介在価値の大きさがやりがいに繋がる──私がZeLoに転職したワケ
Attorney admitted in Japan
Akihiro Saotome
近年、web3やNFTに関連した様々な新規事業が立ち上げられるなど、ブロックチェーン分野は大きな転換期を迎えています。法律事務所ZeLo・外国法共同事業は、流行前から、ブロックチェーン・暗号資産の分野に着目し、研究・実務を深めてきました。そして2022年春、高井 雄紀弁護士と松林 愛弁護士を中心に「web3分野」を専門に取り扱うチームを発足し、ブロックチェーン・暗号資産・NFT分野のさらなる発展に向けて尽力しています。今回は、弁護士としてこの分野に携わるやりがいや難しさなど、2人の実務に迫りました。
目次
ーー現在、web3やNFTをはじめ、ブロックチェーン・暗号資産分野が非常に注目されています。ZeLoも、2022年春に「web3分野」の専門チームを発足し、サポート体制を強化しました。最近はどのようなご依頼が多いですか?
高井:マーケットの拡大に伴い、新規でのご依頼と、もともとお付き合いのあるブロックチェーン関連会社からの追加のご依頼と、両方が増えてきたかなと思います。特に、ブロックチェーンやNFTをビジネスモデルとして扱う会社であっても、会社全体のコーポレート業務は他の企業と変わりません。
松林:ZeLoへのお問い合わせの取っ掛かりとしては、ブロックチェーンやNFTが多いですね。ご信頼をいただくことができたら、契約書審査などの顧問業務や、会社法対応を行っています。
ーーZeLoは、創業から約1年半後の2018年に、書籍『ブロックチェーンビジネスとICOのフィジビリティスタディ』(商事法務)を出版しました。黎明期から研究・実務をリードしていたのが高井先生だと聞いています。高井先生はいつ頃から、ブロックチェーンなどに興味を持っていたのでしょうか?
高井:ZeLoに入る前の2016年末に、知り合いから「仮想通貨やブロックチェーンが面白いよ」と聞いたのをきっかけに、自分で購入したり値動きを見たりして楽しんでいました。ある時、アルトコインを中心に仮想通貨市場がとても盛り上がった時期がありました。自分の中で働き方に対するパラダイムシフトが起こるほどの衝撃を受け、そこからはまっていったように思います。
同じ時期に、友人伝いでZeLo創業者の小笠原匡隆先生・角田望先生に会う機会があり、仮想通貨の話をしたところ、小笠原先生が興味を持ってくれました。そして、実際に仮想通貨を購入までして、記事も書いてくれたんです。多くの方に記事が読まれて、ZeLoに仮想通貨・ブロックチェーン関連のお問い合わせが入るきっかけになったと聞いています。ZeLoでは書籍『ブロックチェーンビジネスとICOのフィジビリティスタディ』の執筆・出版をはじめ、セミナー開催などの発信も続けたことで、業界での知名度もあがり、この分野での案件を多くいただくようになりました。
縁があってわたしも2018年7月にZeLoにジョインし、ブロックチェーン・暗号資産分野のクライアントを多く担当させていただきました。
ーーそして、2022年春からweb3チームとして始動されたんですね。
高井:もちろんわたし以外にもブロックチェーンや暗号資産に精通している弁護士は、ZeLoに何名も在籍していますが、以前は基本的にはチーム体制を取らず、個々で対応していました。
しかし、段々と事務所のメンバーが増え、松林先生がジョインした2022年3月ごろには、弁護士だけで30名を超える事務所に成長しました。事務所の成長を受け、ナレッジシェアをより機能的に行える体制を整えた方が良いのではないか、と声が上がったことがチーム結成のきっかけのひとつです。
また、クライアント数も、ありがたいことに、わたしがジョインした頃から5倍以上に増加し、業界ごとに分類ができるようにもなりました。少人数の弁護士でチームを組み、ナレッジシェアをしてより質の高いサービスを提供しようと、チーム体制が導入されました。
ーー松林先生は、2022年3月ごろ、チーム体制始動と同じくらいのタイミングでジョインされました。そもそもなぜZeLoのジョインに至ったのでしょうか?
松林:以前は、会社を当事者とする任意交渉・訴訟対応から、交通事故や相続をはじめとした一般民事までを取り扱う法律事務所に勤務していました。クライアントである会社に部分出向もさせていただくなど、幅広い案件の経験を積んできました。
前職にはもちろんやりがいがありましたが、出向先の会社で社員の方から法的な相談を日々いただくうちに、早期に弁護士によるアドバイスで法的な問題の芽を摘み、ビジネスに専念いただける“予防法務”に魅力を感じるようになりました。また、出向先の業務で、新たな法律に触れる機会も多く、日々アップデートされる法律をキャッチアップでき、業務に活用できることにも、同様に魅力を感じました。
弁護士としてのキャリアを考える中で、一般民事など前職で取り扱っていた法律を専門にしていく道も考えましたが、これから30年以上続くであろう弁護士人生を考えたときに、「クライアントの法務部のように近しい距離でご相談いただく機会を増やしたい」「今は新しい法律に触れて活用する機会を手にしたい」「幅広い経験を積みたい」と思うようになったのが転職のきっかけです。
せっかく幅広い経験を求めるのであれば、最先端の分野に最高峰のレベルで対応している環境に身を置きたい。そう考えていた時に、ZeLoと出会いました。創業当初から最先端分野に精通しているZeLoであれば、一般民事の経験を生かしながら、ほかの専門性を極めていけるのではないかと希望を感じ、ジョインに至りました。
ーー最先端分野に関心はあったものの業務経験はなかったとのことですが、ZeLoに入所されてからはどのようにキャッチアップされたのでしょうか?
松林:所内のコミュニケーションツール「Slack」で、法改正に関する情報はもちろん、任意団体の動向やビジネスの在り方についても頻繁に情報共有が行われています。それらの投稿を見て官庁のサイトや文献にあたるなどのキャッチアップをしていくケースが多いです。
また、新しい分野で具体的な法制度が整っていないからこそ、任意団体や官庁のガイドラインなどで、今後の方向性を知ることも非常に重要です。政府の提言や委員会の動きなどを日々チェックしていますね。
ーー高井先生と松林先生のweb3チームが始動して約3カ月ですが、高井先生は以前と比べてどのような変化を感じていますか?
高井:誰かがいて、相談できる環境はありがたいです。
特に、松林先生とわたしのキャラクターがまったく違うので、補い合いながら進めていますね。わたしが、まず大枠をつかんで物事を進め、松林先生がじっくり細かくリサーチして情報を詰めてくれることが多いです。
松林:課題に直面した時、高井先生が「だいたいここの法律が関係しそう」「事案は少し違うが、以前のこの経験が活用できそう」などと当たりをつけてくれて、そこを起点に検討を進められるので、わたしも助かっています。
ーークライアントワークにおいて、web3分野ならではの難しさはありますか?
高井:様々な法規制が関連してくるところですね。抜け漏れがないように、クライアントのビジネスを「どのような場面なのか」「どのような法規制が関連すると考えられるか」とリアルに想像するようにしています。派生条件や注意すべき点が見えてくると、先回りした提案にも繋がると思います。
松林:どれかの法律をクリアしたからといって終わりではない点が、面白くもあり、ある種の怖さもありますね。関係する金融規制そのものが厳しいこともあり、緊張感を持った慎重な対応が重要だと考えています。
高井:当初考えていなかった法令が関連すると分かった時には、所内に向けて積極的に発信するようにしています。法改正や新たなガイドラインなどが出た時には、クライアントにも共有するなどして、事務所を超えて関係者全体にナレッジシェアをするように心がけています。
ーークライアントと関わるうえで、気を付けている点はありますか?
松林:web3の分野は、新しい言葉を使うことも多いため、話し手と聞き手の認識が一致しているかを都度確認するよう努めています。Web会議なども用いて、丁寧にコミュニケーションを行うようにしていますね。回答へのスピード感やアドバイスのクオリティはもちろん、難しい事柄をいかにわかりやすく伝えるか?という点も気を付けています。
また、ZeLoにジョインした当初は、ブロックチェーンや暗号資産は目に見える形がないため、自分のなかでイメージを持ちづらいことが課題でした。業界やビジネスのイメージは、新書などの一般的な説明を通してつかみ、それから具体的なビジネススキームに合わせた法的な問題点を想像するようにしていました。この経験が、クライアントにわかりやすい説明を心がける際に役に立っていると思います。
高井:わたしも、基本的には、お互いの頭の中にあるイメージを一致させるように、クライアントと密に対話をするよう心がけています。もし新しい単語や複雑な単語で、我々が分からない時があった場合には素直に尋ねるようにし、業界知識のレベルを高めるようにしています。
松林:ほんのすこしの要件の違いで、法の適用の有無が分かれる分野なので、誤解のないよう、コミュニケーションには気を配っていますよね。
ZeLoが普段やり取りしているクライアントには、社内での裁量が大きい担当の方も多く、一つの会議でビジネスの方向性が大きく変わる場合もあります。わたしたちには、法律的な観点でのアドバイスが求められてはいますが、クライアントが真に求めているのはビジネスのための法律です。なるべくクライアントと同じ目線でビジネスを考えられるように、クライアントがどのような考え方をして、何を目指しているのか、理解するよう努めています。
高井:時には、海外ビジネスを日本で展開したいという話をいただく機会もありますが、日本の現行法では難しい場合もあります。そんな時も、ノーとは言わず、一緒に打開策を考えるようにしています。ビジネスモデルをパターンに分けて整理したり、関連する法規制をひとつずつ丁寧に確認したりと、最後まで伴走することを徹底しています。
ZeLoには、発想力が豊かなメンバーが多く、みんなでアイデアを出し合っていますね。
ーー業務を行ううえでの面白さや、モチベーションは何かありますか?
高井:やはり伸びている分野は、新しいパターンがどんどん出てきて、その展開の早さは面白いなと思います。個人的にもSNSなどを通じて、日々業界の雰囲気や相場観を見ながら楽しんでいます。海外の事例を見て、「もしこれが日本に展開されたら適法性はどうなるんだろうか…?」と考えるなどしていますね。
クライアントもビジネスに積極的で先進的な考えを持った方が多く、刺激を受けています。もちろん明確にノーなところはその旨お伝えしながらも、クライアントにとって良い塩梅となる方策を見つけて、一緒に進め方を検討しています。
松林:個人的には、「クライアントにどう影響を与えられたか」のような抽象的なところにモチベーションがあり、クライアントが求めているもの以上を返せたときには嬉しいと感じます。また、逆にクライアントの期待に応えられるようになったことは、自分が学んできた分野について必要な知見を得ているという担保になり、自信にも繋がっています。
携わっている分野柄、多くの法規制を検討しながら進めたり、クライアントが新しくやろうとしているビジネスにすべて触れたりして、様々なことができるようになるのが楽しいですね。クライアントの反応を通して、専門的にも幅広くも自分のキャリアを深められていると実感しています。
高井:わたしも、ZeLoにジョインして4年目となりますが、取扱分野はかなり広がりました。ZeLoには、多種多様なクライアントがいて、様々な場数を踏む機会も多いです。今では、どんな案件が来ても対応出来ると思えるくらいになりました。
ーーweb3チームとして今後の展望はありますか?
高井:ZeLoの要となる分野だと思うので、黎明期から対応してきたナレッジを生かして引き続き事務所をリードしていきたいですね。
クライアントの満足度を高めていくためにも、アドバイスのスピード感やクオリティの担保には、引き続き注力していかなければいけません。最先端分野を取り扱うチームとしてご依頼をいただき続けるためにも、効率的なナレッジシェアの体制構築などを進め、一石二鳥、一石三鳥の考え方で限られたリソースをどのように活用するか検討していきたいですね。
松林:今は、パラリーガルとも協働しながら契約書のレビューやリサーチに対応しています。たとえばパラリーガル向けに、契約書レビューのチェックポイントをまとめたリストをつくるなど、勘所を素早く押さえられ、自発的な学習もしやすくなるような体制作りもしていきたいです。
高井:我々以外に、この分野に精通するZeLoのメンバーも巻き込みながら事務所の知見を深めていきたいですね。
松林:わたしのように、ZeLoに入ってからブロックチェーンなどの新しい分野の案件対応をする場合でも、高井先生のように高い専門性と相場観を持っている弁護士人とタッグを組むことで、クライアントの期待を超えたサービスを提供することができます。
高井:松林先生のように、一般民事など他に強みがあったうえで新たな分野に挑戦するのは強いですよね。特にweb3の分野は、あらゆる企業法務に関わることができて、弁護士のキャリアアップにもなると思います。
ーー松林先生は今後の展望として、考えているところはありますか?
松林:もちろんブロックチェーンなど最先端分野のサポートは引き続き深めていきたいと思っています。同時に、ZeLoは最先端分野以外の企業法務全般のサポートをしているところも押し出していきたいです。弁理士や司法書士、海外の資格を持った弁護士も在籍しているので、法律関係はワンストップで対応できるところを伝えていきたいですね。
ーーまさに、ZeLoの新たなVISION「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」に通じていますね!
松林:高井先生の「最先端分野といえばZeLo」という横のラインと、わたしの「法務関係といえばZeLo」という縦のライン、2軸でクライアントの法務基盤になっていきたいですね。
また、個人的には自分自身の基盤として「長く健康的に働く」ことも目標にしています。ナレッジシェアの体制含めて、事務所のより良い体制を築いていきたいですね。
高井:わたしも長く健康的に働くために、日々運動の時間を入れたり生活を見直したりと気を付けています。web3チームは、この点も目標ですね!
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※掲載内容は取材当時のものです(取材日:2022年5月25日)
(写真:根津佐和子、文:高田侑子、編集:村上未萌・ZeLo LAW SQUARE編集部)