【2022年6月4日発効】インドネシア公文書のアポスティーユ証明(2022年MOLHR規則6号)
認証不要条約に批准したインドネシア政府は、2022年MOLHR規則6号に基づき、公文書のアポスティーユ証明業務の詳細を規定する施行規則を発表しました。2022年6月4日に発効予定の本規則について、インドネシア法弁護士(日本では未登録)のFiesta Victoriaが、公文書への影響や対応を概説します。
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。
アポスティーユとは
アポスティーユとは、ある文書を他国で使用するために確認・証明する方法であり、主に、「外国公文書の認証を不要とする条約」(1961年10月5日のハーグ条約)(「認証不要条約」)に基づく加盟国間の合意によって設けられている制度です。
外国公文書についての大使または領事による認証手続には時間がかかるといわれますが、認証不要条約の目的は、かかる認証手続を不要にし、所定の様式で発行されるシンプルな証明書(「アポスティーユ証明書」)を取得することで足りるようにすることです。このアポスティーユ証明書が文書に付されれば、追加の認証を経ることなく、当該文書を他の認証不要条約加盟国で使用することができるようになります。
インドネシアのアポスティーユに関する規則制定
2021年1月5日、インドネシアは2021年大統領規則2号(「2021年大統領規則2号」)により認証不要条約を批准しました。 この批准を受けて、2022年1月26日、インドネシア政府は、2022年法務人権大臣(「MOLHR」)規則6号(「2022年MOLHR規則6号」)に基づき、公文書のアポスティーユ証明業務の詳細を規定する施行規則を発表しました。2022年MOLHR規則6号は、2022年6月4日に発効する予定です。
2021年大統領規則2号の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
アポスティーユを行う「文書」の要件
インドネシアで発行された、以下に規定する「文書」は、他の本条約加盟国で使用する場合、アポスティーユを行うことになります。
ここでいう「文書」とは、手書きまたは印刷された書面の形式による公文書であって、権限を有する公務員が情報を証するものとして署名したもの、または公印の押されたものを意味します[1]。
「文書」には、以下のものが含まれます。
- 検察官、裁判所書記官等(court clerk)、裁判所執行官(bailiffs)などからの文書を含む、裁判所・法廷に関連する関係当局・担当官からの文書
- 行政文書
- 公証人文書
- 内国権限(civil authority)に基づいて署名された「文書」に添付される公的証明書。例えば、「文書」の登録や特定の日に存在した事実を記録する証明書や、署名に係る公務員・公証人による認証など。
アポスティーユを行う「文書」の例外
以下の文書については、アポスティーユを行うことは求められません。
- 大使館または領事館の公務員が署名した文書
- 商業活動や関税を直接扱う行政文書
- 2021年大統領規則2号所定の訴追機関である検察庁が発行した文書
インドネシア国内でのアポスティーユ証明手続
インドネシア国内でのアポスティーユ証明業務は、法務人権大臣が、法務人権省の公法行政総局(Directorate General of Public Law Administration)(「総局」)を通じて行います。
アポスティーユは本人か代理人がオンラインで申請できます。その際に提出する書類は、(1)申請様式(総局のウェブサイトで入手できます。)、(2)添付資料(申請者の身元証明カード。代理申請の場合は委任状と代理人の身元証明カード)、および(3)アポスティーユの対象文書です。
提出書類に不備がなければ、提出から3営業日以内に確認対応されます。確認が完了し、申請者が正式なアポスティーユの費用を支払うと、総局から申請者に対して、アポスティーユの対象文書を持ってアポスティーユ証明書を受け取りに来るよう、オンラインで通知がなされます。
[1]2022年MOLHR規則6号1条2項
本記事は、当事務所のFiesta Victoria 外国弁護士(インドネシア、日本では未登録)による英語記事“ INDONESIAN LAW UPDATE: Apostille Certification of Indonesian Public Documents ”の和訳記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
本記事の情報は、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もないものであって、一般的な情報提供のみを目的とするものです。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。