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知財戦略のコストに大きな影響!令和4年4月1日より特許料・商標登録料・国際出願関係手数料(印紙代)が改定

あらゆる事業において、自社発明やブランドを保護する特許権や商標権などの「知的財産権」の対応は、重要な戦略の一つです。しかし、事業運営に関係の深い知的財産権の多くは、自動的に付与される権利ではありません。出願と維持には、手続きと費用(たとえば、印紙代)がかかるのです。それらにかかるコストは、事業を運営するうえで、見過ごすことができません。令和4年(2022年)4月1日から「特許法等の一部を改正する法律(令和3年5月21日法律第42号)」の施行により、特許庁に支払う出願費用および維持費用(印紙代)が改定となりました。今回の記事では、手続きの内容や改定による差額についても、具体的に紹介します。

知財戦略のコストに大きな影響!令和4年4月1日より特許料・商標登録料・国際出願関係手数料(印紙代)が改定
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PROFILE

2017年3月山口大学経済学部経済法学科卒業。2017年4月~2019年4月特許事務所にて商標の出願業務に従事。2019年5月法律事務所ZeLo・外国法共同事業参画。国内外の商標出願、国内外の商標の調査、商標の類否検討、特許庁に対する特許・商標の出願手続き等に関する業務の弁理士補佐を主に担当。

知的財産権、知財戦略とは

知的財産権とは、人間の創造的活動により生み出される成果を指し、創作者に一定期間の独占権を与える制度や様々な法律で保護されています。知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権および商標権の4つの権利を「産業財産権」といい、特に事業を起こし運営するにあたって重要な権利となります。

自社が独自に開発した商品・サービス、発明品に対し、権利を取得することで、他社の参入や模倣を防ぐことができます。しかし、これらの権利は、自動的に付与されるものではなく、自社で出願し権利を取得しなければいけません。

これらの権利をどのタイミングでどう取得し、自社の「知」をどのように活かすかを考えるのが、知財戦略となります。

特許庁に支払う出願費用(印紙代)などはいつから改定されるか

第204回通常国会において、「特許法等の一部を改正する法律(令和3年5月21日法律第42号)」(以下「改正特許法」という)が成立しました。同法では、審査負担増大や手続のデジタル化に対応し、収支バランスの確保を図るべく、特許料などの料金体系などが見直されています。対象となる法律は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律です。

特許庁に支払う出願費用および維持費用は、「特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(令和3年12月24日政令第344号)」により、令和4年4月1日に改定されます。

参照:特許庁「「特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定されました」(2021年9月14日公開)

なお、適用については、以下のように行われます。

  • 改正法等の施行日(令和4年4月1日)より前に納付される特許料など:改正前の料金を適用
  • 改正法等の施行日(令和4年4月1日)以降に納付される特許料など:改正後の料金を適用

新旧料金の具体的な適用は、特許庁「令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ(令和4年4月1日施行)」(2021年12月公開)をご参照ください。

特許料(印紙代)の改定

特許権、特許料とは

知的財産権のひとつ、特許権とは「発明を保護するための権利」のことです。特許権を取得すると、権利者が発明を一定期間独占的に実施することができます。

特許権は特許庁に出願をしたのち、審査を経て特許として認められ、特許料(印紙代)を特許庁に支払うと発生します。特許料は、権利を維持する限り、毎年支払う必要があります(初年度は第1年〜第3年を一括納付)。

出典:特許庁「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」の図をもとに筆者作成

改定前の特許料と令和4年4月1日改定後の比較

特許出願後、審査・査定を経て支払う特許料は、改正特許法が令和4年4月1日に施行されることに伴い、下記表のとおり金額が改定されます。いずれの項目でも値上がりすることになりました。

改定前後の一件ずつの差額は小さいかもしれませんが、複数件の出願・維持をする場合、全体のランニングコストに大きな影響を及ぼす可能性があります。

項目 改定前金額 改定後金額
特許料
(第1年から第3年まで)
毎年 2,100円+(請求項の数×200円)毎年 4,300円+(請求項の数×300円)
特許料
(第4年から第6年まで)
毎年 6,400円+(請求項の数×500円)毎年 10,300円+(請求項の数×800円)
特許料
(第7年から第9年まで)
毎年 19,300円+(請求項の数×1,500円)毎年 24,800円+(請求項の数×1,900円)
特許料
(第10年から第25年まで)
毎年 55,400円+(請求項の数×4,300円)毎年 59,400円+(請求項の数×4,600円)
※第4年度以降は1年ごとに支払うこともできます。

事例:請求項10個の特許権の場合の差額

年間での差額は以下のとおりです。

項目 改定前金額 改定後金額 差額
特許料
(第1年から第3年まで)
12,300円21,900円9,600円
特許料
(第4年から第6年まで)
11,400円/年18,300円/年6,900円/年
特許料
(第7年から第9年まで)
34,300円/年43,800円/年9,500円/年
特許料
(第10年から第25年まで)
98,400円/年105,400円/年7,000円/年
※第4年度以降は1年ごとに支払うこともできます。

商標登録料(印紙代)の改定

商標権、商標登録料、防護標章登録料とは

知的財産権のひとつ、商標権とは「商品やサービスに使用しているネーミングやロゴを保護する権利」のことです。商標権を取得すると、登録商標を使用する権利を独占でき、他者による同一または類似範囲の使用を排除、権利を侵害された場合は差止めなどを請求できます。

商標権は特許庁に出願したのち、審査を経て商標として認められ、商標登録料(印紙代)を特許庁に支払うと発生します。一度支払うと10年間維持することができ、その後は10年ごとに更新料を支払い続けると、いわば永久に商標権を維持することができます。なお、5年ずつ分割して納付することも可能です。

また、世間に広く知られるようになった商標に対し、保護範囲を拡大するために、防護標章登録をする場合もあります。防護標章登録をする場合もまた、特許庁への出願、審査を経て認められると、防護標章登録料を支払う必要があります。本登録も一度支払うと10年間維持することができますが、商標登録と異なり、更新する場合は改めて審査を経て認められると維持することができます。

出典:特許庁「初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~」の図をもとに筆者作成

改定前の商標登録料、防護標章登録料および更新料と、令和4年4月1日改定後の比較

商標登録出願後、審査・査定を経て支払う、商標登録料、防護標章登録料およびそれら更新料などは、改正特許法が令和4年4月1日に施行されることに伴い、下記表のとおり改定されます。

特許料と同様に、これらの費用も登録・維持件数が積み重なると全体のランニングコストに大きな影響を及ぼす可能性があります。

商標登録料(10年間商標権の維持が可能)

項目 改定前金額 改定後金額
10年分一括納付区分数×28,200円区分数×32,900円
5年分分割納付区分数×16,400円区分数×17,200円
※区分数とは、出願する商品・サービスを指定区分で分けたカテゴリのこと。指定区分は特許庁「類似商品・役務審査基準」をご参照ください。

更新登録申請(10年ごとに商標権維持期間の更新が可能)

項目 改定前金額 改定後金額
10年分一括納付区分数×38,800円区分数×43,600円
5年分分割納付区分数×22,600円区分数×22,800円

防護標章登録料

項目 改定前金額 改定後金額
防護標章登録料区分数×28,200円区分数×32,900円
防護標章更新登録料
(初期登録から10年後)
区分数×33,400円区分数×37,500円

国際登録出願(商標)関係手数料

項目 改定前金額 改定後金額
個別指定手数料(登録料相当分)区分数×28,200円区分数×32,900円
個別指定手数料(更新登録料相当分)区分数×38,800円区分数×43,600円

事例:区分数3個・6個の商標登録を出願した場合の差額

区分数が3個で出願した場合、以下の初期費用がかかります。

改定前金額 改定後金額 差額
84,600円98,700円14,100円

区分数が6個で出願した場合、以下の初期費用がかかります。

改定前金額 改定後金額 差額
169,200円197,400円28,200円

国際出願(特許、実用新案)関係手数料の改定

PCTに基づく国際出願、国際出願料とは

海外においても特許を得るためには、国ごとに出願して権利化する必要があります。しかし、手続きが非常に煩雑化するため、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願(いわゆる「PCT出願」)を利用することで、各国への出願手続きを簡略化することができます。

PCTに基づく国際出願では、国際出願料として、いくつかの手数料がかかります。まず、送付手数料および調査手数料を納付し、特許庁にPCTに基づく国際出願をします。その後、発明に先行技術があるか否かをはかる国際調査が行われます。国際調査の中で、複数の発明概念が存在する場合などは追加手数料を支払いのうえ、追加調査される場合もあります。また、出願人の希望により、発明が特許基準を満たしているか否かの予備審査を受ける場合は、予備審査手数料の支払いが必要になります。

出典:特許庁「PCT 国際出願制度の概要~海外で賢く特許権を取得する PCT の仕組み~」の図をもとに筆者作成

改定前のPCTに基づく国際出願(特許、実用新案)関係手数料と、令和4年4月1日改定後の比較

PCTに基づく国際出願をするときに支払う手数料は、改正特許法が令和4年4月1日に施行されることに伴い、下記表のとおり改定されます。日本語での送付手数料や調査手数料が倍増するなど、インパクトの大きい改定となります。令和4年4月1日より前に出願すれば、初期費用を大幅に削減することができます。

項目 改定前金額 改定後金額
送付手数料+調査手数料(日本語)80,000円(内 送付手数料10,000円)160,000円(内 送付手数料17,000円)
送付手数料+調査手数料(英語)166,000円(内 送付手数料10,000円)186,000円(内 送付手数料17,000円)
国際調査の追加手数料(日本語)60,000円×(請求の範囲の発明の数-1)105,000円×(請求の範囲の発明の数-1)
国際調査の追加手数料(英語)126,000円×(請求の範囲の発明の数-1)168,000円×(請求の範囲の発明の数-1)
予備審査手数料(日本語)26,000円34,000円
予備審査手数料(英語)58,000円69,000円
予備審査の追加手数料(日本語)15,000円×(請求の範囲の発明の数-1)28,000円×(請求の範囲の発明の数-1)
予備審査の追加手数料(英語)34,000円×(請求の範囲の発明の数-1)45,000円×(請求の範囲の発明の数-1)

事例:請求項10、全頁数40頁でPCTに基づく国際出願した場合の差額

料金改定がある送付手数料および調査手数料について、願書の枚数に関わりなく1出願ごとに手数料が発生するため、差額は常に8万円になり、特にインパクトの大きい改定となります。

改定前金額 改定後金額 差額
221,500円301,500円80,000円

戦略的に、早めの出願・更新を

この記事で解説した、特許庁に支払う出願費用および維持費用の改定の中でも、特にPCTに基づく国際出願をするときに支払う手数料の改定は、非常にインパクトの大きいものとなります。令和4年4月1日より前に出願すれば、改定前の手数料で出願することができますので、早めに出願することをおすすめします。

また、PCTに基づく国際出願には、スタートアップや中小企業を対象とした出願時に支払う手数料の軽減措置や交付金交付制度もあります。当事務所ではPCTに基づく国際出願と一緒に軽減措置等の手続きもサポートしておりますので是非ご活用ください。

特許料や商標登録料などの各費用は、1件ずつとしてみればそれほど大きなものではないかもしれません。しかし、戦略的に特許出願や商標登録出願をする場合、複数件の出願を行って様々な側面から知財網を構築する必要があります。その結果、今回の料金改定によって、全体のランニングコストとして大きな影響を及ぼす可能性があります。

当事務所の知財チームでは、本当に取得すべきまたは維持すべき権利は何かということを、これら料金に関する観点も踏まえたうえで戦略的にアドバイスいたします。自社の知財戦略や知財ポートフォリオを見直したいというお客様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください  。

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(編集:高田侑子、村上未萌)

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