
育休はキャリアの分岐点ではなく、自然な選択肢に。男性弁護士3名の“リアルな育休と仕事の両立”
育児休業をめぐるジェンダー意識が変わりつつあるとはいえ、まだ過渡期にある日本で、男性弁護士として育休を取得するという選択をした3名のパパ弁護士たち。彼らはキャリアの築き方と家庭の在り方をどう考え、どのように実践しているのでしょうか。 実際に育休を取得した水野雄介弁護士・梅田晃希弁護士、そしてまもなく育休に入る予定の真下敬太弁護士に、取得に至るまでの経緯や職場のサポート、復帰後の働き方や、育休への率直な想いなど、本音を伺いました。

MEMBER

真下 敬太
弁護士(第二東京弁護士会)
主な取扱分野は、M&A、ジェネラルコーポレート、訴訟/紛争解決、自動車/モビリティ、自動運転、MaaS、パブリックアフェアーズ、国際法務など。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。本記事の公開直前に第一子誕生。
主な取扱分野は、M&A、ジェネラルコーポレート、訴訟/紛争解決、自動車/モビリティ、自動運転、MaaS、パブリックアフェアーズ、国際法務など。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。本記事の公開直前に第一子誕生。

水野 雄介
弁護士(第一東京弁護士会)
国際取引や国内外の訴訟・仲裁を中心に、知的財産、労務、サステナビリティなどの幅広い分野を取り扱っている。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。一児の父。
国際取引や国内外の訴訟・仲裁を中心に、知的財産、労務、サステナビリティなどの幅広い分野を取り扱っている。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。一児の父。

梅田 晃希
弁護士(第一東京弁護士会)
M&Aを中心に、ファイナンス、訴訟/紛争解決などの案件やスタートアップに対する日常的な法務支援を手掛ける。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。リモートワークも活用しながら仕事と育児の両立を図る二児の父。
M&Aを中心に、ファイナンス、訴訟/紛争解決などの案件やスタートアップに対する日常的な法務支援を手掛ける。ZeLoの新卒弁護士リクルートチームにも参画。リモートワークも活用しながら仕事と育児の両立を図る二児の父。
お互いにフォローするのは当たり前。育児にも集中できる環境
──まず初めに、皆さんの現在の働き方と、育休をすでに取得されている方については、その時期・期間についてお伺いしていきたいと思います。
水野:私は2024年6月に入所し、第一子の誕生に合わせて2024年11月上旬から2024年12月末までの2か月間の育休を取得しました。復帰後は基本的にフルタイムで勤務しています。
現在は、まず朝は子どもが起きてから朝の支度や保育園のお見送りを行った後、9時頃から出勤しています。夜は19時頃に帰宅してお風呂と寝かしつけなどを行っています。その後は在宅で仕事に戻ります。
梅田:私は2023年11月に入所し、2025年5月に第二子の誕生に伴って1か月間育休を取得しました。復帰後はこれまでどおりフルタイムで働いています。
生活リズムは水野さんと似ているかもしれません。最近、今年2歳になった長男が保育園に通い始めたのですが、朝は5時半頃に長男に起こされることも多く(笑)、朝型になりつつあります。8時頃に長男を保育園に送ってから事務所に向かい、8時半頃には仕事を始めています。夜は一旦18時頃に帰宅し、子ども2人をお風呂に入れて、長男か長女の寝かしつけをすることが多いです。その後、20時過ぎ頃から自宅で仕事を再開しています。
真下:私は2023年8月に入所しました。育休は今年(2025年)の8月中旬頃から2か月間を予定しています。
ZeLoに入所してからはキャリアを伸ばしたいという気持ちが強かったので、仕事に全力を注いできましたが、この度、第一子の誕生に合わせて育休取得を決意しました。
朝は元々苦手で、現在は10時頃から仕事を始めることもありますが、育休中は水野さんや梅田さんのように、しっかり早起きして育児に邁進しようと思っています(笑)。

──育休を取得することに対し、不安はありましたか。
水野:私は入所してから間もない時期だったため、周りの理解を得られるかという点に少し不安はありました。ただ、実際に育休を取得させていただきたいと仕事をご一緒している方々にお伝えしたところ、みなさん非常に好意的に受け止めてくださり、応援していただけたので、安心して育休期間を迎えることができました。
梅田:不安はなかったです!強いて言うと、育休取得1か月前までは通常どおりの業務量に近かったので、どうなるかなという思いも少しだけありましたが、4月に入って育休に向けて業務量も徐々に落ち着き、予定どおり育休に入ることができ、出産に立ち会うこともできました。
真下:水野さんや梅田さんなど、男性の育休取得の事例が増えてきているので、職場の理解や業務調整という点では全く不安はありません。ただ、当然ながら育児や育休を今まで経験したことがないので、それが今後の仕事や生活にどう影響を与えるのか純粋に少し不安でもあり、楽しみでもあります。
──育休からの復帰に不安はありましたか。
梅田:不安はなかったですが、育休から復帰しても当然育児は続くので、どのような生活リズム・役割分担で仕事と育児の両立を図るかは考えていました。育児のフェーズによって役割分担も変わっていくとは思いますが、ひとまずリズムを掴んできたところです。
水野:育休から戻ってきた時に仕事があるのだろうかという点は全く心配していませんでした。特にLPO(Legal Process Outsourcing:顧問弁護士)サービスで継続的にご支援しているクライアント様には、必要に応じて、育休を取得する予定であることを事前にご共有し、その期間は他の担当者や別の弁護士が担当することについてご了承いただいていました。そのため、復帰後はまた元どおり担当させていただくことも決まっていました。
私の場合、スタートアップのクライアント様を担当させていただくことも多く、先方のご担当の方々も男女問わず育児をされている方も多かったので、ご理解いただきやすかったです。復帰後にご挨拶すると、「もう帰ってきたんですか」と言われることもありました。
そのほか、PLS(Professional Legal Service:スポット業務を中心に取り扱う部門)は、M&Aやファイナンス等の案件について事務所としてコンスタントにご依頼をいただいているので、復帰後すぐに次の案件に入ることができると思います。
──育休期間前はどのように調整をされたのでしょうか。
水野:入所してからあまり期間が経たないうちに取得を検討することとなったため、まず代表弁護士の小笠原さんに早めに相談しました。
それから、所属部門の統括である北田さんや、案件でご一緒している方々に対しては早めに伝えておくことで、育休期間になるべく仕事が重ならないように調整をしていただきました。
梅田:妻が安定期に入ったタイミングで、まず代表の小笠原さんや私が所属するPLS部門を統括している北田さんに報告しました。
私はM&Aやファイナンスといったプロジェクトものの案件が多いのですが、育休期間と重なるスケジュールの案件は基本的に他のメンバーにご担当いただきました。担当していた案件の中には、育休前にクローズしない案件も当然ありましたが、一緒に仕事をしているメンバーに予め相談した上で、育休中は対応をお願いさせていただきました。
真下:私の場合、つわりの症状があった時期に妻がちょうど単身赴任をしており、ほぼ毎週末、妻の赴任先と東京を行き来したり、平日に妻の赴任先からリモートワークしなくてはならないこともあったりしました。そのため、代表弁護士の小笠原さんや所属部門の統括である北田さんには安定期を待たず早めにお伝えしたのですが、北田さんからは、「チームみんなで全力でカバーするから、全く心配しなくていい、安心して」という言葉を最初にいただきました。
安定期に入った後はよく一緒に仕事をしているメンバーにもお伝えし、正式な全体へのアナウンスは育休取得予定日の1か月半ほど前に行いました。目下、育休期間中の対応について、他のメンバーへの引継ぎを相談させていただいているところです。
──心強いメッセージですね。水野さん・梅田さんも、周囲の方の反応で印象的なエピソードがあれば教えてください。
水野:私は入所したその月のうちに、小笠原さんに直接、「育休を取りたいと思っています。」と相談してみたところ、「いいんじゃない。どれくらい取るの?2年ぐらい?」という返事が返ってきました。2年間休もうとは考えていませんでしたが、あまり冗談っぽくなく本気で2年間でも良いよという温度感でしたので、そう言っていただけて、育休取得に対する不安はなくなりました。
事務所全体へは、取得の1か月半ほど前にアナウンスしたのですが、皆さんから応援の反応をいただいたほか、先輩ママさんパパさん達がアドバイスをくださったことが非常にありがたかったです。業務の引継ぎをお願いした方々も「頑張ってください」という感じで、快く送り出してくださりました。
梅田:印象的だったのは、北田さんに報告した際に、育休の取得について、私が「ご検討いただければと思います」という言い方をしたのに対して、北田さんに「検討はしないので、ぜひ取ってください」と言っていただいたことです。
業務の引継ぎについても、皆さん快く引き受けてくれました。事務所全体として子育て世代が増えてきているということもありますし、ZeLoでは「事務所のお客様」という捉え方をしているので、構造的に事務所の仲間と連携を図りやすいという側面があると思います。
仕事と育児の両立についても、等身大で相談できる仲間・環境があるのは、本当にありがたいと感じています。
水野:確かに、普段からお互いにサポートし合うことは多いので、育休だけがそれほど特殊な状況というわけではないかもしれないですね。
子育て&仕事の両立のリアル
──ここからは、育休取得予定の真下さんから、ZeLoでの育休取得経験のある水野さん・梅田さんにご質問いただきたいと思います。不安に思われていることがありましたら、どんどんご質問ください。
──真下:パートナーとの役割分担や仕事の調整、育休に向けての準備に関して、やっておいてよかったことはありますか。
水野:育児方針というほど大それたものではありませんが、例えば、子どもが生まれた後の家事や育児の分担、保育園をどうするかなどは、事前にある程度話し合って決めていました。買い揃えておくべき物などについては妻が調べてくれたので、私は保育園探しや、病院や公的支援の手続きなどを担当しました。
我が家の場合は実家がどちらも遠方ということもあり、二人で育てることが基本体制なので、お互いの産育休が明けた後はどうするかというところまで、家事・育児の分担をあらかじめ決めておいて良かったと思います。
梅田:正直、長女が生まれる前は、生まれた後の役割分担等については、あまり明確にできていなかった部分もあります。質問に答えていない感じですが、真下さんとは席が近いこともあり、この座談会に限らず、直近だと、ベビーベッドを買うか借りるかなど、育児についても色々お話ししていますよね。

──真下:育休期間中はどのように過ごされていましたか。
水野:育児に専念できていたものの、時間は全く足りませんでした(笑)。育休は2か月間でしたが、最初の1か月は、育児のスキルを身につけることと、妻に回復してもらうために家事を担当することの二つに集中していました。
子どもはあまり夜泣きもせず、そこまで手がかかりませんでしたが、最初のうちは目を離すことができず、常に緊張していたことを思い出します。
大変でしたけど、楽しい2か月間でした。お子さんが2人いると、さらに大変そうですね。
梅田:私は家事と長男の育児全般・長女のお風呂を主に担当していました。家事に育児に大変な側面はありましたが、それを改めて実感できたことがよかったですし、何より生後間もない長女も含めて家族で過ごす時間はかけがえのないものでした。
育児のスタートをできるだけ妻と一緒にきって、その後スムーズに育児を分担できる素地を作ることは、復帰後に仕事と育児の両立を図る上でも大切な気がします。
──真下:復帰後の育児はどうですか。
水野:今、平日は朝と夜の1日2回、子どもと接点を持つことが結構大事だなと思っています。1日1回面倒を見たり遊んだりするだけでは、子どもにとっては「よく見るおじさん」になってしまうのではないかと(笑)。
梅田:長女が生まれるまでは、長男の就寝後に帰宅することも少なくなかったですが、冒頭お話したとおり、最近は子ども2人をお風呂に入れるために一旦18時頃に帰宅しているので、子どもとのコミュニケーションの機会は増えたかもしれません。保育園の送りの時間も含めて、長男との関係でも、良い時間だと思っています。
水野:仕事を中断して帰宅し、落ち着いてからまた仕事に戻って集中し直すのは大変ですよね。
梅田:そういう側面もありますね。ただ、ZeLoにはそういった働き方をしている弁護士も少なくないですよね。
水野:そうですね。時短勤務をされている方も含めて、育児と両立しながら仕事をされている弁護士は男女問わずたくさんいらっしゃいます。そのため、子どもの送り迎えや病気になった時の仕事の調整やカバーについて周囲の理解・協力を得やすい環境だと思います。

──真下:復帰する前に、ウォームアップや準備をしていましたか。
水野:私は特に何も考えず、手ぶらで戻りました(笑)。ただ、復帰後の家庭内のスケジュールや役割分担については決めていました。とはいえ、実際には、思ったよりも仕事に時間を割けなかったり、子どもの成長に合わせて変わっていったりする部分もあるため、日々試行錯誤です。
梅田:私も特段していなかったかもしれません。先ほどお話した内容とやや重複しますが、育休中に家事・育児に集中したことで、復帰後スムーズに家事・育児を分担できたことに繋がったということはいえます。
──真下:お二人とも弁護士として所内外で活躍をされているところですが、キャリアと育児との両立についてはどのように考えていますか。
梅田:キャリアとの両立については明確な答えが出ていないところでもありますが、最近、人生の中で子どもと過ごせる時間は思ったより限られているのでは、ということを考えました。子どもが成長すると、パパとはあまり遊んでくれなくなるのかな、などと考えながら、そういう意味では、育児に時間を割くことができるのも今のうちというか、当然仕事も大切なので悩ましいのですが、「仕事の時間が減ってしまうな」というようにマイナスに捉えるのはもったいないと思うようになりました。
水野:育児は楽しい一方で大変なこともあり、また仕事に時間をもっと割きたいと感じることもありますが、どちらかを諦めるのではなく、キャリアも育児も、それ以外のプライベートも、限られた時間をどのように配分するかを常に考えて、自分にとって理想的なバランスに少しずつ近付けていくというほかないのだろうと思います。
──真下:そうですよね。悩ましいところかと思いますが、育児をしながら働いている人同士、こういう話を所内で気軽にできることはありがたいですよね。

仕事のことも家庭のことも、相談できる仲間がいる
──改めて、この座談会や日常を振り返って、家庭と仕事の両立に関する「ZeLoならでは」というポイントはありますか。
梅田:やはり、ZeLoではクライアントについて「事務所のお客様」という捉え方をしているので、構造的に事務所の仲間と連携を図りやすいというところは大きいと思います。皆で日々助け合いながら働いている中で、育休も含めて、家庭との両立を図りやすいということはあると思います。事務所全体で子育て世代が多いということもありますね。
水野:そもそも働き方の自由度が高いので、各自が色々試しながら働いていますよね。時短制度を活用されている方や、リモート勤務を組み合わせている方もいるので、育休の取得や育児との両立ということも、あまり特別な働き方という感覚にならず、良い雰囲気だなと思います。
真下:制度面でも、育休中も一定の補助が出る法律事務所は他にあまりないと思うので、ありがたいですよね。
──最後に、先輩パパのお二人から真下さんやこれからお子さんが生まれる方々へのメッセージをお願いいたします。
水野:各家庭で色々な状況はあると思いますが、男女問わず育休を取得することを選択肢の一つとして積極的に考えていただいて良いのではないかと思います。取得できるなら取得した方が良いというか、取得するべきというくらいの気持ちで良いのではないでしょうか。
梅田:一緒に悩みながら頑張りましょう!というのが、率直なところです。真下さん、水野さん、引き続き色々お話しさせてください。
この記事を読んでいただいた方々へのメッセージとしては、ライフステージを問わず、高い視座を持って成長していきたいという思いをもった方々と一緒に働けたら嬉しいです!
水野:家事と仕事の両立はずっと女性が直面してきた問題で、男性もようやく向き合うようになってきたのではないかと思っています。そこから逃げずに、どのようにキャリアを追求していくかをそれぞれが考えれば、結果的に職場全体も多様な働き方を受け止められるようになり、全員にとって働きやすい環境になっていくのではないかと思っています。
真下:そうですね。家庭によって当然方針も違いますし、そこに唯一の正解はないですから。
こういったことを様々な人と話して、それぞれの正解と思われるものを一緒に探っていくことができるのが理想ですし、それができる環境が整っていることがZeLoの大きな魅力の一つだと思います。
※掲載内容は取材当時のものです(取材日:2025年7月17日)
(取材:法律事務所ZeLo人事採用チーム、写真:根津 佐和子、編集:ZeLo LAW SQUARE編集部)
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