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フリーランス法の要点と実務対応策

近年、フリーランスとして働く人々が増加し、多様な働き方が広がる一方で、フリーランスの方に対する、不明確な契約条件の提示や報酬未払い、ハラスメントといった問題が顕在化しています。こうした課題に対応するため、2024年11月1日に「フリーランス保護新法」が施行されました。本法は、フリーランスの取引を適正化し、就業環境の安全性を確保するための新たな規制を定めています。本記事では、本法の背景や主要な規制内容、適用範囲、そして実務対応策について詳しく解説します。

フリーランス法の要点と実務対応策
LABOR-EMPLOYMENT
PROFILE
Toyohiro Fujita

Attorney admitted in Japan

Toyohiro Fujita

Graduated from Hitotsubashi University (LL.B, 2010), Hitotsubashi University School of Law (J.D., 2012), and passed Japan Bar Exam in 2012. Experience at Okamoto Masaaki Law office, Rays Consulting Law Office (2014-2022), and joined ZeLo(2022-). Main areas of practice include human resources and labor issues, litigation and disputes, general corporate governance, startup law, M&A・corporate restructuring, IPO, risk management, data protection, business rehabilitation, and bankruptcy.

フリーランス法の制定の背景、目的

フリーランス法とは?

フリーランス法(正式名称:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)は、フリーランスが事業者として安定した環境で業務に従事できるよう、発注者に対して適切なルールを定めることを目的として制定されました。本法は2024年11月1日に施行され、フリーランスと発注者の取引の透明性を向上させ、トラブルの防止を図るための規制を設けています。

制定の背景

近年、フリーランス人口が増加し、その働き方が広がる一方で、原則として労働関連法によって保護される労働者ではないため、従来の労働法制の枠組みでは十分に保護されないという課題がありました。特に以下の問題が顕在化していました。

  • 報酬の未払いや遅延
  • 契約条件の不明確さ
  • ハラスメント被害
  • 一方的な契約解除

これらの問題は、フリーランスが組織に属さず、企業との交渉力に格差があることが要因となっています。従来の下請法や労働関連法では、フリーランスが適用対象外となるケースも多く、十分な救済策が用意されていませんでした。

政府はこの状況を踏まえ、フリーランスの適正な取引を確保し・就業環境を整備するために、新たな法制度を導入する必要があると判断しました。

制定の目的

本法は、以下の2つの種類の規制から成っているものです。

1.取引の適正化(公正取引委員会が所管)

  • 契約条件の明示義務を発注者に課す
  • 報酬支払の適正化(支払期日の明確化、未払い防止)
  • 一方的な契約解除や報酬減額等の禁止(1か月以上の業務委託の場合)

2.就業環境の整備(厚生労働省が所管)

  • 募集情報の的確表示義務
  • フリーランスへのハラスメント防止措置の義務化
  • 妊娠・出産・育児・介護と業務の両立に対する配慮義務(6か月以上の業務委託の場合)
  • 契約解除の事前予告義務、説明義務(6か月以上の業務委託の場合)

フリーランス法の意義

本法の施行により、フリーランスは、契約内容の明確化と一方的に不利な条件で取引を強制されることから保護され、契約上のトラブルを未然に防ぐことが可能となります。これにより、フリーランスと発注者の双方にとって公正な取引環境が確保されることが期待されています。

保護される「フリーランス」と適用される事業者

保護される「フリーランス」の定義

本法において保護対象となるのは、「特定受託事業者」と呼ばれるフリーランスです。以下のすべての要件を満たす者が「特定受託事業者」として保護の対象となります。

  • 事業者と業務委託契約を締結し、業務を遂行する者
    • 企業に雇用される者や、消費者を直接相手に事業を営む個人事業主(例:飲食店経営者など)は対象外となります。
  • 従業員を雇用していないこと
    • 但し、短時間勤務又は短期間の従業員を雇用することは従業員を雇用していると扱われない
  • 法人の場合、代表者以外に役員が存在しないこと(いわゆる一人法人)

法律を遵守すべき「事業者」

本法の適用を受けるのは、「特定受託事業者に業務委託を行う事業者(発注者)」です。発注者の規模や業種を問わず、フリーランス(特定受託事業者)に業務委託を行うすべての法人・個人事業者が適用対象となります。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 企業(法人)による業務委託
    → 例:企業がフリーランスにデザイン制作やプログラミングを依頼
  • 個人事業主による業務委託
    → 例:個人事業主が外注先としてフリーランスに記事執筆を依頼
  • 再委託を行う事業者(一次受託者)
    → 例:企業がフリーランスに業務を委託し、そのフリーランスが別のフリーランスに再委託する場合

契約期間による規制の違い
本法では、業務委託契約の期間によって、発注者が負う義務が異なります。

  • 契約期間に関わらず負う義務
    • 取引条件の明示義務
    • 報酬の適正な支払い(原則、給付の受領から60日以内の支払い義務)
    • ハラスメント防止措置
    • 募集条件の的確表示義務
  • 1ヶ月以上の契約
    • 一方的な契約変更・報酬減額等の行為の禁止
  • 6ヶ月以上の契約
    • 契約解除の30日前予告義務、理由開示義務
    • 妊娠・出産・育児・介護と業務の両立への配慮義務

規制の内容

概要

フリーランス保護新法では、取引の適正化と就業環境の整備をするために発注者とフリーランスの関係に応じた規制を設けています。本章では、発注者側の分類と、適用される規制の種類について整理します。

発注側に着目した分類

本法では、業務委託を行う発注者の形態に応じて、適用される規制が異なります。発注者は以下の4つのカテゴリーに分類され、義務内容が段階的に増えていきます。

発注者の分類該当するケース課される義務
業務委託事業者フリーランス(特定受託事業者)に業務を委託するすべての事業者

※ 従業員を雇用していない事業者(個人事業主、一人法人など)も対象になります。
取引条件の明示
特定業務委託事業者従業員を雇用又は役員がいる事業者

取引条件の明示、報酬支払いの適正化、募集情報の的確表示、ハラスメント防止措置
1か月以上の特定業務委託事業者従業員を雇用又は役員がおり、1カ月以上の業務委託を行う事業者取引条件の明示、報酬支払いの適正化、募集情報の的確表示、ハラスメント防止措置、禁止行為の遵守
継続的業務委託を行う特定業務委託事業者従業員を雇用又は役員がおり、6カ月以上の業務委託を行う事業者取引条件の明示、報酬支払いの適正化、募集情報の的確表示、ハラスメント防止措置、禁止行為の遵守、育児介護等と業務の両立に対する配慮義務、中途解除等の予告、解除等の理由の説明義務

規制の種類に着目した分類

規制の種類に応じて分類すると次のようになります。

取引の適正化(公正取引委員会所管)

  • 取引条件の明示義務(書面・電子データでの提示)
  • 報酬の適正化(原則60日以内の支払い義務等)
  • 禁止行為の遵守(報酬減額や不当な仕様変更の禁止)

就業環境の整備(厚生労働省所管)

  • 募集情報の的確表示
  • ハラスメント防止措置(相談窓口の設置、対応義務)
  • 妊娠・出産・育児・介護と業務との両立への配慮義務(継続的契約に適用)
  • 契約解除時等の事前予告義務(30日前通知)、解除理由等の説明義務

取引の適正化

取引条件の明示義務

フリーランスとの取引の適正化を図るため、発注者(業務委託事業者)は業務委託の際に、一定の取引条件を明示する義務を負います。これにより、契約条件が曖昧なまま業務が進むことを防ぎ、トラブルの発生を抑制します。

明示すべき取引条件

  1. 取引当事者の情報
    a. 業務委託事業者(発注者)および特定受託事業者(受注者)の商号、名称等
  2. 業務委託の締結日(合意日)
    a. 契約が成立した日付を明示
  3. 業務の内容(給付の内容)
    a. 品目、品種、数量、規格、仕様、知的財産権の譲渡・許諾の範囲
    b. 成果物の具体的な要件(納品の形態・仕様など)
  4. 業務の完了期日および役務提供の期間
    a. 成果物の納品日
    b. 業務委託の開始日および終了日(契約期間を定める場合)
  5. 給付を受領する場所(納品先)
    a. 成果物の納品場所(オンライン・オフラインの指定)
    b. 役務提供を受ける場所(オフィス・リモートなど)
  6. 検査に関する事項(検査を実施する場合)
    a. 成果物や業務の検査が必要な場合、その検査を完了する期日
  7. 報酬の額および支払期日
    a. 契約時点での報酬の確定額または算定方法の明示
    b. 業務完了から60日以内に支払われることの確認
  8. 報酬の支払い方法(現金以外の支払いを行う場合)
    a. 現金以外(電子マネー、仮想通貨、その他の決済方法)で支払う場合、その方法を明示

これらの条件は書面または電磁的方法で通知する必要があります。口頭のみの通知は認められず、取引の透明性を確保するための重要な規定です。

報酬支払の適正化

本法では、フリーランスに対する報酬の適正な支払いを義務付け、支払い遅延や報酬未払いのリスクを軽減しています。

報酬支払期日の規定

  • 給付を受領した日から起算して60日以内に支払うことを義務付け
  • 取引開始時に明確な支払期日を設定することが必要
  • 60日を超える支払い期日の設定は無効とされ、強制的に60日以内の期限に修正される
  • 但し、発注者が再委託として当該業務委託契約を締結している場合には、元委託先の報酬の支払期限から30日以内に設定することが可能

1か月以上の業務委託契約における禁止行為

本法では、1か月以上の業務委託契約において、発注者がフリーランスに対して行ってはならない禁止行為が明確に定められています。

以下の行為が禁止されています。

  1. 責めに帰すべき事由がないのに給付の受領を拒むこと
    フリーランスが契約通りに納品したにもかかわらず、発注者が受け取りを拒否することは禁止されています。
    受領を拒む場合は、合理的な理由(品質不適合、契約違反など)を示す必要があります。
  2. 責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額すること
    契約時に定めた報酬額を、業務完了後に一方的に減額することは禁止されています。
    事前合意のない値下げ交渉や支払い拒否は認められません。
  3. 責めに帰すべき事由がないのに返品を行うこと
    フリーランスが納品した成果物を、特段の問題がないにもかかわらず、発注者が返品することは禁止されています。
  4. 通常の相場に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること
    市場相場を大幅に下回る報酬で契約を締結することは、フリーランスの立場を不当に利用する行為とされ、禁止されています。
  5. 正当な理由がなく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
    フリーランスに対し、発注者が不当に特定の商品を購入させたり、関係のないサービスを契約させたりすることは禁止されています。
    例:番組制作会社が、フリーランスのカメラマンに、自社の制作した映画のチケットを購入させるなど。
  6. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させ、特定受託事業者の利益を不当に害すること
    フリーランスに対して、契約外の金銭負担や無償での役務提供を強要することは禁止されています。
    例:フリーランスの運送ドライバーが運送のみを受託していたのに、荷積み作業を行わされる。
  7. 責めに帰すべき事由がないのに給付内容を変更させ、またはやり直させ、特定受託事業者の利益を不当に害すること
    契約で定めた仕様を、業務進行中や納品後に発注者の一方的な判断で変更することは禁止されています。
    例:プログラム作成において、あとから仕様を厳しく変えるなど。

就業環境の整備

概要

フリーランス法では、発注者にフリーランスの就業環境の整備を義務付け、安定的に業務に従事できる環境を確保することを目的としています。主な規制は以下の4つです。

募集事項の適正表示

  • 業務内容や報酬などの募集条件を正確に表示する義務。
  • 虚偽や誤解を招く表現を防止。

妊娠・出産・育児・介護と業務の両立の配慮

  • 6カ月以上の業務委託フリーランスに対し、育児・介護等との両立に配慮する義務。

ハラスメント防止措置

  • 発注者にハラスメント相談窓口の設置や防止対策を義務化。

解除等の予告義務、理由の説明義務

  • 解除等をする場合、原則として30日前の予告をし、請求がある場合に理由の説明をすることを義務化。

妊娠・出産・育児・介護への配慮

発注者は、継続的業務委託関係(6か月以上)にあるフリーランスが、妊娠・出産・育児・介護と仕事との両立に配慮する義務を負います。

主な配慮事項

  • 業務調整や納期の柔軟な対応を検討
  • 育児・介護に伴う突発的な休業への配慮
  • 申し出しやすい環境の整備

この義務は6か月に満たない業務委託をするフリーランスに対する関係では努力義務であり、発注者に一律の対応を強制するものではありません。

ハラスメント防止措置

発注者は、フリーランスへのハラスメント防止措置を義務付けられます。ハラスメント申告が発生した時に、業務委託関係においても適切な対応が求められます。

発注者の義務

  • ハラスメント防止の方針を明確化
  • 相談窓口の設置
  • ハラスメント発生時の対応手順を策定
  • ハラスメントを理由とした契約解除や報復措置の禁止

対象となるハラスメント

  • パワー・ハラスメント
  • セクシュアル・ハラスメント
  • 妊娠したこと、出産したこと、又は妊娠又は出産に起因する症状からなる状態への言動により就業環境が害されるもの
  • 上記の配慮の申出をしたこと又は配慮を受けたことへの言動により就業環境が害されるもの

罰則等

行政による監督と指導

フリーランス保護新法では、発注者が義務を怠った場合に行政が監督・指導を行う体制を整えています。具体的には以下の措置が取られます。

  • 指導・助言:違反が認められた場合、行政機関が発注者に対して是正を促す。
  • 報告徴収・立入検査:必要に応じて、行政機関が発注者に対し、取引の実態を調査できる。
  • 勧告・命令・公表:指導に従わない場合、行政機関が勧告し、それでも改善されない場合は命令の発出や違反企業名の公表が行われる。

罰則規定

本法には、義務違反に対する罰則も規定されています。

  • 命令違反
    • 行政の命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科される。
    • 両罰規定が適用され、法人にも罰則が課される。

実務対応

フリーランス保護新法の施行により、発注者は業務委託契約書の内容を適正に整備し、フリーランスとの取引を明確かつ公正に行うことが求められています。本章では、特に重要な契約書の見直しポイントについて整理します。

業務委託契約書において見直すべきポイント

Point1:明示事項

本法では、業務委託契約の透明性を確保するため、契約締結時に一定の事項を明示することが義務付けられています。契約内容が曖昧なまま業務が進むことを防ぎ、トラブルの発生を抑制することを目的としています。

明示事項の抜粋(公取委規則第1条参照)

  • 業務委託をした日(業務委託をすることについて合意した日)
  • 給付の内容(品目、品種、数量、規格、仕様、知的財産権の譲渡・許諾の範囲など)
  • 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日(契約期間がある場合は当該期間)
  • 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所(納品場所やサービス提供の場所)
  • 特定受託事業者の給付の内容について検査をする場合、その検査を完了する期日(検査がある場合はその期日)
  • 報酬の額及び支払期日(契約締結時に明示し、60日以内の支払いを確保)
  • 報酬の全部又は一部の支払につき現金振込ではない場合、その明示(電子マネー等の場合、詳細を記載)

Point2:再委託の場合の契約書文言

第●条(再委託の明示)
委託者及び受託者は、以下のとおり、本件業務の委託が、元委託者から委託者が委託を受けた業務(以下「元委託業務」という。)の全部又は一部について再委託するものであることを確認する。
(1) 元委託者:●
(2) 元委託業務の対価の支払期日:●年●月●日

再委託の場合の明示事項

再委託を行う際は、元委託者の支払期日から起算して30日以内に定める必要があります。特に、再委託であることを契約書内で明示し、以下の事項を記載することが求められます(法第4条3項、公取委規則第6条)。

(1) 再委託である旨
(2) 元委託者の商号、氏名または名称、もしくは事業者別の識別番号等
(3) 元委託業務の対価の支払期日

契約書への反映

これらの事項を契約書に明示しない場合、元委託者の支払い期日から起算して30日以内に支払いを受けることができないため、契約時点で適切に規定することが重要です。再委託に関する文言は、契約書のひな形に組み込んでおくことも有効です。

Point3:成果物の納入についての契約書文言

第●条(成果物の納入)
受託者は、20●●年●●月●●日に、次に定める成果物を次に定める場所に納入しなければならない。成果物の具体的な仕様については、本書面別紙により定めるところによる。
(1) 成果物:●●(次条第1項に定める成果物の著作権及び同条第2項に定める知的財産権を含む。) (2) 納入場所:●●

期日:納入期日は、契約で明確に定める必要があります。本法では、報酬の支払いは給付の受領から60日以内と規定されており、再委託がある場合は、元委託者の支払期日から30日以内とする必要があります。

成果物:知的財産権の譲渡や許諾を含む場合は、契約書で明示することが求められます。本条では、知的財産権の移転を想定した表現を採用しています。

納入場所:給付を受領し、または役務を提供する場所は明示する必要があります。納品がメール等のオンライン形式で行われる場合は、その旨を記載することで対応可能です。

Point4:業務委託料と知的財産権の帰属

第●条(業務委託料)
委託者は、受託者に対し、本委託業務の対価(以下「業務委託料」という。)として、金●●円(消費税別)(第●条に定める知的財産権の帰属及び移転の対価を含む。)を支払う。

第●条(業務委託料)
1. 本委託業務の対価は、月額金●●円(消費税別)とする。
2. 第●条に定める知的財産権の帰属及び移転の対価は、金●●円(消費税別)とする。

知的財産権を譲渡・許諾する場合、その対価を明示する必要があり、契約書に記載することで取引の透明性を確保できます。

Point5:契約期間の定め、中途解約の定め

継続的業務委託の場合(法第16条1項)

第●条(契約期間)
1.本契約の有効期間は、本契約締結の日から20●●年●●月●●日までとする。
2.前項の規定にかかわらず、期間満了の30日前までに委託者、受託者のいずれからも書面による本契約の変更又は終了の申し入れのない場合、本契約は同一条件で自動的に1年間更新され、以後も同様とする。

第●条(期間内解約)
委託者は、受託者に対して、解約日の30日前までに書面により通知することにより、いつでも本契約を解約することができる。

契約期間の定め方として一般的ではありますが、継続的業務委託の場合は、30日以上前に、解約等の予告期間を適切に設定することが重要です。

ハラスメント防止措置として見直すべきポイント

フリーランス保護新法の施行に伴い、ハラスメント防止措置の対象が拡大され、特定受託業務従事者(フリーランス)も保護の対象となりました。これにより、従来の従業員向けハラスメント防止対策を見直し、業務委託契約に関わるフリーランスにも適用する等の対応が求められます。

方針の明確化・規程の改定

ハラスメント防止の方針を明確にし、就業規則やハラスメント防止規程を改定することが必要です。なお、契約中のフリーランスだけでなく、業務委託契約の交渉中のフリーランスに対するハラスメントも禁止対象とすることを明示し、社内外に周知することが望ましいとされています。

相談窓口の設置と周知

特定受託事業者が安心して相談できるよう、ハラスメント相談窓口を設置し、適切に周知することが求められます。周知の方法としては、

  • 契約書面やメールを通じて、ハラスメント相談窓口の連絡先を伝える
  • イントラネットなど特定受託事業者がアクセス可能な場所に掲載する

といった手法が考えられます。

相談対応担当者の教育

ハラスメント相談に適切に対応するため、相談担当者への教育を実施し、対応能力の向上を図ることが求められます。特に、プライバシーへの配慮を徹底し、相談者が安心して話せる環境を整えることが重要です。

育児等と業務の両立への配慮申出に対する対応方法

フリーランスの働き方は多様であり、委託者側と受託者側の状況も個別性が高いため、「こうすべき」と決めつけるのではなく、適切なプロセスを踏んで結論を導き出すことが重要とされています。育児・介護等に関する配慮の申出があった場合、継続的業務委託を行っている委託者は、配慮義務を負いますので、丁寧に対応し、調整を行うことが望まれます。

配慮の実施方法

  1. 申出の対応プロセス
    申出内容の把握(具体的な状況を確認)
    十分な検討(申出内容に加え、他の選択肢も考慮)
    実施・不実施の伝達
  2. 申出が不実施となる場合の対応
    ・配慮を実施できない場合は、その理由を説明することが求められる。
    ・委託者に対し、必ずしも申出内容の実現を義務付けるものではない。
  3. 申出しやすい環境の整備
    ・ 配慮の申し出が可能な窓口や手続きの周知を行うことが望ましい。

具体的な配慮の例

  • 妊婦健診の日程に合わせた打合せ時間の調整
  • 妊娠に伴う急な体調不良時の対応策を事前に決定
  • 出産による一時的な移住に伴う成果物の納入方法の変更
  • 子の急病による作業時間の確保が難しい場合の納期調整
  • 介護のため特定曜日のオンライン勤務を調整

望ましくない取扱い

  • 配慮の申出を阻害する行為
  • 申出を理由とした不利益な取扱い(発注の減少や契約解除など)

委託者は、育児や介護を理由にしたフリーランスへの不当な扱いを防ぐため、社内において、これらの行為をしないように周知し、フリーランスの就業環境を安定したものにすることが望まれます。

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