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法務担当者が突然いなくなるリスクとは?人手不足の原因と対策(採用・兼任・アウトソーシング)を解説

「法務担当者の突然の退職・休職」「法務部員の不足」――こうしたリスクは、企業規模に関わらず発生し得ます。筆者は弁護士として、日々、法務体制に課題を抱える企業からのご相談を受ける窓口に立っています。経営者や法務責任者の方々から伺う悩みは驚くほど共通しており、実際の案件としてその現場に向き合うことも少なくありません。その経験から言えるのは、法務の人手不足は「いつか起きるかもしれないリスク」ではなく、「必ずいつか起きる事象」だということです。本記事では、法務人材の流出や業務属人化による人手不足の背景を整理したうえで、採用・社内兼任・アウトソーシングという3つの対応策を比較し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。さらに、再発防止に向けた契約書レビュー体制の構築方法について、実務の視点から整理します。

法務担当者が突然いなくなるリスクとは?人手不足の原因と対策(採用・兼任・アウトソーシング)を解説
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PROFILE
Yuki Takai

Attorney admitted in Japan

Yuki Takai

Graduated from the Faculty of Law, Hitotsubashi University in 2010, completed the School of Law at Hitotsubashi University in 2012. After engaging in business related to Southeast Asia expansion at a private company, he passed the National Bar Examination in 2014 and registered as a lawyer in 2016 (DaiIchi Tokyo Bar Association). After working for Mitsubishi Heavy Industries, Ltd., he joined ZeLo in 2018. His main practice areas are Web3 (blockchain, crypto-assets, NFTs, etc.), antitrust law, general corporate matters, IT and intellectual property, information law, cross-border legal affairs, and startup legal support. Having recognized the potential of blockchain and crypto-assets even before they gained widespread attention, he has continued his research in the field and now leverages that expertise to handle a wide range of legal matters in this domain. Publications include "Strategy and Practice of Rulemaking" (Shojihomu, 2021), among other publications.

なぜ法務の人手不足は「突然」起きるのか―退職・属人化・業務過多の構造

法務の課題は、会社の規模を問わず起きています。大企業の法務部であっても、M&Aや新規事業の法的検討といったコア業務に集中したくても、日常的な契約書レビューの量に押されて思うように動けないという声は多くあります。

退職は連鎖する―法務人材流出の現実

筆者がご相談の場で繰り返し耳にし、また実際の案件でも目にしてきた中で最も印象的なのは、法務担当者の退職が一人で終わらないケースの多さです。

一人が辞めると残ったメンバーに業務が集中し、負荷が増した状態で「転職」という選択肢が現実味を帯びてきます。人材の流動化が進んだ今、身近な誰かの退職は、残った人の転職の背中を押すことにもなります。こうした連鎖は、一度始まると止まりにくくなるケースも少なくありません。

深刻なのは、補充のために新しく入った人までもがこの流れに巻き込まれることです。入社してみたら業務の実態はひたすら膨大な契約書を処理することだった、というようなミスマッチが生じると、新しい人材も定着せずに辞めてしまいます。

「新たな法務人材を採用すれば問題は解決する」と考えていた会社が、採用と退職を繰り返す消耗戦に陥っていく様子を、筆者は何度も見てきました。

属人化リスクと引継ぎ困難の問題

法務業務は、その性質上、属人化しやすい傾向があります。「この取引先にはどこまで条件を譲れるか」「この条項はどう修正すれば自社のリスクを抑えられるか」といった判断は、担当者の経験と知識の中に暗黙知として積み重なっていきます。文書化されていないことも多く、引き継ぎが困難になるのはそのためです。

そして、人がいつ辞めるかは誰にも分かりません。属人化した仕事を抱えた人が辞めてからでは、その知見ごと組織から失われてしまいます。手を打つなら「辞める前」しかないのですが、平時には問題が見えないため、多くの会社で対策は後回しにされています。

法務担当者・責任者それぞれの不安

現場の苦しみは、業務量だけではありません。

担当者の側には、キャリアへの不安があります。AIによる契約書レビューの自動化が進む中で、「この業務だけをキャリアの軸に据えてよいのか」という思いを抱える担当者は少なくないと感じています。日々の業務に忙殺されながら、その業務自体がAIに置き換わっていくかもしれない――この二重の不安は、外からは見えにくいものです。

責任者の側には、構造への疑念があります。もともとメンバーが少ない法務は属人化しやすく、担当者が案件を抱え込みやすい構造にあります。「あの人が辞めたらどうなるのか」という具体的な不安と、「このままのやり方でよいのか」という漠然とした疑念。この2つを抱えたまま、日々の業務に追われて手を打てずにいる責任者は多いのではないでしょうか。

限界は「じわじわ」訪れ、退職として表面化

「誰かが頑張れば回る」という状態の怖さは、破綻が劇的な瞬間として訪れるのではない点にあります。外からは「回っている」ように見えるまま、担当者のやる気と体力がじわじわと削られていきます。

本人が望んでやっているのであれば問題ありませんが、ミスマッチが生じている場合、時間が経つほど状況は悪化します。そして限界は、ある日突然、退職という形で表面化するのです。

法務部があっても起きる「業務過多・忙殺」の問題

人手不足の問題は、小規模な組織だけの話ではありません。法務部員が複数在籍する上場企業でも、同様の課題が生じています。

法務部員が一人でも欠けると、残ったメンバーに日常業務としての多数の契約書レビューがそのままのしかかります。その結果、本来やるべきコア業務――社内法務ポリシーの策定、新規事業の法的リスク検討、M&Aや重要交渉への関与といった、事業への深い理解や背景を踏まえた判断が必要な業務――に手がつけられない状態が生まれます。

「法務部員はいるが、日々の契約書対応に追われて戦略的な仕事ができない」という状況は、法務機能の空洞化を意味します。体制の頭数が足りているように見えても、機能していない状態といえます。

人手不足の問題は、「いなくなる」ことだけでなく、「忙殺される」ことによっても起きています。

法務の人手不足に対する3つの選択肢―採用・兼任・アウトソーシングを比較

現実的に取りうる選択肢は大きく3つあります。それぞれの特性を理解した上で、自社の状況に合わせて選択・組み合わせることが重要です。

選択肢1:法務専任人材を採用する

新たに法務専任担当者を採用し、体制を補強する方法です。

メリットは、社内に専門知識が蓄積され長期的な体制強化につながること、自社の事業や文化への理解が深まり業務の精度が上がることです。

一方でデメリットとして、採用完了まで少なくとも3〜6ヶ月以上かかること、即戦力人材の獲得競争は激しく採用コストも高いこと、入社後も戦力になるまでに一定の期間が必要なこと、ミスマッチが起きた場合のリカバリーコストが大きいことが挙げられます。前述のとおり、業務の実態が膨大なルーティン処理に偏っている場合、せっかく採用した人材が定着しないリスクも見過ごせません。

さらに、変化のスピードが極めて速い時代において、特定業務に特化した人材を正社員として固定費で抱えることは、それ自体がリスクになりえるという点があります。AIによる契約書レビューの自動化が急速に進む今、ルーティン的な契約書チェックを主な業務として採用した人材が、数年後には役割を失うという事態が起きかねません。そのため、「採用する」という判断が将来の組織的な負担につながる可能性を、あらかじめ考慮しておく必要があります。

選択肢2:社内の既存メンバーで兼任・対応する

他部署の社員や上位職が法務業務を一時的に引き受ける方法です。即時対応ができ、追加の外部コストが発生しない点はメリットです。

しかし専門知識のない担当者によるレビューはリスクの見落としにつながりやすく、本来業務との兼任により担当者の負荷が増大します。根本解決にならず同じ問題が繰り返されることも多く、法的トラブルが発生した際の責任の所在が曖昧になりやすい点も懸念されます。

注意したいのは、現場の「自分たちで回せます」という声です。担当者が頑張って回している状態は、裏を返せば属人化がさらに進行している状態でもあります。現場は回せていると感じていても、経営層から見れば「あの人がいなくなったらどうするのか」というリスクが膨らみ続けている――この認識のずれは、筆者が営業の現場でもよく目にするものです。

選択肢3:アウトソーシングする

法務業務の一部または全部を外部の専門家に委託する方法です。近年はAIを組み合わせたサービスも広がっており、対応の幅が大きく広がっています。

即時対応できる(サービスによっては翌日から稼働可能)、高い専門性を必要なときだけ活用できる、固定費ではなく変動費として管理できる、AIとの組み合わせにより精度とスピードを両立できるといったメリットがあります。

一方で、限界も率直にお伝えしておきます。外部の専門家は、自社の背景や来歴を社員と同じ深さでは理解できません。立ち上げ初期は社風や判断の傾向を探りながらの対応になり、社員との情報格差は確かに存在します。

ただしこの差は、何を切り出して何を社内に残すかの整理と、社内人員との連携によって、時間とともに埋まっていく性質のものです。また「社内にノウハウが溜まらない」という課題も、プレイブック(契約書レビューの判断基準書)を外部専門家と共同で作成することで大きく改善できるものといえます(プレイブックについては本記事の後半で解説します)。

アウトソーシングの実務的効果と外部活用の意義

筆者は、アウトソーシングには「鏡」のような働きがあると考えています。業務を外に出すことで、社内に残すべきコア業務が浮かび上がります。こうした業務こそ、社員が価値を発揮しやすい領域といえます。

また、ルーティン業務から担当者を切り離し、役割に応じた配置を行うことは、結果として定着や生産性に影響を与える可能性があります。冒頭で触れたような連鎖的な離職を防ぐ観点でも、「その会社に残る意味」を感じられる役割設計は重要です。アウトソーシングは、人員削減ではなく、役割の再設計を促す契機にもなり得ます。

さらに、外部を活用することで、テクノロジーや実務の変化への対応を取り入れやすくなります。AIツールを含む手法は日々更新されており、自社だけで継続的に追い続けることには一定の負担が伴います。外部の専門家は複数の案件を通じて知見を蓄積しているため、その知見に触れること自体が、自社の実務や判断基準を見直すきっかけになる側面もあります。

同様に、契約実務やリスク評価においても、自社の前提が相対化されることで、新たな気づきが得られることがあります。いわば「外からの視点」を取り込める点は、内部だけでは得にくい効果の一つです。

体制構築の面でも、自社だけで一から設計を行うには時間と経験が求められます。外部の関与によって、過去の事例や試行錯誤の知見を踏まえた設計が可能になる場合もあり、結果として構築の精度やスピードに差が生じることがあります。

持続可能な法務体制の構築方法―契約書レビュー体制の整備ステップ

人手不足への対応は、目の前の穴を埋めるだけでは不十分です。同じ問題が繰り返されないよう、体制そのものを見直す必要があります。

ステップ1:契約書業務の可視化(量・質の棚卸し)

まず、自社でどのような契約書がどのくらいの頻度で発生しているかを整理します。取引先との基本契約、業務委託契約、秘密保持契約(NDA)、システム開発契約、M&A関連書類など、種類によってリスクの水準も、必要な専門性も大きく異なります。

全ての契約書を同じ粒度でレビューする必要はありません。金額が大きくリスクの高い契約に専門リソースを集中させ、定型化できる契約は効率的に処理します。この「仕分けの設計」が、体制づくりの出発点になります。

ステップ2:プレイブック(契約書レビュー基準)の整備

プレイブックとは、契約書レビューの判断基準を文書化したものです。「この条項はどう修正すべきか」「この表現はどこまで許容できるか」といった判断を言語化・共有することで、担当者が変わっても一定の品質を維持できます。アウトソーシングを活用する際も、プレイブックを共有することで委託先との連携が格段にスムーズになります。

ただし、実務の現実として、プレイブック整備の最大の障害は「作らなくても今まで通り何とか回せてしまっている」ことです。作るには労力がかかる一方で、効果は事前には体感できないため、重い腰が上がらないのはある意味で必然です。

さらに、いざ作り始めると法務部門は作り込みがちです。足し算の発想であれもこれもと盛り込んだ結果、巨大で使われないものができあがってしまうというのが、筆者が見てきた典型的な失敗パターンです。必要なのはむしろ引き算の発想であり、業務全体を把握した上で「どこを効率化すべきか」から逆算して設計することが重要です。

ステップ3:AI活用と外部リソースの組み合わせ

AI技術の進化により、一般的な生成AIを用いた契約書レビューの効率は大きく向上しています。ただし、筆者が実務でAIレビューを見てきた率直な感想は、「それらしい修正やコメントは出すが、よく見ると誤っていることがある」というものです。

出力を疑い、検証できる力があればAIは強力な道具になりますが、その力がないまま使うと、誤りに気づかないまま鵜呑みにする状態に陥り、かえって危険です。

現実的に機能するのは、AIによる一次スクリーニングと専門家による検証を組み合わせた体制です。そして重要なのは、この組み合わせを自社で運用する必要はないということです。

AIの活用からその出力の検証までを一体で外部の専門家に委ねれば、社内にAIの運用ノウハウや検証体制を持たなくても、スピードと品質を両立したレビューを受けられます。大事なのは、AIを導入することではなく、AIの出力を正しく評価できる仕組みを含めて、レビュー体制全体をどう設計するかにあります。

ステップ4:役割と責任の明確化

筆者が複数の会社を外から見てきて感じる「うまく回る会社」の共通点は、一人ひとりが何をやるかが明確なことです。逆に組織がうまく機能しなくなっている会社では、ポジションが不必要に広く、責任の範囲が大きく、何か問題が起きたときに担当者が一人で責任を負う構造になっています。

外部リソースやAIを組み合わせた後に最後に残るのは、「社内の人間は何に責任を持つのか」という設計です。ここが明確になれば、担当者は安心して自分の役割に集中でき、組織としての持続可能性も高まります。

法務の人手不足に備えた体制づくりを進めるために

法務の人手不足は、採用が決まるまでの「待ち」では乗り越えられません。そしてAIが急速に普及する今、採用した人材が固定費として残り続けるリスクも無視できなくなっています。

人がいつ辞めるかは、誰にも分かりません。属人化した仕事を抱えた人が辞めてからでは、その知見ごと失われてしまい、手遅れになってしまいます。

緊急対応にはアウトソーシング、中長期の体制づくりにはプレイブック整備とAI活用の組み合わせが有効です。最終的に重要なのは、担当者個人への依存から脱却し、社員がコア業務で輝ける、変化に強い仕組みを構築することにあります。

弁護士法人ZeLoは、契約書レビューのアウトソーシング・プレイブック作成・AIを活用した法務支援を一体で提供しています。「急に担当者がいなくなった」という緊急対応から、「中長期的に法務体制を整えたい」という課題まで、状況に応じた支援が可能です。「法務人材を採用するしかない」と思っていた方にも、別の選択肢をご提案できないか、まずは現状のヒアリングから始めます。お気軽にご相談ください。

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