業界:小売業 従業員数:8,248人(2025年2月28日現在)
戦友のように歩んだ日々から始まった関係
安藤 : 藤本さんとのご縁のきっかけは、2012年、私がセブン‐イレブン・ジャパンに入社したことでしたね。当時は藤本さんと労務関連業務をご一緒していました。
藤本 : あの頃は、労務まわりの対応をともに行い、まさに“戦友”のような関係でした。規程改定や日常の労務相談など、現場で起こるあらゆる課題に取り組んでいました。 安藤先生が退職されたあと、私たちは大規模な労務案件に直面し、対応に苦労した時期もありました。その後、安藤先生が社労士としてキャリアを本格化されたときも相談させていただいたことがあります。
安藤 : そうでしたね。当時は社会保険制度が注目された時期で、加盟店対応に関して、当時の社長や役員の方に基礎的な情報提供をさせていただきました。
藤本 : 当時は、本社も現場も、労務問題に関する正確な知識が十分とは言えませんでした。その経験から、社内全体で「正しい知識を身につける文化」を育てる必要性を強く意識しました。
安藤 : この10年で、労務課題も変わってきましたか?
藤本 : そうですね。10年前、小売業では雇用管理に十分な注意を払えていない場面もあり、社会的課題として発展することもありました。店舗運営やチェーン展開のリスクも顕在化し、本社・現場ともに知識の底上げが必要でした。加えて、当社の社内においても2016年から就業規則や各種ルールを全面的に見直しました。リーガルリスクを減らすだけでなく、多様な社員が力を発揮できる柔軟な人事制度へと進化させる取り組みを始めました。 この制度改革は今も継続しており、安藤先生からも定期的にリーガル面での助言をいただいています。
月2回の定期労務相談会で生まれた「相談できる文化」
安藤 : 現在は、月2回の定期労務相談会を実施させていただいていますよね。導入のきっかけを教えてもらえますか?
藤本 : 当初は労務相談について少人数で対応していましたが、課題が多様化し、件数も増えたため、組織的なサポート体制が必要だと感じました。 今では特定の担当者だけでなく、社員一人ひとりが労務知識を身につけて自ら課題解決できる力が求められています。そのため、気軽かつ迅速に専門家へ相談できる場を設けようと考え、安藤先生にお願いしました。
安藤 : 直営店の店長や教育推進部のトレーナーの方など、直接お話を伺えるのは私にとっても新鮮です。多くの企業では、人事が相談を取りまとめて専門家に投げる流れですが、それでは現場の温度感が失われたり管理部門の意思が入ることもあります。 この定例労務相談会には現場の店長も参加してくださるので、法的な視点に加え、同席する社員の“現場感”が意見として交わされるため、非常に建設的な場になっています。
羽富 : 私は今年3月に人事労務部へ異動しましたが、労務相談会での安藤先生のフィードバックはそこに参加した社員の知見向上に確実につながっていると感じます。 現場で発生している問題はどの店舗にも共通しうる内容もあるので、労務相談会を通じて共有される事例やそこで提示いただく解決策が次の対応に生かせるのは大きなメリットです。
現場に根ざした制度づくりを支える伴走
藤本 : セブン‐イレブン・ジャパンは現在、国内で約21,700のフランチャイズ店舗と約150の直営店を展開しています。そのうち、直営店を支援する教育推進部のトレーナーや、OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー=店舗経営相談員)の育成にも力を入れています。OFCはキャリアパスの中で直営店の店長を経験し、人を雇用しながら学ぶ経験をしますが、その過程で出てくる労務課題を安藤先生に相談しています。
羽富 : 課題が生じた際、本社内でも一次検討を行いますが、複雑な案件やデリケートな内容については、より慎重に検討するため安藤先生に相談するようにしています。 直営店で発生した労務トラプルでは、従業員の雇用形態や勤務実態を丁寧にヒアリングしていただき、短期間で実行可能な解決策を提示していただけた点は非常に助かりました。
安藤 : ありがとうございます。制度や人事運用の中で生じる“ほつれ”を丁寧に整えていくことこそ、労務支援の本質だと思っています。これからもこの定例会をお気軽にご活用いただけますと幸いです。
変化を続ける組織と、これからの人事のかたち
安藤 : 最近は貴社内での制度改正の動きも活発ですね。
藤本 : はい。創業50年を迎え、新たな成長を目指す中で、求められる人材像も変化しています。直近では年次有給休暇をより取得しやすくするための制度改定を進めています。安藤先生とは、既存の規程をどのように変更するかを一緒に検討させていただきましたね。 また、2023年には、これまでの年功序列的な制度から脱却し、報酬制度・等級制度・評価制度を刷新しました。成果創出を正当に評価し、自立的・自律的にキャリアを築ける社員を増やしたいと考えています。ルールはシンプルに、挑戦を生み出す文化を根づかせることが目標です。
安藤 : そのような変化の中で、ZeLoとしてどのようにお手伝いできるでしょうか。
藤本 : 制度を変えても、全員にとって全て満足のいく処遇になるわけではありません。一人ひとりに寄り添ったアプローチをどう実現するか、今後もぜひご相談させてください。 また、法改正への対応や業界動向の知見も、引き続きご助言をいただきたいです。
グローバル基準を見据えた体制整備とZeLoの伴走
藤本 : セブン‐イレブンは世界中に展開しており、日本の企業でありながら今後はグローバルレベルでの人材育成や受け入れ体制の整備が求められます。 各国との報酬水準の差を考慮した制度運営や、赴任手続きなどの対応も課題の一つです。今後は親会社とも連携しながら、グローバル展開を前提とした人事制度の検討を進めていきたいと考えています。
安藤 : 私たちZeLoも、東南アジアを中心に、特にインドネシアでの日系企業の海外展開や現地法人の労務支援に関わっています。特にインドネシアに関しては、現地資格を有しているフィエスタ・ヴィクトリア インドネシア法弁護士も所属しているので、現地の法制度や文化を理解した上で、日本企業が安心して事業を進められるようなサポートを行っています。
藤本 : 日本国内での食の提供においては、品質を追求してまいりました。 これをグローバルに展開することで国外におけるブランドの価値をさらに高められると考えています。
安藤 : その際、やはり人の問題は生じますよね。最近では、外国人の採用や現地勤務の相談も増えています。 日本で雇用して現地で働いてもらう場合、どの法律を適用するかは国ごとに異なります。多くは日本での雇用契約を基に、日本法のもとで働き始め、その後の労働関係は現地法に従うケースですが、国によっては行政手続きが煩雑な場合もあります。そうした複雑な場面こそ、私たちが法務・労務の両面で支援できる領域です。 セブン‐イレブン・ジャパン様のように、世界を見据えて新しい価値を生み出す企業の挑戦を、これからもぜひ法的側面から支えていきたいと思っています。
藤本 ・羽富 : 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
安藤 : こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
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※掲載内容は取材当時のものです(取材日:2025年10月7日)
(写真:根津佐和子、取材・編集:中村渚・斎藤美緒)