インドネシアが「外国公文書の認証を不要とする条約」を批准
弁護士・ニューヨーク州弁護士、国際法務部門統括
野村 諭
インドネシア法弁護士
フィエスタ ヴィクトリア
インドネシアにおける海外のEコマース事業者に対する規制については、2023年の新規則(MOT商業大臣規則2023年第31号)によって、それまでの2020年の規制(MOT商業大臣規則2020年第50号)が全面的に置き換えられ、規制内容について、大幅な更新が行われました。この更新された枠組みは、現在のマーケットの状況とEコマースモデルの多様化を反映して、マーケットプレイスの明確な類型化が行われ、ソーシャルコマースに該当するビジネスを定義して具体的な規制を及ぼすなど、より明確で実務的なガイダンスを提供しています。本記事では、主な変更点とそれがビジネスに与える影響について概説します。
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラルコーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。
2020年、インドネシア共和国商業省(MOT)は、前年に公布された電子商取引に関する政府規則2019年第80号の施行規則を発表しました。
この商業大臣規則2020年第50号(MOT50/2020)は、インドネシア共和国商業省(MOT)が、電子システムを通じた取引における事業の許認可、広告、開発および事業者の統括に関して定めたものでした。
この施行規則によって、外資系電子商取引プラットフォーム・プロバイダ、オンライン仲介サービス・プロバイダ、外資系オンライン業者に対して、ライセンスの取得や登録要件などの遵守を義務付けていて、外資系の電子商取引企業がインドネシアでビジネスを行う際の要件を規定していました。
ところが、このインドネシアの商業大臣規則2020年第50号は、電子システムを通じた取引における事業の許認可、広告、開発および事業者の統括に関する規定を定めた商業大臣規則2023年第31号(MOT31/2023。2023年9月26日に施行)によって廃止されました。
商業大臣規則2023年第31号(MOT31/2023)は、突き詰めれば、それによって廃止された商業大臣規則2020年第50号(MOT20/2020)の改良・更新版といえます。これは、現在のマーケットの状況と進化したEコマースビジネスの類型を反映して、より明確な規則を設けています。例えば、マーケットプレイスを明確に類型化し、ソーシャルコマースに関するより具体的な規制を導入し、新しいデジタルビジネスモデルに対応しています。
商業大臣規則2023年第31号(MOT31/2023)は、先行する商業大臣規則2020年第50号(MOT50/2020)と同様に、以下に規定する条件に該当する外資系電子商取引プラットフォーム・プロバイダに対し、インドネシア国内に電子商取引分野の駐在事務所(外資系商社代表者駐在事務所。Kantor Perwakilan Perusahaan Perdagangan Asing Bidang Perdagangan Melalui Sistem Elektronik、「KP3 Bidang PMSE」)を設けることを義務付けています。
さらに、任命された現地駐在員は、電子商取引分野における営業許可証(外資系商社代表者営業許可証。Surat Izin Usaha Perwakilan Perusahaan Perdagangan Asing di Bidang PMSE、「SIUP3A」)を取得することが求められます。
当該条件については、以下のいずれかに該当する場合ですが、(c)項が追加されています。
- (a) 1年の期間内に、1,000人を超える消費者[2]への販売がされる場合
- (b) 1年の期間内に、1,000個を超えるパッケージの消費者への出荷がされる場合
- (c) 1年の期間内に、国内インターネット利用者の少なくとも1%に相当するトラフィック量または利用者数を有する場合
上記に加えて、海外および国内の電子商取引プラットフォーム・プロバイダは、通信情報省に電子システムの登録をする必要があります。また、適用される輸入・輸出規制、および情報・電子取引に関する規制など、当該規定に定められたその他の要件を遵守する必要があります。
従来の商業大臣規則2020年第50号(MOT50/2020)では、インドネシア国内の電子商取引プラットフォーム・プロバイダを介して取引を行う外資系オンライン業者のみが、関連するインドネシアの電子商取引プラットフォーム・プロバイダに、本国当局から得ている事業に関する許認可等を提出する必要がありました。
これに対し、商業大臣規則2023年第31号(MOT31/2023)では、要件が拡大され、外資系オンライン業者に取引の場を提供する国内電子商取引運営者(PPMSE)を通じて電子商取引(PMSE)活動を行う外資系業者に対して、以下に記載する詳細な規制が及ぶこととなりました。
a. 外資系業者の特定に必要な情報。名称や本国における住所などです。
b. 外資系業者の本国における管轄当局が発行した事業許認可。以下のいずれかによって認証されている必要があります。
- アポスティーユ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)の締結国の場合は、その国の管轄当局。
- アポスティーユ条約を締結していない国の場合は、当該外資系業者の本国にあるインドネシア共和国の正式な代表者。
c. 該当する物品・サービスに関する必須基準や技術要件を遵守している事のエビデンス。以下の内容からなります。
- インドネシア国家規格(SNI)や、必須の技術要件の適用対象となる物品・サービスについては、SNIまたはその他の必須の技術要件の遵守。
- インドネシアでの必死な基準がまだ存在しない物品・サービスについては、本国における規格や技術要件の遵守。
- 関連する法令によりハラールであることが義務付けられている物品・サービスについては、ハラール証明書。
d. 取引に使用される銀行口座番号。
これらの情報は、当該外資系業者に取引の場を提供する国内電子商取引運営者(PPMSE)に提出されなければなりません。
上記の要件に加えて、国内電子商取引運営者(PPMSE)を通じてEコマースを行う外資系業者は、以下の事項を遵守する必要があります。
a. 取引される物品やサービスの記述において、明確なインドネシア語を使用すること。
b. 物品やサービスの出荷元の国に関する情報を表示すること。
上記の(1)aおよびbに基づき提出される事項は、データの正確性を検証する、外資系業者の本国にある独立した検査機関によって発行された証明書や検査報告書を添える必要があります。
外資系業者が上記の要件を満たさない場合、外資系業者に取引の場を提供する国内電子商取引運営者(PPMSE)は、その業者の登録申請を拒否しなければなりません。
なお、自ら管理・運営するEコマースプラットフォーム、または現地の第三者Eコマースプラットフォーム・プロバイダーを通じてEコマース活動を行う外資系オンライン業者に対しては、現地の事業許認可を取得する明示的な義務はありません。
以前の商業大臣規則2020年第50号(MOT50/2020)と同様に、免除対象外のすべての[5]海外仲介サービス・プロバイダー(Foreign Intermediary Services Providers)は、電子商取引分野の事業許認可(PMSE分野の事業許可:Perizinan Berusaha Bidang PMSE)を取得することが義務付けられています。
以下に、商業大臣規則2023年第31号によって導入された主な変更点をまとめました。
| 項目/側面 | 商業大臣規則2020年第50号(MOT50/2020) | 商業大臣規則2023年第31号(MOT31/2023) |
|---|---|---|
| 目的 | Eコマースの事業認可と監督を規定する。 | 現在の市場環境を反映するための規制の更新および強化:消費者の保護、国内の中小零細事業者の支援、およびPMSEセクターにおける公正な競争の確保。 |
| 定義と範囲 | 電子商取引およびプラットフォームを構成する要素についての、より一般的かつ詳細さをそぎおとした定義 | より明確かつ詳細な定義の導入:例えば、「マーケットプレイス(lokapasar)」や「ソーシャルコマース」といったビジネスモデルを定義。さらに、適切な規制と監督を行うために、PMSE事業者の種別を明確に区別している。[6] |
| ソーシャルコマース | SNSベースの販売モデルに対する規制が不明確。 | 明確な規制を導入。ソーシャルコマース・プラットフォームは、電子システム内での決済取引の促進(決済ゲートウェイ機能)を禁止される。 |
| 越境取引 / 商品を輸入する海外販売業者 | 外国業者への規制はあるが、具体的な閾値や厳格な要件は限定的。 | より厳格な措置の導入:越境Eコマースを通じて外国業者がインドネシアへ直接販売する完成品に対し、1商品単位あたり100米ドルの最低価格を設定。また、外国業者に対し、本国における適法な事業証明の提示、インドネシア国内規格(SNIや、必要に応じたハラール認証など)への準拠、製品へのインドネシア語表記のラベル貼付、および原産地・出荷地の申告を義務付けている。 |
| マーケットプレイス/プラットフォームの義務 | PMSE事業者としての登録義務はあるが、データ管理や公平性に関する義務は緩和されている。 | プラットフォーム事業者は、事業許認可登録(OSSシステムとの連携)を促進し、公正な競争を確保し、ユーザーデータの悪用を防止しなければならない。また、自らが製造者(プロデューサー)として活動することは禁じられる。 |
上記に関して、さらにご関心がございましたら、こちらからご連絡ください。
[1] 「電子商取引プラットフォーム・プロバイダ」とは、電子商取引で用いられるコミュニケーションや取引を促進するプラットフォームを提供する電子商取引の関係当事者をいいます。
[2] 「消費者」とは、自己、家族、他人またはその他の生物の利益のために、社会において利用可能な商品やサービスを利用する者であって、商業目的で再販売する者を除くものをいいます(商業大臣規則第31/2023号第1条第22号)。
[3] 自ら構築・運営する仕組み、電子商取引プラットフォーム運営者が提供する仕組み、または電子商取引を可能とするその他の電子システムを利用して、電子商取引を行う者をいいます。
[4] 「仲介サービス・プロバイダ」とは、電気通信事業者を除き、電子的な通信を円滑にする者をいいます。このような事業者は、単に仲介者としての役割を果たすものであり、検索エンジン、ホスティング・プロバイダまたはキャッシング・プロバイダなどが含まれます。
[5] 国内または海外の仲介サービス・プロバイダのうち、以下のいずれかの要件を満たす者については、電子商取引分野の事業許認可(PMSE分野の事業許可)を取得する義務が免除されます。
[6] https://www.antaranews.com/berita/3746568/kemendag-sebut-enam-aturan-utama-dalam-permendag-31-2023 .
本記事は、当事務所のFiesta Victoriaインドネシア法弁護士(日本では未登録)による英語記事 “Foreign E-commerce Activities in Indonesia” の和訳記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。
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