Things You Should Know Before Starting a Business in Indonesia
Attorney-at-law admitted in Indonesia
Fiesta Victoria
インドネシアで現地法人(PT PMA)の設立を検討する日本企業にとって、KBLI番号の選定、外資規制(ポジティブ投資リスト)の確認、資本金要件の理解は進出準備の重要な出発点です。一方で、設立手続は委任状の作成からNPWP・NIBの取得、銀行口座開設まで複数の工程を要し、設立後もLKPM報告や税務対応など継続的なコンプライアンス対応が求められます。連載の第3回となる本記事では、PT PMA設立の基本事項、設立手続の流れと想定スケジュール、実務上の留意点を解説します。
Fiesta Victoria is an Indonesian qualified lawyer with over 16 years of experience in M&A and general corporate. She graduated from the University of Pelita Harapan in 2006 and started her career as a lawyer in the same year at one of the largest and oldest law firms in Indonesia. She joined ZeLo in 2019 with the primary role of establishing and developing ZeLo’s Indonesian practice group. She won the title of "Business Development Lawyer of the Year" at the ALB Women in Law Awards 2021. Additionally, she was nominated as one of the top 5 finalists for "Foreign Lawyer of the Year" at the ALB Japan Law Awards 2023, following a nomination in the same category at the ALB Japan Law Awards 2022.
Graduated from Keio Law School in 2012. Called to the Bar Association in 2014. After experienced in the law firms in Japan, he was seconded to Rajah&Tann Singapore LLP., one of the reputable law firms in Singapore. He joined ZeLo in June 2024. Through the experiences, he has covered a wide range of corporate law matters, such as M&A, corporate commercial, venture financings and cross border transactions. In the course of his practice, he has provided commercially-focused legal advice to companies at all stages of the corporate lifecycles; from early stage start-ups to listed companies.
インドネシアは人口約2.8億人を擁する東南アジア最大の市場であり、安定した経済成長と若い労働力を背景に、日本企業の進出先として依然として高い注目を集めています。一方で、外資規制・許認可制度・資本金要件は頻繁に改正されており、進出形態の選択や設立手続の設計を誤ると、後の許認可更新や事業拡大、さらには撤退の場面で大きな負担を負うことになりかねません。
本記事は、連載「インドネシア進出を目指す日本企業のための法務ポイント解説」の第3回目として、現地法人(PT PMA)という器の基本、設立手続の流れと想定スケジュール、そして実務上問題となりやすい点と日本企業が特に注意すべき事項をピックアップします。
なお、営業活動を行わない駐在員事務所(KPPA等)は次回取り上げる予定です。
インドネシアで事業を営む際の中心的な事業体は、PT(Perseroan Terbatas)と呼ばれる有限責任会社で、日本の株式会社にあたります。株主は出資額を限度として責任を負い(有限責任)、会社名義で資産を保有し、契約を締結し、従業員を雇用し、許認可を申請することができます。
インドネシアで営業活動を行う場合には、このPTでの進出が必須となります。
PTのうち、外国人または外国法人の資本が入った会社がPT PMA(Penanaman Modal Asing=外国投資会社)です。
PT PMAとしてまず気を付けるべき事項は、対象事業とKBLI番号とを確定させることです。これにより、対象事業の展開がインドネシアで可能か、必要な許認可等が判明します。
こちらについては、以下の記事でも解説しています。
また、PT PMAにとっては資本金・総投資額要件も忘れてはなりません。近時の規則改正で資本金要件が緩和されたとはいえ、依然として資本金25億ルピア(約2,300万円)、総投資額100億ルピア(約1億円)を超える金額が必要になるため、外資企業には引き続き一定の資本力が求められる点は押さえておく必要があります。
こちらについては、以下の記事でも解説しています。
なお、「最低資本金が25億ルピアに下がった」という情報だけが独り歩きしがちですが、実態としては、設立時に用意する金銭(払込資本25億ルピア)と、事業全体で実現すべき投資コミットメント(100億ルピア超)は別の概念です。そのため、総投資額は依然として100億ルピア超であることが求められる点は注意が必要です。
後者は機械・オフィス・人件費・運転資金などを通じて数年かけて実現していくもので、未達が続くと投資調整庁(BKPM)上の警告やNIB停止につながり得ます。資金計画は両者を分けて立てる必要があります。
先般の「インドネシア進出における法務の基礎と全体像」や「インドネシア進出におけるKBLI番号とは―2025年改正と外資規制・実務対応のポイント」でも述べたとおり、日本企業としてインドネシア進出を検討する際に最初に検討すべきは、行おうとしている事業がどのKBLI番号に該当するかという点です。
このKBLI番号を起点として、日本企業が外資企業としてインドネシアで事業展開ができるのか、できるとして許容される出資比率はどの程度かを検討する必要があります。
出資比率はポジティブ投資リスト(旧称「ネガティブリスト」)という形式で各投資分野において定められています(大統領令2021年10号別紙Ⅲ)。
例えば、コーヒー関連事業を含む一部の農業関連事業は、該当するKBLIによって外資規制の対象となる場合があり、一部の運輸事業についても、具体的なKBLIおよび関連規則によって外資規制が課される場合があります。他方、Eコマースプラットフォームビジネスを展開する場合には外資100%可、といった具合です。
なお、ポジティブ投資リストに規定されていなくとも、個別法で外資規制が別途定められていたり、金融関係の業種においても別途規則により外資規制が定められていたりするので、注意が必要です。具体的な参入事業が決定した場合には、外資規制への該当性は慎重に判断する必要があります。
ここで、よく問題となるのが、自らの事業が外資規制に該当し、出資比率もポジティブ投資リスト記載の割合を超えてしまいそうだという場合にどうするか、といった点です。最近は、Eコマース事業や単純なディストリビューター事業がポジティブ投資リストから除外されたため、検討する可能性が減ってはいるものの、論点としては残っています。
上記の問題への対処として、よく見られるのがノミニースキームというものです。ノミニースキームとは、外資企業がポジティブ投資リストで規定する割合を超えた分の持分を、自らがコントロールできる内資法人またはインドネシア人(ノミニー)に保有させて、ポジティブ投資リストの規制をクリアしようとする手法です。
具体的には、外資企業が内資法人またはインドネシア人をコントロールするために、ローン契約を締結して株式取得費用を貸し付けたり、ノミニーが株式を取得するために借りた金銭債務の担保として株式に質権を設定したり、株主総会での議決権を外資企業が代理で行使できるようにするための委任状を交付したり、といった手法がとられます。
しかし、このようなスキームは、他人名義での株式を保有することを禁じた投資法33条1項に違反し、同2項により上記のような契約や宣言は無効となります。
もっとも、正当な株主間の取り決めと禁止されるノミニースキームとは区別する必要があります。例えば、ローン契約、株式への質権設定その他の担保設定は、それが貸主に一定の保護を与えるという理由のみで、直ちにノミニースキームに該当するものではありません。
当該取り決めが外資規制を潜脱し、実質的に受益権または支配権を外国投資家に移転させる意図をもって構築または実施されている場合には、禁止されるノミニースキームとして問題視される可能性があります。
実務上、ノミニースキームには重大なビジネス上のリスクも存在します。インドネシア人ノミニーが登記上の株主であり続けるため、ノミニーが協力を拒否したり、追加の対価を要求したり、外国投資家の想定と異なる行動をとったりすることに起因する紛争が生じる場合があります。
外国投資家の受益権はインドネシア法上の法的保護を受けられない可能性があるため、権利行使が困難となる場合があります。
PT(PMAを含む)の基本的な機関構成は次のとおりです。
なお、インドネシア会社法上、取締役やコミサリスにインドネシア国籍者または居住者を一定割合含めることが必須とされているわけではありません。
もっとも、税務番号(NPWP)の取得、銀行手続、就労ビザ(KITAS)の運用などの際に、取締役の選任に影響を与えることが多く、手続きを円滑に進めるという観点から、現地居住の取締役を1名置く設計が選ばれることが少なくありません。
役員構成は、ガバナンス・税務・出入国管理の三つの観点から早い段階で検討しておくと安全です。
PT PMAを設立しインドネシアで事業を開始するための手続きは、大きく分けて会社設立、法人納税者番号(NPWP)の取得、OSSでの事業許認可、駐在員のビザ取得という段階を踏みます。具体的なステップは次のとおりです。
会社設立証書への署名はインドネシアの公証人の面前で行われますが、日本企業の担当者が直接インドネシアの公証役場で手続きをすることは稀です。そのため、代理人による手続きの実施に関して日本国内で委任状を作成することが必要となります。
委任状は、公証役場での私署証書の認証、公証人の押印証明および外務省による押印証明(アポスティーユ)を取得することになります。
STEP3で述べる設立時定款に社名の記載が必要になるため、事前に社名登録の申請をします。会社名の申請は公証人を通じて行われますが、申請前に州名(Propinsi)と申請区(Kedudukan)が特定されていなければなりません。そのため、まだ法人格を取得していない段階で会社の住所を決める必要があるという問題が生じます。
この点について、実務上は、法人格取得前に発起人が賃貸借契約を締結し、当該行為を会社設立後最初の株主総会において追認するという対応が取られることがあります。法人格取得後は、契約当事者を会社名義に変更するため、賃貸借契約を修正または更新する必要があります。
会社設立証書には、設立定款、発起人、株式、設立時取締役、コミサリスに関する情報が必要となります。インドネシアの公証人によりインドネシア語で作成され、発起人による署名も必要です。こちらは、公証人が法務人権省に申請を行うことになります。
設立定款には、会社名・住所、会社の事業内容、会社の存続期間、払込資本金額、株式数、一株の額面金額、取締役会の開催方法、取締役・コミサリスの選解任に関する手続、配当に関する手続等が記載されます。
これらの情報が決定し次第、定款を作成します。もっとも、実務上、公証人は、適用法令および行政上の要件に従って準備された標準的なテンプレート・書式に依拠することが多く、そのため、投資家間の特殊な取り決めが定款に完全には反映されない場合があります。
投資家は、インドネシアの法令に適合しつつ、どのような取り決めを定款に盛り込めるかについて、早い段階で弁護士および公証人に相談することが重要です。留保事項、ガバナンスに関する権利、譲渡制限、エグジットの仕組み、紛争解決条項等、株主間の追加的な商業上の取り決めは、通常、株主間契約書に別途規定されます。
なお、会社設立証書の署名から法務人権省への設立申請までの期間は60日以内に行う必要があります。
また、ここで設立証書の他に、資本金払込みに関する証拠が求められることがあります。しかし、実務上は設立許可証(STEP4)がないと銀行口座を開設できない場合があるため、この段階では資本金を払い込むことができず、その証拠を提出できないという問題が生じ得ます。そのため、資本金払込みに関する証拠に代えて、設立許可決定が出された後、発起人により、速やかに払込みを行う旨の供述書を提出することも認められています。
公証人が法務人権省に設立許可証を電子申請し、法務省が設立承認決定書(SK Pengesahan)を発行します。この時点で法人格が成立します。
手続が順調に進んだ場合、STEP1~STEP4までの手続は、必要書類の準備状況、公証人による手続およびその他の行政上の要因にも左右されますが、概ね4~5週間程度で完了することが多いと考えられます。
国税総局の納税者番号取得用のウェブサイト上で必要情報を記入し申請を行います。
ここでは、取締役の納税者番号の入力が求められるため、取締役がインドネシア現地に居住していることが求められます。もっとも、取締役が外国人のみで構成される場合には、納税者番号を取得していない旨の供述書の提出が求められる場合もあります。現地税務署によって取扱いが異なる場合もあるので、手続や必要書類は事前に確認しておく必要があります。
この手続は、申請から取得まで概ね1週間で完了します。
オンライン許認可システム「OSS」に会社情報とKBLIを登録し、事業基本番号(NIB)を取得します。NIBは事業者IDかつ基本ライセンスとして機能します。
その後、KBLIに紐づいたリスク度合いにより追加で許認可が必要になるのかを判断し、必要であれば許認可を取得します。元来、申請すれば即日発行されるシステムではありますが、近年、OSSのシステムがシステムエラーにより作動しないなどの問題が頻発しています。
このため、日本企業としては、事業開始に必要なNIBがなかなか取得できないという問題も想定したうえで法人設立のスケジュールを組む必要があります。
納税者番号、事業基本番号を取得した後、銀行口座開設をし、定款登録後、60日以内に資本金を払い込む必要があります。銀行口座開設時には、法務人権省の設立承認決定書、納税者番号、事業基本番号などの情報が必要です。
ここまできて、ようやく法人として事業を始めることができます。
外国人を雇用する場合、外国人雇用計画(RPTKA)の承認を経て就労許可・滞在許可(KITAS)を取得します。
以上が標準的な法人設立の流れになります。もっとも、資源・エネルギー・防衛・インフラなど一部の分野では、設立前に投資調整庁への許認可取得が求められる場合があるため、業種によって順序が前後する点に留意してください。
最後に、進出を検討する日本企業が早い段階で確認・注意すべき事項を整理します。
インドネシアの会社制度は、2025年の一連の改正により、中小企業を含む外国投資家にとって参入のハードルが一部下がりました。もっとも、投資額基準やコンプライアンス義務は維持・強化されており、「設立して終わり」ではなく「設立後をどう運用するか」が成否を分けます。
KBLIと外資規制の事前精査、資金計画、合弁設計、そして設立後の継続的な義務履行――これらを早い段階で専門家とともに固めておくことが、円滑な進出と安定した事業運営への近道です。
法律事務所ZeLoでは、日本企業のインドネシア進出や、外国企業の日本市場参入を支援するリーガルサービスを提供しています。本件に関しご質問やご支援が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。