前例なき挑戦に、共に挑む─Visual BankとZeLoが目指す「日本のスタンダード」

弁護士
室井 剣太

弁護士、AI Practice Group統括
島内 洋人

幅広い領域で中小企業を支援するビジネスプラットフォームを提供するIT企業、株式会社ココペリ。現在は、国内にとどまらず、グローバル展開も視野に入れており、海外企業とのマッチング支援を行う「BIG ADVANCE GLOBAL」のリリース予定です。今後も急成長を遂げていく中で、一人法務体制だからこその進め方とともに、法律事務所ZeLoのサポートによる課題解決の事例やサービス活用方法、今後の展望について取締役の馬庭興平さんと、法務担当の沖田翼さんにお話しを伺いました。聞き手を務めるのは、同社をサポートする法律事務所ZeLoの野村諭弁護士・ニューヨーク州弁護士と田中かよ子弁護士です。
1997年東京大学法学部卒業、2000年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLoに参画。主な取扱分野は、ジェネラルコーポレート、投資案件、スタートアップ支援、ファイナンス、不動産、金融その他の規制法対応など。国内案件のほか、海外案件・英文契約の案件などについても、多数対応している。
業界:ビジネスプラットフォーム事業
従業員数:91名(2025年3月31日現在)
目次
野村:まずは、改めてですが、貴社の事業内容とその主力領域について教えてください。
馬庭:当社の主力事業は、中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance(ビッグアドバンス) 」です。全国の金融機関と提携し、その顧客である中小企業に対してSaaS形式でサービスを提供するモデルを展開しています。上場後はM&Aを行い、補助金コンサル企業やファイル送受信サービスなどを手がけるソフトウェア企業を買収し、より多角的な面で中小企業を支援しています。これまでは国内企業中心でしたが、海外企業とのマッチング支援を行う「BIG ADVANCE GLOBAL」の開発を行い、6月にリリースしました。今後は国内だけでなく、海外まで幅を広げ、中小企業の成長を支えていく予定です。
野村:金融機関が顧客でありつつ、実際にサービスを使用されるのは金融機関の顧客の中小企業なので複雑な構造にはなりますね。ビジネスとしては、金融機関による新しいオンラインサービスを提供していくところをサポートする仕組みですね。それゆえの難しさはありますか。
馬庭:直接的な契約相手先は金融機関なので、法務面については法律的な根拠を持って注意深く対応させていただく必要があると感じております。
野村:ありがとうございます。規制業種に関連するサービスを提供するという面のほか、御社が上場会社として配慮いただく点も多いところだと思いますが、御社では、法務・コンプライアンス体制はどのように構築されていらっしゃいますか。
沖田:法務は私が専任で担当しており、コンプライアンス関連の事務的部分はもう1人と協力しているので、メンバーとしては2名体制です。1人法務は前職でも経験があるため、その知見を活かしています。外部との使い分けは明確なルールは設けていませんが、案件ごとに最適な対応が可能な方にお願いしています。たとえば、専門性の高い内容であれば、その分野に強い弁護士の方に相談するようにしています。調査によって社内で判断できるものは私自身で処理し、判断に確信が持てない場合は弁護士の意見を仰ぐ方針です。
また、基本的にZeLoさんをメインに活用させていただいており、以前お話しした際にも気軽に相談してくださいと仰っていただいたので、幅広く気軽に相談させていただいております。
田中:ありがとうございます。ココペリ様からのご相談は、社内で検討されたことの確認のようなご相談が多く、かつ分野が幅広いと感じています。だからこそ、ご回答の際は、丁寧に根拠等をお伝えするとともに、案件に応じて所内の当該分野に詳しい弁護士の知見も活用し、付加価値をご提供できるように意識しています。ZeLoがスタートアップ法務や最先端領域に強みを持ちつつ、幅広い分野に対応できる体制があるからこそできることだと思っています。
次に、社内の法務・コンプライアンス意識向上に向けた取り組みや、従業員教育の方針について教えてください。
沖田:従業員は現在100名規模にまで拡大しましたが、個々の法務意識はまだ十分とは言えません。そのため、私自身が現場からのヒアリングを行い、リスクがあると判断した場合には「これは避けるべきです」と明確に伝えるようにしています。社内の理解度に応じて、適切に判断・指導を行うことで、全体のリーガルリテラシーを底上げしていくことを目指しています。
また、コンプライアンス研修やハラスメント研修といった教育プログラムも導入しており、従業員向けの知識浸透に力を入れています。今後は、これらの研修を外部向けにカスタマイズして提供することも検討しています。
野村:社内での法務意識やコンプライアンス意識の浸透は、継続的な対応を要する領域で大変ですが、社内の実情を拾って対応していく姿勢はすばらしいですね。ZeLoでも社内向けのコンプライアンス研修やハラスメント講習をお客様に合わせてカスタマイズして提供しています。そのようなサポートも可能ですので必要であればお申し付けください。
野村:ZeLoとの協業について、感じている価値や印象的なエピソードがあれば教えてください。
馬庭:最も大きな価値は「相談のしやすさ」です。気になることはSlackやWeb会議を通じてすぐに相談できるようになりました。それにより柔軟な連携が進み、スピード感は大きく改善されたので大変助けられています。
現在の体制は、電話やメールに限定されたやり取りよりもスムーズで、外部弁護士でありながら、社内の延長線上にいるような感覚です。事業部とのやり取りでは見えてこない法的な論点や視点をもらえるのも大きな利点です。実際に相談していく中で、こちらが整理できていなかった部分の言語化や視点の補完をしていただき、「もう一人の相談役」としての存在価値を実感しています。
沖田:特に印象に残っているのは、初めて抽象的なテーマで相談したときです。ゼロベースからの問いかけに対して、丁寧にヒアリングと質問を重ねていただき、自分でも気づいていなかった要素を明確化することができました。思考を深める壁打ち相手として、安心して頼れる存在です。
田中:そのような形で伴走できていることは、我々にとっても非常にやりがいのあることです。
馬庭:また、契約の解約に関するご相談も印象に残っています。解約時は、相手先との関係性を慎重に考慮しながら進める必要があります。そのため、リスクの洗い出しから具体的な対応策まで細かくご相談させていただきました。また、トラブル対応においても、緊急度の高い事案では迅速なアドバイスをいただき、大変助かっています。いずれのケースも、論点の整理や判断材料の提示など、的確な支援を受けられたと感じています。
野村:ありがとうございます。原則論的な解釈のご説明に留まらず、実際のビジネスをイメージして、時にはその部分のインプットをいただきつつ、解決に向けての動きを社内の担当者の方と進めていきたいと思っています。ZeLoには紛争対応を強みとしているチームもいますし、必ずしも明確に紛争にまでいたっていない事案でも担当者の方々に有益なサポートができればと思っています。
野村:海外展開や新規事業において、リーガル面で意識されている課題や、ZeLoへの期待があれば教えてください。
沖田:日本国内にとどまらず、グローバル展開も視野に入れて進めていく中で、情報のキャッチアップが大変だと感じております。各国の規制法も含め、それまで日本で事業展開していたときとは異なる法的論点が発生することが想定されます。特に国によっては合弁事業などの形態を取る場合もあり、紛争回避や契約構築に関する明文化など、実務的に意識すべきポイントが重要と考えております。
田中:海外事業には、どうしても「痛みを伴って覚える」ような難しさがあるのも事実です。ただ、当事務所としては他社事例や共有可能な知見からリスクを抑える支援を行うことを重視しています。法律対応に加えて、早期のコミュニケーションや実務的観点での整理など、コンサルティング的な視点も交えた伴走を心がけています。
野村:他にも新たな取り組みがありましたら、教えていただけますか?
馬庭:最近は金融機関向けに「SAF(サフ:Specialized AI FAQ)」という新たなサービスを展開し始めています。これは社内規程に関する質問に対して、AIが専門的な回答を即座に返す仕組みです。社内の業務効率化にとどまらず、付加価値の創出にもつながると考えており、現在は実証的に導入領域を広げている段階です。今後の成長に期待しているサービスのひとつです。
野村:AIを活用したそのようなサービスは、金融機関を入口として多様な業種にサービスを提供していて、すでにプラットフォームを有しているココペリさんのような企業にはフィットしているように感じます。展開が進むことで、さらに新たな可能性が広がっていきそうですね。
野村:ZeLoの提供価値で特に評価していただいている点はありますか。また、今後期待される支援についても教えてください。
沖田:セミナーやイベントを数多く実施されていると思いますが、まさに知りたいテーマがあるタイミングでご案内いただくことがあり、大変ありがたく感じています。内容も実務に即したものが多く、基礎的であっても運用となると難しい点を丁寧に解説いただけるため、安心して参加できます。質問のハードルも低く、気軽に確認できる点も魅力です。
田中:ありがとうございます。私も個人情報保護法に関するセミナーに登壇しました。我々としても、制度改正や新領域の変化に対応し続けることを意識して、より質の高い企画を今後も提供していきたいと考えています。
馬庭:また、ZeLoさんの体制面も大きな安心材料です。次回の依頼予定や温度感を事前にお伝えすることで、対応の優先度やスコープを調整いただける柔軟さは大変ありがたいです。リサーチ案件などでは、お願いしたい項目を明確に共有できれば、対応に厚みを持たせていただける点にも信頼を寄せています。
野村:そのほか気になるサービスや、ご関心があるところなどはございますか。
馬庭:ZeLoさんの契約書アウトソーシングサービスに関心があります。定型的なレビューや大量の契約書対応などを依頼したい場合、スピード感がありつつスムーズにチェックする体制があるのは非常に心強いと感じています。また、沖田が法務まわりを基本1人で対応しており、契約更新の時期が重なりますと膨大な数になるため、今後活用を検討できればと考えております。
野村:なるべくニーズにあったサービスになるように務めています。法務顧問としてのサービスに近いかたちで様々な内容に対応していくことも行っていますし、契約書のレビューなど比較的、定型的な業務のアウトソーシングとして専門のチームでご対応することも行っています。費用感としてもご利用いただきやすいように調整させていただきます。ぜひご検討ください。
沖田:契約書のレビューなどをまとめてご依頼する際には当社の「プレイブック」があると運用がスムーズになると思うのですが、現時点ではまだ作成に着手できておらず、今後の依頼増加に備えて準備を検討しているところです。
田中:プレイブックの作成はご負担が大きいものですので、最初から完璧なものを作る必要はありません。数件の対応を通じて論点や判断パターンを蓄積していくことで、実用的なプレイブックへと育てていくことが可能です。当事務所でも、クライアントと共同で作成するケースが多くありますので、必要に応じてご一緒させていただければと思います。
野村:これまでの5年間で築いてきた信頼関係をもとに、今後もココペリ様の事業成長をリーガル面から支援できることを大変光栄に思っております。リスク対応の面や、緊急対応を要することなどもありますし、御社の成長を近いところで拝見させていただくことも増えています。今後は海外展開やM&Aなど、新たな挑戦も本格化していくかと存じます。そうした局面でも、最適なソリューションをタイムリーにご提供できるよう、引き続き尽力してまいります。
馬庭・沖田:今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
野村・田中:こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
※掲載内容は取材当時の内容です。(2025年7月22日)
(写真:岡戸雅樹、取材:阿部あかり、文:スイセイ、編集:阿部あかり・渡辺桃)