
インドネシアにおける電子署名の法的側面と合法性
インドネシアでは、2008年に制定された電子情報取引法(通称「ITE法」)により、電子署名が法的に認められるようになりました。それ以降、ITE法は数回の改正を経ており、2016年に最初の改正が行われ、さらに2024年1月2日にITE法の第二次改正法が施行されました。ITE法とその政府規則は、電子署名を含む電子媒体での取引の基本的な法的枠組みを示しています。

2006年ペリタ・ハラパン大学卒業。2019年法律事務所ZeLo参画。 主な取扱分野はM&A、ジェネラル・コーポレート、人事労務、フィンテックなど。 インドネシア支持者協会PERADIのプロフェッショナル会員であり、執筆も数多く手掛けている。ALB Women in Law Awards 2021 - Business Development Lawyer of the Year を受賞。

電子署名とは何か?
ITE法によると、電子署名は、他の電子情報に埋め込まれ、関連付けられ、又はリンクされた電子情報で構成され、検証及び認証の手段として使用される署名と定義されています。
この定義に基づき、電子署名はデジタル形式で作成され、その真正性を保証する埋め込みデータを持つ必要があります。したがって、手書き署名をスキャンした画像は、電子署名として必要なデジタル要素を欠いているため、ITE法で保護の対象となる電子署名や電子情報としては認められません。
電子情報・文書の有効性
一般的に、ITE法は電子情報・文書を合法的な証拠として明確に認めています。
その結果、ITE法に準拠した電子システムによって生成された電子情報及び電子形式で作成された文書(レター、陳述書、契約書や申請書など)は、それらを印刷したものとあわせて裁判所で証拠価値があるとされます。
インドネシア法では、契約が法的拘束力を持つためには以下の条件を満たせば有効とみなされます。
- 当事者の合意があること
- 契約を締結する当事者が、締結に関する法的能力を有すること
- 契約の対象が特定されていること
- 契約の内容が適法であること
これらの条件が満たされている限り、一部の契約類型を除き、契約は口頭で、紙媒体で、又は電子的に作成されても有効です。
電子署名の有効性と執行可能性に関する要件
インドネシア法上、上記1~4の要件が満たされる限り、契約は有効であるとされます。必ずしも実際に人が書いた手書きの署名がないと契約ができないというわけではありません。
ITE法はまた、一定の要件を満たした電子署名が手書きの署名と同じ法的位置付けを持つことを担保しています。したがって、このような電子署名で署名された電子文書は、手書きの署名で署名された文書と同様に、裁判所で法的に有効であると認められます。
電子署名が法的に有効かつ執行可能と認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
a. 「電子署名生成データ」と署名者との紐付け
「電子署名生成データ」(個人コード・生体認証コード・暗号コード・手書き署名を電子署名に変換したコー
ド、その他IT技術で生成されたコード)は、署名者と紐付いている必要があります。
b. 署名者による電子署名生成データの排他的管理
署名プロセス中、電子署名生成データの管理は署名者のみが行わなければなりません。これにより、第三者が改
ざんできない真正性が保証されます。
c. 署名後の変更検知機能
署名後の電子署名又は関連データに変更が加えられた場合、システムが自動的に変更を検知できる構造が必要で
す。
d. 電子情報の判別可能性
電子署名に紐づけられた電子情報に署名後変更が加えられた場合、その変更が明確に判別可能である必要があり
ます。電子署名それ自体に変更が加えられた場合と同様に、変更が生じた場合の判別可能性が求められます。
e. 署名者特定方法の明示
署名者を特定するための具体的な方法が採用されている必要があります。
f. 同意確認プロセスの存在
署名者が電子情報に対して同意をしたことが確認できる具体的な方法が求められます具体的には、クリック署名
方法(署名者が電子署名をする前に条件について明示的に応諾したことを示すもの)や同意記録方法が整備され
ている必要があります。
例外事項
原則として電子情報や電子文書又はその印刷物は裁判上で証拠能力を有しますが、他の法令で例外が規定されていることがあります。例えば、公証人証書や土地権利書類など、他の法令で原本作成が義務付けられる文書については電子署名が使用できません。
電子署名の種類
電子署名の種類としては、大きく分けて2種類あります。
- 認証型電子署名:インドネシア電子認証局(CA)発行の電子証明書を使用して作成されたもの
- 非認証型電子署名:インドネシア電子認証局を経ずに作成されたもの
他の電子署名の認証サービスはインドネシア国外でも運営を行っているものも多数ありますが、認証型電子署名であると認められるためには、インドネシア電子認証局が認証したものである必要があります。したがって、インドネシア国外の電子認証局により認められた電子署名は非認証電子署名として取り扱われます。
現時点でのインドネシア電子認証局は、インドネシア通信情報省の公式サイト(https://pse.kominfo.go.id/home)に公開されています。
認証型と非認証型の違い
認証型と非認証型の主な差異は、裁判上の証拠価値の高さにあります。認証型は、非認証型に比べて、裁判でより強力な証拠能力があるとされます。
電子署名に関する最新動向
2024年1月のITE法改正以前は、電子署名が認証を経ていることは必ずしも必要ではありませんでした。しかし、2024年の第二次改正法により、ハイリスク電子取引を行う際には電子認証が経られた電子署名を用いることが義務化されました(ITE法第17条2a項)。
電子取引においてデータ送信の安全性が確保されていることは重要な大前提となるものです。現時点で「ハイリスク電子取引」の具体的範囲は定まっておらず、定義も明確とは言えませんが、「物理的な対面を伴わない金融取引」が主要対象と解釈されています。今後の規則で当該「ハイリスク電子取引」の内容が明確化されることが期待されます。
電子署名をするにあたって検討すべき重要事項
インドネシアでは政府の業務プロセス効率化策・投資誘致策、さらにパンデミックの影響により電子署名の利用が拡大しています。しかし、一部の政府機関や裁判所では依然として手書きの署名入りの原本書類を要求する場合がある(電子署名では認められない)ため、署名をしようとする文書が電子署名で足りるのかについては、事前に専門家に確認を求めることが必要です。
法律事務所ZeLoでは、インドネシア進出を目指す日本企業や日本市場に参入する外国企業向けにインドネシア法務も取り扱っています。本件に関するご質問や法的対応が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
免責事項
本記事は、原文であるこちらの記事の翻訳であり、英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。本記事の情報は、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もないものであって、一般的な情報提供のみを目的とするものです。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。