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弁護士が基本から解説!CBDの輸入・販売で押さえておきたい法規制と法改正の動向

近年ヘルスケアや美容分野において、世界的に注目を集めているCBD(カンナビジオール)。大麻草から抽出される成分の一つで、リラックス効果や治療効果が期待されています。オイルやサプリメントなどで気軽に取り入れることが可能な反面、大麻由来の成分であるため、日本での流通には大麻に関する規制に留意する必要があります。本記事では、CBDビジネスにおける知見を有する天野文雄弁護士が、CBDビジネスにおける注意点に加え、関連する法規制の動向を解説します。

弁護士が基本から解説!CBDの輸入・販売で押さえておきたい法規制と法改正の動向
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PROFILE
Fumio Amano

Qualified as an Attorney in Japan (currently not registered)

Fumio Amano

Passed the Preliminary Bar Examination in 2016 while studying at the Faculty of Law, Keio University. Passed the National Bar Examination in 2017 and registered as a lawyer in 2018 (Daini Tokyo Bar Association). Joined ZeLo in 2019. His main practice areas are general corporate law, IT and intellectual property, healthcare and pharmaceutical regulation, Web3 (blockchain, crypto assets, NFTs, etc.), fintech, and M&A. His major publications are "Strategy and Practice of Rulemaking" (Shojihomu, 2021) and "Japan in Space – National Architecture, Policy, Legislation and Business in the 21st Century" (Eleven International Publishing, 2021). Currently seconded to the Financial Services Agency, working as a fixed-term government official in the Payment Services Monitoring Office, Risk Analysis Division, Planning and Coordination Bureau.

CBDとビジネスにおける規制状況

CBD(カンナビジオール)とは大麻草から抽出される成分の一つで、リラックス効果があるといわれるほか、てんかん等に対する治療薬としても注目が集まっています。日本でもCBDオイルやサプリメント、ドリンク等が発売され、CBDに関連するビジネスは盛り上がりを見せています。ここ数年、相談数自体も急激に増えているように感じます。

大麻といえば、危険な薬物という印象がありますが、CBDは大麻の成分のなかでも人体に対する作用が比較的穏やかであると考えられており、幻覚などの作用はないとされています。

とはいえ、日本では大麻の所持等は厳格に規制されており、CBDに関するビジネスについても、リスクをはかりかねている方が多いのではないでしょうか。

CBD製品の輸入・販売について、2022年10月時点では、一定の手続を経れば、CBD製品を輸入・販売することは可能です。

輸入・販売にあたり押さえておくべきポイントは3つあります。(1)CBD製品そのものに関する規制、(2)CBD製品の輸入に関する規制、(3)CBD製品の販売に関する規制です。

それぞれ問題となる法規制とポイントについて、ご説明します。

CBD製品そのものに関する規制

規制①:大麻取締法

日本では大麻は薬物の一種として、大麻取締法によって規制されています。免許等がなければ大麻を所持・栽培・譲り受け・譲り渡すことなどはできません(大麻取締法第3条第1項)。

化学合成でない限り、CBDも大麻草から作られているため、大麻取締法の規制対象となる可能性があります。

しかし、CBD製品は、大麻草の成熟した茎か種子から抽出したものであれば、輸入・販売できます。

現在、日本の大麻規制は、大麻草の一定の部位やその部位から製造された製品を規制する仕組み(=部位規制)となっており、大麻草の成熟した茎か種子から抽出した製品は大麻取締法第1条において規制される「大麻」に該当しないためです。

大麻取締法
第1条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。(※太字は筆者による加工)

規制②:麻薬及び向精神薬取締法

「CBDという成分自体は麻薬として規制されないのか」という点に関しては、麻薬について規制する麻薬及び向精神薬取締法が関わってきます。麻薬及び向精神薬取締法第2条は、麻薬や向精神薬に該当する成分について定めており、同法第28条第1項は麻薬や向精神薬の所持等を禁止しています。

CBDについては、同法第2条とそれが参照する別表に麻薬や向精神薬に該当する旨の記載がなく、規制対象ではありません。

上記のとおり、2022年10月時点の日本では、CBDは薬物として規制されていません。このことも、日本でCBDビジネスが盛んになりつつある一因といえるでしょう。

CBD製品の輸入に関する規制

大麻草の一定の部位から抽出されたCBD製品は規制対象から外れていますが、CBD製品の輸入に関しては、厚生労働省による事前確認が必要です。

厚生労働省はCBD製品を輸入する前に行う、事前確認手続を定めています。この手続は、一定の資料に基づき、製品が大麻に該当しないことを確認するものです。

ただし、この手続を経ても、税関の検査等でTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分が検出された場合にはCBD製品の輸入はできませんので、製品からTHCが検出されないよう徹底することも非常に重要です。

輸入についての事前確認手続

具体的な手続として、厚生労働省は以下の書類をメールにより提出することを求めています。詳細は、厚生労働省 地方構成局 麻薬取締部が公表している「CBD(※)オイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ(2022年4月版)」をご参照ください。

①証明書

製造元の責任者の署名・肩書付きの書類で、製品が大麻草の成熟した茎または種子から抽出・製造されたCBD製品であることを証明する内容であることが必要です。

具体的には、製造元の責任者の名前で、抽出元の部位や抽出方法を説明するような内容の文書となります。

②成分分析書

THC、CBDの分析結果が記載された成分分析表です。
分析方法及び検出限界値を記載する必要があるため、これらに対応してくれるような検査機関に依頼する必要があります。

また、製品のロット番号ごとの検査結果が必要であり、実際に輸入する製品のロット番号と合致している必要があります。そのため、一部のロットのみの検査や、同じ製品の別ロットの検査結果を使い回すような方法では対応できません。ロットごとの検査が求められているため、事実上、毎回検査が必要です。

③写真等

CBDの原材料、製造工程の写真が必要です。
CBDの原材料の写真は、原材料そのものを写すことで、成熟した茎・種子以外(葉、花穂等)を使用していないことを示すためのものです。そのため、原材料全体が写っていて、かつ余計なもの(葉、花穂等)がしっかり切除されていることが必要です。

製造工程の写真は、原材料を機械に投入して加工している様子や、抽出している様子の写真が必要です。これも製造工程で成熟した茎・種子以外が使用されていないことを示すために使われる写真ですので、それが分かるような鮮明な写真であれば問題ないでしょう。

上記のとおり、CBD製品の輸入には、その製品に成熟した茎・種子以外が使用されていないことを示す複数の資料を事前に用意する必要があります。

証明書や写真については製造元企業の協力が不可欠です。そのため、事前に日本の規制を説明したり、契約書へ協力義務を明記しておく必要があるでしょう。また、成分分析書についても事前に検査結果を入手しておかなければならないため、外国の検査機関と契約して、ロットごとに検査を行わなければいけません。

日本におけるCBD製品製造に関する規制

日本でCBDの製造は行えないのでしょうか。結論として、理論上はCBD製品の製造はできますが、実際は非常に困難といえます。

CBDの原料となる大麻草は、化学合成などの例外を除き、栽培が厳格に制限されているためです。

大麻の栽培は、大麻取締法に定められた大麻栽培者免許があれば可能です。そのため、理論上は免許を取得すれば、大麻草を栽培して繊維や種子を採取してCBD製品の原料とすることが可能です。

大麻栽培者免許を与えるか否かは各都道府県で判断されていますが、いずれの都道府県でも国民生活に不可欠で社会的有用性が認められる場合のみ免許を与えることとしており、CBD製品の原料として栽培することは事実上、認められていない状況です。

したがって、CBD製品の原料に使用するために、日本で大麻草を栽培するには、現状の大麻栽培者免許行政の運用の変更などが必要になってきます。

CBD製品の販売に関する規制

CBDの販売段階においても注意すべき規制が存在するため、押さえておくべきポイントを紹介します。

CBDの広告規制(薬機法)

最も違反の多い規制は、CBD製品の広告における医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の規制でしょう。CBD製品は摂取することでリラックス効果がもたらされることが期待されているため、直接または間接的にリラックス効果の存在を謳うCBD製品の広告をよく見かけます。

しかし、医薬品ではないCBD製品については、「リラックス効果がある」「よく眠れる」等の医薬品的な効能効果を標榜することはできません。

疾病の治療や予防、身体機能の増強等の医薬品的な効能効果をアピールする場合、その製品は成分や実際の効果に関わらず医薬品であると判断され、承認前の医薬品として薬機法により広告が禁止されてしまいます(薬機法第68条)。

したがって、たとえ実際にリラックス効果や催眠効果があっても、人体に作用する効果は医薬品のみが発揮できるものとされているため、サプリメントなどの医薬品以外の製品で医薬品的な効能効果を標榜することはできません。

標榜ができない医薬品的な効能効果の例として、次のようなものが挙げられます。

・疾病の治療または予防を目的とする効能効果
 →「不眠症に効く」など

・身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
 →「疲労回復に」「よく眠れるようになる」「リラックスする」など

・キャッチフレーズ、成分の説明、製法等により効能効果を暗示するもの
 →CBDの説明として、「●●の効果が期待されている」「●●の効果についての研究がなされている」など

対して、あくまで健康維持に役立つ、一定の栄養を補給できるという程度の表現であれば、食品やサプリメントとしても許される表現の範囲内であり、薬機法の規制対象にはなりません。

CBD製品の広告には、リラックス効果を訴求しようとして規制の対象となりかねない危険な表現を用いているものも散見されます。

特定のワードを避ける等の工夫がみられる広告もありますが、広告全体として医薬品的な効能効果を意味していると見なされれば、違反となりえます。広告が医薬品的な効能効果を標榜しているかどうかは、文脈でも判断されますので、小手先の工夫のみでは、薬機法に違反する可能性が高くなります。CBD製品の広告における表現は、個々の広告表現ごとに専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

法律事務所ZeLoでは、CBDに関するビジネスを含め、広告の表示規制などに多くの知見を有する弁護士が多数在籍しています。スポットでの相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

THC(テトラヒドロカンナビノール)に関する事実上の規制

販売した製品からTHC(テトラヒドロカンナビノール)が検出されないようにすることも重要です。

THCとは、大麻草の主な有効成分の一つで、多幸感などを与えるものの、脳に幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下等をもたらすといわれています。

CBD製品からTHCが検出された場合、商品は事実上、販売停止となり、企業イメージにも大きく傷がつきます。

厚生労働省は、輸入前にCBD製品にTHCが含まれていないことのエビデンスの提出を求めています。なお、書類審査のみのため、輸入後にTHCが検出されないことが保証されているわけではありません。

また、厚生労働省は流通している製品について抜き打ち検査を行っており、製品からTHCが検出された場合には、販売者や製品名を公表することがあります。(公表例:厚生労働省「大麻成分THCを含有する製品について」(令和2年7月28日公表))

大麻取締法上、「大麻」に該当するものは成熟した茎及び種子以外の製品であって、THCが検出されたかどうかは直接関係がありません。しかし、厚生労働省ではTHCが検出される製品は大麻取締法上の「大麻」に該当する可能性が高いと見て、事実上取り締まりの対象としています。

厚生労働省が行うTHC検査の検出限界値は公表されていないため、事業者は信頼できる検査機関で低い検出限界値でのTHC検査を行い、製品にTHCが含まれないことを確認する必要があります。

CBDに関する法改正の動向

大麻取締法は厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」などで以下のような改正が検討されています。

  • 部位規制から成分規制への転換
  • 大麻から製造された医薬品の施用の解禁
  • 大麻使用罪の創設
  • 大麻栽培免許の運用の見直し

特に部位規制から成分規制への転換はCBDビジネスの事業者にとって影響が大きいと考えられます。成分規制とは要するに「大麻」の定義を「THCを含有する製品」とし、THCの含有の有無を基準に大麻取締法による取り締まりを行うことです。

実際、大麻草の成熟した茎及び種子から製造された製品でも、微量のTHCを含有することはあるといわれています。そのため、大麻取締法における「大麻」の該当性においてTHCの含有の有無が基準となれば、検査技術の発展で微量のTHCが検出可能になった場合、CBD製品の取り扱いは事実上不可能となってしまいます。

この問題について、超党派の議員連盟「カンナビジオールの活用を考える議員連盟」や「カンナビノイド事業者有志の会」が働きかけを行っており、一定以下のTHCのみを含有する製品については「大麻」に含まれないとする取り扱いを求めています。

2022年9月29日の「大麻規制検討小委員会」にて公表されたとりまとめ案について

2022年9月29日に厚生労働省の「大麻規制検討小委員会」において公表されたとりまとめ案においても、大麻由来製品に含まれるTHCの残留限度値を明確化していくべきであると記載されており、CBD製品に含まれる一定以下の微量のTHCについては許容される方向性となっているといえます。

今後、大麻取締法に成分規制が導入される場合、THCの含有量にどのような基準が設定されるかは、注視が必要です。

大麻栽培免許の運用について、上記「大麻規制検討小委員会」のとりまとめ案は、栽培目的についてCBD製品の原材料生産を含めた新たな産業利用を念頭においた目的を追加すべきとしています。また、THC含有量が少ない品種の大麻草について、現行より栽培しやすい合理的な栽培管理規制や免許制度とすべきともしています。

今後の動向次第で、日本国内においても大麻草の栽培が現状より容易になり、CBD製品の原料も国内生産できるようになる可能性があるといえます。

規制や最新の動向を押さえた対応を

現在、CBDは大麻取締法をはじめとする規制に留意し、手続を遵守すれば、適法に輸入することができます。また、広告表現や成分調査に留意すれば、販売も可能です。

しかし、製品、輸入、販売それぞれの段階で規制が存在するため、いずれも十分な検討が必要です。また、CBDに関連する大麻取締法の改正についても厚生労働省内で議論されているため、動向を注視する必要があります。

「全部の規制に対応しつつビジネスを検討するのは難しい」「法改正の動向の確認まで追い付かない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

法律事務所ZeLoでは、CBDに関するビジネスを含め、ヘルスケア分野の規制の検討・対応、契約交渉、広告表現、ロビイングなどに多くの実績を有しています。スポットでの相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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(編集:田中沙羅、ZeLo LAW SQUARE 編集部)

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