fbpx

【速報】インドネシア、主要な許認可制度改革により外資最低資本金要件を大幅緩和

インドネシア投資調整庁(BKPM)は、2025年10月2日付で発効するBKPM規則第5号/2025年(以下「Reg 5/2025」といいます。)を正式に公布しました。本記事では、主な変更点や今回の改正の重要性、実務への影響について解説します。

【速報】インドネシア、主要な許認可制度改革により外資最低資本金要件を大幅緩和
CROSS-BORDER-PRACTICE
PROFILE
フィエスタ ヴィクトリア

インドネシア法弁護士

フィエスタ ヴィクトリア

2006年ペリタ・ハラパン大学卒業。2019年法律事務所ZeLo参画。 主な取扱分野はM&A、ジェネラルコーポレート、人事労務、フィンテックなど。 インドネシア統一弁護士会PERADIのプロフェッショナル会員であり、執筆も数多く手掛けている。ALB Women in Law Awards 2021 - Business Development Lawyer of the Year を受賞。

2012年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録(東京弁護士会所属)。都内の企業法務系法律事務所において勤務後、2023年1月、シンガポールの大手法律事務所であるRajah&Tann Singapore LLP.へ出向。2024年6月ZeLo参画。主な取扱分野は、M&A(国内・クロスボーダー)、ジェネラルコーポレート、コーポレート・ファイナンス、不動産ファイナンスなど。スタートアップ企業から上場企業まで幅広くアドバイスを行う。

主な変更点

インドネシア投資調整庁(BKPM)は、2025年10月2日付で発効するBKPM規則第5号/2025年(以下「Reg 5/2025」といいます。)を正式に公布しました。

主な変更点は以下のとおりです。

  • 外資系会社(PT PMA)の払込資本金の最低額が 1社あたり従来のIDR10億(約9,100万円)からIDR2.5億(約2,200万円)へ引下げ。
  • KBLI5桁コードと拠点ごとに総投資額は従来どおりIDR10億超(土地・建物除く)を維持。
  • 払込資本金はインドネシア国内銀行口座へ預入れし、原則12か月間払戻しが禁止(ただし、資産購入・建設・事業運営に用いる場合のみ可)。
  • これらに違反した場合、以下の行政制裁があり得ます:
  1. 書面による警告
  2. 事業活動の一時停止
  3. 行政上の賦課金
  4. 強制履行措置
  5. 免許・認証・承認の取消し
  6. 基本許可・事業許可・事業活動支援許可(PB UMKU)の取消し
  • Reg 5/2025により、BKPM規則3/2021・4/2021・5/2021の3本を廃止・統合。
  • リスクベースのOSS(オンライン・シングル・サブミッション)制度により、許認可および投資のしやすさが拡充され、より迅速でシームレスな手続きが可能に。

業種別にみた「IDR 10億超の最低投資額」ルールの例外

Reg 5/2025 は、前回のBKPM 規則第4号(2021年)と同様に、「KBLI5桁コード×各事業拠点ごとに、土地・建物を除いた総投資額がIDR10億超であること」という原則を維持しています。一方で、Reg 5/2025では、事業の性質や事業のスコープの性質に応じて、この金額要件の適用方法を調整する複数の業種別例外が新たに導入されています。

これらの例外の一部は前回の規則から変更がありませんが、新たに導入されたものも存在します。特にReg 5/2025では、「事業所在地(business location)」の定義がより明確にされたほか、電気自動車(EV)インフラ分野(以下ポイント5にて記載)のような新たな業種向けの規定が追加されています。

以下に、既存のものと新設されたものを含めたすべての業種別例外をまとめます。

1.卸売業(Perdagangan Besar)
土地・建物を除く、最低投資額IDR10億超はKBLI4桁コードごとに適用されます。

2. 飲食サービス業(Jasa Makanan dan Minuman)
最低投資額IDR10億超はKBLI2桁コード、「事業所在地(titik lokasi)」ごとに適用されます。
ここでいう titik lokasi とは「個別の営業拠点」を指し、かつ「kabupaten/kota(県/市)単位」で判断すると規定されています。

3. 建設サービス業(Jasa Konstruksi)
土地・建物を除く、最低投資額IDR10億超はKBLI4桁コードごとに適用されます。

4. 製造業(Industri)
単一の生産ラインにおいて複数の異なる種類の製品を製造する企業の場合、最低投資額 IDR10億超は個別KBLIごとではなく、総額ベースで判定されます。
これは、単一の統合オペレーションのもとで複数の関連製品を製造するメーカーに対して、柔軟性を持たせるものです。

5. EV(電気自動車)分野(※新設)
EV充電ステーション(SPKLU)を開発・運営する事業者は、最低投資額IDR10億超(土地・建物除く)をKBLIや事業所在地ごとではなく、「1州(province)ごと」に適用されます。

6. KEK(特別経済区)
デジタル経済/物流/観光/エネルギー等を対象とする特別経済区(KEK)内プロジェクトは、原則であるIDR 10億超ルールの適用対象外となり、該当する大統領令に定められた独自の投資要件に従う必要があります。

7. 不動産開発・運営関連事業の場合の特則
a. 完成建物または一体開発型コンプレックスの場合:土地・建物を含めて IDR10億超である必要があります。
b. 完成建物または一体開発型コンプレックスに属さない「個別ユニット」単位での開発の場合:投資額は 土地・建物を除いてIDR10億超である必要があります。

8. 以下の特定セクターでは、最低投資額に「土地・建物費用」も含まれる点に注意が必要です:
a. 不動産開発(建設・販売・賃貸を含む)
b. 宿泊サービス(短期・長期いずれも対象)
c. 農業
d. プランテーション(農園型事業)
e. 畜産
f. 水産養殖(魚などのアクアカルチャー)

これらの改正がなぜ重要か?

これらの改革により、特に小規模または資本が少ない外国企業にとって、インドネシア新規参入のハードルが大幅に低くなります。

実務への影響

  • インドネシアで新規プロジェクトを計画している企業は、自社のコーポレート構造や資本拠出戦略を見直し、12か月間のロックアップおよびOSSに関する要件を確実に遵守する必要があります。
  • すでに廃止された旧規則に基づく許可または承認を取得済みのPMAとして事業を行っている企業は、当該許可の有効期限まではその条件に基づいて事業を継続することができます。
  • 旧規則に基づきすでに申請を提出している、または許認可の取得手続き中にある企業は、新制度のもとで資本コミットメントや許認可のステータスを再評価し、Reg 5/2025 における経過規定を順守する必要があります。
  • 今後提出される新規申請は、原則としてすべて Reg 5/2025 に定められたルールおよび要件の適用対象となります。

法律事務所ZeLoでは、日本企業のインドネシア進出や、外国企業の日本市場参入を支援するリーガルサービスを提供しています。本件に関しご質問やご支援が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


免責事項

本記事は、原文である英語記事「NEWS ALERT: Indonesia Slashes Foreign Investment Capital Threshold in Major Licensing Reform」の翻訳であり、英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。本記事の情報は、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もないものであって、一般的な情報提供のみを目的とするものです。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。

【速報】インドネシア、主要な許認可制度改革により外資最低資本金要件を大幅緩和

Mail Magazine

最先端のビジネス領域に関する法務情報、
法令の改正その他重要な法務ニュースをお届けします。

【速報】インドネシア、主要な許認可制度改革により外資最低資本金要件を大幅緩和

Contact

ご相談・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

Page Top