商号変更・リブランディングで失敗しない商標実務|新ブランドの出願と旧ブランドの権利管理
Patent Attorney
Kimiyo Goto
「ECサイトで自社ブランドの偽物が売られている」「他店の商品名に、自社のブランド名が無断で使われている」。こうした模倣品や無断使用の出品を見つけた場合、まず必要なのは、商品ページや出品者の情報を証拠として保存することです。そのうえで、偽物なのか、ブランド名の使い方に問題があるのか、正規品の転売なのかを確認します。商標登録の有無によっても、取り得る対応は変わります。本記事では、ECサイト上の模倣品・偽物やブランド名の無断使用を見つけた場合の初動対応として、証拠の保存方法、ECサイト運営会社への削除申告、警告書の送付までのポイントを解説します。
Graduated from Kyoto University, Faculity of Law (LL.B,2003). After working at Sumitomo Mitsui Banking Corporation and a patent law firm in Tokyo,she joined ZeLo in 2023. Registered as a patent attorney in 2025, handles numerous domestic and international trademark and design rights acquisitions for clients ranging from startups to major corporations.
偽物やブランド名の無断使用を見つけた場合、すぐに相手へ連絡するのではなく、まず証拠を残します。
相手が出品を削除すると、後から「何が売られていたのか」「ブランド名がどのように使われていたのか」を確認できなくなることがあります。
まず、次の情報を保存します。
商品ページは、スクリーンショットだけでなく、ページ全体をPDFでも保存しておくと、後で確認しやすくなります。
偽物かどうか判断しにくい場合は、実際に商品を購入する「試買」も有効です。試買した場合は、商品だけでなく、注文履歴、決済記録、納品書、配送ラベル、梱包なども捨てずに残します。正規品と違う部分があれば、その違いが分かる写真も撮影します。
こうした資料は、本当に偽物なのか、誰が販売したのかを確認するための重要な証拠になります。
自社の許可なく商品が売られていても、それだけで商標権侵害になるとは限りません。まず、その出品が「偽物」なのか、「ブランド名を別の商品に使っている」のか、「正規品を転売している」のかを確認します。
自社や正規の製造元が作った商品ではないのに、自社ブランドの名前やロゴを付けて販売しているケースです。登録商標の保護範囲に入る商品であれば、商標権侵害として対応できる可能性があります。
ただし、価格が安いというだけで偽物とは判断できません。タグ、素材、ロゴ、シリアル番号、パッケージなど、正規品とどこが違うのかを具体的に確認します。
ブランド名が使われているからといって、すべてが商標権侵害になるわけではありません。例えば、実際には別の事業者の商品なのに、そのブランドの正規品であるかのようにブランド名やロゴを表示している場合は、商標権侵害になる可能性があります。一方、「○○対応ケース」「○○互換部品」のように、どの商品に対応しているのかを説明するためにブランド名を使っている場合は、商標権侵害にならないこともあります。
そのため、ブランド名が書かれているかだけでなく、正規品であるかのような表示になっていないかを確認することが重要です。
正規品を買った人が、その商品を転売しているだけであれば、通常は商標権侵害にはなりません。Amazonなどで、同じ商品ページに別の販売者が出品する「相乗り」も、それだけで侵害になるわけではありません。また、海外で正規に販売された商品を日本へ輸入して販売する「並行輸入」も、一定の条件を満たせば商標権侵害にはなりません。
ただし、商品が改変されている、国内品と品質が大きく異なるなどの場合は、個別に確認が必要です。
「正規販売店ではない」「価格が安い」という理由だけで、偽物と即断しないことが重要です。
商標を登録しているか、出願中か、まだ出願していないかによって、取り得る対応は変わります。
商標登録があれば、出品や販売の中止、損害賠償などを求められる場合があります。ただし、登録した名前なら、どの商品に使われても止められるわけではありません。
まず確認するのは、次の点です。
商標は、出願しただけではまだ商標権が発生していません。そのため、登録前は、商標権を理由に販売の中止を求めることはできません。
一定の要件を満たせば、通常より早く審査を受けられる「早期審査」を利用できる場合もありますので、これを利用して登録を早めるのも一策です。
また、出願後に一定の内容を記載した書面で警告しておくと、登録後に、警告後から登録までの使用について金銭を請求できる場合があります。ただし、登録前なので、警告書で「登録商標」「商標権侵害」と断定することはできません。商標出願中であることを正確に伝える必要があります。
商標を登録していなくても、被害の内容によっては、著作権や不正競争防止法、意匠権などで対応できる場合があります。
例えば、商品写真や文章を無断で転載されている場合は、著作権による対応を検討できます。
広く知られているブランドと混同させるような表示には、不正競争防止法が使える場合があります。
また、商品のデザインや形を模倣されている場合は、意匠権や不正競争防止法による対応を検討できます。例えば、商品の形を模倣する行為については、原則として国内で最初に販売した日から3年間、保護の対象となる制度もあります。
どの方法が使えるかは、被害の内容によって異なります。写真やデザインを誰が作ったのか、これまでどの程度販売・広告してきたのか、商品をいつ発売したのかといった資料も確認します。
あわせて、今後同じような被害が起きた場合に備え、商標出願を進めることも重要です。
偽物や商標権侵害が疑われる出品を早く止めたい場合は、ECサイトの運営会社に削除を申告する方法があります。
Amazon、楽天市場、メルカリなどには、権利者から知的財産権の侵害を申告するための専用窓口があります。主な窓口は次のとおりです。
| ECサイト | 主な窓口や制度 | 利用時のポイント |
|---|---|---|
| Amazon | 権利侵害申告フォーム | ブランド登録/知的財産権侵害の申告フォームもあり。 |
| 楽天市場 | 権利侵害通知窓口 | 商標権、著作権、意匠権、特許権の侵害を受け付ける。 |
| 楽天ラクマ | 権利者保護プログラム | 都度申告する方式と、法人向けに提出情報を簡略化する登録型がある。 |
| Yahoo!ショッピング等 | 知的財産権保護プログラム | オークション・フリマも対象。Aは都度申告、Bは事前登録の制度。 |
| メルカリ | 権利者保護プログラム | 加入後は本人確認・権利証明資料の提出を簡略化できる。 |
Amazonの「ブランド登録」は、特許庁で商標を登録することとは別の制度ですので、ご注意ください。
削除を申し立てる際は、単に「自社ブランドの偽物です」と伝えるだけでなく、どの権利が、どの出品で、どのように侵害されているのかを具体的に示します。例えば、次のような情報を準備します。
運営会社が確認しやすい形で整理することが、削除申告では重要です。
なお、削除を申告しても、必ず削除されるとは限りません。各ECサイトが、提出された資料や自社の基準に基づいて判断します。また、削除されても、別のアカウントや別のECサイトで再び出品されることがあります。そのため、削除申告だけで終わらせず、必要に応じて再出品の確認や、出品者への警告など、次の対応も検討します。
削除後も出品が繰り返される場合や、被害が大きい場合は、出品者に警告書を送る方法があります。
警告書では、問題となる出品、権利侵害と考える理由、販売中止などの要求、回答期限を伝えます。必要に応じて、再出品の防止や販売数量の報告、損害賠償などを求めることもあります。送付前には、店舗情報や配送ラベル、納品書などから相手を確認します。警告書やメールを送った場合は、送付内容や返信も保存します。
ただし、本当に権利侵害といえるかを確認せず、「偽物」「商標権侵害」と断定することには注意が必要です。正規品の転売など、侵害にならないケースもあるため、事前の確認が重要です。
警告しても販売が続く場合は、裁判や仮処分で販売の中止を求める方法があります。損害賠償を求める場合は、販売実績や損害を示す資料も必要です。悪質な偽物販売では、警察への相談も選択肢になります。
海外から偽物が輸入されている場合は、税関に輸入差止めを申し立てる方法もあります。ECサイトへの削除申告とあわせて検討します。
偽物や無断使用を見つけてから準備を始めると、対応に時間がかかります。日頃から、主力ブランドの商標登録や更新状況を確認し、利用するECサイトの権利者向け制度にも登録しておくと、削除申告を進めやすくなります。
また、正規品の写真、偽物との見分け方、商標の登録情報などをまとめておくと、問題が起きたときにすぐ対応できます。社内でも、誰が証拠を保存し、誰が内容を確認し、誰が削除申告をするのか、役割を決めておくことが重要です。
法律事務所ZeLoでは、商標の類似や侵害可能性の検討は弁理士が、警告書の送付や交渉、紛争対応は弁護士が担当し、両者が連携して対応しています。ECサイト上の偽物やブランド名の無断使用を見つけた場合は、証拠を保存したうえで、早い段階でご相談ください。