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株式投資型クラウドファンディングに関する規制緩和、改正案の公表・パブリックコメント開始

金融庁は、2021年10月11日に、「⾦融商品取引法施⾏令の⼀部を改正する政令(案)」及び「⾦融商品取引業等に関する内閣府令等の⼀部を改正する内閣府令(案)」を公表し、パブリックコメントを開始しました。本政令案・内閣府令案(以下あわせて「本改正案」)は、株式投資型クラウドファンディング(以下「株式投資型CF」)の規制緩和及び少人数私募についての見直しを主な内容としています。本記事では、本改正案の概要について、背景とともにご紹介します。

株式投資型クラウドファンディングに関する規制緩和、改正案の公表・パブリックコメント開始
STARTUP-FINANCE
PROFILE
Daiki Matsuda

Attorney admitted in Japan

Daiki Matsuda

Graduated from the University of Tokyo, Faculty of Law, in 2018. Admitted to the bar in 2019 (Daini Tokyo Bar Association). Joined ZeLo in 2020. His main practice areas include startup finance, M&A, public affairs, fintech, web3 (blockchain, cryptocurrencies, NFTs, etc.), venture and startup law, and general corporate matters. Major publications include Strategic Rulemaking: Theory and Practice (Shojihomu, 2021), and notable articles such as "Practical Issues and Guidelines for Shareholders’ Agreements in Startups" (NBL No. 1242, May 15, 2023).

株式投資型クラウドファンディングとは

 インターネット上で株式等の募集をし、多数の投資家から少額ずつの資金調達を行うことです。出資者が、物品やサービスではなく株式等の有価証券を取得できるという点が、一般的なクラウドファンディング(購入型や寄付型)とは異なっています。

背景

現行法の概要

 株式投資型CFは、従前、金融商品取引法(金商法)上の規制により事実上実施が困難でしたが、2014年の法改正で規制が緩和され、一定の範囲内で実施が可能となりました。
 具体的には、(1案件における)発行総額が1億円未満・1投資家あたりの払込金額が50万円以下であることなどの条件のもと、①株式投資型CFを実施するプラットフォーム事業者には、第1種金融商品取引業よりも要件の緩和された「第1種少額電子募集取扱業務」の登録(ファンド持分の募集等においては第2種金融商品取引業に対応する「第2種少額電子募集取扱業務」の登録 [1])によって事業を行うことを認め、②株式等の募集を行う発行会社には開示規制(有価証券届出書の提出等の情報開示義務[2])がかけられないようにしました 。

[1]なお、第2種少額電子募集取扱業務については現在活用例が見られず、本記事では限定的な言及にとどめます。

[2]厳密には②の点は改正法による規制緩和ではなく、従前からあった募集総額1億円未満の場合の「少額免除」(金商法4条1項5号)の規定を活用したものです。

課題

 第1種少額電子募集取扱業務又は第2種少額電子募集取扱業務の対象となる株式投資型CF(以下では単に「株式投資型CF」といいます。)の要件については、改正当初より、様々な課題が指摘されていました。特に、「発行総額1億円未満」・「1投資家あたりの払込金額50万円以下」という要件は、スタートアップ企業などによる資金調達には活用しづらいものとなっているといえます。

本改正案に至るまで

 金融庁が設置する金融審議会の「市場制度ワーキング・グループ」(2020年10月~)では、株式投資型CFに関する法制度のあり方が議論の対象の一つとなり、「第二次報告」(2021年6月18日)において提言がまとめられました。本改正案は、この提言の内容を踏まえたものとなっています。

各改正事項の概要

株式投資型CFのみで発行総額の算定が可能に

 企業が株式投資型CFにより発行可能な有価証券の総額は1億円未満までとされており、発行総額の算定にあたっては、潜脱防止の観点から過去1年間の発行額を合算することとされています。現在の規定では、合算の対象が株式投資型CFに限定されておらず、VC等からの資金調達による発行額も含まれていました。
 しかし、株式投資型CFとその他の資金調達を併用して、1億円以上の資金調達を行いたいというニーズがある上に、潜脱防止の観点からは、株式投資型CFでの発行額が上限内に留まっていればよいと考えられることから、合算の対象を株式投資型CFでの発行額のみに限定する旨の改正が予定されています。

特定投資家について投資上限額を撤廃

 現在、投資家の投資上限額は株式投資型CF1件当たり50万円とされていますが、一部の投資家には50万円を超える投資ニーズがあるという指摘があり、利用企業等からは投資上限額の引上げという要望がありました。
 そこで、上記のニーズや投資家保護の観点から、リスクを踏まえた適切な投資額を判断できる特定投資家(いわゆる「プロ投資家」)に限って、投資上限額の50万円を撤廃する旨の改正が予定されています。
なお、一般投資家に関しては、特定投資家ほどのニーズがないこと、非上場企業の目利きをすることが難しいことなどが指摘され、投資上限額の変更が見送られることになりました。

特定投資家とは:
 一般投資家よりも専門知識・経験等を有することが期待されるプロ投資家として金商法上定められている投資家の類型で、投資家保護のための規制が一定程度緩められています。個人が特定投資家になるためには、①純資産3億円以上、②投資性のある金融資産3億円以上、③取引開始後1年以上経過していることなどが要件とされます(金融商品取引業等に関する内閣府令62条)。
 なお、特定投資家の制度のあり方も市場制度ワーキング・グループにおける議論の対象となっており、「第二次報告」では個人が特定投資家に移行するための要件の弾力化等が提言されています。

少人数私募の取得勧誘対象者数の通算期間短縮

 現在、開示規制において、勧誘対象者数が過去6ヶ月間で通算して50名未満となる有価証券の取得勧誘は、少人数私募として、発行者の有価証券届出書の提出義務等(開示規制)が免除されています。スタートアップ企業がVC等から資金調達をしても開示規制が適用されないのは、この少人数私募に該当すると整理されているためです。
 しかし、株式投資型CFはインターネットを利用して多数の者に勧誘を行う手法であるため[3]、実施後6ヶ月間は、少人数私募による資金調達を行うことができなくなってしまうという問題がありました。
 そこで、少人数私募の取得勧誘対象者数の通算期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮する旨の改正が予定されています。なお、この変更は、株式投資型CFの後に少人数私募を実施する場合に限定されるものではありません。

[3]これ自体は募集にあたり、前述のとおり「少額免除」(金商法4条1項5号)として開示規制の適用が除外されています。

今後の課題

 株式投資型CFに関しては、発行総額の上限(1億円未満)や一般投資家の投資上限額の見直しを求める声も根強く、「第二次報告」にもそうした意見があった旨は言及されていますが、今回見直しには至りませんでした。今後もこれらの論点については引き続き議論が行われていくものと考えられます。
 また、今回の改正案の論点は、「第二次報告」でなされた提言の一部にすぎません。特定投資家制度の見直しを含め、他の提言内容についても順次制度改正の検討が進められていくことが予想され、今後も注視していく必要があります。

パブリックコメントの期間は2021年11月10日までとされており、その終了後に公布・施行が行われる予定となっています。パブリックコメントの詳細はこちらをご覧ください。

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