『半沢直樹』に登場するM&A用語解説
Attorney admitted in Japan
Chika Minami
こんにちは!南知果です。先週の日曜劇場『半沢直樹』第5話も最高でしたね。第5話では、東京中央銀行に返り咲いた半沢直樹が破綻寸前の帝国航空の再建を任されます。そこで今回のnoteでは、『半沢直樹』の第5話・第6話に登場する「債権放棄」について解説します。
『半沢直樹』の第1~4話(スパイラル社買収編)に登場したM&A用語についても解説しておりますので、こちらもぜひご覧ください!先日noteの公式Twitterアカウントにも取り上げていただきました。ありがとうございます!
以下のnoteを読んで、日曜劇場『半沢直樹』をより一層楽しんでいただけますと幸いです!
※以下ネタバレを大きく含みますので、まだドラマを見ていない方はドラマを見てからお読みいただくことを強くオススメします!!!
「債権放棄」とは、債権者の一方的な意思表示(単独行為)により、債務の一部もしくは全部の返済を免除すること。企業の倒産を回避するために、銀行による金融支援策として実施されることがある。
「法的整理」とは、法律の定めにしたがった債務整理のこと。破産手続、民事再生手続、会社更生手続などがある。
法的整理は、法律に定められたルールと裁判所の関与・監督の下で行う債務整理です。会社の営業を停止し、すべて清算する「破産手続」や、会社をもう一度再建する「民事再生手続」「会社更生手続」などの種類があります。
法的整理の中でも破産手続は、会社自体をたたんでしまうことになるため、企業再生の「最後の手段」です。
法的整理の最も大きなメリットは、一部の債権者が反対していたとしても、法律で定められた割合の債権者が賛成すれば、債務を強制的にカットできることです。反対している債権者に対しても手続の効力が及ぶため、債権者間の公平を確保するためのルールが法律で定められ、裁判所が監督することになっているのです。
「私的整理」とは、債権者と債務者が個別に協議をして進める債務整理のこと。
『半沢直樹』で帝国航空が試みているのは、「私的整理」です。
私的整理をする場合、債権を有する銀行の存在はとても大きく、銀行による支援を受けられるかどうかが、企業再生に成功するか失敗するかの大きな分水嶺となります。
法的整理の場合には、法律に定められたルールに基づいて、裁判所の関与・監督下で手続が行われます。
これに対して、私的整理の場合には、債権者である銀行と交渉をし、同意・協力を得ることが必要です。そのため、私的整理をする企業にとって、銀行からの同意を得ることは最重要マターとなります。
そもそも、債務が膨らんで、にっちもさっちもいかなくなってしまった企業がまず取り組むべきは、新株発行等による自己資本の増強です。
しかし、債務額が大きすぎて新株を引き受けてくれる先が見つからないなどのどうしようもない場合には、銀行に対して金融支援策をお願いすることになります。
銀行による金融支援策には、リスケジュール(借入条件の見直し)、金利の減免、債権放棄などが考えられます。
こうした金融支援策の中でも、「債権放棄」は、特に銀行に対する負担が重いものであり、銀行としてはよほどの理由がない限り応じられないのが通常です。
銀行が債権放棄に応じるかどうかの判断は、極めて高度な経営判断です。
銀行が債権放棄をすることについて合理的な理由がなければ、銀行が自身の株主から代表訴訟を提起されるなど、責任を問われるおそれがあるためです。半沢が「帝国航空再生タスクフォース」が要求する債権放棄を拒否しているのはある意味当然のことともいえます。
では、帝国航空のメインバンクである開発投資銀行は、なぜ債権放棄に同意しているのでしょうか?
これは、銀行にとっても、債権の一部を放棄することによって企業が再生してくれれば、残りの債権を確実に回収することができ、法的手続を実行した場合よりも債権を回収できる可能性があるためと考えられます。
このように、企業再生の場面において、企業と各銀行との間ではギリギリの交渉が行われます。今後の『半沢直樹』における展開もとっても楽しみです!
以上、『半沢直樹』に登場する「債権放棄」の解説でした。
第6話では、半沢直樹がついに(!?)政府と戦うようですね・・!
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