【行政官と弁護士が解説】「規制のサンドボックス制度」の活用時の一連のフローとは?(後編)~申請書作成時の留意点や計画認定からフォローアップまで~
弁護士、パブリック・アフェアーズ部門統括
官澤 康平
弁護士
山田 真由葉
9月11日(水)~9月13日(金)の3日間、法律事務所ZeLo・外国法共同事業のオフィスにて、法規制が問題となる領域を対象に、新規事業の立案に取り組んでいただくビジネスコンテスト型プログラム「ZeLo Legal Camp 2024」を開催しました。 募集人数を大幅に上回るご応募の数々から、さまざまな経歴や関心をお持ちの12名にご参加いただき、既存の法規制を分析しつつ、時には法令等の改正やルールメイキングも視野に入れて、革新的なビジネスアイデアを考案していただきました。
目次
「ZeLo Legal Camp 2024」は、当事務所代表の小笠原 匡隆弁護士、本プログラム担当の村山 康平弁護士・牛丸 瑛理香弁護士・鈴木 直也弁護士による応援のメッセージで幕を開け、本プログラムと事務所の概要説明を行いました。
期間中は、当事務所の弁護士がランチに同席し、参加者はざっくばらんに質問や談話をしていました。
参加者は4名×3チームに分けられ、各自の役割を担い、課題に向けてとても集中して取り組んでいました。
最終発表までの時間をフルに活用し、市場規模や実現可能性なども踏まえ、法律・ビジネスの観点から各自のプランを精査し、最終日の発表に向けて準備を進めていきます。
時折、弁護士が各チームの様子を伺い、現状の確認や疑問点を指摘し、アドバイスと激励を送っていました。
審査員4名(角田 望氏、下平 将人氏、北村 俊樹氏、中沢 冬芽氏)の前で、法規制が問題となる範囲内で検討し、立案した新規事業についてプレゼンしていただきました。
また、当日は最終発表を楽しみにしていたZeLoの弁護士やスタッフが多く集まり、緊張感も漂う中で、堂々とした発表と、審査員からの鋭い質問にも迅速かつ正確に応え、最終発表を終えました。
E チーム
【バイバイビームん】
レーザーを使用して農産物に近づく害虫を駆除することで、農薬消費量の低減や害虫被害に遭う農作物の絶対数を低減させる
C チーム
【NaiLysis(ネイリシス)】
自身の爪を撮影し、AIで画像解析を行い、関連する病院や商品情報を提供することで病院への受診や健康改善に繋げる
D チーム
【テレサクセス】
日本初の教えないコーチングとして、顧客の目標に寄り添い、成功するまでに「継続させる」ことを目的としたオンラインサービス
審査員の評価集計をしている間も、参加者のほっとしたような晴れ晴れとした表情を垣間見えました。
さあ、いよいよ結果発表です!
参加者による最終発表が終了し、審査員による審査・講評を行いました。
審査員や弁護士・スタッフ一同から、「3日間でこの発表はクオリティが非常に高く、どのチームもすごい!」と共通して大絶賛でした。
各審査員からいただいた全体講評を一部抜粋してご紹介いたします!
非常に楽しく、拝見させてもらいました。3日間でここまでの内容を仕上げたら本当に素晴らしいと思います。 卒業後の進路で就職なのか、起業なのか分からないですが、そこでもぜひ活かしてもらえると思います。
皆さんが起業されるか分からないですが、ぜひ検証されてみてもいいのかなと思うアイデアでした。投資家目線で聞かせていただきましたが、実際の顧客像を想定して考えられており、その悩みに対して世の中で新しいアプローチという仮説を提示されているなど、プレゼンの仕方がすごくよかったです。私自身、さまざまな起業家のプレゼンを聞いてきましたが、顧客像が鮮明でない場合もあります。顧客像が鮮明ではないと、解決策が本当に刺さるか分からないことも多々ありますが、本日のプレゼンでは3チームともそれがなく、とても優秀だと思ったのが率直な印象です。
審査員の中でも学生起業家枠として、自分が起業して一緒にチームでやるならばどうだろうという視点でコメントさせていただきました。全体を通して半端なくクオリティが高いです。スライドを見ると、例えば年間売上や固定費用などのフェルミ推定が記載など細かいところまで考えられており、おそらくプレゼン時間が足りないくらいではと思いました。全チームとも、本プログラム終了後3か月間程度でアイデアをブラッシュアップしたら事業としてうまくいきそうだなと思いました。
想像以上に全チームが本格的で感動しました。 技術的なハードルの高さと特許の取得可否に加え、ビジネスモデルとマーケティングの双方向から成長戦略をどこまで描けるかが成功の分かれ目になりそうです。ただし、いずれのチームも3日間でここまでの形に仕上げることができるのは、純粋にすごいと感心しました。
優勝は【Eチーム】!
各チームともに僅差となりましたが、北村氏より優勝チームを発表いただき、小笠原 匡隆弁護士より賞金を贈呈されました。
M・Sさん
本当に沢山の学びを得て、成長できた。
未知の分野であった法規制分野に関する理解は勿論、自身の弱みと強みがこの経験を通して更に明確になったことが大きい。弱みを克服することにおける限界も知ることができた。また、法曹の世界を知れたこと自体がとても貴重だ。今まで全く知らなかった世界に飛び込み、行動力を身につけた。懇親会を通しても、社会で活躍されている弁護士の方と沢山お話しさせていただき、新たな問題や、社会についての理解も深まった。
S・Sさん
私はビジコン経験もありませんし、これまでチームで法的課題について考えたこともありませんでした。チームで成果物を作成することが楽しいことであることに気付き、将来弁護士業務をすることを楽しみに感じています。また、試験科目となっていない個別法についての基本書を見ることも初めてでした。このような基本書を読む中でも、基本六法の知見が生かされること気づき、自分がこれまでやってきた学習と将来の業務が繋がった気がしました。
R・Tさん
これまでの大学生活でビジネスについて考える機会はあまりなかったが、今回のLegal Campでスタートアップの精神や思考法の端緒に触れ、起業家はこのように考えるのだ、ということを知ることができた。これからはその視点を持って日々生活していこうと思う。そうすることで、起業家や経営者的思考を身につけ、将来、経営者に寄り添うことのできる弁護士になることを目指したい。
R・Iさん
今後はチームの仲間と起業してみることを考えているため、ZeLo Legal Campで考えたプランを承継しつつ、改善しながら成功させていきたいと考えている。
ZeLo Legal Camp 2024の締め括りとして、担当弁護士よりメッセージをいただきました。
私たちは、弁護士という仕事が担う未来の可能性やこれからの社会で弁護士が果たすべき役割について、多くの方々に体感していただきたい思いから、法律事務所としてビジネスコンテストを開催しています。
この数年間で、社会におけるスタートアップの存在感は飛躍的に高まりました。政府は日本発のスタートアップ育成に力を注ぎ、大学もスタートアップを支援し、何よりも起業を志す若く優秀な人材が驚くほど増えています。
しかし、新規ビジネスは常に「法律の壁」との戦いです。
スタートアップが直面する法規制は、ビジネスの成長を大きく左右します。私たち弁護士は、スタートアップが法規制と対峙したとき、強力なパートナーとして信頼される存在でなければなりません。私たちZeLoの弁護士は、スタートアップの挑戦を法務の観点から支えています。 法律を単に守るべきルールと捉えるのではなく、理解し、乗り越え、変えていく。スタートアップとともに、私たち弁護士も社会に新たな価値を生み出す役割を担っていく。
ZeLo Legal Campは、このプロセスの面白さとやりがいを実感していただく絶好の機会だと思います。今回ご参加いただいた方々は、3日間のプログラムを全力で駆け抜けてくれました。また、参加者の皆さんが議論を深め、熱意をもって社会課題に果敢に挑戦する姿は、私たちにとっても非常に刺激的でした。
私たちZeLoは、今後もこのプロジェクトを続けていきます。ZeLo Legal Campで得られる経験が、弁護士という仕事に新たな視点をもたらし、未来のキャリアを考えるきっかけとなることを願っています。
(文・編集:阿部 あかり、ZeLo LAW SQUARE 編集部)