組織課題を解決できる伴走者を目指して。弁護士と社会保険労務士でスタートアップ企業の支援を
法律事務所ZeLo・外国法共同事業では、人事労務部門(労務チーム)を設立し、企業規模やフェーズ、労働環境などに合わせて、労働保険・社会保険手続業務の代行から、就業規則その他諸規程の作成・レビュー、人事制度設計支援まで、迅速かつ質の高いサービスを幅広く提供しています。本記事では、ZeLoの労務チームを立ち上げ、統括する藤田豊大弁護士と、チームメンバーの社会保険労務士の髙谷琴水さん・河野千怜さんの3名に、チーム立ち上げの経緯や法律事務所で人事労務のエキスパートとして働くやりがい、今後のチームの姿について聞きました。
2010年一橋大学法学部卒業、2012年一橋大学法科大学院修了。2013年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、同年岡本政明法律事務所入所。2014年弁護士法人レイズ・コンサルティング法律事務所入所。2022年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は人事労務、訴訟/紛争解決、ジェネラル・コーポレート、ベンチャー/スタートアップ法務、M&A、IPO、危機管理、データ保護、事業再生/倒産など。
2014年社会保険労務士試験合格。社会保険労務士事務所勤務を経て2023年法律事務所ZeLo参画。スタートアップから上場企業の労務相談、給与計算、就業規則等諸規程の作成・改訂、社会保険・労働保険の手続業務全般に従事。
目次
労務専門法律事務所でのキャリアを活かしてチームを新設
――ZeLoで労務チームを立ち上げた経緯を教えてください。
藤田:私はもともと労務を専門に扱う法律事務所で弁護士活動を行ってきました。スタートアップ企業のクライアントの支援をすることもありましたが、当時から、大企業の雇用慣行を前提とした日本の労働法制と多くのスタートアップ企業がもつ組織人事観が合っておらず、解決すべき特有の労務課題が多くあると感じていました。
縁あってZeLoに入所することになり、その際、ZeLoであればスタートアップ企業の労務課題を解決することを専門に扱うチームを作り、よりスタートアップ企業にフィットしたサービスを作ることができると感じました。そこで、ZeLoへの移籍と同時に労務チームを立ち上げることになりました。
――チーム立ち上げ後、どのように拡大していったのでしょうか。
藤田:チームを立ち上げた後、スタートアップ企業における中途採用に起因する労務トラブルなどを多数対応し、実際、私の経験を活かすことができる機会は多いと感じました。
スタートアップ企業の労務相談ニーズの多さを実感するとともに、より広い範囲でクライアントの労務の課題解決をしたいという思いから、社会保険労務士(社労士)の力が必要だと強く感じました。というのも、設立間もない企業のお役に立つためには社会保険関連の業務は欠かせず、また、IPOを目指す企業のために労務デューデリジェンスを行うにあたっても、社労士の方がよくチェックできるトピックもあるからです。
前職の経験から、労務を専門に扱う弁護士と社労士が協力することで一定のシナジーが生まれることを実体験として感じていました。そこで、社会保険労務士事務所ZeLoを設立し、社労士2名を新たにメンバーとして加え、サポート体制を強化しました。
スタートアップ企業を中心に、チームで連携して日々の労務相談から労務体制の構築、紛争対応まで
――ZeLoの労務チームでの業務について教えてください。
藤田:まずは、ZeLoの顧問先の労務相談を全般的にお請けしています。1人で対応することはあまり多くなく、基本的に2人体制で対応しています。
複数名の目を通すことでサービスの質を維持し、かつ案件を通じて知識やノウハウをシェアしやすくしています。
ご相談の内容としては、就業規則をはじめとした労務関連規程の作成・レビューや、問題社員対応・ハラスメント・人事権の行使・懲戒権の行使・休職・賃金制度・人事制度等に関連した労務相談が多いです。
次にZeLoの労務チームの特色にはなるのですが、スタートアップ企業のクライアントをメインにしているため、IPOに向けた労務体制整備のご相談が多くあります。具体的には労務デューデリジェンスや、上場審査に向けた労務管理体制の改善支援の業務です。その一環として、労働時間管理やハラスメントに関する社内研修の講師のご依頼をいただくこともあります。
また、クライアントによっては、特殊な働き方や労働時間制度の利用を希望されることもあり、そのような場合には、クライアントの希望を聴き取りながら考えられる選択肢を提案して選んでいただきつつ、最終的には就業規則や労使協定等の規程類に落とし込み、場合によっては規程類の届出をするところまで対応しています。
スタートアップ企業の中には、柔軟な発想をもって従業員の働き方を設計する企業もあり、それをどのように労働法制と適合させ実現するかを考えるのは、難しくも楽しい仕事です。
高谷:社労士のみが対応する業務としては、まずは、社会保険・労働保険手続業務があります。
また、これから労働時間管理をしっかりとやっていこうというスタートアップ企業へアドバイスをすることもあり、その場合、勤怠管理をどのように行っていくべきか、ツールとして何を選定すべきか、給与計算はどのシステムを利用するか、などの相談をお請けしています。
初期的な労務管理体制の構築に関するコンサルティング業務といえますが、IPOを目指す企業には、この段階からIPO審査を見据え、望ましいツールやシステム、労務管理体制についてのアドバイスをしています。
藤田:弁護士のみが対応する業務としては、紛争対応になります。代理人としての交渉や、労働審判・訴訟はもちろんのこと、労働組合との団体交渉にも対応しています。
――スタートアップ企業向けの労務に関するリーガルサービスの特徴や、大企業・中小企業向けのサービスとの違いはありますか。
藤田:起業して間もない企業と接することが珍しくないため、はじめて人を雇う、これから新しく就業規則を作る、人事制度の導入を考えている、というゼロイチフェーズ特有の相談が多いのはやはり特徴的な部分かと思います。
また、既に述べたとおり、IPOを目指している企業の労務体制整備の支援も特徴的な業務です。労務管理体制があまり確立していない状態から上場審査に耐えうる体制にするためには、専門家の支援が欠かせません。重要なポイントは特に深く検討しつつ、かつ、比較的広範なスコープでレビュー作業を行うため、労務チームとしての総合力が問われるところでもあり、大変ですがやりがいがある業務です。
更に、スタートアップ企業の組織人事の課題を考えるときの重要な視点は、大企業・中小企業と比べて、中途採用で一気に人員を拡大することが多い点だと考えています。
それに関連して起きる典型的な労務トラブルも、いくつかパターンがあるのですが、代表的な類型は、中途採用したハイレイヤーな人材が期待した水準のパフォーマンスを発揮しないケースです。
このような場合に、企業側の対応策としてどのような手段があるか、各手段が成功する可能性、コスト、リスクなどについて総合的にアドバイスしたうえで、案件ごとの特殊性も踏まえた進め方に至るまで、比較的詳細なアドバイスをしています。
この点と関連して、ハイレイヤーな人材と企業のミスマッチに備えて、企業側において事前に準備できることも一定程度あると考えていて、それも今後サービス化していきたいと思っています。
私たちがチームで共通して持っている想いは、一つでも多くのスタートアップ企業が人の問題で挫折せず事業を成長させて欲しいということです。
心理的安全性の高いチームで活発なコミュニケーション
――チームの雰囲気や、チームとしてのコミュニケーションを普段どのように図っているか教えてください。
河野:チームの雰囲気は非常に和やかです。SlackやChatworkを通じてテキストベースでコミュニケーションをとることも多いですが、近くの席で執務していますので、口頭で相談することも多いです。
また、労務チーム全体の会議や、1on1(1対1での面談)の場が定期的に開催されているので、コミュニケーションを取る機会は結構多いと思います。
労務チーム全体の会議では、サービスの設計や展開方法など、チームの全体の方向性を話し合っています。「若手だから」というような理由で議論に参加する機会が制限されることはありません。メンバーは論理的かつ柔軟な方なので、勉強させてもらう機会も多いです。
1on1では、業務の繁忙状況や困っていることを共有するほか、業務上のフィードバックを行ったり、個々人がプレイヤーとして成長するための時間としても使用したりしています。
また、自身が目指しているキャリアや、今後の目標をお話しすることもあります。
私が社労士としてのキャリアをよりよいものにしていくために、自分の目標やプロセスを言語化する機会にもなっています。定期的にその機会を得ることで、日々の業務にも前向きに取り組むことができていると感じます。
さらに、理想に近づくために必要なこと、例えば業務で意識すべきことや勉強方法のアドバイスをいただけることもあり、ありがたく感じています。
――事務所全体のナレッジシェアの文化がチームにも浸透
高谷:労務チームに限らず、事務所全体でナレッジシェアの文化があるため、チーム内でも知識やノウハウの共有は積極的に行われています。
相手が知らないことは積極的に教えあうことが当たり前になっているので、業務のクオリティが低いことが許容されるわけではないものの、知らないことを知らないと言いやすい雰囲気です。
社労士として労務相談を受けていると、どうしても自分の専門範囲では判断ができない、裁判所における判断の予測や微妙な法律の解釈について悩むこともあります。そのような場面であっても、労働法専門の弁護士と話ができる環境は自分の成長につながっていると思います。
ZeLoの労務チームは心理的安全性が高いチームと思っていますし、この雰囲気を今後も継続させたいと思っています。
ZeLoの労務チームにおける教育体制やキャリアパスについて
――社労士の資格はお持ちでも業務未経験の方もいらっしゃるかと思います。どのような教育体制を取っていますか。
河野:手続業務については、先輩の社労士が丁寧に教える体制になっています。2人体制で業務遂行をしつつ、1人でも業務を進められるようになるよう、分からないことの調べ方、参照している手引きや書籍も共有するようにしています。
藤田:私見ですが、社労士として業務を遂行するにあたり、法律家としてドキュメンテーション(文書化)作業の基礎を覚えたり、民法などの労働法以外の基本的な法律を学んだり、契約書のレビューに取り組んだりすることは有益だと考えています。
弊所では社労士の業務として、就業規則や雇用契約書の作成・レビューのご依頼をいただくことが多いのですが、これらを適切に行うには、包括的な労働法の知識に加えて、法律文書を作成するスキルや、民法等の基本的な法律の知識も必要だと考えるからです。
業務経験が浅く不安な方については、ZeLoでは、本人が望めば、まずはパラリーガルとして、契約書のレビュー作業に従事して法律家としての足腰を鍛えつつ、慣れてきたら社労士として就業規則や雇用契約書のレビューにも携わってもらう、というステップを踏んでいただくことも可能です。
一定の基礎が身についたら、基本的にはOJTが最も効率よく実務に即した知識が身に着くと考えています。特に労務相談や就業規則等の規程類の作成業務は個別性が高く、座学で事前に網羅的な勉強をすることは難しいと思います。
まずは先輩の社労士や弁護士の補助として働き、自ら考えながらクライアントの相談に取り組み、業務遂行の過程や相談終了後に先輩からフィードバックを得ることで実践的な知識を身に着けていただくことができますし、ZeLoではそのような機会を豊富に設けています。
加えて、弊所ではリーガルテックツールを積極的に利用しており、それは労務チームにおいても例外ではないです。実際に、労務チームにおいてもLegalForceをはじめとしたリーガルテックツールを利用して業務を効率化しています。
専門家が業務にAIを利用する流れは不可逆的に進行すると思いますが、ZeLoの労務チームは人事労務業務にリーガルテックツールを用いる存在としても最先端でありたいと思っています。
ZeLoの労務チームで一緒に働くことで、リーガルテックツールの有効な利用方法や付き合い方についても学べますので、リーガルテックツールやAIにも明るい人事労務の専門家を目指す方にも適切な環境になっていると思います。
――労働法務を取り扱うにあたり、どのようなスキルが必要ですか。また、心がけていることも教えてください。
藤田:経営側で労働法務を扱う弁護士は、弁護士としての基本的な能力に加えて、クライアントのビジネスを理解する能力、事業と組織の繋がりを理解する能力や好奇心、経営者や担当者の心情に共感する力があると望ましいと考えています。
また、クライアントに共感しつつも、個別事案では冷静に事案の内容を見極めて判断し、アドバイスする力も重要だと考えています。労働法は会社側に厳しいため、クライアントには厳しい意見を伝えなければいけないときもあります。伝えるべきことを伝えつつ、クライアントと良好な関係を維持する関係構築力や説得力も重要だと考えています。
高谷:社労士も基本的な法律の理解が重要です。複数の法律が関係してくることもありますので、点で覚えるだけではなく、関係する法律を柔軟に関連づけて考えることができるくらいまで理解を深めておくことが望ましいです。
法律の知識があることは前提として、目の前の課題をどう理解するか、クライアントの要望は何か、をよく考え理解することも重要です。
クライアントとの関係は、人と人との関係ですので、伝え方、伝えるタイミングにも配慮が必要だと考えています。正しいことだけをただ伝えればよい訳ではなく、相手に伝わらなくては意味がないと考えています。そのため、法律の知識と同じくらい、円滑にクライアントとコミュニケーションをとる能力が大切であると考えています。
労務に限らず組織課題全般でスタートアップ企業に信頼される伴走者を目指して
――今後、チームをどのように成長・発展させていきたいと考えていますか。
藤田:スタートアップ企業が組織の課題を解決したいとなったときに、最も必要と思われる存在になりたいと考えています。組織人事・労務の課題解決においてベストな伴走者でありたいです。
労務だけでなく「組織」という言葉を使っているのは、中長期的には「労務」に限定せず、スタートアップ企業の「組織」課題全般を支援するような存在になれたらよいと考えているからです。
起業家やスタートアップ企業の世界に飛び込んだ人達は、それぞれ皆、世の中にある社会課題を解決して、世界がよりよいものになるようにと日々努力しチャレンジしています。私たちは、そんなスタートアップ企業が組織課題を解決するためのベストな伴走者として、多くのスタートアップ企業の成長に寄与し、一緒に世界をより豊かにしていきたいです。
――そのために、どのような方にチームに加わってほしいですか。
藤田:自分のためだけでなくクライアントやチームのために頑張れる方や、新しいことへのチャレンジが好きな方は、ZeLoの労務チームに特に合うと思っています。
弁護士に関していえば、優秀さと同じくらい重要なのが、ZeLoや労務チームの目指す目標に共感していただけるかです。前述のとおり、スタートアップ企業の多くは労務課題を抱えており、弁護士が貢献できることは非常に多いです。未開拓の領域ともいえますので、既存の発想にとらわれず、クライアントファーストな価値観で動ける方を求めています。
社労士に関しても、勉強熱心であり、新しい領域へのチャレンジを積極的に楽しめる方が合うと思います。
私は、社労士の知人が多くいますが、以前から、社労士の方は勉強熱心で人格的にバランスのとれた方が多いと感じています。今一緒に働いている髙谷さんや河野さんも尊敬できるメンバーで、いつも業務を通じて様々なことを学ばせてもらっています。
ZeLoにはチャレンジを是とするカルチャーがあるので、社労士として自らの可能性を制限せず、新しいことをやりたいと思うタイプの社労士の方に、ZeLoの労務チームは合っていると思っています。
弁護士であれ社労士であれ、得意なことは人それぞれです。アカデミックな興味が強く学者のような探求心がある方、情報処理能力が高くアウトプットが安定している方、対人コミュニケーション能力が高くクライアントの信頼を得ることに長けている方、メンタルが強くクライアントの不安を受け止める力が強い方…。
ZeLoはチームで仕事をしているので、1人で全てのことができる必要はないと考えています。
ご自身の長所を活かして、スタートアップ企業の組織課題を解決するベストチーム創りに携わってくださる方からのご応募を心よりお待ちしています。
※掲載内容は掲載当時のものです(掲載日:2024年04月11日)
(取材:法律事務所ZeLo人事採用チーム、編集:ZeLo LAW SQUARE 編集部、写真:根津佐和子・法律事務所ZeLo人事採用チーム)