パブリック・アフェアーズはなぜ重要?法律事務所ZeLoが専門部門を立ち上げました
2020年12月、法律事務所ZeLoは新たにパブリック・アフェアーズ部門を立ち上げました。本記事では、同部門設立の意義や今後の展望について、部門中心メンバーである官澤康平弁護士が熱く語っています。
目次
パブリック・アフェアーズとは
「パブリック・アフェアーズ部門立ち上げ」と書きましたが、そもそもパブリック・アフェアーズとは何を意味するのでしょうか。
人によって説明内容が若干異なりますが、一般的には、企業や民間団体等がその目的を達成するために、ルール形成や信用獲得を目指して公共的・社会的なステークホルダーや、世論に対して働きかけを行うことを指して使われることが多いです。
誤解をおそれずにざっくりと説明すると、パブリック・アフェアーズとは、自社のビジネスを法的・社会的に問題なく展開するために、法的制度の活用を含めた、多数の利害関係者への説明や調整を行っていく活動というような意味合いになります。
パブリック・アフェアーズが重要な理由
では、なぜ近年パブリック・アフェアーズが重要と言われるようになっているのでしょうか。様々な理由がありますが、ここでは2つの理由を紹介します。
テクノロジー発展の加速
まず、テクノロジーの発展速度が、かつてないほどに上がっている点があげられます。
テクノロジーが発展することにより、企業は新しい技術を駆使したビジネスやビジネスモデルを実現できるようになります。ところが、既存の法規制はその時点において実現されている技術やサービスを念頭に置いているので、新たなビジネスを実現するための適切な法規制が存在しない場面が多く存在します。
適切な法規制が存在しないときは、「現行の法規制のうち厳しい規制を適用する」と保守的に解釈されることがあり、結果として企業がビジネスの実現を断念する事態に繋がりかねません。このように、法規制が現実に追いついていないことを「法の遅れ(Law Lag)」といいます。
法の遅れが自然に解消されるのを待つのではなく、民間主導で現実に法規制を近づけるために、パブリック・アフェアーズが重要となります。
企業の社会的責任を果たす
また、企業の社会的責任を果たす観点もあげられます。
最近では、既存事業の秩序を破壊し、業界構造を変えるような新規ビジネスも生じています。法規制に反しない形でビジネスを実現できる可能性もありますが、劇的な変化によって、法規制が守ろうとしている利益が犠牲になったり、これまで積み重ねられてきたルールをないがしろにしてしまったりする場合もあります。
新規ビジネスによって世の中が便利になることは大切ですが、現在の法規制がある理由なども検討して、利害関係者とコミュニケーションを取りながら適切な法規制を実現する姿勢が重要となります。
▼参考記事
パブリック・アフェアーズ部門を立ち上げた背景
法律事務所ZeLoは、クライアントを支援する中で、パブリック・アフェアーズ業務に取り組んできました。今回新たに、パブリック・アフェアーズの専門部門の立ち上げに至った理由は、大きく2つあります。
法律事務所もパブリック・アフェアーズに協力できる
まず、企業や経営者の方に、法律事務所もパブリック・アフェアーズに関するサービスを提供できることを広めたいと考えています。
これまで取り組んできた業務は、「パブリック・アフェアーズに協力して欲しい」とクライアントの相談を受けて始まるというよりは、話を進めていく中でパブリック・アフェアーズのアプローチが必要となることに気付く場合がほとんどでした。
特にスタートアップ企業が、テクノロジーを活かした新しい分野にチャレンジする際、パブリック・アフェアーズの取り組みは欠かせないものになっています。
「法律事務所でパブリック・アフェアーズのような業務対応ができることを知らなかった」という声も多いので、企業や経営者の方に、パブリック・アフェアーズ業務の存在や、法律事務所で対応できることをもっと広めていく必要があると感じています。それを果たすために「パブリック・アフェアーズ部門」を通常の業務から切り出す形で立ち上げました。
パブリック・アフェアーズ業務の浸透を図りたい
法律実務家の中には、既にパブリック・アフェアーズ業務に従事している方もいますし、パブリック・アフェアーズという言葉を使わずに同種の活動を行っている方もたくさん存在します。さらに法律実務家の間でパブリック・アフェアーズ業務の浸透を図り、新規ビジネスを通じて共に社会を盛り上げていきたい点も、今回専門部門を立ち上げた理由の1つです。
パブリック・アフェアーズ業務の対象となるルールや、規制のサンドボックス制度・グレーゾーン解消制度などの制度を利用したアプローチは、法律業務で培った知見と思考方法を発揮できる領域だと思っています。
「パブリック・アフェアーズ部門立ち上げ」というお知らせをきっかけに、パブリック・アフェアーズ業務の存在を少しでも広めていきたいと考えています。
パブリック・アフェアーズ部門の中心メンバー
「どんな弁護士が対応するか分からないと相談しにくい」と思われる方もいるかもしれないので、パブリック・アフェアーズ部門の中心メンバーを簡単に紹介します。
※なお、本記事内の写真は日本最大級のスタートアップの集積拠点「CIC Tokyo」様にて撮影しています(ありがとうございます!)
官澤康平弁護士
本記事を書いている、私です。仙台生まれ仙台育ちの東北っ子で、東京に出てきてから企業法務を志すようになりました。パブリック・アフェアーズに興味を持った理由は、2018年にNewsPicksが企画した水野 祐 弁護士(シティライツ法律事務所)のゼミ「ルールメイキング思考」に参加したことがきっかけでした。法律事務所ZeLoに参画してからはパブリック・アフェアーズ業務に力を入れています。
弁護士、パブリック・アフェアーズ部門統括
2011年東京大学法学部卒業、2013年東京大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、同年長島・大野・常松法律事務所入所。2019年8月法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、M&A、ルールメイキング/パブリック・アフェアーズ、ジェネラル・コーポレート、訴訟・紛争、危機管理・コンプライアンスなど。執筆に「総会IT化を可能とするシステム・技術への理解」(ビジネス法務2020年12月号)、『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)、『実践 ゼロから法務!―立ち上げから組織づくりまで―』(中央経済社)など。
2011年東京大学法学部卒業、2013年東京大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、同年長島・大野・常松法律事務所入所。2019年8月法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、M&A、ルールメイキング/パブリック・アフェアーズ、ジェネラル・コーポレート、訴訟・紛争、危機管理・コンプライアンスなど。執筆に「総会IT化を可能とするシステム・技術への理解」(ビジネス法務2020年12月号)、『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)、『実践 ゼロから法務!―立ち上げから組織づくりまで―』(中央経済社)など。
南知果弁護士
法律事務所ZeLoの顔として有名な、南弁護士です。メルカリ・メルペイ社でFintech関連のパブリック・アフェアーズを経験し、現在は一般社団法人Public Meets Innovation Legal Community Partnerとして、官民協働でパブリック・アフェアーズを推進する活動に勤しんでいます。ラジオ番組CIC LIVE「スタートアップの法務とルールメイキング」のナビゲーターも務めるなどマルチに活躍しています。
弁護士有資格者(登録抹消中)
2012年京都大学法学部卒業。2014年京都大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2016年西村あさひ法律事務所入所。2018年法律事務所ZeLo参画。2022年ペンシルベニア大学ロースクール修了(LL.M., Wharton Business and Law Certificate)。主な取扱分野は、スタートアップ支援、ルールメイキング/パブリックアフェアーズ、フィンテック、M&A、ジェネラル・コーポレート、危機管理・コンプライアンスなど。一般社団法人Public Meets Innovation 理事。消費者庁「消費者のデジタル化への対応に関する検討会AIワーキンググループ」委員(2020年)。著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)など。ALB Women in Law Awards 2021 - Innovator of the Yearを受賞。現在、経済産業省大臣官房スタートアップ創出推進室に任期付公務員として赴任中(総括企画調整官)。
2012年京都大学法学部卒業。2014年京都大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2016年西村あさひ法律事務所入所。2018年法律事務所ZeLo参画。2022年ペンシルベニア大学ロースクール修了(LL.M., Wharton Business and Law Certificate)。主な取扱分野は、スタートアップ支援、ルールメイキング/パブリックアフェアーズ、フィンテック、M&A、ジェネラル・コーポレート、危機管理・コンプライアンスなど。一般社団法人Public Meets Innovation 理事。消費者庁「消費者のデジタル化への対応に関する検討会AIワーキンググループ」委員(2020年)。著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)など。ALB Women in Law Awards 2021 - Innovator of the Yearを受賞。現在、経済産業省大臣官房スタートアップ創出推進室に任期付公務員として赴任中(総括企画調整官)。
松田大輝弁護士
松田弁護士は若手の弁護士ですが、各種法規制に対する着眼点や考え方については目を見張るものがあります。士業専門のシェアハウスに住んでいるというバックグラウンドを持ち、幅広い人脈を活かしてパブリック・アフェアーズ業務に従事しています。
弁護士
2018年東京大学法学部卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。主な取扱い分野は、スタートアップ・ファイナンス、M&A、パブリック・アフェアーズ、フィンテック、web3(ブロックチェーン/暗号資産/NFTなど)、ベンチャー・スタートアップ法務、ジェネラル・コーポレートなど。主な著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)、論文に「スタートアップの株主間契約における実務上の論点と対応指針」(NBL 1242(2023.5.15)号)など。
2018年東京大学法学部卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。主な取扱い分野は、スタートアップ・ファイナンス、M&A、パブリック・アフェアーズ、フィンテック、web3(ブロックチェーン/暗号資産/NFTなど)、ベンチャー・スタートアップ法務、ジェネラル・コーポレートなど。主な著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)、論文に「スタートアップの株主間契約における実務上の論点と対応指針」(NBL 1242(2023.5.15)号)など。
WEBセミナーのご紹介
法律事務所ZeLoでは、2020年12月9日(水)に、パブリック・アフェアーズやルールメイキングをテーマにしたWEBセミナーを開催します!※本セミナーは終了いたしました。アーカイブのご視聴はこちら
WEBセミナーはパブリック・アフェアーズ専門サービスのメンバー3名に加えて、規制のサンドボックス制度の窓口である内閣官房様、実際に制度を活用された事業者であるgooddaysホールディングス様にもご登壇いただきます。
gooddaysホールディングス様が行われている実証実験は、「電子契約システムを用いたマンスリーマンション事業に係る定期借家契約書面の作成に関する実証」で不動産事業における書面の電子化を目指すものです。セミナーでは、制度利用に至った背景なども深堀りできればと考えております。
新規事業に挑むスタートアップ経営者や事業開発担当の方、ぜひご参加いただけますと幸いです。
※本セミナーは終了いたしました。下記ページよりアーカイブ動画をご視聴いただけます。
法律事務所ZeLoは、今後ますますパブリック・アフェアーズに力を入れ、クライアントの皆様に貢献できるように邁進してまいります!
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(編集:村上 未萌)