インドネシアが「外国公文書の認証を不要とする条約」を批准
インドネシアは、外国公文書(インドネシア以外の国で署名された文書)を、インドネシアで、ビジネス用途・裁判手続・政府行政機関へ提出したり使用したりするために、認証(legalization)手続をなお必要とする国の1つです。 2021年1月4日、インドネシアは2021年大統領規則第2号により「外国公文書の認証を不要とする条約」(以下「認証不要条約」)を批准しました。 今回の批准は、時間がかかるといわれる外国文書の認証手続を簡素化することが目的です。現在、外国文書を認証するためには、作成国や提出国の関係機関や省庁による認証など、複数の手順を踏む必要があります。本条約の批准により、作成国の所定の発行機関からアポスティーユ証明書(日本の官公署、自治体等が発行する公文書に対する外務省の証明)を取得するだけで済むようになります。
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。
対象となる文書
認証不要条約が適用されるのは、以下のような「公文書」です。
- 検察官、裁判所書記官等(court clerk)、裁判所執行官(huissier de justice)などからの文書を含む、外国裁判所・法廷に関連する関係当局・担当官からの文書
- 行政文書
- 公証人文書
- 私人として署名された文書に添付される公的証明書。例えば、文書の登録や特定の日に存在した事実を記録する公的証明書や、それに含まれる署名の公式な公証人による認証など。[1]
ビジネスや裁判所での手続、許認可の申請でよく用いられる書類に、委任状があります。インドネシアの外で、当事者がサインした委任状が認証手続の要請を免除されるのかどうかは一つの論点です。
法律の専門家や実務家は、この点について見解が分かれています。ある専門家は、委任状は私的な文書であって、上記の「公文書」のカテゴリに該当しないという見解に立ちます。他の見解としては、「私的な文書の署名が公証人に認証された場合、その公証人による認証部分は、公的な認証として『公文書』に該当する」というものです。[2]
以下の各文書は認証手続の要請から免除されない点にはご留意ください。
・外交官・大使館員等により作成された文書
・商業活動や関税を直接扱う行政文書
結論
この条約の批准が実務的にどう適用されているのかを判断するには時間を要します。これは当該外国文書の扱いは、その文書が提出される行政機関や裁判所でどう受け入れられるのか、に加えて、その文書がどう分類され、作成国はどこと考えられるかなどの様々な要素次第であることによります。
さらに、インドネシアと他の条約加盟国の間で条約が適用されていくためには、アポスティーユ証明書の発行権限に関する施行規則の制定や、現行の認証手続に代わる規則の制定を経る必要があります。これらの手続が進むまで、外国文書についての認証手続はなお必要になります。
上記に関して、さらにご関心がございましたら、こちらからご連絡ください。
[1]
認証不要条約第1条
[2]
Indonesia’s Ratification of Apostille Convention Should Boost Ease of Doing Business - IPBA In-House Briefing - Powered by Lexology
本記事は、当事務所のFiesta Victoria 外国弁護士(インドネシア、日本では未登録)による英語記事 “Is Legalization of Foreign Documents in Indonesia No Longer Required?” を野村諭弁護士・ニューヨーク州弁護士が和訳した記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
この記事で提供されている情報は、法律上のアドバイスを構成するものではなく、一般的な情報提供のみを目的としています。特定の法的問題に関してアドバイスを求める場合は、弁護士にお問い合わせください。