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スタートアップのための顧問弁護士との付き合い方

こんにちは。法律事務所ZeLo代表弁護士の小笠原匡隆です。  これから起業される方やスタートアップ経営者の皆様から、スタートアップ・ベンチャー企業と顧問弁護士との付き合い方についてお尋ねされることが多いため、今回は、これについて弊所の岡本杏莉弁護士とともに執筆させていただきました。  スタートアップ・ベンチャー経営者の皆様やその法務担当者様に意識していただきたい点として、①スタートアップ・ベンチャーの成長フェーズに合わせた顧問弁護士の役割、②顧問弁護士を選ぶ時のポイントについて整理しています。  顧問弁護士は必要?どうやって選べばよい?といった疑問を持たれている方にぜひご覧いただければと思います。

スタートアップのための顧問弁護士との付き合い方
STARTUP-LAW
PROFILE
Masataka Ogasawara

Attorney admitted in Japan

Masataka Ogasawara

法律事務所ZeLo代表弁護士。2009年早稲田大学法学部三年次早期卒業、2011年東京大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2017年法律事務所ZeLo創業。主な取扱分野はブロックチェーン・暗号資産、FinTech、IT・知的財産権、M&A、労働法、事業再生、スタートアップ支援など。

顧問弁護士とは?

 顧問弁護士とは、一般的には、スポットではなく、日頃から企業の法律相談に乗るといった顧問契約を締結した弁護士をいいます。料金体系としては、月額のサブスクリプションモデルを採用していることが通常です。

 「顧問弁護士とは?」で検索すると様々な法律事務所が顧問弁護士について説明していますが、一般的に紹介されている機能には、以下のようなものが挙げられます。

①有事に会社を守る
②平常時には会社のガバナンス体制を整備する
③経営者・企業の迅速で良き相談相手となる

スタートアップ・ベンチャーの成長フェーズに合わせた顧問弁護士の役割

 顧問弁護士の一般的なイメージは上のとおりですが、今回は、もう少しスタートアップ・ベンチャーにスポットライトを当てたいと思います。

 スタートアップ・ベンチャーをフェーズによって便宜的に4つに区切って、そのフェーズに合わせた顧問・外部弁護士の役割を見ていきましょう。なお、こういった定義やイメージは、論者によって区々です。下記は、一般的なITスタートアップ(ソフトウェア開発等)を一例としてイメージを記載しているにすぎないためその点はご留意ください。

シード期

シード期は、新しい技術やビジネスが生まれようとしている段階です。この段階では、法的には以下の事項がほぼ必ず必要となります。

① 株式会社の設立(定款の作成を含む)
② 創業者間株主契約等の創業者間の取り決め
③ 考えているビジネスの適法性の確認
④ ビジネスが適法である場合には、利用規約・プライバシーポリシーや契約書といった必要なリーガルドキュメントの整理
⑤ 資金調達を行う場合には投資契約の確認・登記業務
⑥ 商標・特許権の取得

 シード期はキャッシュの不足と隣り合わせであり、無駄な出費は避けなければなりません。一方で、多くの創業者は上記事項について不慣れ・専門外であることが多いと思います。慣れていないことを行うと、ミスをして費用と時間を要してしまいます。特に、ビジネスの適法性の判断を誤った場合にはビジネスそのものが違法となり、それ以降適切に会社を成長させることができなくなります。
ミスなく進められたとしてもリサーチや手続きに多くの時間を使ってしまうなどビジネスの速度が削がれることも懸念されます。

 この時期については、創業者数名、創業期の従業員数名といった状態であり、法務人材を採用する余裕はなく、採用すべきでもないため、こういった法的業務は外部に委託することが適切であるといえます。
スタートアップのキャッシュにも配慮しながら適切に上記事項に対処可能な顧問弁護士をアサインすることがシード期のスタートアップで法務に悩まされずに進むために非常に重要なことといえます。
特に②③④⑤は、自己判断で進めてしまって、後に悩まれている起業家を多数目にします。③④については後で是正が可能ではあるものの、大きな問題があると大幅なプロダクトの改修が必要となる等ビジネスの根幹を揺るがす場合があります。また、資本政策が関係する②⑤については不可逆で是正ができないこともあり、特に資金調達を行う前には顧問弁護士を探されるのが望ましいといえます。

アーリー期

 アーリー期は、プロダクトのユーザーは存在するもののPMFを探る段階です。この段階では、以下の法務課題が生じることが多いです。

① 利用規約・プライバシーポリシーや契約書といった必要なリーガルドキュメントのさらなる整理
② 契約書レビュー体制の整備
③ 営業資料・PR資料・広告の適法性・適切性のチェック体制の整備
④ 新規技術を用いる場合には特許戦略の立案、その他知的財産権の管理
⑤ 規制業種である場合には許認可の取得・レギュレーション対応
⑥ 資金調達を行う場合には投資契約をレビューし、登記業務に対応
⑦ 役職員に発行するストックオプションの設計
⑧ 従業員との間の労働契約・就業規則の整備、成長に配慮しつつも一定の労務体制の整備
⑨ 個人情報を含む情報管理体制の整備
⑩ コーポレート業務の対応体制の整備

 アーリー期に入ると、プロダクトに対してユーザーがつき、一定の売上の見込みが立ちだします。資金調達もシードラウンドからシリーズA、Bラウンドに進んでいます。このようなフェーズに至ると、法務業務はシード期よりもより複雑化していきます。

 ストック・オプションを発行するケースも多く、これらの設計や手続きをミスなく行う必要が生じます。

 資金調達にあたっては、複雑な条項が出てきたり、優先株が用いられることになります。PR・マーケティングを加速するにあたって景品表示法の問題が生じたり、従業員との間でのトラブルなどが発生するのもこの時期です。労務・情報管理・知財・コーポレートに対する社内体制を徐々に整備していく必要があります。

 上記のとおり法務課題が複雑化しますが、この時期には、法務専任者が社内に存在しないことが通常ですので、シード期に比して顧問弁護士の必要性は高まります。どこまで外部に委託するかについては、経営判断になりますが、これらの業務を外注することはビジネスを加速させる上では合理的であると考えられます。

ミドル期

ミドル期に達すると、プロダクトはPMFし、拡大フェーズに入ります。大型の資金調達を行うとともに、メインプロダクトとは別のプロダクトや新規ビジネスを模索することもあります。この時に生じる法務課題は、以下のようなものが想定されますが、アーリー期に比してより複雑化します。

① アーリー期で記載したもの
② 外資系VC等が出資する場合の英文契約書対応等
③ IPO準備

 筆者の実務感覚では、一般にスタートアップで法務専任者を1名置くタイミングの目安は、早くても従業員が50名~100名程度に達した時です。この規模に至らない場合には、法務業務は顧問弁護士に外部委託しながら進め、これらの規模を超えた場合には、法務専任者を組織内に置き、法務業務のディレクションを任せることが合理的である場合が多いと考えられます。
ただし、従業員が200名以上の規模になっても、外部サービスをうまく活用することによって法務専任者を置くことなく法務課題を解決できる場合もあります。

 法務専任者がいない場合の顧問弁護士の役割は、上記法務事項について助言を行うとともに、これらの体制自体を担うといった点にあります。特にIPO準備は、一回性の強い業務でかつ専門性が要求される場合が多いため、外部委託になじむ業務といえます(「スタートアップ企業が知っておくべきIPO(新規上場)準備のポイント」についてはこちらも参照)。

なお、IPOの管理体制の整備については、IPOコンサルティング会社が多数存在するため、そういった会社に支援を依頼することも考えられますが、法務的に新しい論点がある場合については、その論点の解決と併せて管理体制の整備についても顧問弁護士に依頼するといったことも考えられます(弊所のIPOサービスについてはこちらを参照)。

法務専任者が社内で採用できている場合には、顧問弁護士の役割は、法務専任者がカバーできない法務領域について適切に助言を行うとともに、マンパワーが足りない部分や専門分野を支援することにあります。労務の紛争解決であったり、資金調達等については、優先的に顧問弁護士に対応を依頼するのが合理的であると考えられます。
なお、1人法務のまま上場まで進むといったことも多いとは思いますが、1人法務がとるべき法務戦略やその優先順位については、坪田晶子弁護士の「第1回 一人法務がとるべき法務戦略と優先順位」が非常に参考になります。

レイター期

レイター期になると、プロダクトは安定成長しています。グロースエクイティ・ファイナンスで、シナジーのある新規ビジネスを実施したり、海外展開を行ったり、M&Aを行いシナジーある領域でビジネスをさらに拡大するとともに、大型の広告を打ち、成長を加速させるといったことが考えられます。
このフェーズでは、いつでも上場できるものの、あえて上場時期を調整するといった状態となっていることもあります。法務課題は、以下のようなものが想定されますが、ミドル期に比してもさらに複雑化します。

① ミドル期で記載したもの
② 海外の法規制のリサーチ・対応等
③ グロースエクイティ・ファイナンスへの対応
④ 買収をする場合にはM&Aへの対応

 レイター期には、法務専任者やインハウスロイヤーが中に存在することが多いように思います。顧問弁護士の役割は、法務専任者がカバーできない法務領域について適切に助言を行うとともに、マンパワーが足りない部分を支援する点にあります。
特に海外法律事務所の紹介であったり、一回的業務であるM&Aのデューデリジェンスの対応、英語が絡むグロースエクイティ・ファイナンスの対応等の対応ができると望ましいといえます。

まとめ

 以上のとおり、スタートアップについては、成長フェーズに応じて法務課題は変化し、求められる事項も変化します。サービスを受けるときはどのフェーズの課題解決を目的とするのかを明確に意識することが望ましいといえます。スタートアップとしては、フェーズを超えて一環して法務パートナーとなることができる法律事務所を早いうちから選定することが重要であると思われます。

顧問弁護士を選ぶ時のポイント

顧問サービスの内容に含まれる事項は様々で、以下のような差異があると考えられます。

メンバー

  • メンバーの実績はどういったものか。

対象とするクライアントの性質

  • 成長スタートアップ、中小企業、上場企業、大企業のどのセグメントを強みにしているか。
  • 対応業種として、伝統的な業種を対象としているか、最先端の技術・ビジネスモデルを対象としているか。

対応領域

  • 対応していてかつ強みのある法領域は何か。
  • 弁護士だけではなく、弁理士も所属しており知的財産権に関する戦略的相談も可能か、会計士・税理士が所属しており会計・税務の相談も可能か等、サービスがワンストップであるか。
  • 外国法の弁護士が在籍しており、英語やその他の言語対応もこなせる体制はあるか。

コミットメントの度合い

  • サービスは能動的か、受動的か。弁護士が定期訪問や定期ヒアリングをし、能動的に法務課題を発見してくれるか。
  • サービスに含まれる業務量はどの程度か。固定フィーを支払うことで無制限に対応できるサービスもあるが、タイムチャージベースで上限を定めるサービス(上限10時間程度等)、対応した業務の回数で上限を定めるサービス(契約書レビュー5通まで等)が一般的。中には、顧問契約自体には対応業務は含まれておらず、業務が発生した場合には顧問料に加えてタイムチャージにて精算するサービスも存在する。
  • サービスのスピードはどうか。

コミュニケーション手段

  • コミュニケーション手段として何が使用可能か。標準的にはメールサービスを使用することが多いと思われるが、Slack、Teams、Chatworkといった自社のニーズに合ったチャットツールを使用することが可能か。Google Meet、ZOOM等のウェブ会議システムは導入されているか。

リーガルテック活用の有無

  • 近年重要視されているリーガルテックを活用しているか。リーガルテックを活用する法律事務所については、業務のスピートや質が向上する可能性がある。なお、リーガルテックと一口に言っても、契約書レビューシステム、リサーチシステム、法務デューデリジェンス、フォレンジック等様々であるが、顧問業務においては、契約書レビューやリサーチシステムが重要と考えられる。

ZeLoが提供する顧問サービス(LPO)

 法律事務所ZeLoでは、顧問サービスとしてLegal Process Outsourcing(LPO)というサービスを用意しています。上記で記載した軸でみると以下のような特徴があります(2020年9月時点)。

メンバー

  • 著名な企業法務系事務所の出身で、様々な強み・バックグラウンドを持つ弁護士・外国弁護士・弁理士が集まっています。

対象とするクライアントの性質

  • 成長スタートアップ、中小企業、上場企業のセグメントを強みにしています。特に成長スタートアップの支援を多く行っています。
  • 対応業種としては、最先端の技術・ビジネスモデルを多く取り扱っています。

対応領域

  • 対応していてかつ強みのある法領域は、M&A、スタートアップファイナンス、紛争解決、破産・事業再生、コーポレートを基軸としつつ、パブリックアフェアーズ、ブロックチェーン、フィンテック、AI、ヘルスケア、X-Tech、宇宙等最先端領域全般です。
  • 弁理士が所属しており知的財産権に関する戦略的相談を行っています。登記・商標等の業務にも対応しており、ワンストップでのサービス提供が可能です。
  • 外国法の弁護士(アメリカ・インドネシア)が在籍しており、英語やその他の言語に対応しています。

コミットメントの度合い

  • 能動的な課題発見を行います。弁護士が定期訪問し、課題を発見するためのサービスを用意しています。
  • サービスに含まれる業務量はタイムチャージベースと対応した業務の回数等の指標で上限を決定しています。
  • サービス提供のスピードを強みにしています。

コミュニケーション手段

  • メール、Slack、Teams、Chatworkといったニーズに合ったチャットツールを使用することが可能です。Google Meetによるウェブ会議システムを標準としています。

リーガルテック活用の有無

  • 戦略的パートナーであるLegalForceや(弊所の創業経緯についてはこちらをご参照ください)、その他リサーチシステムを最大活用しています。

顧問弁護士を探している経営者、法務担当者の皆さまは、ぜひお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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