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インドネシアM&Aにおける株式譲渡と法務デューデリジェンス~インドネシア法上の重点確認項目

インドネシア企業の株式譲渡によるM&Aでは、対象会社の過去の債務・責任が清算されるわけではないため、取引に先立って法務デューデリジェンス(以下「法務DD」といいます。)を実施し、リスクを把握しておくことが不可欠です。前回の記事では、株式譲渡のストラクチャーの選択肢と、買収に伴う法的手続や外資規制について解説しました。本記事では、インドネシア法の下で法務DDにおいて重点的に確認すべき5つの項目(会社関係、許認可およびOSSの遵守状況、労務関係、資産、第三者との契約)について、確認ポイントと実務上の留意点を解説します。

インドネシアM&Aにおける株式譲渡と法務デューデリジェンス~インドネシア法上の重点確認項目
INDONESIA
PROFILE
フィエスタ ヴィクトリア

インドネシア法弁護士

フィエスタ ヴィクトリア

2006年ペリタ・ハラパン大学卒業。2019年法律事務所ZeLo参画。 主な取扱分野はM&A、ジェネラルコーポレート、人事労務、フィンテックなど。 インドネシア統一弁護士会PERADIのプロフェッショナル会員であり、執筆も数多く手掛けている。ALB Women in Law Awards 2021 - Business Development Lawyer of the Year を受賞。

2012年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録(東京弁護士会所属)。都内の企業法務系法律事務所において勤務後、2023年1月、シンガポールの大手法律事務所であるRajah&Tann Singapore LLP.へ出向。2024年6月ZeLo参画。主な取扱分野は、M&A(国内・クロスボーダー)、ジェネラルコーポレート、コーポレート・ファイナンス、不動産ファイナンスなど。スタートアップ企業から上場企業まで幅広くアドバイスを行う。

株式譲渡における法務デューデリジェンスの位置付け

以下の「連載:インドネシア進出を目指す日本企業のための法務ポイント解説⑤」で解説したとおり、直接株式譲渡によっても対象会社は同一の法人として存続するため、買主は、対象会社が過去から抱えている規制、税務、環境および労務に関するリスクを引き継ぐことになります。

インドネシア法の株式譲渡の基礎~ストラクチャー選択・買収手続・外資規制の留意点

インドネシア法の株式譲渡の基礎~ストラクチャー選択・買収手続・外資規制の留意点

また、間接株式譲渡の場合であっても、第三者との契約におけるチェンジ・オブ・コントロール条項などを通じて、インドネシア法上の影響が生じ得ます。

法務DDは、予定されている取引の実現可能性やリスクを評価するうえで極めて重要なプロセスです。インドネシア法の下では、買収のストラクチャー、スケジュールまたは実現可能性全体に影響を及ぼし得る法的リスクを特定するため、対象会社の法的地位、規制の遵守状況、契約上の義務および潜在的な債務について、十分な調査を行う必要があります。

前述の記事で解説した取引ストラクチャーにもよりますが、一般的には、会社関係の記録、許認可および規制当局の承認、重要な契約、労務関係、ならびに係属中または潜在的な紛争に特に注意を払う必要があります。

インドネシア法に基づく法務デューデリジェンスの重点項目

会社関係

会社関係の法務DDでは、以下の点を確認することを目的とします。

  • 会社が適法に設立され、定款変更等について法務省の承認を得ていること
  • 資本構成に矛盾がないこと
  • 株式の発行および譲渡が適正に行われていること

会社関係の書類・手続の不備はよく見られるものですが、通常はクロージング前に是正が可能です。

許認可およびOSSの遵守状況

インドネシアでは、OSS(Online Single Submission)を通じたリスクベースの許認可制度が運用されています。主な法的確認事項は以下のとおりです。

  • 登録されているKBLI(インドネシア標準産業分類)コードと実際の事業活動との整合性
  • リスクベースの事業許認可の有効性
  • 外資出資比率の制限の遵守
  • 業種別の許認可(当該事業の種類について、特定の政府機関による追加の許認可が必要か否か)

許認可の不整合は、行政処分や事業活動の制限につながる可能性があります。

労務関係

インドネシアの労働法上、以下の点に留意が必要です。

  • 買収が解雇の契機となり、法定の退職金等の支払義務が生じる可能性があること
  • 有期雇用契約は、法定の期間制限その他の所定の規制に適合している必要があること

買収後の組織再編が予定されている場合には、インドネシア労働法の遵守状況を確認するとともに、再編のストラクチャーについても検討する必要があります。

資産

法務DDの一環として、会社の主要な資産、特に土地・建物などの不動産について、その状況および所有関係を確認することが重要です。

インドネシアでは、土地に関する権利(建設権(Hak Guna Bangunan:HGB)や使用権(Hak Pakai)など)について、関係する土地登記記録により確認する必要があります。

典型的な法的確認事項としては、以下の点が挙げられます。

  • 土地権原の有効性および残存期間
  • 登記名義人が当該資産を保有する会社と一致しているか
  • ゾーニングおよび空間計画への適合性
  • 建築承認(Persetujuan Bangunan Gedung:PBG)の要件の遵守
  • 土地に担保権、紛争または競合する権利主張が存在しないか

土地の権原や許認可に不備がある場合、会社による当該資産の開発、資金調達または譲渡に支障が生じる可能性があり、資金調達、事業拡大またはクロージングに先立って是正が必要となることがあります。

第三者との契約

法務DDのもう一つの重要な対象は、供給契約、顧客との契約、融資契約、賃貸借契約、戦略的提携契約など、対象会社が第三者と締結している重要な契約のレビューです。

このレビューは、一般に、以下の点を評価することを目的とします。

  • 対象会社に契約上の義務違反がないか
  • 潜在的な債務や係属中の紛争が存在しないか
  • 当該契約が対象会社の事業運営にとってどの程度の商業上の重要性・価値を有するか

実務上は、取引の範囲やスケジュールに応じて、買主としては重要な契約、すなわち事業にとって不可欠な契約、多額の金銭的負担を伴う契約、または解除権や同意要件などチェンジ・オブ・コントロールによって発動し得る条項を含む契約のレビューを優先することがあります。

こうした分析により、買主は、取引ストラクチャーに影響を及ぼし得る契約上のリスクや、クロージング前に第三者の同意取得が必要となる事項を特定することができます。

インドネシアM&Aでは法務デューデリジェンスの結果を取引条件に反映する

インドネシアにおける株式譲渡は、市場参入や事業拡大のための効率的な手段となります。もっとも、インドネシアの会社法、投資法および業種別の規制は、取引のストラクチャリングやリスク分担に直接影響を及ぼす実質的なコンプライアンス要件を課しています。

法務DDを通じてこれらの要件の遵守状況を確認し、判明したリスクを取引ストラクチャーや契約上の保護手当てに反映させることが重要です。

日本の投資家が取引を成功させるためには、商業上の目的の整合だけでなく、インドネシアの規制体系やガバナンス環境を慎重に踏まえた対応が求められます。

次回の記事では、インドネシアにおけるジョイントベンチャーについて解説します。

インドネシア進出に関するご相談は専門家へ

法律事務所ZeLoでは、日本企業のインドネシア進出や、外国企業の日本市場参入を支援するリーガルサービスを提供しています。本件に関しご質問やご支援が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

連載⑤:インドネシア法の株式譲渡の基礎~ストラクチャー選択・買収手続・外資規制の留意点

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