【弁護士が解説】施行前に確認しておきたいフリーランス保護新法の概要と実務対応
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由井 恒輝
2022年は、育児・介護休業法、個人情報保護法、公益通報者保護法、パワハラ防止法、電子帳簿保存法など、実務に影響のある法令の改正が施行されました。「施行日までに対応が十分にできなかった」「自社での取り組みが適切か不安」とお悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、2022年施行の一部改正法のポイントについて、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の弁護士がオンラインセミナーにて解説した内容などをもとに紹介します。
目次
人事労務分野で注目すべき法改正の1つに、育児・介護休業法の改正があります。
少子化対策の一環として、男性の育児休業取得を促進するとともに、職場全体の雇用環境整備を進めること等を目的として、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設や、雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化等の改正が行われています。改正育児・介護休業法は、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3段階で施行されます。
2022年10月1日からは、「出生時育児休業(産後パパ育休)の創設」「育児休業の分割取得」が適用となりました。
「出生時育児休業(産後パパ育休)」とは、後休業をしていない労働者が、原則出生後8週間以内の子を養育するためにする休業をさします。従来の育児休業と同様、労働者が容易に取得できるようにあらかじめ制度を導入し、就業規則等の社内規程の整備をすることが義務付けられます(「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(令和4年10月1日)」(以下「指針」という)第2の2(3)イ)。
「育児休業の分割取得」とは、原則として、子が1歳までは、育児休業を分割して2回の取得が可能になりました(改正育児・介護休業法5条)。
改定に伴い、企業の社内規程の見直しも行う必要があります。見直しのポイントや、出生時育児休業(産後パパ育休)・育児休業制度の比較、2022年10月以降改正育児・介護休業法により変わる労働者の働き方について、以下の記事にて解説しておりますので、合わせてご参照ください!
※上記改正育児・介護休業法に関する記載は、下記記事(「【2022年10月1日施行】改正育児・介護休業法「出生時育児休業(産後パパ育休)の創設」「育児休業の分割取得」に関する企業の社内規程見直しのポイント」)執筆時点の内容をもとに作成しています。
2022年4月1日に、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(令和2年6月12日法律第44号)」(令和2年改正個人情報保護法)が施行されました。多くの改正点があり、それぞれの内容も複雑ですが、特に企業にとって重要な「漏えい報告・本人通知の義務化」、「個人関連情報の新設」、「外国にある第三者への個人データの提供」のポイントを解説します。
2022年4月施行の改正で、要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい、滅失もしくは毀損(以下「漏えい等」)、個人データの漏えい等の発生時における、個人情報保護委員会に対する報告義務および本人に対する通知が、新たに義務化されました(個人情報保護法26条)。
「個人の権利利益を害するおそれが大きいもの」として、個人情報保護委員会に報告しなければならない事態は、以下のとおり定義されています(個人情報保護法施行規則7条)。
「個人情報保護委員会への報告事項や報告制限」として、報告内容や通知期限、本人への通知など、企業が行うべき対応についても明確に示されています。あわせて、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2022年9月一部改正)もご参照ください。
2022年4月施行の改正により、「個人関連情報」が新設されました。提供する側では特定の個人を識別できないデータを、提供を受けた企業側において特定の個人を識別できることを知りながら、同意を得ずに第三者に提供するという侵害事案を受けての対応です。
個人関連情報とは、「生存する個人に関する情報であって、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないもの」を指します(個人情報保護法2条7項)。たとえば、氏名と結びついていないインターネットの閲覧履歴、位置情報、Cookie情報などが、個人関連情報にあたります。
「提供先が個人関連情報を個人データとして取得することが想定されるときは、あらかじめ当該個人関連情報に係る本人の同意等が得られていることを確認しないで、当該個人関連情報を提供してはならない」とされています(個人情報保護法31条)。
記録保存義務については、原則として、「個人関連情報を第三者に提供した都度、速やかに記録を作成しなければならない」とされています(個人情報保護法29条)。
外国にある第三者への個人データの提供時に、移転先事業者に対して、本人への情報提供を充実させることなども、2022年4月施行の改正で義務付けられています(個人情報保護法28条)。
「外国にある第三者」とは、個人データを提供する個人情報取扱事業者と当該個人データによって識別される本人以外の者であり、外国政府などもこれに含まれます(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」(2021年10月一部改正))。
「外国にある第三者への提供」にあたるかどうかは、以下フローチャートのような観点から判断することができます。
外国にある第三者に個人データを提供する方法は、①外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意に基づく提供、②体制を整備していることに基づく提供に分けられます(個人情報保護法28条)。
外国にある第三者に個人データを提供する場合、以下の類型ごとに記録保存義務が適用されます。
※改正の全体像については、以下の記事をご参照ください。
※上記個人情報保護法に関する記載は、2022年3月29日に開催したウェビナー「4月1日施行!改正個人情報保護法の要点&実務に欠かせない対応事項」の内容をもとに作成しています。
「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)」は、2022年6月1日に施行されました。
本改正では、従業員数が301名以上の事業者に対して「公益通報対応業務従事者の設置」「必要な体制の整備その他の必要な措置」と2つの義務が課され、より機能的・実効的な制度の構築・運用が求められています。機能的措置義務に違反した事業者は、刑事罰・行政罰・行政処分の対象となります。なお、従業員数300人以下の事業者については努力義務となります。
しかし、実際には「従業員への周知が不十分で通報件数が極端に少ない」などと内部通報制度の運用に悩むケースもあるのではないでしょうか。
本改正のポイントについて、また内部通報制度の構築・運用のヒントになる「通報対応業務体制の適切な整備」「通報体制を実効的に機能させるための措置」について、以下の記事で解説しています。ぜひ合わせてご参照ください!
※上記公益通報者保護法に関する記載は、下記記事(「【2022年6月1日施行】公益通報者保護法改正にともなう内部通報制度の機能的な構築・運用方法とは」)執筆時点の内容をもとに作成しています。
労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)は、職場におけるパワーハラスメント防止を目的として、企業に対して必要な措置の実行を義務付ける改正が行われました。この改正は、2020年6月に大企業を対象に施行され、2022年4月より中小企業にも適用されました。
厚生労働省は、今回の改正法施行によって、企業が対応しなければならない取り組みを以下4点と定めています。
①事業主の方針の明確化・周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④併せて講ずべき措置
実際に体制・制度を構築するのみならず、各相談に対して適切に対応が行われているか、制度が形骸化されていないかの確認・運用が必要です。機能的に運用するにあたっては、定期的なチェックも欠かせません。
以下の記事では、職場で起こるパワハラ仮想事例をもとに、どのような行為がパワハラにあたるのか、企業が雇用管理上講ずべき措置とは何かを解説していますので、是非ご参照ください!
※上記パワハラ防止法に関する記載は、下記記事(「【事例あり】職場におけるパワハラで企業が雇用管理上講ずべき措置とは?労働施策総合推進法(パワハラ防止法)改正で義務付けられた制度構築と運用のポイント」)執筆時点の内容をもとに作成しています。
2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法が施行されました。
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類(帳簿や領収書、注文請書、契約書などの証拠書類)を電子的に保存することを認めています。
電子的に保存する方法は、以下の3つの類型があり、今回はすべてにおいて改正がありました。
①帳簿の電子保存:総勘定元帳などの帳簿をそのまま電子保存
②スキャナ保存:領収書等の証拠書類をスキャナで読み取って保存
③電子取引:メールなど電子的にやりとりを行った書類の保存
今回の改正のポイントは大まかに以下3点です。
・事前承認制度の廃止:今までは事前承認が必要だった類型(帳簿の電子保存、スキャナ保存など)について、税務署の事前承認が不要となりました。
・保存要件の緩和:指定されている要件のみで、最低限保存できるようになりました。
・電子取引の電子データによる保存の義務化
これらにより、実務には以下の影響が出ると考えられます。
・電子帳簿・スキャナ保存は使いやすくなった
・新規導入の際には、事務処理規程・事務マニュアルを定めた方が使いやすい
・電子取引の電磁的記録(電子データ)による保存対応が必要
なお22年度税制改正大綱に基づき省令改正が行われ、電子データで受け取った書類の電子保存義務は2023年12月31日まで猶予期間が設けられました。
※上記電子帳簿保存法に関する記載は、2022年1月26日に開催したウェビナー「今からの対応でも大丈夫!電子帳簿保存法改正のポイント解説セミナー」の内容をもとに作成しています。
世の中の状況に応じて法令も改正されるため、実務担当者にとって、法改正情報のキャッチアップは非常に重要です。しかし、日々の業務もあり、法改正情報のアップデートまで手が回らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当事務所では、LPOサービス(Legal Process Outsourcing)を通して、幅広い企業法務の領域で貴社のビジネスモデルやお悩みに寄り添い、アドバイスを提供しています。
日々の法律相談や契約書審査はもちろんのこと、改正法のキャッチアップや、体制構築支援に対応しています。コミュニケーションは、メール、チャットなど、貴社でご利用中のツールにあわせて柔軟・迅速なやりとりが可能です。
改正対応に不安のある方、自社の法務体制を見直したい方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。