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2021年に設立30周年を迎えたシンガポール国際仲裁センター(SIAC)について

1991年に設立されたシンガポール国際仲裁センター(SIAC)。比較的新しい仲裁機関でありながら、数多くの案件を取扱い、世界的にも高く評価され、国際仲裁機関としての地位を確立しています。本記事では、2021年に設立30周年を迎えたSIACの案件数の統計や評価について、国際仲裁・紛争案件について多くの知見を有するJoel Greer外国法事務弁護士(原資格国:米国コロンビア特別区)が解説します。

2021年に設立30周年を迎えたシンガポール国際仲裁センター(SIAC)について
DISPUTE-RESOLUTION
PROFILE
野村 諭

弁護士・ニューヨーク州弁護士、国際法務部門統括

野村 諭

1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラル・コーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。

ジョエル グリアー

外国法事務弁護士(原資格国:米国コロンビア特別区)

ジョエル グリアー

2000年イェール・ロー・スクール卒業(J.D.)。2001年米国マサチューセッツ州弁護士登録。2007年外国法事務弁護士登録。2019年9月、法律事務所ZeLo・外国法共同事業に参画。主な取扱分野はジェネラル・コーポレート、訴訟・紛争対応、宇宙法など。The Legal 500、Chambers Asia Pacific、Chambers Globalと多くの受賞歴があり、執筆も数多く手掛けている。

2021年に発表されたSIACへの評価

2021年に発表された国際仲裁に関する大規模な実地調査によれば、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)は、アジア太平洋地域で、最も高く評価された仲裁機関であり、世界でも第2位の地位を占めています。また、仲裁地としては、ロンドンと共に世界で最も高い評価を得ています。この調査については、下記の記事をご覧ください。

2021年国際仲裁調査「変化する世界への仲裁の適応」の主な結果、ロンドン大学クイーン・メアリー校が公表

2021年国際仲裁調査「変化する世界への仲裁の適応」の主な結果、ロンドン大学クイーン・メアリー校が公表

SIACとシンガポールは、30年にわたり、一定要件のもとでの簡易手続や緊急保全措置を定めるなど、当事者に質の高い仲裁サービスを提供するための精力的な活動が、このような素晴らしい結果へと繋がりました。これは、2021年に誕生して30年の節目を迎えたSIACを讃える評価といえます。

2021年に発表されたSIACにおける案件数の統計

SIACは2021年に取り扱った案件数の統計を公表しています。この数字に簡単に目を通すだけでも、なぜSIACが高い評価を得ているのかが分かります。2021年の新規仲裁案件の付託件数は469件です。これは、SIACにとって過去3番目に多い案件数であり、10年前の2倍に達しています。これら469件で争われた総額は65.4億米ドルに達し、一件当たり最大の請求金額は19.5億米ドルでした。

2021年にSIACで新規に仲裁を行ったのは、シンガポールを含む64の法域の当事者でした。シンガポール以外の当事者では、インド・中国・香港特別行政区・米国が上位を占めました。その他、マレーシア・ベトナム・韓国・ウクライナ・アラブ首長国連邦・インドネシアの当事者も、トップ10にランクインしています。日本企業も20社が当事者となりました。さらに、同年には、シンガポールを含め、約30か国からおよそ400人の仲裁人が選任されて、SIACの仲裁廷を構成しました。

SIACにおける2021年の新規案件の紛争類型と準拠法

SIACにおける2021年の新規案件の紛争類型は、物品の売買に関するものが最も多く、次いで流通契約やライセンス・サービス契約に関するもの、そして合弁事業・M&A・会社の解散に関するものなどとなっています。また、海事や船舶紛争・建設エンジニアリング紛争・銀行・エネルギー・ヘルスケア・保険・知的財産・不動産・通信などの分野に関する案件が、新たな案件となっています。

2021年のSIACの新規案件の準拠法としては、シンガポール法・英国法・インド法が最も多く適用されています。これに加えて、大陸法・コモンローにまたがる18の法域(主に、アジア太平洋地域及び米国)の法律が適用されています。  

2021年に発表されたSIAC仲裁規則の定める各種制度の利用に関する統計

また、SIAC は、SIAC仲裁規則の定める各種制度の利用に関する統計を発表しました。例えば、SIACは2021年に、緊急の暫定的救済(いわゆる「緊急仲裁」)の申立てを特に扱うための仲裁人の選任要請を15件受け、そのすべてを受諾しています。SIACは、2010年にアジア太平洋地域の仲裁機関としては初めて、緊急仲裁規定を規則に導入し、それ以来、同規定の適用に係る申し立てを合計129件認めています。2021年には、(当事者の時間とコストを節約するために設計された)簡易仲裁手続の利用について93件の申立てを受け、このうち26件を受理しています。

シンガポールにおける仲裁・紛争解決

全体として、2021年はSIACにとって堅調な年となりました。このような統計にさっと目を通すだけでも、SIACは世界各国・各業界の多くの当事者に対して、クロスボーダー紛争に関する、質の高い仲裁サービスを提供し続けていることが分かります[1]

ZeLoでは、所属弁護士がシンガポールにおいてSIACなどの機関で仲裁に携わった豊富な経験を有しており、SIACの環境を高く評価しています。


[1]上記の統計やそれ以外の問題に関する情報は、SIACの「Where the World Arbitrates Annual Report 2021」(https://siac.org.sg/images/stories/articles/annual_report/SIAC-AR2021-FinalFA.pdf)を参照ください。

本記事は原文記事である“30th Anniversary of the Singapore International Arbitration Centre in 2021”の翻訳であり、記事および解釈はすべて原文が優先いたします。

本記事は、一般的な情報提供のみを目的とし、法的助言を構成するものではなく、そのような助言をする意図もありません。読者におかれましては、特定の法的事項に関して助言を得たい場合、弁護士にご連絡をお願い申し上げます。

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