介在価値の大きさがやりがいに繋がる──私がZeLoに転職したワケ
Attorney admitted in Japan
Akihiro Saotome
2022年4月に法律事務所ZeLo・外国法共同事業に参画し、広告・表示分野に関する専門性を生かして活躍している伊藤敬之弁護士。大阪の法律事務所に5年間在籍し、その後消費者庁表示対策課への2年間の出向を経て、ZeLoへ入所しました。弁護士というキャリアを選択した背景から、ZeLoに入所するまでの経緯や経験、今後ZeLoで取り組んでいきたいことについて聞きました。
目次
――弁護士を志したきっかけについて教えてください。
高校生の頃、法律を扱うテレビTV番組が好きでよく観ていたことがきっかけです。弁護士が日常で起こるトラブルを法的な観点から検討しているところに興味を持ちました。その後法学部に入り、民法や刑法などを勉強したところ、日常生活の様々な場面で法律が関わっていることに面白さを感じ、法律のスペシャリストである弁護士を目指しました。
――民間企業への就職など、他の進路との迷いはありませんでしたか?
他の進路はあまり検討しませんでしたね。所属していたゼミでも法曹を目指す人が多かったので、自分も自然にロースクールを目指しました。
ただ、司法修習生の頃は、裁判官になる道も少し検討していました。それぞれの当事者から出された事実をもとに、法的な妥当性を考えた上で、双方納得できそうな妥当な和解案を導き出すことにも興味を持ったからです。
――司法試験合格後、1年間の実務研修である司法修習を修了すると、裁判官・検察官・弁護士のいずれになるか選ぶことができるんですよね。最終的に、なぜ弁護士を選んだのですか?
弁護士の業務範囲の幅や、自由度の高さに魅力を感じたからです。
裁判官は、基本的には弁護士側と検察側の間に立ち、弁護士や検察官が裁判所に持ってきた材料をもとに検討を進めていきます。他方で、弁護士は、案件の当事者により近い立場で関わることができるので、クライアントから聞いた話を、「裁判所に対してどのような構成でどう見せるか」などの過程にも携わることができます。紛争の予防〜紛争解決まで幅広く関わることができる点にも魅力を感じ、最終的には大阪の法律事務所に就職しました。
――大阪の弁護士法人色川法律事務所を選んだ決め手について教えてください。
裁判官としてのキャリアも迷っていたくらい訴訟に強く関心があったので、訴訟を強みにしている事務所かつ、企業法務全般に広く従事できるところに勤めたいと考えていました。
色川法律事務所は、最高裁判所の判事をされていた故色川幸太郎弁護士が創業した事務所で、訴訟を強みにしていました。医療訴訟や行政訴訟など、訴訟の案件の幅も広く、魅力的でした。
また、訴訟以外にも企業法務全般を取り扱っているため、専門分野・得意分野は持ちつつも、様々な分野の対応経験が積める環境でした。
――実際にはどのような業務をされていたのでしょうか?
専門としていたのは、やはり訴訟です。企業間の契約訴訟や、労働者から訴えられた労働訴訟、顧客から訴えられたメーカーの対応、医療訴訟や行政訴訟など、様々な種類の訴訟を経験させてもらいました。
そのほか、日常の法律相談やM&A・デューデリジェンス、倒産事件、品質不正があった時の第三者調査委員会なども対応していました。
――学生時代から訴訟対応への憧れがあり弁護士になったとのことですが、実務を経て、どのように感じられましたか?
企業などの当事者にとって、訴訟は非常にインパクトのある問題のひとつです。医療訴訟で医師側の代理人をした際には、「我々医師は患者のことを考えてベストを尽くしているのに、これで責任を取れと言われたらやっていられない」と言われ、当事者にのしかかる重責を切に感じたこともありました。代理人として、クライアントの立場や状況を裁判所に納得してもらえるように説明することは難しくもありましたが、無事解決してクライアントから感謝のお言葉をいただけた時は、非常にやりがいを感じました。
――その後、弁護士6年目に、大阪の法律事務所から消費者庁に出向されました。どのような経緯で消費者庁を選ばれたのでしょうか?
弁護士は、5〜6年目くらいまでに、キャリアの幅を広げるために留学や官庁・企業へ出向することが多いです。自分自身も、これからのキャリアを考えた時に、訴訟の他にも、自信を持てる専門性を獲得したいと考えていました。そこで、様々な企業などの情報が集約していて、専門性を身につけられる官庁に絞り、日常法務への汎用性が高い景品表示法を取り扱う消費者庁の表示対策課へ応募しました。
――消費者庁の表示対策課では、どのような業務をされていたのでしょうか?
2年間の任期中、表示対策課の事件班に所属し、主に景品表示法の違反調査を行っていました。事件班では、対象の事業者と直接やりとりをして、報告書や資料を提出してもらい、違反しているかどうかを検討します。違反していた場合、調査報告書を作成し、命令するか行政指導をするかを調整・判断する、というのが一連の流れです。
事件調査がメインでしたが、訴訟対応も行いました。企業への行政処分に対して、取消訴訟や行政不服審査などが起こった際に、法務局や法務省と連携して書面の作成などを行います。
その他に、広告・表示分野の業務で弁護士が必ず参照するとされている通称「緑本」(『景品表示法』〔第6版〕(商事法務、2021年))の改訂出版の執筆にも対応しました。
――その後、なぜZeLoに入所されたのでしょうか?
大学時代の知り合いである北田さん(北田晃一弁護士)などがZeLoで働いていたため、ZeLoの話は以前から聞いていました。自分自身は家族が関西にいるため、東京をベースに働く発想はあまりなかったのですが、消費者庁への出向で一時的に東京で生活したところ、東京で働くことも選択肢のひとつに上がってきました。
ちょうどその頃ZeLoのオフィスに行かせてもらう機会があり、オフィスで感じた熱気に魅力を感じたことが決め手になりました。
ZeLoには、良い部分も悪い部分もオープンにして、みんなで事務所を良くしていこうという風土があります。主体性をもって働いているメンバーと一緒に、事務所を大きくしていく経験ができるのは面白そうだなと思いましたね。
また、消費者庁で身に付けた専門性もより活かせそうだなと感じた点も大きかったです。ZeLoはスタートアップから中小・上場企業まで、様々なフェーズ・業態の企業の支援をしています。広告・表示ひとつとっても企業によってアドバイスのポイントが異なるため、消費者庁で積んだ幅広い経験が役立つと思いました。
実際、自分の担当案件以外でも所内の弁護士から問い合わせがあることも多く、知見が活かせているという実感があります。
――そのほか、入所前後のギャップなどはありましたか?
クライアントとのコミュニケーションをはじめ、スピード感には驚きました。ZeLoでは、SlackやChatworkなど、クライアントが普段使用しているツールに合わせてコミュニケーションを取っています。今まではメールや打ち合わせベースだったので、各段に早く話が進んでいる印象があります。
もうひとつ驚いたのは、情報発信の力ですね。私もZeLoに入所して2カ月後に、景品表示法に関するセミナーに登壇させていただきました。個人の専門性を活かした情報発信の機会をもらえるのはありがたいなと思います。このセミナーをきっかけに、案件のお問い合わせをいただいたこともありました。
――今後の目標はありますか?
自分の専門である景品表示法の領域で、事務所全体をけん引しながらサービスの質の向上に貢献していきたいです。自分自身の経験や知識をメンバーにシェアして、「広告・表示に強い事務所」と思ってもらえるようになりたいですね。
また、現在も「広告・表示チーム」としてサポートにあたっていますが、その体制をより強固なものにしていきたいです。弁護士が相互に専門性を高めつつ、ひな形の作成や知見の共有で効率化を図ることで、より迅速かつ質の高いサービスをクライアントに提供していきたいです。
※掲載内容は掲載当時のものです(掲載日:2023年3月31日)
(写真:根津佐和子、文:田中沙羅、編集:髙田侑子、渡辺桃)