インドネシア政府、電子システムを運用するインドネシア国外の民間電子システムオペレーターにデジタル・プラットフォームの登録を義務付け
インドネシア政府は、民間のデジタルプラットフォームやアプリを通じてサービスを提供する企業に対し、通信情報大臣規則2020年5号 に基づく登録を義務付けました。この義務は、国内外を問わず適用され、登録を行わなかった場合、プラットフォームのブロックや行政制裁を科せられる可能性があります。本規則について、法律事務所ZeLo・外国法共同事業のFiesta Victoriaインドネシア法弁護士(日本では未登録)が、概要や対応を説明します。
2006年ペリタ・ハラパン大学卒業。2019年法律事務所ZeLo参画。 主な取扱分野はM&A、ジェネラル・コーポレート、人事労務、フィンテックなど。 インドネシア支持者協会PERADIのプロフェッショナル会員であり、執筆も数多く手掛けている。ALB Women in Law Awards 2021 - Business Development Lawyer of the Year を受賞。
2009年慶應義塾大学法学部卒業、2011年東京大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2013年外国法共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所に入所し、国内・クロスボーダーのM&A /コーポレート/競争法案件等に従事。2019年Columbia Law School LL.M.修了、米国ニューヨーク州司法試験合格(2022年登録)。2019年より外務省国際法局経済条約課勤務(〜2021年、任期付職員)。2022年法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、M&A、競争法、危機管理・コンプライアンス、ルールメイキング/パブリック・アフェアーズ、不動産、規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などにも多数従事。
民間電子システムオペレーターへの規制概要
イ ンドネシア通信情報省(Ministry of Communication and Information Technology:以 下「MOCI」といいます。)は、民間の電子システムオペレーター(Electronic System Operator:以下「民間ESO」といいます。)に対して、通信情報大臣規則2020年5号[1]に基づく登録を義務付けました。民間ESOとは主に、デジタルプラットフォームやアプリを通じて下記のサービスを提供する企業をいいます。登録を行わない場合は、MOCIによるプラットフォームのブロックや行政制裁を科せられる可能性があります。
- インドネシア国内でサービスを提供している
- インドネシアで事業活動を行っている
- インドネシア国内で使用または提供される電子システムを保有している
この登録義務は、インドネシア国内の民間ESOだけでなく、インドネシア国外で設立され、外国法に準拠している、もしくはインドネシア国外に恒久的住居を有している、上記の外国民間ESOにも適用されます。
登録義務の対象となる外国民間ESOについて、上記以上の具体的な基準は定められていないため、上記に該当する外国民間ESOには、規模や潜在的なリスク、活動の種類にかかわらず、登録義務が発生することになります。
民間ESO規制の背景
この規制は、デジタルプラットフォーム、ウェブサイト、アプリのサービス・プロバイダーが、消費者、個人情報、デジタル空間およびプライバシーの保護を含むインターネット利用者のための安全性を強化するために、消費者情報の保護対策を確保することを目的としたものです。
民間ESOとは?
通信情報大臣規則2020年5号は、電子システムを運営する個人、企業体、共同体を民間ESOとして広く定義し、特徴として以下のものを掲げています。
- 法令に基づき、大臣または機関によって監督されているもの。
- オンラインポータル、ウェブサイト、アプリケーションを介して、次に掲げるサービスを提供しているもの。
- 商品またはサービスの提供、管理・運営
- 金融取引サービスの提供、管理・運営
- ポータルサイトからのダウンロード、電子メールによる配信、他のアプリケーションからユーザーデバイスへ配信する方法を含む、データネットワークを通じた有料のデジタル商材またはコンテンツの配信
- デジタルプラットフォーム、ネットワーク、ソーシャルメディアサービスにおけるショートメッセージ、音声通話、ビデオ通話、電子メール、オンラインチャット形式での通信サービスの提供・管理・運営
- 検索エンジンの管理、テキスト、音声、画像、アニメーション、音楽、ビデオ、映画、ゲームまたはそれらを組み合せた形式での電子情報の提供
- 電子取引に関連した社会奉仕に資する業務活動のための個人情報の処理
現在の登録状況と行政制裁
登録義務に従わない場合、アクセスのブロックを含む行政制裁を受ける可能性があります。
2022年6月に発行されたMOCIの通達において[2]、民間ESOは2022年7月20日までに登録すべきことが発表され、この通達によりこれまで不明だった登録期限が明らかとなりました。
現時点では、外国民間ESOのプラットフォームの多くは未登録のままです。2022年8月1日の報道では、最も有名なオンライン決済プロバイダーの1つであるPayPalがMOCIによって一時的にブロックされた後、ようやく登録を完了したことが報じられました[3]。MOCIは、おそらく今後も登録要件を遵守していない他の民間 ESO に対しても、よく使われているものから順番に制裁を命じていく可能性があります。
そのため、民間ESOに該当する企業は、自社のウェブサイトや、アプリ、プラットフォームがインドネシアでブロックされるリスクを回避するために、自社の活動を確認し、この登録義務に従うことが推奨されます。 2022年9月29日(午後6時)時点のMOCIのウェブサイト(https://pse.kominfo.go.id/home)によると、登録を完了しているインドネシア国内の民間ESOは10,437社、外国民間ESOは423社となっています。また、MOCI は一時的にブロックされている外国民間 ESO のリストも公表しており、同時点で18社がブロックされている模様です。
この件に関して、ご質問やサポートが必要な場合は、当事務所までご連絡ください。
[1] 電子システムおよび取引の提供に関する政府規則2019年71号および通信情報大臣規則2021年10号により改正された民間ESOに関する通信情報大臣規則2020年5号(以下「通信情報大臣規則2020年5号」といいます。)
[2] 民間ESO登録の発効日に関する通信情報大臣通達2022年3号
[3] https://money.kompas.com/read/2022/08/03/202945126/sempat-diblokir-kominfo-paypal-kini-resmi-terdaftar-pse-di-indonesia.
本記事は、当事務所のFiesta Victoria 外国弁護士(インドネシア、日本では未登録)による英語記事“ INDONESIAN GOVERNMENT REQUIRES FOREIGN PRIVATE ELECTRONIC SYSTEMS OPERATORS TO REGISTER THEIR DIGITAL PLATFORMS”の和訳記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
本記事の情報は、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もないものであって、一般的な情報提供のみを目的とするものです。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。