『半沢直樹』に登場する「債権放棄」とは?
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Chika Minami
こんにちは!南知果です。皆さんは日曜劇場『半沢直樹』ご覧になっていますか?私は欠かさず見ています。毎週日曜のよる9時を楽しみに一週間を過ごしているといっても過言ではありません。ドラマの中で、半沢直樹は証券会社の営業企画部長として活躍します。今回のnoteでは、『半沢直樹』の第1~4話に登場するM&A用語について解説しようと思います。ぜひこのnoteを読んで、日曜劇場『半沢直樹』をより一層楽しんでいただけますと幸いです!
こんにちは!南知果です。皆さんは日曜劇場『半沢直樹』ご覧になっていますか?私は欠かさず見ています。毎週日曜のよる9時を楽しみに一週間を過ごしているといっても過言ではありません。ドラマの中で、半沢直樹は証券会社の営業企画部長として活躍します。今回のnoteでは、『半沢直樹』の第1~4話に登場するM&A用語について解説しようと思います。ぜひこのnoteを読んで、日曜劇場『半沢直樹』をより一層楽しんでいただけますと幸いです!
※主に下記の書籍を参考にさせていただきました。
江頭憲治郎『株式会社法(第7版)』有斐閣、2017年
田中亘『会社法(第2版)』東京大学出版会、2018年
西村あさひ法律事務所『M&A法大全(上)(下)〔全訂版〕』商事法務、2019年
武井一浩『会社法を活かす経営』日本経済新聞社、2006年
※以下ネタバレを大きく含みますので、まだドラマを見ていない方はドラマを見てからお読みいただくことを強くオススメします!!!
「買収」とは、ある企業が他の企業の経営をコントロールする目的で、当該会社の発行済株式を取得すること。
『半沢直樹』の第一話では、大手IT企業「電脳雑技集団」がIT業界の雄「スパイラル」を買収しようとします。
「買収」とは、正式な法律用語ではありませんが、一般的に、他の企業の経営をコントロールする目的で、その会社の株式を取得することをいいます。
ここで会社法の基本を少しお話しすると、株式会社の基本的なルールの一つとして、「所有と経営の分離」があります。
「所有と経営の分離」とは、
・株式会社に出資している者(所有者)= 株主
・株式会社の経営をしている者 = 経営者(取締役ら)
を分離すること。
上場企業になると株主の数がたくさんいるので、株主自らが経営の細かい事項まで行うことはできなくなります。
そのため、株主は経営者(取締役ら)に対して会社の経営を任せる仕組みとなっているのです。
とはいえ、株式会社の所有者は株主なので、経営に関する重要な事項は、株主総会によって決議がなされます。
通常の株主総会の議案については、過半数の議決権を有する株主の賛成で承認されるため、株式会社の株式の過半数を保有していれば、会社の経営をコントロールすることが容易になります。
『半沢直樹』においても、電脳雑技集団は、スパイラルの株式の過半数を取得することを目指しています。図示すると下記のようなイメージです。
「敵対的買収」とは、買収される会社の経営陣(通常は取締役会)の賛同を得ていない買収のこと。
日本のM&Aは、買収する会社と買収される会社の双方の経営陣の合意に基づいて、友好的に行われるものがほとんどです。
しかし、『半沢直樹』では、スパイラルの社長である瀬名洋介は、電脳雑技集団からの買収に同意しているわけではありません。電脳雑技集団がスパイラルに仕掛けているのは、いわゆる「敵対的買収」です。
買収される会社の株主から株式を譲り受ける方法であれば、買収される会社の経営陣の同意がなくても行うことができるのです(上記図参照。)。
このように「敵対的買収」とは、買収される会社の経営陣(スパイラル社長の瀬名洋介)の賛同を得ていない買収のことをいいます。
「時間外取引」とは、証券取引所の立会時間外における株式売買取引をいう。証券取引所の立会時間は、平日の午前9時から午後3時までの間(昼休みを除く)。
『半沢直樹』の第一話では、電脳雑技集団が時間外取引によって、スパイラルの株式を30%取得し、半沢らを驚かせます。
電脳雑技集団は、スパイラルの株式の過半数を取得しようとしています。
にもかかわらず、スパイラルの株式を時間外取引で30%しか取得しなかったのはなぜでしょうか?
これは、金融商品取引法上のTOB(株式公開買付け)制度(TOBについては次に解説します。)のもとで、いわゆる「3分の1ルール」というものがあり、一定の株式の取得についてはTOB(株式公開買付け)が義務づけられているためです。
「3分の1ルール」とは、簡単にいうと、株式を買い付けた後の持分比率が3分の1を超える場合には、TOB(株式公開買付け)を実施しなければならないといったルールです。
電脳雑技集団は、3分の1(33.3333…%)を超えるスパイラルの株式を取得する場合には、TOB(株式公開買付け)を実施しなければならなくなるため、それよりも少ない30%をまずは時間外取引で取得したのです。
TOB(株式公開買付け)とは、不特定多数の者に対して、公告により株券等の買付けの申込みの勧誘を行い、株式市場外で株券等を買い集めることをいう。
電脳雑技集団は、時間外取引によってスパイラルの株式を30%取得した後、TOB(株式公開買付け)によってスパイラルの株式の過半数を取得しようとします。
TOBには、友好的なものと敵対的なものがあります。
敵対的なTOBは、今回の『半沢直樹』の事例のように、買収会社(電脳雑技集団)と対象会社(スパイラル)との間で交渉がまったくない段階で突然開始されることがあります。
TOBを開始する場合、買収会社は、TOBによって買い取る対象会社の株式の価格を発表します。この価格は通常、市場価格よりも高い価格に設定するので、TOBをかけられた対象会社の株主としては、TOBに応じて株式を売却した方が得だと判断し、買収会社に対して株式を売却するのです。
「新株発行」とは、会社を設立した後に株式を新たに発行することをいう。
『半沢直樹』の第二話では、スパイラルは、電脳雑伎集団からの買収に対して、新株を発行し、過半数ラインを引き上げることによって対抗しようとします。
新株発行は、買収防衛策として広く用いられてきた手段です。
敵対的買収に対抗するため、新株発行によって買収会社の持株比率を低下させて支配権の取得を防止することは、最も直接的かつ有効な買収防衛策になるからです。
しかし、実は敵対的買収に対して新株発行で対抗する場合には、気を付けなければいけないルールがあります。
それは、「主要目的ルール」という判例法理です。
「主要目的ルール」とは、会社の支配権争いが生じている場面において、支配権の維持・確保を目的とした新株発行がされた場合には、その新株発行は認めるべきではない、という考え方です。
『半沢直樹』の中で、新株発行が「法的に問題あり」との論点が出てきていたのは、この主要目的ルールのことを指していると思われます。
ホワイトナイトとは、日本語にすると「白馬の騎士」。
買収会社に対抗して、敵対的買収を仕掛けられた対象会社を友好的に買収し、白馬の騎士のように救済する会社のこと。
スパイラルは、電脳雑伎集団からの敵対的買収に対して、新株を発行して対抗しようとします。そこでスパイラルのピンチを救うべく出てくるのが新株の引受先「ホワイトナイト」であるIT業界のカリスマ企業・フォックスです。
ホワイトナイトは、日本語にすると「白馬の騎士」です。
買収会社(電脳雑技集団)に対抗して、敵対的買収を仕掛けられた対象会社(スパイラル)を友好的に買収し、白馬の騎士のように救済する会社(フォックス)のことをいいます。
「証券取引等監視委員会」とは、証券取引の公正を確保する目的で設置され、金融庁に属する委員会をいう。不公正取引(インサイダー取引、株価操縦等)に関するモニタリング、調査を行っている。
『半沢直樹』の第三話では、半沢直樹の因縁の相手である黒崎駿一が登場します。証券取引等監視委員会として、半沢が勤めるセントラル証券に立ち入り検査にやってくるのです。
金融庁証券取引等監視委員会は、弊所の味香弁護士(@n_ajika)が2018年2月~2020年1月までの2年間、出向していた機関でもあります。
なお、味香弁護士の『半沢直樹』第三話を見た感想は下記のとおりです。笑
以上、『半沢直樹』の第1~4話に登場するM&A用語解説でした。
第5話からは、半沢直樹が破綻寸前の帝国航空の再建を任されます(楽しみです・・・!!!)。
次回は、企業再生に関する用語についても解説できればと思いますので、noteのフォローもぜひよろしくお願いいたします!
【追記 8/23】
第6話の公開に合わせて、「債権放棄」について解説しました!
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