インドネシアの土地登記制度のデジタル化
インドネシア国家土地庁(Badan Pertanahan Nasional Indonesia:「BPN」)は、一般に利用できるよう、デジタル化された土地登記サービスの全面的提供の準備を進めています。2021年1月12日、インドネシア農務省(BPNの監督官庁)は、デジタル土地証明書に関する新たな2021年規則第1号(「2021年規則1号」)を公表し、同日に発効しました。
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。
2021年規則1号が公表されるまでは、BPNのデジタル化は一部しか進んでいませんでした。2020年以降、BPNは、オンラインで利用できる土地関連サービスをいくつか開始しています。これには、①電子的な抵当権(Hak Tanggungan)の登録、②土地登記クリアランスレター(Surat Keterangan Pendaftaran Tanah:「SKPT」)の発行(このレターは通常、当事者が、土地を対象に含む取引に参加する前に行われる土地に関するデューデリジェンスの中で必要とされるものです。)、③土地価値ゾーン(ZNT)メカニズムを利用した、土地の価値に関する情報の提供が含まれます。
これまでは、インドネシアの土地登記制度には問題があると思われてきました。土地証明書の偽造などの汚職や、犯罪行為がしばしば発生し、外国からの対インドネシア投資を妨げてきました。
このオンライン土地登記システムのセキュリティや、オンライン登記データのセキュリティについての懸念が指摘されているところではありますが、インドネシア政府による土地登記サービスのデジタル化の取組みは、システムが適切に導入されれば、これらの潜在的問題の解決に資することが期待されています。
デジタル化(電子化)された土地登記
新システムが目標とするのは、今後の全ての土地登記手続を電子的に行うことですが、導入は段階的に行われます。最終的には、縮尺図(gambar ukur)・土地区画図(peta bidang tanah)・空間図(peta ruang)・ELCなど、全てのデータや土地に関する文書が、電子的に処理・記録されることになります。
デジタル土地証明書(Electronic land certificates:「ELC」)
オンラインでの土地登記手続が完了すると、土地の権利、所有権、売買や抵当権(Hak tanggungan)設定や寄贈(waqf)(イスラム法に基づく慈善目的の遺贈・寄付)などの取引の記録としてELCが発行されます。
2021年規則1号によって定められた一定の要件を満たし、BPN での申請手続を完了すれば、2021年規則1号の発行前に発行された土地証明書の書面による原本を、ELC と交換することができます。申請が承認されると、書面による証明書の原本はスキャンされ、BPNのデータベースに保存されます。
2021年規則1号に基づき、土地に関するデジタル書類(それを印刷したものも)は、裁判所での証拠として効力が法的に認められることになります。
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本記事は、当事務所のFiesta Victoria 外国弁護士(インドネシア、Not admitted in Japan)による英語記事 “INDONESIA’S LAND REGISTRATION PROCESS GOES DIGITAL” を野村諭弁護士が和訳した記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
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