正が命じられることとなるため、適確な対応が求められるといえます。
以上のとおり、2025年の医療法等改正は、幅広い医療・ヘルスケア事業者への影響が生じるものとなっています。
医療・ヘルスケア分野は、時代背景に伴い、行政による規制も複雑化しています。本改正に留まらず、今後も継続的に規制改革がなされることが想定され、法令やガイドラインなどの規制を適確に把握しながら、ビジネスを進めていくことが大切です。
法律事務所ZeLoでは、ヘルスケアやイノベーションにまつわる法律実務に精通した弁護士が多数在籍しており、最適かつ迅速な法務サービスを提供いたします。
改正対応に向けた早期の体制見直し・リスク検討をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
[1]厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月(令和5年3月一部改訂))、同「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A」(平成30年12月作成、令和6年4月最終改訂)
[2]厚生労働省中央社会保険医療協議会(2026年1月)「医療法等改正を踏まえた対応について(その2)」7頁参照