fbpx

新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(株主総会編)

法律事務所ZeLo・外国法共同事業は、新型コロナウイルスによる感染拡大を受け、臨時・緊急の対応が求められる企業法務の実務に関し、リーガルアドバイスをお伝えします。一般的に想定される質問のほか、弊所にこれまでご相談があった質問を一般化して、本記事にて回答を掲載させていただきます。今回は、株主総会編として、まず、コロナ禍に官公庁から公表された資料・見解及び、コロナ過に開催・延期対応等された株主総会を紹介しています。そのうえで、Q&A形式でコロナ過での株主総会の開催について疑問点にお答えしております。

新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(株主総会編)
GENERAL-CORPORATE
PROFILE
官澤 康平

弁護士、パブリック・アフェアーズ部門統括

官澤 康平

2011年東京大学法学部卒業、2013年東京大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、同年長島・大野・常松法律事務所入所。2019年8月法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、M&A、ルールメイキング/パブリック・アフェアーズ、ジェネラル・コーポレート、訴訟・紛争、危機管理・コンプライアンスなど。執筆に「総会IT化を可能とするシステム・技術への理解」(ビジネス法務2020年12月号)、『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)、『実践 ゼロから法務!―立ち上げから組織づくりまで―』(中央経済社)など。

島内 洋人

弁護士、AI Practice Group統括

島内 洋人

2017年東京大学法学部卒業、同年司法試験予備試験合格。2018年司法試験合格。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。クロスボーダー取引を含むM&A、ストック・オプション、スタートアップ・ファイナンスなどコーポレート業務全般を手掛けるほか、訴訟/紛争案件も担当。また、AI、web3、フィンテックなどの先端技術分野への法的アドバイスを強みとする。主な論文に「ステーブルコイン・DeFiとCBDC」(金融・商事判例1611号、2021年)、「スタートアップの株主間契約における実務上の論点と対応指針」(NBL 1242(2023.5.15)号)など。

2020年に開催された株主総会の特徴等

本稿の目的

新型コロナウイルスが猛威を振るっており、政府からも、多数人が集まるようなイベントの開催の自粛が求められている状況にあります。また、2020年4月7日には、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を実施区域とする新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言がなされ、4月16日には全国に拡大されました。しかし、会社法上、株式会社は一定の時期に株主総会を開催することが求められており、新型コロナウイルスが蔓延している現状においても株主総会を開催する必要があります。

決算期を迎えた企業としては、新型コロナウイルスの感染拡大を防止しなければいけないという要請と、適法に株主総会を開催しなければいけないという要請の狭間で、どのように株主総会を運営すべきか悩ましい問題を抱えている状況にあります。そこで、本稿では、本稿の最終更新日までに株主総会について官公庁から公表された新型コロナウイルスに関係する資料と、2020年に開催された(開催される)株主総会のうち特徴的な事例・情報を紹介した上で、5月以降に株主総会を開催する企業への情報提供を目的としたQ&Aを掲載します。

官公庁等から公表されている資料・見解

本稿の最終更新日までに、新型コロナウイルスとの関係で官公庁等から公表された株主総会に関連する資料・見解は、以下のとおりです。 

公表日
官公庁等
資料名概要
2020年
2月26日
/経済産業省
ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催する一方で、リアル株主総会の場に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加/出席することができる株主総会を実施する際の、法的・実務的論点、及び具体的取扱いを記載した資料。
2020年
2月28日
/法務省
定時株主総会の開催について当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の開催について、以下の各事項についてのお知らせを記載(数回にわたり更新)。 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて 定時株主総会の議決権行使のための基準日に関する定款の定めについて 剰余金の配当の基準日に関する定款の定めについて
2020年
4月2日
/経済産業省・法務省
株主総会運営に係るQ&A招集通知等で株主に株主総会への出席を控えることを呼びかけること、会場に入場できる株主の人数を制限すること、出席について事前登録制を採用すること、発熱や咳などの症状を有する株主の入場を断ること、株主総会の時間を短縮すること等を可能であるという見解を示した資料(4月14日、4月28日に一部更新)。
2020年
4月13日
/法務省
商業・法人登記事務に関するQ&Aコロナウイルスの影響下における登記実務についてのQ&A(5月1日に大幅更新)。5月1日更新版では大要以下の3点についてのQAが掲載されている。
Q1.定時総会を開催できない場合の改選期にある役員等の任期。
Q2.継続会を実施する場合の改選期にある役員等の任期。
Q3.計算書類等の報告、承認はせずに、役員等の改選のみを目的とした定時株主総会を開催した場合の役員等の任期。
2020年
4月14日
/金融庁
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について有価証券報告書等の提出期限について、内閣府令を改正し、個別の申請を行わなくとも、一律に9月末まで延長することを公表(4月22日に一部更新)。
2020年
4月15日
/新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応について金融庁を事務局とする連絡協議会が、企業に対して、3月期決算の場合に開催される株主総会について、以下の点を踏まえて対応することを求める。
・株主総会に係るQ&Aを踏まえ、新型コロナウイルス感染拡大防止のためにあらかじめ適切な措置を検討すること。
・法令上、6月末に定時株主総会を開催することが求められているわけではなく、日程を後ろ倒しにすることは可能であること。
・資金調達や経営判断を適時に行うために当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には、例えば、継続会の開催などの手続をとることも考えられること。
2020年
4月24日
/経済産業省
企業決算・監査及び株主総会の対応について経済産業省の大臣談話として、「企業においては、6月末に開催されることが予定されている株主総会につき、その延期や継続会の開催も含め、例年とは異なるスケジュールや方法とすることをご検討頂きたい」旨を公表。
2020年
4月28日
/金融庁・法務省・経済産業省
継続会(会社法317条)について継続会の開催についての検討も求められているところ、実例が多くないことに鑑みて、1.継続会開催の決定、2.取締役及び監査役の選任、3.剰余金の配当、4.合理的期間、5.事務遂行の在り方について、留意すべき事項が簡潔に記載された資料。
2020年
4月28日
/一般社団法人 日本経済団体連合会
新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた定時株主総会の臨時的な招集通知モデルのお知らせ株主に事前の議決権行使を促しつつ定時株主総会に来場する株主の数を一定程度限定することを想定した招集通知の記載モデルと、感染拡大防止の観点をさらに強め、原則として会場への来場をご遠慮いただくことを想定した招集通知の記載モデルの2つの招集通知モデルを公表。

2020年の株主総会の特徴等

2020年2月・3月に開催された株主総会の特徴

日本では、2020年1月28日に新型コロナウイルスが指定感染症として定められ、その影響が深刻化し始めました。2月・3月に株主総会を開催する11月決算・12月決算の上場企業は400社を超え、各社はその対応に苦慮しましたが、基本的には株主総会の開催時期を遅らせることなく、株主に対して来場の自粛を呼びかけるなどの方法で来場者数を減らし、株主総会当日の受付での対応や議事運営を工夫して公衆衛生上問題のないような対応をするように努めました。その結果、確認できている範囲では、来場者数は例年に比べて少なくなり、また、株主総会の開催時間も例年よりも短くなっているという傾向にあります。

具体的な対応方法等は後述のQ&Aで記載しますが、2020年2月・3月に株主総会を開催した会社のうち、公表されている情報等に照らして特徴的な対応をしていると思われる会社を以下に記載します。

開催日企業名特徴的な新型コロナウイルス対応
2月27日株式会社レオパレス21運営スタッフはマスクを着用し、入口付近など複数個所にアルコール消毒液を設置。 マスクを1千枚用意。 株主発言後にマイクを消毒。
3月13日富士ソフト株式会社会場として、映像音声を同時中継する複数の会議室を用意。 「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の実施(バーチャル出席を認め、議決権の行使は、株主自身のiPad端末に会社指定のアプリケーションをインストールして行った。質問は、電話により行う。バーチャル出席者に対し、動議の提出及び動議の採決への参加は認めなかった。)。
3月16日株式会社ハウスフリーダム予定していた施設が新型コロナウイルスの影響で使用不可能となったため、会場を変更(変更のお知らせは2020年3月4日付)。
3月18日株式会社ブロンコビリー株主からの質問を1人1個に限定。
3月24日DMG森精機株式会社株主からの質問を1人3個に限定。 株主総会後に予定されていた工場見学を中止。 会場にサーモグラフィーを設置。
3月26日株式会社FHTホールディングス新型コロナウイルスの影響で中国子会社の決算関連手続が遅延し、総会当日に報告事項を報告できないため、後日開催する継続会において報告することを決定
3月26日日華化学株式会社役員14名中、新型コロナウイルスに感染した役員及び中国駐在役員の2名が欠席、当該役員に接触した可能性のある役員5名が音声のみの参加。 会場の株主同士の席の間を広くするため、例年の5割増にあたる数の座席を用意。 例年は会場で手渡ししているお土産を後日郵送に切り替え。
3月27日楽天株式会社事前に来場自粛の呼びかけ。 受付にサーモグラフィー設置。 海外から帰国して14日間が経過していない株主について、受付で入場前に伝えるように要請。 議場での詳細な報告や議案の具体的な説明は省略。 議題に関する質問以外の質問は用紙にて受け付け、後日ウェブサイト上で回答
3月27日株式会社ガイアックス「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の実施。 役員及び執行役員は会場に来場せず、オンラインで参加。 会場として会議室を用意するも、来場自粛を呼びかけ(株主3名が来場)。 Web会議ツール「Zoom」を使用したオンライン出席(株主11名が出席)。 議案の採決時にカメラ前で拍手する方法。
3月30日GMOインターネット株式会社「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」の実施。 開催日を3月21日(土)から3月30日(月)に変更。 会場にサーモグラフィーを設置し、37.5度以上の発熱が確認された場合は入場を断る。 業績や議案は読み上げず「お手元の資料をご覧ください」と伝えるに留めた。 クラスター発生防止のため、質疑が長時間になりそうな場合には役員を退席させる方針。

2020年4月にTDnetで公表された又はTDnetに基づく情報から確認できる新型コロナウイルスに関連した株主総会に関する各社の動きとして、継続会の開催を決定したもの、株主総会の日を予定日から延期したもの、会場を変更したもの、開始時間を繰り下げたもの、席数の関係から入場制限する可能性があることを公表する、バーチャル株主総会を実施することを公表するなどの対応が見られました。各社の対応状況は、下表のとおりです。

2020年4月のTDnetに基づく株主総会に関する情報

継続会の開催は、4月15日に新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会から公表された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応について」で対応方法の一つとして示されていますが、本稿の最終更新日においては継続会の決定をしている会社は多くない状況です(下表の「継続会」)。

他方、株主総会の延期を決定する会社は少しずつ増えてきている状況で、特に、上記の連絡協議会の公表があった後の4月18日以降に、延期することを公表する会社が多くなっています(下表の「延期」)。
会場変更、開始時間変更、会場の広さの関係で人数制限をする可能性があることを示唆する会社も多数見受けられますが、確認できる範囲では4月に株主総会を開催した会社によるもののみで、新型コロナウイルスの拡大や、緊急事態宣言に伴い予定していた会場が使用できなくなったことを原因とすることが窺えます(下表の「会場変更」「開始時間変更」「入場制限」)。

また、2月26日に経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表されていますが、3月以前に開催された株主総会でもバーチャル株主総会を実施した会社が見られるほか、これから株主総会を開催する会社でも、バーチャル株主総会の実施を公表している会社もあります(下表の「V型」)。バーチャル株主総会をサポートするサービスを提供する会社も増えてきており、今後、バーチャル株主総会を実施する会社が増加すると予想されます。

公表日企業名総会日
(継続会・
延期後の日)
継続会延期会場
変更
開始時間変更入場
制限
V型
4月6日株式会社SKIYAKI4月21日
4月7日ディップ株式会社5月下旬
(7月29日)
4月8日
4月21日
株式会社ALBERT3月30日
4月8日株式会社RVH4月13日
4月8日ベステラ株式会社4月23日
4月9日株式会社トリケミカル研究所4月24日
4月10日菱洋エレクトロ株式会社4月28日
4月14日株式会社鎌倉新書4月17日
4月14日株式会社東京楽天地4月28日
4月14日アセンテック株式会社4月22日
4月15日株式会社アルトナー4月23日
4月15日積水ハウス株式会社4月23日
4月17日株式会社アマガサ4月28日
4月18日株式会社東芝(3末決算・未定)
4月22日株式会社スカパーJSATホールディングス(3末決算・未定)
4月23日株式会社ナンシン(3末決算・未定)
4月24日サンデンホールディングス株式会社6月19日
(3末決算・未定)
4月27日株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド5月下旬
(3末決算・未定)
4月28日株式会社ジャパンディスプレイ(3末決算・未定)
4月28日株式会社サンリツ(3末決算・未定)
4月28日ブロードメディア株式会社(3末決算・未定)
4月30日日本板硝子株式会社(3末決算・未定)
4月30日オリンパス株式会社(3末決算・未定)
4月30日株式会社ビーマップ6月
参加型

※総会日(継続会・延期後の日)=株主総会を開催した日、又は今後株主総会を開催する予定の日若しくは継続会・延期の決定がなされる前に予定していた日(括弧内の日付けは、継続会・延期の決定がされ、その日が決まっている場合には当該日)

Q&A

株主総会の中止、開催時期、開催方法

(株主総会の中止)
当社は上場会社ですが、昨今の新型コロナウイルスが猛威を振るっている状況に伴い、本年の定時株主総会を中止して開催しないという判断はできますか。

現行法の下では、中止するという判断はできないということになります。

株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが義務付けられており(会社法296条1項)、これを開催せずに済ますことはできないと考えられます。なお、会社法上書面決議(会社法319条、320条)という株主総会を開くことを省略できる制度はありますが、上場会社において利用することは通常想定されません。

(株主総会の開催時期)
当社は3月末決算で、定款の定めに従って毎年6月に定時株主総会を開催しています。新型コロナウイルスの流行が落ち着くまで定時株主総会の開催時期を遅らせることができますか。

新型コロナウイルスの流行が落ち着くまで株主総会の開催時期を遅らせることは可能であると考えられます。

一般的に、決算日を定時株主総会の基準日と定めている会社が多く、基準日から3カ月以内に定時株主総会が開催されます(会社法124条2項参照)。

もっとも、法務省が公表した2020年2月28日付「定時株主総会の開催について」によれば、新型コロナウイルス感染症に関連して定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではなく、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるとされています。

なお、開催時期をずらす場合、定時株主総会の開催時期が具体的になった段階で、新たに議決権行使や剰余金の配当のための基準日を定めた上で公告をする必要があります(会社法124条3項)。

(株主総会の開催時期)
新型コロナウイルスの流行が落ち着くまで定時株主総会の開催時期を遅らせる場合、いつまでに定時株主総会を開催すればよいのでしょうか。

定時株主総会を開催できない状況が解消された後合理的な期間内に開催すれば足ります

もっとも、現状に照らすと、定時株主総会を開催できない状況がいつ解消されるのか明確ではなく、いつになれば定時株主総会を開けるのか見通しが立たなくなるというリスクもあります。

(株主総会の開催時期)
新型コロナウイルスの流行の状況に照らすと、当社の株主総会の開催時期を遅らせた方がよいのでしょうか。

その時の情勢や各社の状況によるケースバイケースの判断にはなります。

可能であれば開催時期を遅らせずに、当初予定していた時期に定時株主総会を開催することが望ましいとはいえますが、決算の状況や決議すべき事項の切迫性等に鑑みて、開催時期を遅らせたり、継続会を開催することなども考えられます。

上記で回答したとおり株主総会の開催時期を遅らせることは可能であると考えられますが、取締役の再任・解任、配当を期待して基準日に株式を保有していた株主への配慮、重要な株主総会決議事項がある場合に決議できないなど、遅らせることに際して検討すべき事項は多く存在します。

また同じく上記で回答したとおり、新たな基準日公告をする必要があるほか、会場の確保、招集手続きの対応等の事務手続きも必要となります。そのため、その時の情勢に照らして問題がないようであれば、当初予定していた時期に開催する方向で検討を進めることが望ましいといえます。

もっとも、株主総会を開催する時期における情勢や各社の状況、株主や株主総会の運営にあたる従業員の安全面にも配慮した上で、開催時期を遅らせるかどうか慎重に判断することが必要となります。

また、4月15日には「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」が継続会の開催も検討することを提示し、4月18日には金融庁・法務省・経済産業省が「継続会(会社法317条)について」を公表しているため、決算の状況等によっては継続会を開催することが考えられます。

本稿執筆日において、新型コロナウイルスを原因として定時株主総会の開催時期を当初予定していた時期から遅らせた事例として、ディップ株式会社の例があります。同社は、2020年5月下旬に開催を予定していた株主総会の開催予定日を、同年7月29日に変更しました(開催日を2020年3月21日から同年3月30日に遅らせたGMOインターネット株式会社の事例もございますが、定款で定める基準日の有効期間内での変更になります。)。

また、本稿最終更新日においては、開催時期を遅らせる会社が増えてきている状況です。なお、東日本大震災の際の事例ですが、株式会社ジー・テイスト株式会社山大が定時株主総会の時期を遅らせたという例はあります。株式会社ALBERTなど、継続会の開催を決めた会社も出てきています。

(開催方法)
新型コロナウイルス対応の一環として、バーチャル空間のみで完結するいわゆるバーチャルオンリー型株主総会を開催することは適法ですか。

現行法の下では、バーチャルオンリー型株主総会を適法に開催することはできないと考えられています。

株主総会は「場所」を特定することが求められており(会社法298条1項1号参照)、実際に開催する株主総会の場所がないバーチャルオンリー型株主総会を認めることはできないと解されています。

もっとも、株式会社ガイアックスのように、株主総会の場所を用意して実際にその場所で株主総会に参加したい株主が参加できるような体制を整えつつ、役員やその他の株主がWebで参加するような態様でのほぼバーチャルオンリー型の株主総会を開催した実例はあります。

(開催方法)
ハイブリッド「参加」型バーチャル株主総会とはどのような株主総会ですか。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会とは、リアル株主総会(取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所において開催される株主総会)の開催に加え、リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずに、インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる株主総会をいいます。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会では、リアル株主総会に「出席」しているわけではないため、会社法上、株主総会において出席した株主により行うことが認められている質問(会社法314条)や動議(会社法304条等)を行うことができません。

詳しくは、経済産業省が公表している「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」をご確認ください。 2020年2月・3月に開催された株主総会の例では、GMOインターネット株式会社の株主総会が該当するといえます。

(開催方法)
ハイブリッド「出席」型バーチャル株主総会とはどのような株主総会ですか。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会とは、リアル株主総会(取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所において開催される株主総会)の開催に加え、リアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会をいいます。

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会とは異なり、リアル株主総会に「出席」していることになるため、会社法に基づく質問(会社法314条)や動議(会社法304条等)ができる一方で、技術的な側面による導入のハードルは高くなっています。

詳しくは、経済産業省が公表している「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」をご確認ください。

これまでにハイブリッド出席型バーチャル株主総会が実施された例はほとんどなく、2020年2月・3月に開催された、富士ソフト株式会社や株式会社ガイアックスの株主総会が該当するといえます。

(開催方法)
ハイブリッド参加型バーチャル株主総会やハイブリッド出席型バーチャル株主総会の方法は、新型コロナウイルスへの対応策としては有効ですか。

新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染(感染者のくしゃみ、咳などを原因とする感染)か接触感染(感染者が触れた部分で未感染者にウイルスが伝播する感染)であるといわれており、閉鎖空間の近距離で多くの人が集まることは避けた方が望ましいところ、バーチャル株主総会の方法を取り入れることで、株主総会の実開催場所に来る株主の数を減少させることができます。

もっとも、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を実際に取り入れるためには技術的な検討が必須であり、現状では、実現が簡単ではないことにご留意ください。

(開催方法)
株主総会に取締役等をオンラインで出席させることは適法ですか。

テレビ会議システムや電話会議システムのように、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるような方式であれば、株主総会に取締役等をオンラインで出席させることは適法です。

会社法施行規則72条3項1号は、取締役等が株主総会の開催場所に存しない形で出席することがあり得ることを前提とした規定であり、テレビ会議システムや電話会議システムのように、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるような方式であれば、取締役等が株主総会にオンラインで出席することは適法であると解されます。

日華化学株式会社では、新型コロナウイルスに感染した役員と接触した可能性のある役員5名が、音声のみの方式で株主総会に参加しました。また、株式会社ガイアックスでは、役員及び執行役員の全員が、オンラインで株主総会に出席しました。

(緊急事態宣言)
緊急事態宣言が出されましたが、緊急事態宣言の実施地域で株主総会を開催することを予定しています。このまま開催してしまって問題ないでしょうか。

株主の安全面に配慮することを前提に開催することは可能であると考えられるものの、緊急事態宣言が出ている状況でも可能な開催方法を検討し、他社の動向も確認した上で、当初予定していた時期に株主総会を開催するか、開催時期を遅らせるか、継続会を開催するかを慎重に検討することが望ましいといえます。

2020年4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を実施区域とする新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が出され、4月16日に対象が全国に拡大されましたが、緊急事態宣言が出されている状況であっても、株主総会を開催する義務が免除されているわけではありません(5月2日追記:4月22日に積水ハウス株式会社の株主総会に関する開催禁止の仮処分命令申立に対する却下決定(=予定通り株主総会を開催できる)がなされていますが、その決定文において、4月22日の状況ではあるものの「開催予定日が緊急事態宣言後となった他社の株主総会においても、その開催が一律かつ当然に見送られている状況にはない現状を踏まえる限り、緊急事態宣言が、株主総会の開催自体を決定的に左右する事情であると一般的に評価されているということはできない。」と示されています。)。

そのため、会社としては、法的には株主総会を開催する必要がある一方で、株主の安全を考えると開催時期を遅らせた方がよいのか難しい判断を迫られることになります。

緊急事態宣言に基づき完全に外出が禁止されているわけではないものの、イベント等の開催自粛が求められている中で、自社のみが株主総会を開催するという対応を採った場合には、株主の安全面に配慮していないのではないかというレピュテーション上のリスクが生じる可能性は否定できません。

もっとも、株主総会の開催が法律に基づき求められていることも踏まえ、会社としては、ハイブリッド型バーチャル株主総会を含めた株主の安全面に配慮した方法での株主総会の開催方法を検討することが考えられます。緊急事態宣言が出された直後で、法律上開催することが求められている株主総会の開催をどのようにすべきか確立した見解がある状況ではありませんので、その時々の情勢や他社の動向も確認した上で、株主総会の開催時期を検討するほかない状況にあるといえます。

仮に、当初予定していた時期に株主総会を開催するという判断をする場合には、その具体的開催方法について、緊急事態宣言下であることを踏まえたより一層の慎重な検討が求められることとなります。

なお、経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ2の回答では、最終的に株主が出席しない株主総会の開催を認める余地がある記載もあります。このような回答が出された時点においても、緊急事態宣言が出される可能性は考慮されていたと思われますので、同回答を踏まえた株主の安全面に配慮した株主総会の開催を検討する余地もあるかもしれません。

いずれにしても、現状の法律の建付けを前提として、新型コロナウイルスの感染拡大を防止しなければいけないという要請と、適法に株主総会を開催しなければいけないという要請の狭間で生じる問題であるため、今後、官公庁から緊急事態宣言下での株主総会対応についての見解が示される可能性もあり、官公庁の動向にも目を光らせておく必要はあります。

株主総会当日に向けた対応

(招集通知等)
株主に対して来場の抑制を呼びかける方法として、どのような方法が考えられますか。

株主に呼びかける方法としては以下のような方法が考えられます。

  • 招集通知に記載する。
  • 招集通知を送付する際に、自粛要請文書を同封する
  • 自社HPなどウェブサイトで告知する。
  • (招集通知等)
    株主に対して来場の抑制を呼びかけ方としてはどのような内容がよいでしょうか。

    各社によって呼びかけ方は様々です。

    来場しないように強制するような文言は避けた方がよいと考えられますが、「体調のすぐれない株主様におかれましては、どうぞご無理をなさらぬようお願い申し上げます。」「当日の健康状態や体調等に十分ご配慮の上、ご無理をなされないようお願いいたします。」という表現もあれば、やや強く推奨する例として、楽天株式会社のように「新型コロナウイルスの感染拡大の状況にご留意いただき、健康状態によらず、本年はご来場を見合わせることをご検討くださいますよう、お願いいたします。」と呼びかける例もあり、これらの表現であれば特に問題はないと思います。

    (招集通知等)
    来場自粛要請をする際に、他に株主に対して伝えた方がよいことはありますか。

    経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ1の回答に記載されているとおり、書面や電磁的方法による事前の議決権行使の方法を案内した方がよいほか、以下のような事項も連絡することが考えられます。

  • 高齢、基礎疾患など高リスク者に対する注意喚起
  • マスク着用、手指消毒、熱がある場合の入場自粛、座席配置など当日の要請事項
  • お土産等を廃止する場合にはその旨
  • 規模や時間を縮小する予定の場合にはその方針
  • ウェブサイトでの情報提供への誘導
  • (入場人数の制限)
    多くの株主が集まることを防止するために、会場に入場できる株主の人数を制限することはできるでしょうか。

    会場に入場できる株主の人数を制限することも可能であると考えられます。

    経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ2の回答では、「新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど、例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能と考えます。」と記載されています。

    さらに、「その結果として、会場に事実上株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能と考えます。」と続いており、一定の場合には株主が出席していない状況での株主総会も適法とされる余地があることを示されています。

    かかる回答に基づき、会場に入場できる株主の人数を制限することも可能であると考えられますが、上記のとおり制限することができる条件も記載されているため、自社の対応が問題ないかは慎重に判断する必要があります。たとえば、例年1000人の株主が来場しているにもかかわらず、特に理由を検討せずに10人の株主しか来場できないような措置を採ることは合理的な範囲内の対応ではないように思われます。

    また、様々な事情に照らして人数を制限した結果、株主が出席しなったという状況を許容しているのであり、無条件に出席株主が0人の株主総会を認めているわけではないことも留意する必要があります。

    (事前登録制)
    多くの株主が集まることを防止するために、来場希望者を事前登録制にして、事前登録した株主のみを入場させることはできるでしょうか。

    会場に入場できる株主を事前登録制にすることも可能ですが、事前登録した株主のみを入場させるという対応は慎重に検討すべきであると考えられます。

    経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ3の回答では、「会場の規模の縮小や、入場できる株主の人数の制限に当たり、株主総会に出席を希望する者に事前登録を依頼し、事前登録をした株主を優先的に入場させる等の措置をとることも、可能と考えます。」と記載されています。

    もっとも、「事前登録を依頼するに当たっては、全ての株主に平等に登録の機会を提供するとともに、登録方法について十分に周知し、株主総会に出席する機会を株主から不公正に奪うものとならないよう配慮すべき」とも記載されており、事前登録をした株主のみが株主総会に出席できる場合、たとえば事前登録の方法がWebを通じたものしかなく、Webを利用した事前登録をできない株主が存在するときは、当該株主から出席する機会を不公正に奪っていると評価される可能性もあります。

    そのため、出席できる株主数を制限し、かつ、事前登録制を採用する場合であっても、事前登録をしていない株主が出席できる余地は残すべきであると考えます。

    (お土産)
    当社では従来株主総会に出席していただいた株主に対してお土産を配っておりましたが、昨今の情勢に照らして、今年の株主総会でのお土産の配布を取り止めて来場者数を減らそうと思っていますが、問題あるでしょうか。

    お土産の配布を取り止めることに問題はありません。

    お土産の配布は法律に基づき要請されているものではなく、株主の期待や、個人株主が増えることへの会社の期待から、各社が任意で行っているものである。
    そのため、お土産の配布を取り止めることに法的な問題はないと考えられますが、株主のお土産に対する期待が高い場合には、お土産の取り止めに対してクレームが寄せられる可能性もあります。取り止める場合には、どのような事態が起こり得るか検討した上で、判断するのがよいかと思います。

    2020年に開催された株主総会では、実際にお土産を廃止している会社もありますし、日華化学株式会社や株式会社資生堂のようにお土産を後日配送にしている例もあります。

    (イベントの中止)
    当社では例年株主総会の後に株主懇談会を企画していましたが、昨今の情勢を踏まえて今年は中止にしようと考えています。このような対応を採ることに問題はあるでしょうか。

    対応に問題はなく、昨今の情勢に照らせば適切な対応であると考えます。

    株主懇談会や商品展示会など、株主総会に合わせて任意のイベントを開催する会社も多いですが、このようなイベントの開催は法律に基づき要請されているものではございません。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大防止という観点からは、中止するという対応で問題ないと考えられます。

    実例として、DMG森精機株式会社が予定されていた工場見学を中止しているほか、花王株式会社が株主総会終了後の懇談会を中止するなど、複数の企業でイベントを中止している例がございます。

    (開催場所の変更)
    招集通知発送後に、株主総会を開催する予定だった場所が新型コロナウイルスの影響で使用できなくなってしまいました。どのように対応すればよいでしょうか。

    開催場所を変更することは禁止されていないため、開催場所を変更して対応することが考えられます。

    開催場所の変更について会社法の規定はありませんが、開催場所が記載されている招集通知の変更は、招集通知に準じた取締役会の決議と通知方法をもって行うべきであると考えられています。

    もっとも、開催日直前に会場が使用中止となり、株主宛ての通知が開催日までに届かないことが明らかな場合には、会場変更のお知らせをウェブサイト上に速やかに掲載してその旨を株主に周知徹底し、変更前の会場付近に係員を配置して来場した株主を変更後の会場に誘導するなど、株主の出席を確保する万全の措置を講ずるのであれば、直前でも開催場所を変更することはできると解されています。

    2020年に開催された株主総会では、冒頭で紹介した株式会社ハウスフリーダムが開催場所を変更したほか、株式会社カヤック、株式会社メドレックスなども開催場所を変更しています。

    株主総会当日の運営

    (受付対応)
    新型コロナウイルスが流行している状況において、受付ではどのような対応をすることが考えられますか。

    株主総会の会場での新型コロナウイルスの感染リスクを下げるために、以下のような対応を採ることが考えられます。

  • 株主を入口付近で滞留させないために、受付事務を簡素化する。
  • アルコール消毒液による消毒を徹底して入場させる
  • 受付スタッフ及び株主のマスク着用を義務化し、マスクを持参していない株主に対して予備のマスクを提供する(株式会社レオパレス21など)。
  • サーモグラフィ等で検温し、一定以上の熱(37.5℃等)がある場合には入場を断る(GMOインターネット株式会社など)。
  • (受付対応)
    マスク着用義務に応じない株主や一定以上の熱があるにもかかわらず入場規制に応じない株主がいる場合、どのように対応すべきでしょうか。

    マスク着用義務があることや、一定以上の熱がある場合には入場をお断りすることを丁寧に説明し、入場を自主的に断念することを促し、それでも応じない場合には、入場を禁止することが考えられます。

    新型コロナウイルスの感染が社会的な問題になっている状況においては、他の株主への感染防止や、他の株主が平穏に議事に参加できるように、新型コロナウイルスに感染している可能性がある株主について、入場を控えるように要請し、入場を禁止することも認められると考えられます。

    なお、経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ4の回答では、「新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、ウイルスの罹患が疑われる株主の入場を制限することや退場を命じることも、可能と考えます。」という見解が示されています。

    (会場設営)
    例年は株主からの質問を受け付けるためにワイヤレスのマイクを準備していましたが、現在の情勢に照らして、会場で使用するマイクについて留意すべき点はあるでしょうか。

    感染のリスクを下げる観点から、スタンドマイクを導入する企業が多い傾向にあります。

    新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染か接触感染であるといわれているところ、ワイヤレスのマイクを株主の間で回す場合、マイクに手が触れる可能性が高まってしまい、また、消毒なども行いづらいことが想定されます。

    そのため、スタンドマイクを導入する企業が増えており、発言したい株主にはスタンドマイクの前まで来てもらい、マイクを手で持たないような形で発言してもらい、株主の発言が終わった後にスタッフがマイクを消毒するという対応を採ることも考えられます。

    (会場設営)
    株主の座席位置について留意すべき事項はあるでしょうか。

    通常であれば前から詰めて座らせるという運用が多いと思いますが、感染のリスクを下げるために、株主同士で間隔を空けて座らせるなど、密集しないような座席配置になるように留意することが望ましいです。

    また、パイプ椅子などを設置する会社であれば、椅子同士の間隔を離して配置することも考えられます。

    (議事進行)
    当社では代表取締役が株主総会の議長を務めることになっていますが、議長が新型コロナウイルスにかかってしまい、株主総会に出席できなくなってしまいました。どのように対応すればよいでしょうか。 

    議長となるべき代表取締役に「事故があるとき」に該当するため、定款その他の方法によりあらかじめ定めた次順位の者が議長となって議事を進めることになります。

    一般的な会社の定款には、株主総会の議長となるべきものに「事故があるとき」には、あらかじめ定めた順序により他の取締役が議長になる旨の規定があります。

    新型コロナウイルスに罹患したことは「事故があるとき」に該当するため、あらかじめ定めた次順位の者が議長を務めることになります。そのため、自社において次順位の者がどのように定められているのかを確認した上で、次順位の者が議長を務める場合の進行もリハーサル等で確認しておくことが望ましいといえます。

    (議事進行)
    事業報告でパワーポイントを使用していましたが、株主総会の時間を短縮するために、パワーポイントを使用した説明などは省略しても問題ないでしょうか。

    省略するという対応でも問題ありません。

    各企業の株主総会では、株主への分かり易さを重視するために、パワーポイントやスライドを使用して事業報告等の説明をする例が多いですが、パワーポイントやスライドを使用することが会社法上求められているわけではありません。

    事業報告の内容について株主総会に報告する(会社法438条3項)という観点からは、「お手元の招集通知に記載のとおり」という形で報告することも可能であり、また、要点のみ簡潔に報告することでも問題ありません。

    会場で使用しなかったパワーポイントの資料などについても、自社HPで公開する例もございます。楽天株式会社は、議場での詳細な報告や議案の具体的な説明は省略しています。

    (議事進行)
    株主の質疑応答の時間や質問数を制限しても問題ないでしょうか。

    合理的な内容の制限であれば問題ないと考えられます。

    経済産業省・法務省が4月2日付で公表した「株主総会運営に係るQ&A」のQ5の回答では、「新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、株主総会の運営等に際し合理的な措置を講じることも、可能と考えます。・・・例年に比べて議事の時間を短くすることや、株主総会後の交流会等を中止すること等が考えられます。」と記載されています。

    そのため、過去の株主総会における質疑応答の時間や質問数に照らして、合理的な内容の制限、たとえば、従来は1人当たりの質問時間を厳格に制限せず合計で1時間程度質疑応答の時間を取っていた場合に、株主に対して端的な質問を要請した上で、30分程度の時間の質疑応答時間に制限することなどは、許容され得ると思います。

    株式会社ブロンコビリーは、株主による質問を1人1個に制限しました。

    (議事進行)
    新型コロナウイルスに関する質疑応答について、留意すべき点はありますか。

    新型コロナウイルスが会社の業績や事業に与える影響や、労働環境などの新型コロナウイルスへの会社としての対応方法は株主の関心事であるため、株主総会が開催される時点の状況を適切に把握し、回答可能な範囲で誠実に対応することが望ましいといえます。

    もっとも、影響の大きさやいつまで続くのかが不明確な点もあるため、概括的な回答になることもやむを得ないと考えられ、また、インサイダー取引上の重要事実を伝えないようにすることなどには留意する必要があります。

    新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(株主総会編)

    Mail Magazine

    最先端のビジネス領域に関する法務情報、
    法令の改正その他重要な法務ニュースをお届けします。

    新型コロナウイルスに関する企業法務の実務(株主総会編)

    Contact

    ご相談・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

    Page Top