
ルールメイキングにはどんな戦略が必要?法律事務所ZeLoが実務を踏まえた書籍を出版しました
こんにちは、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の弁護士・松田大輝です。 ZeLoでは、2021年3月1日に、書籍『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)を出版いたします。本書は、ルールメイキングの入門書として、主に法律家の視点から「企業が法規制などの課題にどのように取り組み、またルール形成に携わっていくべきか」を論ずるものです。 本記事では、本書を執筆するに至った背景や本書の概要、注目いただきたいポイントなどについて、紹介したいと思います。

Graduated from the University of Tokyo, Faculty of Law, in 2018. Admitted to the bar in 2019 (Daini Tokyo Bar Association). Joined ZeLo in 2020. His main practice areas include startup finance, M&A, public affairs, fintech, web3 (blockchain, cryptocurrencies, NFTs, etc.), venture and startup law, and general corporate matters. Major publications include Strategic Rulemaking: Theory and Practice (Shojihomu, 2021), and notable articles such as "Practical Issues and Guidelines for Shareholders’ Agreements in Startups" (NBL No. 1242, May 15, 2023).

ルールメイキングの戦略と実務
- 編著
- 官澤康平、南知果、徐東輝、松田大輝(法律事務所ZeLo・外国法共同事業)
- 発売日
- 2021年3月1日(書店)、3月3日(Amazon)
- ページ数
- 280ページ
- サイズ
- A5判並製
- 定価
- 3,520円(税抜価格3,200円)
- ISBN
- 978-4-7857-2842-7
目次
執筆に至った背景
ZeLoでは、2017年3月の創設以来、最先端の領域における起業や新規事業立ち上げなど、様々なご相談を受けてまいりました。そのなかで、法規制の課題に対してルールメイキング的なアプローチを取る場面や法整備の動きに関わる場面が増えてきています。
こうした日々の業務を通じて、イノベーションの実現のためには、民間から「ルールメイキング」の動きを推進していくことが必要だと再認識しました。同時に法律事務所として、積極的にルールメイキングに貢献していきたいという思いが強くなっていました。
ZeLoでは事務所のミッションとして〈From Zero to Legal Innovation〉を掲げており、次に取り組むべき「Legal Innovation」の一つとして、ルールメイキング/パブリックアフェアーズ領域の発展に法律事務所の角度から取り組んでいくことが考えられました。そして、その第一歩として、これまでに得られた知見や、ルールメイキングに関する現時点でのビジョンを一冊の本にまとめてみたいと思い、本書の執筆を行うことになりました。
本書は、ZeLoのメンバー総出で、約1年半かけて執筆してきたものです。執筆期間は、ルールメイキングに関する案件をご依頼いただくことが増え、法律事務所として、法律実務家として、どのようにルールメイキング/パブリックアフェアーズの領域に関わっていくべきかを模索するタイミングでもありました。また2020年12月には、一つのマイルストーンとして、「パブリックアフェアーズ部門」を立ち上げました。
本書の主要テーマは、企業がどのようにルールメイキングに関わっていくべきなのか、またそれを法律実務家がいかにサポートしていけるかという点にあります。これらの問いへの解は、私たちもまだ模索しているところです。本書をお読みいただく皆様と一緒に、問いを深めて、解を探していきたいと考えています。
(なお、本書が「パブリックアフェアーズ」ではなく「ルールメイキング」という言葉を採用したのは、法律実務家としての関わり方についての悩みの結果でもあります。)
本書の章立てと概要
本書の章立てと各章の概要は、以下のようになっています。
まず、序章から第3章までは、企業によるルールメイキングについて、基本的な考え方や関連する制度の説明など、総論的な解説を行っています。続く第4章は、各論として、ルールメイキングの実例の紹介に充てています。第5章から終章までは、実務的解説からはやや距離を取り、企業によるルールメイキングの今後の可能性や展開を探るような検討を試みています。
序章 ルールメイキングの発想
本書の導入として、企業法務におけるルールメイキング的発想について実例を交えて紹介します。第1章 ルールメイキングとビジネス戦略
ビジネスにとってのルールメイキングの重要性を整理した上で、ビジネス戦略にどのようにルールメイキングを取り入れていくべきかについて検討します。第2章 ルールメイキングの基礎
法令などの「ルール」の全体像やルールメイキングに関わるアクターを概観します。また、法律の形成過程や、近時特に重要となっている官邸主導政治について紹介します。第3章 ルールメイキングの方法
ルールメイキングを実践する際の方法論として、ステークホルダーマッピングおよびアジェンダ設定を取り上げます。また、企業単位で利用できるルールメイキングの制度として、グレーゾーン解消制度・規制のサンドボックス制度・新事業特例制度について詳しく解説します。第4章 ルールメイキングの実例
ルールメイキングの実践例を取り上げ、法的論点とともにその概要を紹介します。紹介する実例は、グレーゾーン解消制度などの国の制度の活用事例から、ロビイング・PRを組み合わせた公職選挙法改正の事例まで多岐にわたるものとなっています。第5章 裁判を通じたルールメイキング
裁判所のルールメイキング機能に焦点を当て、その意義や課題を整理します。法解釈と法創造の境界についての補論も付しています。第6章 ソフトローとルール形成主体としての企業
企業の作る自主規制などの「ソフトロー」について、アーキテクチャ論を交えながら、その意義や機能を検討します。また、こうしたソフトローの形成主体たる企業の「規制者」としての側面に着目し、そのあり方についても考察します。終章 ルールメイキングの未来
ルールメイキングをめぐる近時の動向や課題を改めて整理するとともに、ルールメイキングがなぜ「法」にとって必要なのか、また企業や個人がそのなかで果たすべき役割について論じます。
なお、商事法務様のご厚意により、序章の全文をnoteにて公開しております。本書のおすすめの読み方も書いていますので、ぜひご一読いただけますと幸いです。
ルールメイキングに対する本書の視座
最後に「本書がどのような視座で、企業によるルールメイキングを論じているか」を紹介いたします。
1つ目は「イノベーション政策やビジネス戦略」の観点です。
新たな技術・ビジネスモデルが次々と登場するなかで、法律等の既存のルールでは適切に対処できない場合が増えています。そうした課題の前線にいる企業が、イノベーション/ビジネスの成功のため、ボトムアップでルール形成に関与していくことの必要性が高まっています。
特に、人々の実生活になくてはならない領域(たとえば金融、交通、医療)でのイノベーションや社会課題の解決に取り組もうとするときは、その領域の重要性に比例するように、複雑な法規制の課題やステークホルダーの利害関係が立ちはだかります。しかしまた、こうした分野でのイノベーション/課題解決こそが今まさに期待されています。
ビジネス的にも、ルールを変えることができれば、大きなイノベーションのチャンスをつかんだり、市場を拡げたりすることができるというメリットがあり、ビジネス戦略上も重要なオプションとなっています。
2つ目として「ルールメイキングに取り組む責任」の観点も随所に織り込んでいます。これにはいくつかの文脈があります。
まず、先に述べたように、社会や人々の生活により重要な領域でのイノベーションが進んでいる現在、企業には、当該領域の規制が保護しようとしている利益・価値を無視することなく、むしろ適切にこれを調整するルールを提案していくことが社会から求められています。
また、プラットフォーム企業に代表されるように、企業の提供するサービスの設計や利用のルールが個人の権利利益に大きな影響力を持つようになっており、企業自身が規制主体/ルール形成主体となる場面が増えています。企業がどのようなルールを作り、運用していくかについて、政府・社会の注目は高まっており、責任あるルール作りが必要とされています(主に本書の第6章で論じています)。
本書ではその他にも様々な観点から、ルールメイキングについて論じています。ぜひ本書を手に取り、批判的にお読みいただけますと幸いです。
書籍『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務)のご紹介
ビジネス戦略としてのルールメイキングのあり方や方法について、豊富な事例を交えながら解説します。基本的な事項の整理、方法論や活用できる制度の紹介、ソフトローに関する理論的検討などを行っています。事例紹介では、グレーゾーン解消制度等の活用事例、ネット選挙や収納代行に関するロビイングの事例など、幅広い実例を取り上げています。

ルールメイキングの戦略と実務
- 編著
- 官澤康平、南知果、徐東輝、松田大輝(法律事務所ZeLo・外国法共同事業)
- 発売日
- 2021年3月1日(書店)、3月3日(Amazon)
- ページ数
- 280ページ
- サイズ
- A5判並製
- 定価
- 3,520円(税抜価格3,200円)
- ISBN
- 978-4-7857-2842-7
【2021年3月23日(火)18時〜】書籍刊行記念イベントを開催 ※本イベントは終了いたしました

法律事務所ZeLoでは、3月23日(火)18:00~19:00に、書籍刊行記念WEBイベント「事業を成長させるルールメイキングの始め方」を開催いたします。
新規事業に挑むスタートアップ経営者や、事業開発・PRを担当する方へ向けて、企業主導のルールメイキング戦略を考えるにはどうすれば良いか、具体的な事例も踏まえて紹介いたします。ぜひお申込みフォームから登録のうえご参加ください。※本イベントは終了いたしました。
【こんな方におすすめです】
・スタートアップ経営者、ビジネス開発やPR担当の方
・新規ビジネスの立ち上げに取り組むビジネスパーソン
・スタートアップを支援する弁護士・専門家・ベンチャーキャピリスト
【登壇者】
・官澤 康平 弁護士:法律事務所ZeLo・外国法共同事業(第一東京弁護士会所属)
・南 知果 弁護士:法律事務所ZeLo・外国法共同事業(第二東京弁護士会所属)
・松田 大輝 弁護士:法律事務所ZeLo・外国法共同事業(第二東京弁護士会所属)
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(編集:村上 未萌、写真:人見 拓磨)
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