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株式譲渡の基礎知識と手続きの流れ|契約・登記・税務・トラブル対策まで解説

株式譲渡は、会社の所有者が変わり、ひいては会社の支配権や経営体制に大きな影響を与える重要な行為です。特に、中小企業やスタートアップの多くは「非公開会社(株式譲渡制限会社)」に該当します。非公開会社の場合、株式の譲渡には会社の承認が必要なケースがほとんどです。この承認手続きを怠ると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。本記事では、トラブルを未然に防ぎ、正確な契約や必要な登記手続きを進めるためのポイントを解説します。

株式譲渡の基礎知識と手続きの流れ|契約・登記・税務・トラブル対策まで解説
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PROFILE
山田 裕介

司法書士部門統括

山田 裕介

2003年名古屋大学農学部資源生物環境学科卒業。上場企業からスタートアップまで幅広い依頼者を担当し、多様な資金調達、有償・無償ストックオプション導入、IPO、組織再編、M&Aまで、幅広い企業法務を支援し、これにともなう数多くの商業登記申請業務を経験。

株式譲渡とは何か

株式とは、会社に対する出資者の権利を細分化したものです。株式を保有することで、会社に対する所有権や、利益分配を受ける権利、議決権などの様々な権利を持つことができます。
株式譲渡とは、この株式の所有権を売買や贈与などによって、ある人から別の人へ移転させることを指します。株式の所有権が移転すれば、すぐにその効力が発生するものと誤解されがちですが、実際には、株主名簿(かぶぬしめいぼ)の書き換えが重要です。株主名簿とは、株主の氏名や名称、住所、所有する株式の種類と数、株式を取得した日などが記載されている帳簿のことです。株式譲渡の効力自体は、株券不発行会社の場合は、当事者間の合意によって発生しますが、会社に対してその権利を主張するためには、原則として株主名簿の書換えが必要となります。上場会社では、株式は自由に売買され、市場を通じて所有権が移転します。一方、中小企業の多くが該当する譲渡制限会社では、定款に「株式を譲渡するには株主総会(取締役会)の承認が必要」という旨の規定が設けられていることが一般的です。これは、会社の経営権が外部の意図しない者に渡るのを防ぐための重要な企業防衛策です。

株式譲渡の一般的な流れ(譲渡制限会社、株券不発行会社を前提)

(1)株式譲渡契約締結

まず、株式を譲渡する人(譲渡人)と、株式を譲り受ける人(譲受人)の間で、株式譲渡に関する契約を締結します。この契約には、譲渡する株式の数や価格、譲渡日などの重要な事項を明記します。

(2)会社への譲渡承認請求

譲渡人は、譲渡制限株式を譲渡するにあたり、会社に対して譲渡承認の請求を行います(会社法第136条)。この請求により、会社は承認の要否を判断するための審査に入ります。

(3)株主総会または取締役会での承認決議

会社の定款で定められた機関(通常は株主総会、取締役会設置会社の場合は取締役会)で、株式譲渡を承認するかどうかの決議を行います(会社法第139条第1項)。

(4)会社からの譲渡承認通知

会社は、譲渡承認の可否について、譲渡人に対して通知を行います(会社法第139条第2項)。通知は原則(2)の請求から2週間以内になされます。期限内に通知がないと、会社法上、譲渡を承認したものとみなされるからです(第145条1号)。

(5)決済の手続き(クロージング)

株式譲渡契約に従い、譲渡人が対象株式を譲受人へ譲渡し、譲受人が対価を譲渡人に支払います。実務においては、契約を締結してから一定期間後に決済することが一般的です。また、譲渡人から譲受人への株主名簿書換請求書もこの時交付されることが一般的です。

(6)株主名簿書換請求

承認決議を経て株式譲渡が承認されたら、譲受人と譲渡人は共同して、会社に対し、株主名簿書換請求を行います(会社法第133条)。会社が株主名簿を書き換えると、新しい株主が会社に対して株主としての権利を正式に主張できるようになります。

会社法・定款以外に注意すべき株主間契約(SHA)の制約

株式譲渡は会社法や定款による制限だけでなく、ベンチャー企業やスタートアップでは株主間契約(Shareholders Agreement、SHA)の規律を受ける場合があります。

SHAでは、株式譲渡に関して、先買権、売却参加権(Tag Along)、強制売却権(Drag Along)のような取り決めが置かれることが多く、登記や定款承認手続とは別に実務上の重要性を持ちます。

したがって、株式譲渡を検討する際には、会社法・定款だけでなく、株主間契約の有無と内容を確認することが不可欠です。

株式譲渡に関する登記事項とは?

株式譲渡があっても、原則的には登記申請の必要はありません。
これは、株式会社の株主が登記事項ではないためです。したがって、株式の譲渡そのものは登記簿上に反映されることはありません。

もっとも、株式譲渡の前後では、役員体制や機関設計などに変更が生じることが少なくありません。
たとえば、役員の任期管理が不十分な場合には重任登記を行う必要があり、譲渡後には買主側の人間が取締役に就任するケースや、辞任条項に基づき既存役員の辞任登記を行うケースが典型例です。さらに、取締役会・監査役の設置や責任免除・責任限定規定の設定など、会社のガバナンス体制に関わる登記も生じ得ます。

よくある実務トラブルと対応策

譲渡契約が口頭・簡易な書面のみで紛争化

口頭や簡易な書面のみで株式譲渡を進めると、「言った、言わない」の争いや契約内容の認識の齟齬から紛争に発展するリスクがあります。必ず書面で詳細な株式譲渡契約書を作成し、専門家によるリーガルチェックを受けることが重要です。

承認決議を取らずに譲渡を進めた場合

譲渡制限株式について、会社の承認決議を得ずに譲渡を進めると、会社は株主名簿の書換えを拒否(拒絶)できます。この場合、譲受人は株主としての権利を行使できず、売買代金を支払ったにもかかわらず株主になれない事態になります。

相続・贈与による移転との違い

株式の移転は売買だけでなく、相続や贈与によっても発生します。相続などの一般承継による移転では会社の承認は不要ですが、株主名簿の書換請求は必要です。売買による譲渡とは手続きが異なるため注意が必要です。

税務や法務の連携の必要性

株式譲渡は法務面だけでなく、税務面でも多くの影響があります。司法書士は契約や登記手続きをサポートしますが、税務に関するアドバイスや申告は税理士の分野です。また契約交渉や紛争解決には弁護士の知識が必要です。トラブルを防ぎ円滑な譲渡を実現するには、司法書士・税理士・弁護士といった専門家と連携し、総合的に支援を受けることが重要です。

司法書士が支援できること

司法書士は、株式譲渡における法務・登記手続の専門家として、スムーズかつ確実な手続きを支援します。具体的な支援内容は以下の通りです。

  • 株式譲渡契約書の作成支援
  • 株主総会や取締役会議事録の整備
  • 必要な登記の代理申請

株式譲渡に関する対応は専門家にご相談を

株式譲渡は会社の将来に大きな影響を与える重大事項です。適切な書類整備や正確な登記手続きを行うことは、紛争回避と安定した経営維持に不可欠です。
法律事務所ZeLoでは、登記業務にとどまらず、会社法に基づく各種手続きまで幅広く取り扱っております。企業法務の幅広い領域で多数の登記申請業務を経験した司法書士が、貴社の登記業務周りをサポートします。また、事務所に在籍する弁護士・弁理士、グループファームの税理士とも連携し、登記にまつわる法務・知財についても円滑かつ迅速に対応します。ぜひお気軽にお問合せください。




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