fbpx

労働紛争が発生した場合の会社側の対応や、弁護士の役割とは?交渉・労働審判・訴訟・仮処分・労働組合による団体交渉について、弁護士が解説

企業が人によって構成される以上、人事労務の問題は避けて通れません。時には、事業主と労働者間でトラブルが発生する場合もあります。特に、解雇紛争や未払い残業代請求、各種ハラスメントを理由とした損害賠償請求、会社の人事権、懲戒権行使の効力を争う紛争など、様々な場面で労働紛争に発展する可能性があります。労働紛争が起こった際には、初動対応が非常に重要です。判断を誤ると、企業のレピュテーションにも関わる大きな問題にも発展しかねません。トラブルを早期かつ円満に解決するためには、労働紛争の専門家である弁護士によるリーガルアドバイスが必要不可欠です。本記事では、主に会社側(事業主側)の視点から、労働紛争の手続きの種類や概観、その中での弁護士の働きについて解説します。

労働紛争が発生した場合の会社側の対応や、弁護士の役割とは?交渉・労働審判・訴訟・仮処分・労働組合による団体交渉について、弁護士が解説
LABOR-EMPLOYMENT
PROFILE
Toyohiro Fujita

Attorney admitted in Japan

Toyohiro Fujita

Graduated from Hitotsubashi University (LL.B, 2010), Hitotsubashi University School of Law (J.D., 2012), and passed Japan Bar Exam in 2012. Experience at Okamoto Masaaki Law office, Rays Consulting Law Office (2014-2022), and joined ZeLo(2022-). Main areas of practice include human resources and labor issues, litigation and disputes, general corporate governance, startup law, M&A・corporate restructuring, IPO, risk management, data protection, business rehabilitation, and bankruptcy.

労働紛争が発生した際の主な手続き

労働紛争が発生した際、解決のために主に以下の5種類の手続きが考えられます。

  • 裁判外での交渉(行政機関によるあっせん手続等を含む)
  • 労働審判
  • 民事訴訟
  • 仮処分
  • 労働組合による団体交渉

その中で、主に弁護士がどのようなポイントを押さえて対応をするのか、なぜ専門家である弁護士のリーガルアドバイスが必要なのか解説します。

裁判外での交渉

一般的に、労働紛争を解決するためには、訴訟等の法的手続や労働組合との団体交渉など相当の労力が必要です。したがってこれらの手続に至る前に、交渉による解決を目指す場合が多くあります。

交渉の際、労働法に精通した事業主側の弁護士は、金銭面だけでなく、レピュテーションリスクや紛争継続のコスト等も踏まえて可能な限り事業主側に有利な解決を目指します。その場合、法的手続や団体交渉に移行した際の見通し・リスクを踏まえて対応します。

労働者側に弁護士が就任している場合とそうでない場合があります。労働者側に弁護士が就任していない場合は、事業者側もあえて弁護士を表に出さずに進めていただくことも多いです。その方がスムーズに話し合いが進む場合が多いからです。

労働者側に代理人弁護士が就任した場合には、概ね事業主側も代理人弁護士を選任した方が良いことが多いといえます。会社担当者が、労働法に関する知識が不十分なまま、労働者側の弁護士と交渉することで不利な発言を引き出されてしまうなどして事態を深刻化させることもあるからです。

そのほか交渉を弁護士に依頼するメリットとして、交渉窓口を弁護士に移すことにより、経営者や会社担当者が自ら弁護士や相手方本人と交渉する必要が無くなり、経営や業務に専念していただくことができる点があります。労働者や元労働者との交渉には多大なストレスがかかることもありますので、弁護士が窓口を引き受けることによって経営者や会社担当者の精神的な負担を軽減することが可能になります。

労働審判

労働審判とは、事業主と労働者の双方が、主張・立証をしつつも、話し合いベースで3回以内の期日にて解決することを想定した法的手続です。訴訟よりも早い期間で解決が見込め、事業者側にとっても、メリットが大きい手続きです。

労働審判手続内で調停が成立しない場合には、「労働審判」(訴訟の場合の「判決」のイメージ)が下されますが、申立人、相手方のどちらかから異議が出されると、訴訟手続に移行します。

労働審判は、原則、第1回期日において、事業主側の主張・立証を行うことが想定されているため、突如労働者から労働審判の申立て受けた場合など、タイトなスケジュールで準備するケースが多いです。そのため、スピード感をもって事業主側の主張を理解し、解決に向けた見通しを立て、労働審判にいかなる戦略で臨むかを決定する専門家の存在は不可欠です。

一方、労働審判は、一般的には調停が成立する可能性が高いため、話し合いによる解決をする機会として事業主側にメリットも大きい手段といえます。訴訟に移行させないためにどのように労働審判に望むか、という観点からも、専門家からのリーガルアドバイスがあるとよりスムーズに進むでしょう。

民事訴訟

民事訴訟の手続は、事業主側と労働者側の主張のどちらが法的に正しいか、白黒つけることを原則とする手続で、終局的には判決の言い渡しが予定されています。

事業主側・労働者側ともに、期日までに答弁書、準備書面や反論のための証拠を提出することを繰り返し、場合によっては証人尋問を経て、裁判官が判決を下します。

解雇紛争、未払い残業代請求、各種ハラスメントを理由とした損害賠償請求などにおいて、労働者から訴訟提起を受けた場合、事業主側に有利な判決へ導くためには、証拠の収集・分析を行ったうえで、戦略的に主張の組み立てを行うことが必要です。訴訟手続においては、1つの紛争の中に複数の論点が含まれていることも多く、法的な観点から細かい点まで検討し、主張を組み立てる必要があり、一般的には専門家のアドバイスなしに適切に進めることは難しいです。

また、訴訟手続が進行する過程で、裁判官から和解を勧められることも多くあります。その場合には、和解協議に応じるか、それとも訴訟手続を進行させるかの意思決定をしなければなりません。仮に和解交渉を行う場合にも事業主側に有利な条件での和解を引き出すには、それまでのプロセスで可能な限り会社の主張に理があることを裁判所に理解していただく必要があります。したがって、初動の段階から大局観と細かい事実関係のいずれにも目配りしながら、有利な和解を得られるよう主張立証活動をすることが重要です。

和解による解決を望まない場合には、場合によっては証人尋問も視野に入れて、主張・立証を行う必要があります。証人尋問の戦略を立てるためにも、専門家のアドバイスは不可欠でしょう。

仮処分

民事訴訟は非常に時間がかかり、1年以上かかることも珍しくありません。例えば、解雇事案の場合、労働者は給与を得られなくなり困窮する可能性があります。

そのような際に用いられる手段が、労働者からの仮処分の申し立てです。具体的には、労働者の請求権(被保全権利の存在)と、生活に困っているなどの事情(保全の必要性)が認められれば、裁判所は、事業主に、仮に従業員として賃金を受けられる地位を認めて給料を支払うように命令をします。
これは仮の処分ですので、その後、民事訴訟において争い、権利を確定することが予定されているものの、従業員にとっては民事訴訟よりも早く暫定的な救済を受けられるというメリットがあります。

もっとも、解雇事案において労働者が金銭的な解決を目指す場合は、「労働審判」の手続きが採用されることが多いです。そのため、仮処分を利用するのは、現職復帰にこだわりをもつ労働者が多い傾向にあります。

事業主が仮処分の申し立てを受けた際の弁護士の役割として、仮処分が発令されないように主張、立証活動をし、あるいは仮処分手続きの中で事業主に有利な和解を獲得するために活動します。

そのほか、解雇事案以外で仮処分手続きが利用される例として、独立した従業員が、事業主と合意した競業避止義務に違反して、競業事業を営んでいるなどのケースがあります。この場合、事業主側から従業員に対し仮処分が用いられます。

元従業員が競業避止義務に違反して競業行為を行っている場合、事業主から元従業員に対し、訴訟手続を通した損害賠償請求が行われるケースもあります。しかし、訴訟をしている間に、顧客が元従業員に奪われてしまい、事業活動が回復不能なレベルでダメージを負ってしまうことも少なくありません。
訴訟に比べて、競業行為差止めの仮処分は、申し立てから6か月程度もあれば仮処分手続上は結論を得られることが多いため、早期に元従業員の行為を止める方法として有効です。

労働組合による団体交渉

団体交渉とは、労働者が団結して、使用者側と労働条件などについて交渉することを指し、労働組合による団体交渉は、在職中の複数の労働者が自らの労働条件の向上を目指して行われることが多いです。一方で、未払い賃金の請求や解雇紛争を解決するための手段として用いられるケースも珍しくありません。

労働組合は労働組合法により保護された存在であるため、事業主側が正当な理由なく団体交渉を拒否し、または団体交渉において不誠実な対応をすると、不誠実交渉に当たるとして違法とされる可能性があります。この場合は、命令文がインターネット上に公表されるケースも見られます。

そのため、団体交渉への対応をするにあたっては、団体交渉に精通した弁護士とともに対応することが安心です。団体交渉の申し入れを受けた際の対応や、期日当日の対応ひとつひとつを弁護士サポートのもと行い、団体交渉を上手く機会として活用することで、労働問題を法的手続に移行させることなく解決を図ることができる場合もあります。

労働紛争に関する対応は弁護士とともに

以上の通り、事業主と労働者間のトラブルが労働紛争に発生した場合、どのような手続きが取られた場合でも、労働法に精通した弁護士のサポートは欠かせません。

法律事務所ZeLoでは、人事労務に関する多数の実績を持つ弁護士・パラリーガルを含めたチーム体制で、企業の皆様のお悩みに対応しています。

労働紛争については、解雇、未払賃金、懲戒処分、メンタルヘルス等による休職関連、競業・不正競争行為など、様々な労働紛争に対し、交渉代理、仮処分手続、労働審判手続、訴訟対応、団体交渉、労働基準監督署対応など、様々な手段で解決に導いてきました。

団体交渉・労働組合対応についても、代理人として団体交渉へ出席し、労働組合との代理交渉業務を多数実施したり、労働委員会への救済命令申立事件について会社代理人として手続対応をしたりと、多数の実績があります。

対応ひとつで、事業主側が不利益を被る可能性も少なくありません。労働紛争に関する対応でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

加えて、法律事務所ZeLoの法律顧問サービスLPOサービス(Legal Process Outsourcing Service)では、企業法務全般の法務パートナーとして、日常的な法律相談、法改正対応、人事制度の設計、就業規則・労使協定等を含む社内規程の整備に関する法的助言等、幅広く対応が可能です。お困りの方はぜひお気軽にご相談下さい。

労働紛争が発生した場合の会社側の対応や、弁護士の役割とは?交渉・労働審判・訴訟・仮処分・労働組合による団体交渉について、弁護士が解説

Mail Magazine

労働紛争が発生した場合の会社側の対応や、弁護士の役割とは?交渉・労働審判・訴訟・仮処分・労働組合による団体交渉について、弁護士が解説

Contact

Page Top