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【弁護士が解説】アフィリエイト広告における医療広告規制と対応

医療広告は、医療法により広告記載可能な内容が制限されているため、掲載にあたって注意が必要です。近年では、広告形態の発達に伴い、医療広告もアフィリエイト広告などを用いて提供されることが多くなってきました。しかし、医療広告には一般的な広告にはない規制が課されていることから、アフィリエイト広告であっても、広告内容が規制の範囲内であるかをチェックし、アフィリエイターを一定程度管理すべきです。そこで、本記事では、特にアフィリエイト広告を行った場合に問題となる医療広告規制について解説します。

【弁護士が解説】アフィリエイト広告における医療広告規制と対応
ADVERTISING-AND-MARKETING-REGULATIONS
PROFILE

2016年慶應義塾大学法学部在学中、司法試験予備試験合格。2018年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2019年法律事務所ZeLo・外国法共同事業に参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、IT・知的財産権、医療・薬事・ヘルスケア、web3(ブロックチェーン/暗号資産/NFTなど)、FinTech、M&A。主な著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)、『Japan in Space - National Architecture, Policy, Legislation and Business in the 21st Century』(Eleven International Publishing、2021年)など。

2018年慶應義塾⼤学法学部在学中、司法試験予備試験合格。2019年司法試験合格。2021年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。同年、法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、スタートアップ・ファイナンス、パブリック・アフェアーズ、ジェネラル・コーポレートなど。弁護士として、技術の広がりのサポートを目指す。著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)など。

アフィリエイト広告とは

アフィリエイト広告とは、成果報酬型広告とも言い、広告主がアフィリエイターに商品やサービスを紹介して販売する仕組みの広告です。広告主は、商品やサービスに関するリンクのクリック数など条件をあらかじめ定め、アフィリエイト広告がその条件を満たした場合、広告主からアフィリエイターに報酬が支払われます。アフィリエイト広告により、広告主は個別の広告事業者に依頼することなく、統一された条件で比較的安価に商品・サービスを広告できるメリットがあります。また、アフィリエイターは広告事業者のみでなく、個人ブロガーであったり、SNS投稿を主に活動している個人である場合があることに特徴があります。

医療法での医療広告の規制について

病院・診療所などについての広告(医療広告)は医療法によって規制されています。ここで、医療法による広告規制の構造について簡単に触れます。

まず、そもそも医療法は医療広告において広告可能な事項を限定しています(医療法6条の5第3項)。たとえば、医師である旨、診療科名、病院の名称・電話番号・所在地、提供される医療の内容等です。病院の看板広告やテレビCMの内容が紋切型だったり、抽象的だったりするのはこのためです。

このような限定を解除して、様々な事項を広告するためには、限定解除要件を満たす必要があります。以下の限定解除要件を満たせば、広告可能な事項以外も広告することができます(医療法施行規則1条の9の2)。

<限定解除要件>
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ (自由診療を提供する場合)自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ (自由診療を提供する場合)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)」より引用

このため、ウェブサイト等では限定解除要件を満たし、看板広告やテレビCMより自由に広告が行えますが、アフィリエイト広告でもこれが可能かは検討の余地があります。

また、限定解除要件を満たしたとしても(満たさなくても)広告ができない事項があります。広告が禁止されている事項は以下のとおりです(医療法施行規則1条の9)。

① 比較優良広告
② 誇大広告
③ 公序良俗に反する内容の広告
④ 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
⑤ 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告

以上の規制の構造を踏まえて、以下では特にアフィリエイト広告の場合の医療広告について注意すべき点を解説します。

アフィリエイト広告の内容管理の必要性と管理方法

アフィリエイト広告においては、広告主がアフィリエイターによる広告内容を事前に把握・確認していないケースが多く見受けられます。その一因として、アフィリエイターが自主的に行った広告に対して、広告主が条件に応じて事後的に報酬を支払う形態が基本となっているためと考えられます。
しかし、広告主としては、自らのあずかり知らぬところで作成された広告が原因で、内容の責任を負うことを避けたいのが通常でしょう。

医療法においては、上述のとおり一定の不適切な「表示」が規制されているため、違反した場合表示の主体である事業者(=広告主)に責任が課される場合があります。なぜなら、広告表示全般を規制する景品表示法においては「表示」の主体は「不当な表示についてその内容の決定に関与した事業者」であり、他の者にその決定をゆだねた場合も含まれるからです。

この議論を医療法における広告規制にも当てはめれば、アフィリエイト広告のように、広告内容の具体的な詳細に広告主が何ら関与していなくとも、そもそも自らのサービス内容等の一定の事項について広告を依頼して、内容の決定をアフィリエイターに委ねていれば、広告主は表示の主体として景品表示法および医療法上の責任を負うことになるでしょう。

ゆえに、単なるアフィリエイト広告の広告主であって、広告の具体的内容に関与していない場合でも、広告内容に責任を負うため、アフィリエイターが行う広告の具体的内容を管理する必要があります。管理の方法としては、事前にアフィリエイターに表現ガイドライン・NG集を配布することや、個別のアフィリエイト広告について事前に提出を受け、審査を行うことが考えられます。

次の章では、アフィリエイターの広告内容の管理に際して、どのような点が特に問題となるかを検討していきます。

アフィリエイト広告による医療広告の限定解除要件

上述のとおり、医療法6条の5第3項により、医療広告では病院名や診療科、提供される医療の内容などの限定的な事項しか記載できないのが原則です。ただし、限定解除要件を満たせばこのような広告可能事項以外の事項も広告することができます。

アフィリエイト広告では各アフィリエイターが記事風広告などの工夫した内容による広告を行うことから、広告内容の限定はないほうが望ましいです。

では、アフィリエイト広告において広告可能事項の限定を解除できるでしょうか。上述のとおり、限定解除要件は以下の4項目です。

<限定解除要件>
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ (自由診療を提供する場合)自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ (自由診療を提供する場合)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)」より引用

自らのブログに広告を載せる場合には、これらの事項を記載することも難しくはないでしょう。しかし、SNSにおけるアフィリエイト広告には2つの難点があります。

第一に、字数制限のあるSNSにおけるアフィリエイト広告では、これらの情報が字数制限内に収まらず、記載するのが困難な場合も考えられます。

第二に、SNSは通常、友達登録をしているユーザー同士やフォローを行っているユーザーに対して、望むと望まざるにかかわらず投稿を表示させる性質があります。そのようなSNSにおける投稿は、患者が自ら求めずとも表示されるので、上記①「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト」とはいえないでしょう。

したがって、SNSにおけるアフィリエイト広告で医療広告を行う場合、広告可能事項の限定解除を行うためには、ユーザーが自ら求めた場合にのみ投稿を表示させる工夫が必要でしょう。そのような工夫が困難なSNSにおいては、広告可能事項のみを広告することになります。ユーザーが自ら求めた場合のみ投稿を表示させる工夫については、定まった方法はありませんが、たとえば、フォロー等の明示的な動作をしなければ投稿が表示されないSNSにおいて、「●●病院に関する医療情報を投稿する」旨をプロフィールに明記し、投稿内容もほとんどが当該病院に関する情報であれば、自ら求めた場合のみ投稿を表示させているといえるのではないでしょうか。

アフィリエイト広告における医療広告該当性

このように、SNSにおいてアフィリエイト広告による医療広告を行おうとする場合、一定の制約があることから、そもそも医療広告に該当しないように投稿を工夫する方法も考えられます。医療広告に該当しなければ広告可能事項の制約もありませんので、記載内容はある程度自由に設計することが可能です。

医療広告に該当する要件は以下のとおりです。

  • 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  • 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

報酬を条件に広告を行っている以上、患者の受診を誘引していないということは困難と考えられますので、誘引性を否定するのは難しいでしょう。

そこで、特定性がない内容に限ってアフィリエイト広告を行うことが考えられます。特定性がある場合とは、病院名が記載されている場合や、住所、電話番号及びウェブサイトのアドレス等から病院が特定可能である場合が典型となります(参照:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)」(2022年12月28日最終改訂)。また、医療広告ガイドラインでは、書籍に「お問い合わせは●●研究会へ」等と記載されており、当該問い合わせ先に問い合わせて特定の病院をあっせんされるような場合にも特定性があるものとし、第三者の仲介があっても特定性に欠けることはないとしています。

したがって、投稿に病院名や病院名を含むURLを記載することはおろか、投稿に含まれるリンクにより病院が特定可能なページにたどり着くことができる場合でも、第三者の仲介によるあっせんと類似しますので、特定性があると考えるべきでしょう[1]

以上より、たとえば、SNSの投稿において、病院名、病院名を含むURLや病院が特定可能なページにたどり着くリンク等を含まない投稿を行うことで、広告可能事項に限定しない内容のアフィリエイト広告を行うことが可能といえます。ただし、当然、この場合には特定の病院に誘導することはできませんし、リンクをクリックさせることでアフィリエイト報酬の条件を達成することも困難なため、アフィリエイト広告として運用する観点からは難点があることは否めないところです。

アフィリエイト広告による医療広告にて、体験談を記載する場合

アフィリエイト広告では、アフィリエイターが実際に施術を受けたうえで体験談を記事に載せて広告を行うことも少なくないでしょう。

しかし、医療広告では、主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の記載は禁止されています(医療法6条の5第2項第4号、医療法施行令1条の9第1号)。たとえ体験談の内容が広告可能な範囲であっても、記載はできないこととなっています。たとえば、「●●手術を受けてから1週間で××(治療効果)になりました。」という記載は、事実であったとしても、また広告可能な事項の範囲であったとしても広告できないとされています。

では、アフィリエイト広告による医療広告では、主観に基づく体験談による広告は一切できないのでしょうか。禁止されているのはあくまで、治療等の内容又は効果に関する体験談ですので、それ以外の体験談であれば広告することが可能です。

たとえば、「●●病院に行った」という診療を受けた事実や「●●病院は雰囲気が良い」「●●病院の接客態度が良かった」といったサービスに関する記載は治療等の内容又は効果に関係しないため、体験談の形で記載できるでしょう。逆に、「治療は●●分程度かかった」「治療は●●円かかった」のような、一見すると治療内容とは無関係の記載でも、治療の所要時間や費用は治療の手際の良さや治療方針の選択にも関連し、個別の患者によって内容は異なり得るため、治療内容の一部に含まれると考え、記載は避けるべきでしょう。

なお、これまで述べた体験談に関する規制は、広告可能事項の限定解除とは別の問題となります。そのため、広告できる内容の体験談であっても、内容が広告可能事項以外の事項にわたる場合は、別途上述した限定解除の要件を満たす必要があることに注意が必要です。

規制内容を踏まえて適切な医療広告の運用を

以上のとおり、医療広告をアフィリエイト広告、特にSNS投稿による広告にて行うには様々な工夫が必要です。

まず、一定の広告可能事項以外の記載を行うためには、限定解除要件を満たす必要がありますが、SNSにおける投稿は限定解除要件としての「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト」であるという要件を満たしづらいため、ユーザーが自ら求めた場合のみ投稿を表示させる工夫が必要になります。

また、上記のようなSNSでの投稿を行うため、そもそも医療広告に該当しない広告を行うことも考えられますが、病院名、URL、リンクを含め、病院が特定可能な事項を含まないようにする必要があり、運用に難点があります。

体験談を掲載する場合には、記載内容が治療等の内容又は効果にわたらないようにする必要があり、注意が必要です。

また、これらの要素が複合し、アフィリエイト広告やSNS投稿による広告に限らない一般的な医療広告に関する規制も遵守する必要もあります。そのため、アフィリエイト広告等の新しい広告形態による医療広告の実施は、非常に複雑といえます。そのような広告を検討する際には、弁護士等の専門家に相談するべきでしょう。

法律事務所ZeLoでは、消費者庁表示対策課への出向経験がある弁護士をはじめ、表示規制について多くの知見を有する弁護士が所属し、サポートにあたっています。支援実績もスタートアップから中小・上場企業まで幅広く、企業規模やビジネススキームに合わせた、迅速かつ質の高いサービスを提供いたします。お困りの方はぜひお気軽にご相談下さい。


[1] この点、厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A」(2018年8月作成)のQ&A1-7では、特定性のないバナー広告がありうることが示唆されています。バナー広告とは、バナーに広告主のページへのリンクを含むものですので、当該Q&Aはリンクによって病院が特定可能なページにたどり着くことができることをもって特定性があるとはいえないことを示唆したものとも読めます。しかし、当該Q&Aは「バナー広告に(略)特定性がある場合、広告に該当する」という至極当然のことを記載しているのみであって、特定性の有無の具体的条件までは言及していないものと考えるべきでしょう。

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