重要性が増す、パブリック・アフェアーズ。『企業法務のための規制対応&ルールメイキング』の執筆者が語る、官民の相互連携の事例とポイント
Attorney admitted in Japan
Hisako Takahashi
「個性豊かな法律事務所ZeLoの新人弁護士を、先輩弁護士から紹介したいーー。」そんな想いでスタートした本シリーズ企画。記念すべき第1回は、経済産業省からZeLoに参画した山田真由葉弁護士(74期)を紹介いたします。紹介者は、パブリック・アフェアーズ(以下、PA)チームのメンバーでもある松田大輝弁護士(72期)です。
After graduating from University of Tokyo School of law in 2014, passed Japanese Bar Exam. Joined the Ministry of Economy, Trade and Industry in 2015. Worked at Japan Fair Trade Commission in 2018. Joined ZeLo in 2022. As an administrative officer, experienced in policy making and legal revisions such as the Installment Sales Act.
松田:新人弁護士紹介企画のトップバッターは、山田真由葉弁護士です。山田さんは、経済産業省等で約6年間勤務した後に弁護士となり、2022年4月よりZeLoに入所したという、異色のキャリアの持ち主です。
ZeLoでは、官公庁などと調整を行いながら法規制やグレーゾーンへの対応を進める「パブリック・アフェアーズ(PA)」にも力を入れており、2020年12月にはPA部門の立ち上げも行いました。そのちょうど半年後くらいに山田さんのZeLoへの入所が決まったのですが、司法修習期間を経て、ようやく待ちに待った強力なメンバーの参画が実現しました。
松田:では、改めて山田さんの経歴について教えていただけますか?
山田:私は、ロースクールを卒業後、経済産業省に入省し、6年間国家公務員として働いていました。国家公務員試験を受験した年に司法試験も受験しており、司法修習に行くという選択肢もありましたが、制度や仕組みを変えて世の中を動かすことができる国の仕事に惹かれ、入省を決めました。
ロースクール時代のサマークラークの際に、弁護士の仕事は、個別の事案に対応するという印象を強く持ち、同じような問題を抱えている人がいた場合に、それだけで良いのかという疑問を抱いていたのも、入省を決意した理由の一つです。
入省後は、サービス産業の活性化を考える部署で総括業務を行った後、水素燃料電池自動車や高圧ガス事業所に関連する規制改革を担当したり、公正取引委員会に出向しクレジットカード取引の実態調査を担当したり、割賦販売法の改正やDPF法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)の下位法令の制定に携わらせてもらうなど、本当に様々な分野でたくさんの経験をすることができました。
松田:出向を含め様々な業務に携わったかと思いますが、特に印象に残っている業務はありますか?
山田:国家公務員の仕事は、体力的に大変な部分はありましたが、若手でもたくさんのチャンスをいただき、熱い気持ちを持った仲間もたくさんいて、今振り返っても毎日が本当に濃厚で充実した日々でした。
特に、水素燃料電池自動車に関連する規制改革を担当していた際には、連日事業者の方や専門機関の方に様々なことを教えてもらいながら、古い社会課題を解決するために作られた制度を、どのように変えれば現在の技術や課題に対応できるようになるかを考え続けました。大変な思いをした分、とても良い思い出になっています。
水素燃料電池自動車については、国際基準も作られているのですが、その基準について議論する国連の会議に、入省4年目の時に、日本代表として出席させてもらうことができたのは、印象深い経験でした。
松田:そのように国家公務員の仕事をする中で、弁護士へのキャリア転向を決意したのには、どういった理由があったのでしょうか?
山田:先ほどお話ししたとおり、国家公務員の仕事は、大変なこともたくさんありましたが、本当に毎日が充実しており、私にとっては楽しい日々でもありました。そのため、公務員として働き続けるという選択肢も自分の中ではもちろんありました。
一方で、国の仕事は膨大で、リソースも限られており、様々な社会問題がある中で対応できる問題は限られていることや、制度や仕組みを変えるのにどれだけの時間や人員がかかるのかということなどを知って、目の前の個別の事案に対応する弁護士の意義というのも感じました。
また、政策の立案担当者は、できる限りきめ細かく業界や事業者の意見を聞くのですが、法律の知識を持った自分が事業者に寄り添って政策の立案担当者に業界の課題などを伝えることで、自分のキャリアだからこそ外から制度や仕組みを変えることに貢献できるのではないかと考えるようになり、転職を決意しました。
松田:まさに、経済産業省での経験と課題感の延長線上に、弁護士という選択肢があったということですね。
経済産業省などの中央官庁から若手のうちに民間に転向し、政府渉外などの官民の橋渡し的業務を担う、というのは、最近増えているキャリアの選択肢であるようにも思います。しかし、その中でも、山田さんのように、弁護士に転向し、民間企業ではなく法律事務所からそうした業務に携わろうとする人というのは珍しいのではないでしょうか。
山田さんからZeLoに応募が来たのは、司法修習が始まる直前の2021年3月末でしたが(※2021年は3月31日より司法修習が開始)、私たちもそうしたキャリアの方からの突然の応募にとても驚いたのを記憶しています。
他方で、ちょうどその時期は、ZeLoでPA部門を立ち上げたり、『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)を出版したりといよいよPA関連業務に力を入れていこうというタイミングでしたので、山田さんに関心を持っていただけたという事実が端的にうれしく、ぜひ入所いただいてこの領域を一緒に推し進めていただきたいと強く思いました。最初はオンライン面談をしたのですが、その直後には「絶対採用したい」と所内での意見も一致していました。
ZeLoの既存メンバーは、このように早々に前のめりだったのですが、山田さんはどうしてZeLoに応募し、そして入所を決断していただいたのでしょうか?
山田:まさか所内でそのような話がなされていたとは…ちょっと恥ずかしいですが、嬉しいです。前述のとおり、弁護士として個別の課題に対応するということはもちろん、国家公務員を経験したことがある弁護士だからこそできる仕事があるのではないかという思いを抱きながら、就職活動をしていました。
前職の関係で知り合った弁護士の方から、ZeLoのことを紹介してもらい、事務所ホームページでPA部門の説明を見た時に、まさに私がやりたいことはこれだと思って、すぐに応募したのを覚えています。
また、面接の際に「ZeLoはリーガルサービスを変革し、世の中を変えていく」と代表弁護士の小笠原匡隆先生が真剣に語っておられ、私もZeLoの一員となって貢献していきたいと強く思い入所を希望しました。
■法律事務所ZeLoのPA部門のホームページはこちら
松田:そうだったんですね!PA部門を立ち上げたばかりの頃で、おそらくホームページも作りたてだった気がします。それを見て応募いただいたというのは嬉しいです。
少し事務所全体の話にはなってしまいますが、ZeLoはいま、クライアント企業の法務機能をあらゆる面で支え、その基盤を担えるようなサービス構築を目指しています。スタートアップを含む民間企業において、規制領域でのチャレンジやルール形成への関与が求められ、それを担える法務のニーズが高まっている中、ZeLoのPA部門ではこれに応えられるサービスを幅広いクライアント企業に提供していきたいと考えています。
先ほど、中央官庁から民間への人材の移動が増えているという点に触れましたが、こうした人材の力を必要とする企業すべてが自社で採用できるわけではありません。山田さんが、弁護士資格を携えて、ZeLoのような企業のインフラ的役割を志向する法律事務所で活躍してもらうことの意義と可能性は、非常に大きいのではないかと期待しています。
山田:ありがとうございます。ZeLoでは、創業理念の中で、「法は、人類の叡智の結晶であり、一部の独占物ではない」という言葉を掲げられており、とても素敵な考え方だと私は思っています。特にPA部門の業務は、一企業が対応するには、ノウハウだったり、労力を必要とする分野だと思っており、ビジネスを行う上で選択肢から外してしまうことも多いのかなと感じています。そういった業務をZeLoが法務基盤となり協働することで、活性化することができればと思っています。
松田:入所して2カ月ほど経ちましたが、実際にZeLoで働いてみてどうでしょうか?
山田:ZeLoには、弁護士だけでなく、弁理士の方やパラリーガルの方、たくさんのスタッフの方がいるのですが、事務所の皆さんが本当にリーガルサービスを変革するという熱い気持ちを持っているということが分かりました。
また、ZeLoは所内での情報共有や互いのチアーアップが素晴らしく、事務所全体がひとつのチームのような感覚もあり、とても素敵だなと感じています。入所する前は、ホームページの写真から強そうな雰囲気を感じていたのですが、実際には皆さん物腰が柔らかく、穏やかな人が多くて安心しました。
自分の意欲で色々な業務に関与させてもらえる点も非常に魅力的だと感じています。例えば、PA部門の内部ミーティングで骨太の方針の記事の執筆に関心があるということを伝えたら、すぐに記事を書くチャンスもいただけて、自分次第で色んなことができると実感しています。
松田:今後の意気込み・展望などを教えてください。
山田:まずは少しでも早く依頼者のビジネス実現に貢献できる弁護士になるために、色んな分野を経験し研鑽を積みたいと思っています。また、国家公務員として様々な制度や仕組みを変える仕事に携わってきた経験を活かして、PAの分野で、事業者と政府の架け橋になれるように尽力していきたいと思っています。
松田:ありがとうございます。山田さんには、入所直後から、PA関連でもそれ以外の法律業務でも早速活躍いただいていて、今後が本当に楽しみです。ZeLoのPA部門には、74期の弁護士から山田さんと髙木友貴さんの2名に加わっていただき、人員が充実してきました。
松田:さらに、2022年4月には、小笠原先生が経済産業省の「スタートアップ新市場創出タスクフォース」構成員に選ばれるなど、ZeLo全体のPA関連業務の幅も広がってきているように感じます。
松田:山田さんにはぜひその経験と力を存分に発揮していただき、ZeLoのPAサービスを引き上げていっていただければと思っています。また、そうした場をより多く創り出せるよう、私も全力でサポートさせていただきます!
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(編集:田中 沙羅、ZeLo LAW SQUARE 編集部 写真:根津佐和子)
※記事の内容は掲載当時のものです(掲載日:2022年6月22日)