世界最大手の法律事務所から起業家精神溢れるZeLoへ。ー外国法事務弁護士 Joel Greer
みなさまこんにちは。前回のFiesta外国弁護士(インドネシア)(Not admitted in Japan)のZeLo Lawyer's Storyはいかがだったでしょうか?今回はJoel Greer外国法事務弁護士(原資格国:米国コロンビア特別区)が登場します。世界的に有名なローファームでパートナーとして執務していたGreer弁護士が、これまでどんなキャリアを築いてきたのか、また全く違う環境のZeLoにどういった経緯でジョインしたのかをお話しします。
目次
出身は米国・フロリダ州
出身地はどんなところですか?
私はアメリカの南東部にあるフロリダ州のボカラトンで育ちました。私が育った頃のボカラトンはかなり小さな町で、フロリダの他の多くの地域と同様に農業と観光業に大きく依存していました(ウォルト・ディズニー・ワールドは車で数時間のオーランドにあります)。ボカラトンの人口は私が若い頃に比べてかなり増え、今ではホームデポやADTなどの大企業の本社があります。大西洋の近くで育ったので、もちろんビーチにもよく行きました。
フロリダは温暖な気候(ニックネームは「サンシャインステート」)で、オレンジなどの柑橘類の栽培に適しています。100年以上前、日本人の農家がボカラトンに移住し、パイナップルを栽培するために「ヤマトコロニー」と呼ばれるコミュニティを設立しましたが、残念ながらこの取り組みは成功しませんでした。その後、多くの農家はアメリカの他の場所に移ったり、日本に帰国したりしました。しかし、ボカラトンにある大きな道路は、その遺産として「ヤマトロード」と名付けられました。当時、私は「ヤマト」が日本語であるとは全く思わず、日本に来てからヤマトコロニーの歴史を知りました。
言葉を扱う職業に憧れ法律家に
法律の道を志したきっかけを教えてください。
私の家族のほとんど全員が英文学を専攻していたので(父は英文学の教授でした)、本を読んだり話したりすることが多い家庭で育ちました。法律は言葉を使うのが好きな人には向いている職業で、兄弟の一人も弁護士になりました。私は幸運にもイェール大学ロースクールに通うことができました。イェール大学ロースクールは、優秀な先生方が多く、多様で比較的柔軟な法律教育プログラムを提供しています。
米国での紛争解決の豊富な経験
米国でのキャリアについて教えてください。
私は、米国と日本の両方でいくつかの法律事務所に勤務した経験があり、キャリアのほとんどの期間を、紛争解決に焦点を当ててきました。まず、ワシントンDCのギルバート・ヘインツ&ランドルフLLP(現在のギルバートLLP)という法律事務所で弁護士として働き始めました。紛争解決の分野で経験豊富な数名の有能な弁護士によって設立された新事務所で、複雑で価値の高い保険回収(被保険者の代理として)と戦略的リスク管理に重点を置いています。
ギルバート・ヘインツ&ランドルフでの仕事は楽しかったのですが、自分の業務経験の幅をもっと広げたいと思い、ニューヨークに拠点を置く法律事務所、ヒューズ・ハバード&リードLLPのワシントンDCオフィスに移りました。ヒューズ・ハバード&リードでは、株主がフランスの大手エネルギー・運輸会社を相手に起こした、非常に大規模な米国連邦証券集団訴訟を担当しました。(集団訴訟とは、一方の当事者が例えば株主などのグループであり、そのグループのメンバーが集団を代表して起こす訴訟のことです。)この訴訟はニューヨークで起こされたものですが、クライアントがフランスの企業だったので、何ヶ月もフランスで過ごしました。パリでの仕事は楽しかったのですが、華やかさに欠ける大きな造船所で過ごしたこともありました。
国際仲裁のエキスパートとして
日本に来た時期とその理由を教えてください。
妻は日本人で、アメリカで5年近く一緒に暮らした後、2006年に日本に移住することを決めました。多少の変化があっても、日本でも弁護士としての仕事を続けることができると確信していました。アメリカとは全く異なる環境で仕事をすることの難しさを感じることもありますが、私は日本での生活と弁護士の仕事を心から楽しんでいます。
日本でのキャリアを教えてください。
日本に引っ越すことを決めたとき、ヒューズ・ハバード&リードの東京オフィスは小規模な事務所でしたので、再度別な事務所に移りました。当時東京ベースの国際法律事務所の中でも特に大きな事務所であったホワイト&ケースLLPに入所しました。東京にいたために米国の訴訟を簡単には取り扱えなかったため、国際調停と同様に、裁判所を介さない紛争解決手段である国際仲裁を担当しました。
国際仲裁では、発電所や他の産業施設の建設をめぐる大規模な紛争を含む、様々な案件を担当しました。これらの建設プロジェクトは、アフリカ、ラテンアメリカ、東南アジア・中央アジアなどであり、クライアント(そのほとんどが日本人と韓国人)の代理として、これらの地域に出張しました。2015年には、世界最大級の法律事務所であるベーカー&マッケンジー法律事務所の東京オフィスのパートナーになりました。ベーカー&マッケンジーでは、建設分野を含む国際仲裁と調停を専門としましたが、製薬や販売契約の紛争も取り扱いました。
これまでの私のキャリアは主に紛争解決に関わるものでしたが、ZeLoではそれを継続しつつ、新たな業務も担当しています。2019年からは弁護士業務に加えて、一橋大学大学院法務研究科ビジネスロー専攻の非常勤講師として国際的紛争解決の授業も教えています。
Greer弁護士の趣味は何ですか?
剣道を8年やっていて、三段を所持しています。東京には経験豊富な剣道家や先生方が多く、剣道を学ぶには素晴らしい場所です。仕事の関係で思うように剣道ができないこともありますが、可能な限り稽古を続けるようにしています。新型コロナウイルスが流行する前は、2つの道場に通っていました。今はもちろん普段の稽古はありませんし、いつ再開されるかはまだわかりません。全国剣道連盟がこの問題を検討しているとのことですが、早く実行可能な解決策が打ち出されることを切に願っています。
感銘を受けたZeLoの起業家精神
なぜZeLoに入所したのですか? ZeLoでの執務はどうですか?
私が弁護士として働くモチベーションは、自分の持つスキルや提供するトレーニングを通し、クライアントや他の弁護士の役に立つことができることです。大規模な法律事務所で20年近く働いた後、新しい機会を探究し、自分の経験を若い弁護士のために役立てることができる「リフレッシュ」の時期だと感じていました。ZeLoは、フィンテック、ブロックチェーン、暗号資産、スタートアップ企業の資金調達、規制のサンドボックス制度などの最先端の分野から、企業再編や紛争解決など従来からある分野まで幅広く取り扱う比較的若い弁護士で構成されているため、私に大きなチャンスを与えてくれる場所だと感じました。私は、ZeLoの同僚が仕事にもたらす起業家精神とイノベーションの精神、そして所内で問題を議論するオープンで一体感のある環境に感心しています。「ZeLoでの執務はどうですか」という質問に対する私の答えは、「今のところ、とても満足しています!」。
※記事の内容は掲載当時のものです(掲載日:2020年6月29日)