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【2023年6月7日改正法成立】改正によるメリットも!「不正競争防止法等の一部を改正する法律」に関して実務に影響する点をまとめて解説

2023年6月7日に不正競争防止法等の一部を改正する法律(知財一括法)が可決・成立し、同年6月14日に法律第51号として公布されました。 今回の改正では、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法の改正が行われます。 今後、特に実務に大きく影響しそうな改正のポイントを以下にご案内します。

【2023年6月7日改正法成立】改正によるメリットも!「不正競争防止法等の一部を改正する法律」に関して実務に影響する点をまとめて解説
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知的財産部門担当

「企業の知財業務のアウトソーシング化」をコンセプトに、弁理士や特許・商標を担当するパラリーガルなどを含めたチーム体制で、知的財産サービスを提供する。国内外の特許・意匠・商標などに関する出願や調査、紛争だけでなく、知的財産デューデリジェンス・IPO支援、規程類の整備・運用、知財ポートフォリオ管理など、幅広く企業をサポート。

改正法の3つの柱

令和5年の第211回通常国会において、以下の3点を柱に不正競争防止法等の改正を行う「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が成立しました。

  1. デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
  2. コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備
  3. 国際的な事業展開に関する制度整備

※詳細は、特許庁「不正競争防止法等の一部を改正する法律(令和5年6月14日法律第51号)」(2023年6月14日公開)、「経済産業省「『不正競争防止法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令』が閣議決定されました」(2023年6月27日)をご参照ください。

改正法の主要ポイント

以下にて、実務に大きく影響しそうな改正のポイントを、意匠法、商標法、特許法、不正競争防止法、その他知的財産手続等の整備の観点から解説します。

なお、本法律の施行日は主に「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」です。(一部の法律は2023年 7月 3日に施行されています。)

今回の改正は全体として、ユーザーのニーズや国際的な制度調和の観点を踏まえたものといえ、歓迎すべき点が多くあります。施行後、どのように運用されていくのか、実務への影響などを注視し、メリットとなる効果があれば積極的にご提案申し上げますので、ぜひ弊所・知財チームにご相談ください。

意匠法

意匠の新規性喪失の例外適用手続が緩和されます。

これまでは、意匠登録出願前の公開行為は原則として全て例外適用証明書に記載しなければなりませんでした。しかし、本改正により、複数の公開行為があった場合でも、最先の日に行われた一の行為について証明書を提出すれば全ての公開行為について新規性喪失の例外適用が受けられるようになります。

出典:特許庁 産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会 「新規性喪失の例外適用手続に関する意匠制度の見直しについて」(2023年3月10日公開)

グローバルでみても、これまで日本は、意匠の新規性の喪失に関する例外適用は厳しく、公開の事実が1つでも記載漏れしていると拒絶されてしまっていました。しかし、今回緩和されたことで、出願人の負担が軽減され、救済される余地が広がったといえます。

なお、出願前に第三者が独自に類似する意匠を公開していた場合は変わらず拒絶されてしまいますので、やはり、意匠の公開前に出願をすることを原則的な対応とし、万が一の場合に新規性喪失の例外規定を活用するといった対応が望ましいと考えます。

商標法

登録可能な商標が拡充されます。

コンセント制度の導入

原則として、他人が既に登録している商標と類似する商標は登録できませんが、先行商標権者の同意があり出所混同のおそれがない場合には登録可能となります。

諸外国では多くの国で、先行登録商標について権利者の同意があれば他者の類似する後願商標の併存登録を認める制度(コンセント制度)が存在します。昨今、グローバルなコンセント契約を結ぶこともある中、日本で同様の手続が出来ないことが、特に海外ユーザーにとって日本での商標登録の障壁となっていました。

また、日本では、コンセント制度の代替手段として、実務的にアサインバックと呼ばれる商標登録の出願をした名義を、一時的に先願商標出願者の名義に変更する手法が使用されていますが、権利の一時的な移転に伴うリスクや、交渉手続・費用の負担が大きく、ユーザーにとって利用しにくい場面があり、より簡便・低廉なコンセント制度の導入が求められていました。

そこで、今回の改正により、国際的な制度調和の観点や企業ニーズを踏まえ、日本でもコンセント制度が導入されることとなりました。

氏名を含む商標の登録要件の緩和

今回の改正により、氏名を含む商標も、一定の場合には、他人の承諾なく登録可能になります。

これまでは、商標構成中に他人の氏名等を含む商標は、当該他人の承諾がない限り商標登録を受けることができませんでしたが、今回の改正により、一定の知名度を有しない「他人の氏名」であれば、これを含む商標も商標登録をすることができるようになります。

なお、具体的な要件は今後制定される政令で定められる予定です。

特許法

手数料減免制度の見直し

出願審査の請求手数料の減免について、一部件数制限が設けられます。

資力等の制約がある者の発明奨励・産業発達促進という制度趣旨を踏まえ、経済的に特に困難であると認められる者以外の者に対しては、政令で定める件数制限が設けられます。

なお、高い新産業創出能力が期待されるスタートアップや、大学・研究機関等に対しては、上限を設けないことが想定されています。

不正競争防止法

デジタル空間における模倣行為の防止

商品形態の模倣行為について、デジタル空間上でも不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できるようになります。

営業秘密・限定提供データの保護の強化

ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等が可能になります。

損害賠償訴訟で被侵害者の生産能力等を超える損害分も使用許諾料相当額として増額請求を可能とするなど、営業秘密等の保護が強化されます。

知的財産手続等の整備

コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備として、以下の事項が見直されます。

送達制度の見直し(特許法、実用新案法、意匠法、商標法) <2023年7月3日施行>

在外者へ査定結果等の書類を郵送できない場合に公表により送付したとみなすとともに、インターネットを通じた送達制度が整備されます。

書面手続のデジタル化等のための見直し (特許法、実用新案法、意匠法、商標法)

優先権主張の手続について、優先権証明書類等は電磁的方法により提供されたものを含むものとなり、当該書類の写しを提出することが可能になります。

改正を踏まえた対応を

今回の改正は全体として、ユーザーのニーズや国際的な制度調和の観点を踏まえたものといえ、歓迎すべき点が多くあります。施行後、どのように運用されていくのか、実務への影響などを注視し、メリットとなる効果があれば積極的に活用していくことをお勧めします。

弊所でも、積極的にご提案申し上げますので、ぜひお気軽にご相談ください。

なお、法律事務所ZeLo知的財産部門では、特許、実用新案、意匠、商標の出願対応にとどまらず、他社の特許や商標に対する侵害リスク評価の実施、知財ポートフォリオの一括管理、知的財産デューデリジェンスやIPOを見越した知財戦略の構築・運用などまで対応しています。ぜひ自社の知財業務で気になることがある方は、お気軽にご相談ください。

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