ECサイトの模倣品・偽物対応|証拠保存から削除申告・警告書までの初動を解説
Patent Attorney
Kimiyo Goto
会社名やブランド名を変えるときは、新しい会社名やブランド名、ロゴを考えるだけでなく、商標の確認も早めに進めることが大切です。商号変更の登記ができても、すでに他社が似た商標を登録していれば、新しいブランド名を使えないこともあります。一方で、新ブランドへの切替えを急ぐあまり、長年培った信用や知名度のある旧ブランドの商標権をすぐに手放すのも注意が必要です。新ブランドは発表前に商標調査・出願を行い、旧ブランドの商標権をいつまで残すかを決めておくことがポイントです。本記事では、商号変更・リブランディングを進めるうえで押さえておきたい商標実務を、準備から移行後まで順を追って解説します。
Graduated from Kyoto University, Faculity of Law (LL.B,2003). After working at Sumitomo Mitsui Banking Corporation and a patent law firm in Tokyo,she joined ZeLo in 2023. Registered as a patent attorney in 2025, handles numerous domestic and international trademark and design rights acquisitions for clients ranging from startups to major corporations.
「商号」は会社の正式な名前、「商標」は商品やサービスにつける名前やマークです。会社名とブランド名に同じ言葉を使うことも多いですが、法律上は別のものです。そのため、会社名として登記できたからといって、その会社名をブランドとして自由に使えるとは限りません。
例えば、「株式会社ABC」という商号を登記できても、他社が同じような商品・サービスについて「ABC」の商標権を持っていれば、「ABC」を商品名やサービス名として使うことが問題になる場合があります。会社名として表示する場合には商標権の効力が及ばないこともありますが、「会社名だから大丈夫」とは限りません。
商号変更の手続と並行して、新しいブランド名を問題なく使えるかも確認することが重要です。
ロゴやウェブサイトの制作が進んでから商標の問題が見つかると、作り直しや発表の延期につながります。
まず複数のブランド名候補を簡易的に調べ、候補を絞った段階で詳しく調査してから最終決定すると、手戻りを抑えられます。制作会社に依頼する場合も、商標調査を経てブランド名を確定する流れを共有しておくことが大切です。
主に確認するのは、次の点です。
商標が似ているかどうかは、文字が一致するかだけで決まりません。読み方、見た目、意味に加え、その商標を使う商品・サービスも含めて判断します。
そのため、「検索して同じブランド名が出てこなかった」「商標の区分番号が違った」というだけで、問題がないとは判断できません。ドメイン名やSNSのアカウント名もあわせて確認します。
ブランドの発表前であれば、別のブランド名への変更も比較的しやすい段階です。
ブランド名を変えずに進める場合には、先に登録している相手から商標権を譲り受ける、相手の同意を得て双方の商標の登録を目指す「コンセント制度」を利用する、使われていない登録商標の取消しを求める、といった方法があります。ただし、相手の同意があれば必ず登録できるわけではありません。コンセント制度では、商品・サービスの提供元を消費者が取り違えるおそれがないことなども確認されます。また、相手との交渉や登録商標の取消しには時間と費用がかかり、希望どおりの結果になるとは限りません。
類似する先行商標が見つかった場合は、ブランドの発表前に、ブランド名を変更するか、ほかの方法で対応するかを検討する必要があります。
日本では原則として、同じ・似た商標が出願された場合、先に出願した人が優先されます。そのため、新ブランドは商標調査を済ませ、プレスリリースやティザーサイトなどで発表する前に出願することが基本です。
一方、商標の出願内容は後に公開されます。新ブランドをいつ出願し、いつ発表するかは、情報管理も含めて日程を組む必要があります。
また、出願すれば必ず登録されるわけではありません。重要なブランドでは、発表までに審査結果を確認できるかも含めてスケジュールを検討します。一定の要件を満たす場合には、通常より早く審査を受けられる「早期審査」を利用できることもあります。
ブランド名そのものを守る文字商標と、ロゴのデザインを守るロゴ商標は、分けて検討します。
文字商標では、特定の書体やデザインを指定しない「標準文字」で出願する方法がよく使われます。ロゴがまだ完成していない場合には、ブランド名を先に出願し、ロゴを後から出願する方法もあります。
なお、文字とロゴの保護範囲が重なることはありますが、どちらか一方を登録すれば、もう一方も十分に守れるとは限りません。予算や実際のブランドの使い方に合わせて、出願する商標を決めます。
商標出願は、名前だけでなく、その名前を「何の商品やサービスに使うのか」もセットで指定する必要があります。例えば、同じブランド名でも、アプリに使う場合と、コンサルティングサービスに使う場合では、商標で守る内容が異なります。
出願するときは、守りたい商品やサービスを具体的に決めます。これを「指定商品・指定役務」といい、内容ごとに「区分」というカテゴリーに分けます。
新ブランドを出願する際は、現在行っている事業だけでなく、近いうちに始める予定の事業も確認し、どこまで商標で守るかを決めます。
守る範囲を広げるほど、出願や登録にかかる費用も増えます。一方、出願後に新しい商品やサービスを追加したい場合は、原則として別の出願が必要です。今後の事業展開も見ながら、必要な範囲を最初に整理しておくことが重要です。
外部のデザイナーや制作会社にロゴを依頼した場合、制作費を支払っただけで著作権が自動的に自社へ移るとは限りません。
著作権が発生するロゴでは、著作権を誰が持つのか、どこまで改変できるのかを契約で確認します。著作権の譲渡を受ける場合には、著作権法27条・28条の権利を含めるか、将来の改変に備えて著作者人格権を行使しない旨を定めるかなども検討事項になります。
海外で使う予定があれば、その国でも調査と権利化を検討します。日本の商標権は、海外ではそのまま効力を持ちません。海外展開を予定している場合は、日本で出願する段階から、対象国と出願時期を整理しておくことが重要です。
会社名を変更しても、特許庁に登録されている商標権者の会社名は自動では変わりません。同じ会社の会社名だけが変わった場合は、特許庁で登録名義人の表示を変更する手続が必要です。旧ブランドを含めて保有する商標を一覧にし、変更漏れがないか確認します。出願中の商標についても、別途必要な変更手続があります。
ここで変更するのは、あくまで「商標権を持っている会社の名前」です。登録済みの旧ブランドを、新ブランドの文字やロゴに差し替えることはできません。新ブランドは別に商標出願する必要があります。
また、新しい会社に事業や商標権を移す場合や、合併・会社分割を伴う場合は、単なる会社名の変更とは手続が異なります。
海外の商標についても、それぞれ必要な変更手続を確認します。マドリッド制度による国際登録については、WIPO(世界知的所有権機関)に名義人の名称変更を請求する手続があります。
新ブランドに切り替えても、旧ブランドの知名度や信用がすぐになくなるわけではありません。
旧ブランドの商標権を手放すと、第三者が同じ・似たブランドを使い始めた場合に、対応しにくくなることがあります。移行期間中も旧ブランドを使うのか、将来再び使う可能性があるのか、どの程度認知されているのかなどを踏まえて、残す権利を決めます。
なお、旧ブランドの商標権について、今後使う予定のない商品・サービスは更新の際に対象から外し、必要な権利だけを残す形に整理することもできます。
商標登録は、更新料を払えば必ず維持できるわけではありません。登録商標を、対象の商品・サービスについて日本国内で3年以上継続して使っていない場合、第三者から「不使用取消審判」を請求され、登録が取り消されることがあります。
更新しても、それまでの不使用期間がリセットされるわけではありません。そのため、旧ブランドをどう残すかは、実際の使用状況や今後使う予定があるかを見て判断する必要があります。
旧ブランドを一部の商品やサービスで引き続き使う場合は、実際に使っていることが分かる資料を残しておくことが重要です。例えば、商品パッケージ、カタログ、ウェブページ、注文書、納品書などが証拠になります。「いつ、誰が、どの商品・サービスについて、どの商標を使ったのか」が分かる資料を保存します。
一方、会社の沿革に旧社名を載せているだけでは、商品・サービスについて商標を使っているとは認められない場合があります。また、不使用取消審判を請求されることを知ってから駆け込みで使い始めても、使用として認められないことがあります。
今後使う予定がない商標は、更新しない、権利を放棄する、事業とともに第三者へ譲渡するなど、今後の使い方に合わせて整理することが重要です。
ブランドの切替え期間中は、「新ブランド(旧○○)」のように、新旧のブランド名を併記することがあります。顧客にブランド変更を伝えるために有効ですが、いつまで旧ブランドを併記するのか、新ブランドやロゴをどのように表示するのかは、あらかじめ決めておくことが重要です。
ウェブサイト、ECサイト、商品パッケージ、看板、名刺などについても、どのタイミングで新ブランドに切り替えるかを整理します。
また、ライセンス契約やフランチャイズ契約がある場合は、新ブランドも契約の対象になっているかを確認します。グループ会社や取引先にブランドの使用を認めている場合も、必要に応じて契約や使用ルールを変更します。
新旧ブランドが混在する移行期間だからこそ、外部への表示と契約の内容にずれがないかを確認することが大切です。
社名やブランド名の変更は、経営、法務・知財、広報、事業部門など、複数の部署が関わるプロジェクトです。発表日から逆算して、必要な作業を一つのスケジュールにまとめておくと、準備漏れを防ぎやすくなります。
| 時期 | 確認すること |
|---|---|
| 候補を絞るとき | 商標調査、登録可能性の検討、ドメイン・SNS・進出予定国の確認 |
| 発表前 | 文字商標・ロゴ商標の出願、ロゴの著作権確認、海外出願の検討 |
| 商号変更後 | 国内外の商標権者情報の変更、出願中の商標の名義変更 |
| 移行期間中 | 新旧ブランドの表示方法、契約内容の見直し、使用証拠の保存、更新期限の管理 |
| 移行完了後 | 旧ブランドの使用状況を確認し、商標権を維持するか整理するかを判断 |
新ブランドは、名前を決めてから商標を確認するのではなく、候補を絞る段階から調査を始めることが重要です。あわせて、旧ブランドをいつまで残すのかも早めに整理しておくと、ブランドの切替えを進めやすくなります。
法律事務所ZeLoでは、これまで多くの商号変更やリブランディングをサポートしてきました。商標の調査・出願だけでなく、商号変更の登記を扱う部門とも連携し、新ブランドへの切替えを一体的に支援しています。もちろん旧ブランドの権利管理や関連契約の確認にも対応しています。商号変更やリブランディングを検討している場合は、ブランド名の候補や発表時期が見えてきた段階でご相談ください。