介在価値の大きさがやりがいに繋がる──私がZeLoに転職したワケ
Attorney admitted in Japan
Akihiro Saotome
2017年3月に創業した法律事務所ZeLo・外国法共同事業は、2022年に創業5年を迎え、「Vision」と「Principles(行動原理)」を改定しました。「リーガルサービスを変革する」とVisionを掲げて歩んできた5年。5年の間に代表の小笠原匡隆弁護士は何を感じ、なぜ改定に至ったのか。小笠原弁護士が、アップデートの経緯や込めた想いなどを語りました。
目次
私と角田望弁護士は、2017年3月、「リーガルサービスを変革する」というVisionを掲げて、法律事務所ZeLoと株式会社LegalForce(現:株式会社LegalOn Technologies)を同時に創業しました。LegalForceは、AI契約審査プラットフォームなどを開発するリーガルテックのスタートアップです。
企業法務を専門に扱う大手法律事務所に同期で入所した私と角田は、8年前、弁護士4年目の頃から未来のリーガルサービスはどういったものになるかを考えていました。最高の事務所で最高の仕事をしていると高揚感を得ていた一方で、現状に課題もあるのではないかと、毎晩のようにリーガルサービスの改善点を話し合う中で、あるひとつの仮説を導き出しました。
大手法律事務所の多くは、たくさんの若手弁護士を有し、大規模化・組織化しています。その組織力によって、大企業を中心としたクライアントの大規模案件に対応できる点は革命的だと考えます。一方で、中小企業やスタートアップなどにとっては、大手法律事務所に依頼するほどのリソース・資金を割くことは中々難しいのではないか、と思ったんです。そして、その課題は、現状の労働集約的な弁護士の働き方を変えていくことで、解決できるのではないか。そんな考えが浮かんできました。
当時、様々な起業家に出会い、社会課題を解決しようと奮闘する彼らのエネルギーに何度も圧倒されていました。また、同時期に「AI弁護士現る」と海外で既にリーガルテックが浸透しているニュースも見ました。それらに影響され、私と角田は、リーガル領域の課題についてもしっかりと向き合うために、リーガルイノベーションを起こすことを人生の目標にしました。
具体的には、都市部の大企業だけではなく、スタートアップから地方の中小企業まで、すべての企業が高度なリーガルサービスに公平にアクセスできる世界を創る。そのために、法律事務所とリーガルテックリーディングカンパニーを同時に創業し、リーガルテックを日本・世界に浸透させ、テクノロジーを用いながら次世代のリーガルサービスを生み出す。そして生まれたのが、ZeLoとLegalForceでした。
LegalForceでは最先端の技術と弁護士の知見を組み合わせ、AI契約審査プラットフォーム等を開発しています。ZeLoでもリーガルテックを用い、サービスを効率化・最適化し、一定の領域でよりパッケージングされた高度で高品質なプロフェッショナルリーガルサービスを提供しています。実際に、サービスのひとつ「LPOサービス(Legal Process Outsourcing Service)」では、LegalForceをはじめとするAI・リーガルテックや、コミュニケーションツールを導入した上で体系化し、起業直後のスタートアップから上場企業まで、幅広いクライアントの挑戦を支えています。
創業当初、クライアントも、弁護士・スタッフも片手で数えるほどでした。しかし、新しいリーガルサービスを追及する5年の中で、クライアントはスタートアップから上場企業・大企業・海外企業まで、メンバーも専門家・スタッフを合わせて90名近い規模にまで成長しました。
5年間の成長のひとつとして、ワンストップサービスの提供が可能となりました。日本法弁護士のみならず、ニューヨーク州資格を有する日本法弁護士や、海外の弁護士資格を有する専門家(アメリカ・インドネシア・スイス)も在籍し、国内外に精通した迅速かつ質の高いサービスを提供しています。また、知的財産を取り扱う弁理士や、司法書士、グループファームには会計士、税理士も在籍し、法務・知財・会計・税務までスピーディーに対応することが可能です。
取り扱う領域も、M&A、ファイナンス、紛争解決、国際法務等の伝統的な企業法務対応を基礎としながらも、web3、AI、データ保護など最先端の法務分野までカバーしています。未だ法が想定していない領域のルールメイキングを担うパブリック・アフェアーズ部門や、web3などの最先端の法務分野を専門的に対応するチームを組成するなど、組織力も高め、日々クライアントの挑戦を支えています。
そのほか、法曹業界そのものに魅力を感じてもらうために、企業や学生に対して、法をより身近に感じていただく取り組みも行っています。クライアントから「起業や新規事業立ち上げなどのノウハウについて、どうやって情報を得たら良いか分からない」という声を聞いたことをきっかけに、オウンドメディア『ZeLo LAW SQUARE』を立ち上げました。また、法曹や起業家を目指す学生向けに、新規ビジネスにおけるルールメイキングを体感できるビジネスコンテスト型インターンシップ・プログラム「ZeLo Legal Camp」も2年連続で開催しました。
所内メンバーに対する取り組みでは、弁護士向けに留学制度も完備しました。海外での勉学や生活を通して得られた知見をもとに、リーガルサービスをさらに磨いていくことを目的としています。
また、スタッフの専門部門も幅広く備え、組織の力を大事にしています。弁護士の仕事を直接的にサポートする秘書・パラリーガル部門はもちろん、より良い仕事環境を整える人事・採用、財務・経理、総務・IT部門、ZeLoのサービスに関する戦略的な情報発信を担う広報・マーケティング部門、新規クライアントの獲得や既存クライアントのサポート強化を行うインサイドセールス部門もあります。いわゆる事務局にとどまらず、社会により多くの影響力を持たせられるような発展した組織を目指し、様々なスタッフに活躍してもらっています。
全力で走ってきた5年が経ち、多種多様なクライアントの挑戦をサポートする中で、創業理念である「リーガルサービスを変革する」という手段に留まらず、もっと野心的で世界にも目を向けた目標が必要であると感じました。そして、それらは私たち経営陣がトップダウンで決めるのではなく、全体で合意したうえで進むべきだと考えました。複雑化した経済環境の中で組織が一丸となることが重要であると感じていましたし、もともとZeLoは、情報の透明性というものを非常に大事にしてきたこともあって、可能な限りオープンに議論したいという思いがありました。
このような経緯から、2021年より、ZeLoに所属する全メンバーで複数回オフサイトを行い、ZeLoの未来について話し合いました。
議論の中で、出てきた未来のZeLoに対する想いや、今まで大事にしてきたことを基礎に、以下の通りVisionとPrinciplesをアップデートしました。
リーガルサービスを変革し、
法の創造に寄与し、
あらゆる経済活動の法務基盤となる
Visionの定義は数多くあるものの、ZeLoでは「組織が存在する根本的理由」「長期的に目指す組織・サービスの在り方」と定義しました。
そして、「リーガルサービスを変革する」という創業理念は残しつつ、中長期的にZeLoが目指すべき姿として他に2つの役割があると考え、「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」と言語化しました。
創業時の想いに続き、ZeLoが提供するリーガルサービスの質をより高みに昇華していくという想いを込めています。弁護士の職人的スキルのみに頼るのではなく、組織全体で、サービス意識を高めていきたいと考えています。
ZeLoでは、料金プランを設定したうえで、企業法務の幅広い分野・領域に関するリーガルサービスを、ワンストップに、スピーディーに提供する体制が重要であると考えています。クライアントと密なコミュニケーションを取り、サービスの内容、スピード、コスト、提供方法等を都度検証・改善します。また、リーガルテックを自ら開発・活用しながらサービスに組み込み、新しいサービスを生み出していきたいと考えています。
現在、弁護士の中で専任の「ナレッジロイヤー」を選任し、弁護士個人に帰属している実務上のナレッジ共有を進めています。メンバーが増員したことに伴い、今までの情報共有体制を構築し直し、所内の法律相談・過去の意見書や行政への照会履歴等に関するナレッジを効率よく運用できるよう、整備しています。より効率的に所内でナレッジをシェアし、クライアントへスピーディーで質の高いサービスの提供を目指します。
日々のサービス提供を超えて、法制度や規制政策のあり方を構想し、リードしていく存在となる、という想いを込めています。
革新的な技術やビジネスモデルが次々と登場し、社会で様々なイノベーションが起きている反面、変化のスピードに規制するルールの整備が追いつかない場面も増えています。近年、ビジネスと法律のギャップを埋めるために、企業が積極的に「ルールメイキング」に関与していくことが求められています。同時に、国や自治体との関係構築・コミュニケーションを行い、幅広いステークホルダーを巻き込んでいく、いわゆる「パブリック・アフェアーズ」と呼ばれる活動の重要性も高まっています。
ZeLoでは、2017年の創業以来、先端領域の起業や新規事業立ち上げを数多くサポートする中で、「イノベーションの実現に向けて、法律事務所として積極的に貢献したい」という想いから、パブリック・アフェアーズ部門を立ち上げ、書籍『ルールメイキングの戦略と実務 』の執筆・出版も行いました。未だ法が想定していない領域のビジネスモデルの設計から、ルールメイキングまでサポートし、クライアントのイノベーションを支えています。
グレーゾーン解消制度や規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)、新事業特例制度など国の制度を活用して、法令の解釈・適用関係が不明確なグレーゾーンの解消や、法令改正・規制改革など、いわゆる「法の創造」に寄与することを目指します。
日本にとどまらず、世界のトップファームになるという想いを込めています。企業、経営者、国、官公庁などにとって、経済活動を行ううえでなくてはならない法的存在となることを目指します。また、外部専門家の立場を超えて、企業等の内部に深くコミットする存在となりたいと考えています。
「法」に基づく経済活動は、大企業のみではなく、スタートアップ、中小企業を含むすべての組織に必ず求められています。
ZeLoは5年をかけて、国内外のスタートアップから中小・上場企業などあらゆる企業規模、ビジネススキームに合わせたサポートを行ってきました。国際法務のプロフェッショナルもいるZeLoで、世界のトップファームを目指して、経済活動の法務基盤となる存在を目指していきます。
現在、法務基盤の第一歩として、ZeLoが最も注力している領域のひとつ「スタートアップ領域」で、スタートアップ・エコシステムの構築を目指す様々な外部団体との連携を進めています。スタートアップ・エコシステムの構築を法務面から支え、リードする存在となり、国内外のイノベーションを加速させていきたいと考えています。
創業当初に、共同創業者・ZeLoの副代表弁護士角田と、「Googleが掲げる10の事実」というフレームワークを参考に、ZeLoが大事にする10個の事実を掲げました。
ただ、10個もあるとなかなか覚えられないという現実的な問題がありました。例えば「Enjoy life」は皆覚えているのですが、ほかは忘れてしまっているなど(笑)。創業から5年が経過するにあたって、ZeLoのメンバーが大事にしてきた行動原理が洗練されてきたといった事実もあり、全体のオフサイトを踏まえて、改めて以下の4つをPrinciplesに据えています。
Beyond Satisfaction
満足を超え、感動を与える仕事をする
プロフェッショナルとして仕事の質に圧倒的にこだわり、満足ではなく、感動を与えられる仕事を行い続ける。
Challenge and Invest for the Future
常に挑戦し、未来に投資し続ける
現状維持に甘んじず、好奇心をもって常に新しいこと・困難なことに挑戦し、未来に投資する。
One Team
互いに尊重し、一丸となってビジョンを実現する
メンバーを尊重し、相互に協力しあい、全体最適の視点をもって、一丸となってビジョンを実現する。
Frank and Transparent
率直で透明であれ
何をやるかも大事だが、誰とやるかも同じくらい大事である。相互の信頼を形成するために、互いに率直で、透明性をもつ。
その中でも、最も重視している基本的な行動が「Beyond satisfaction/満足を超え、感動を与える仕事をする」です。私たちは、法を中心として用いるプロフェッショナル集団であり、すべてのクライアントの皆様に対して、そしてメンバー間においても、「満足」ではなく、「感動」を与えられるような仕事をすることを大事にしています。
5年経ちましたが、創業当初の志と、それに共鳴して集まっていただいたメンバー・クライアントの皆様によって今のZeLoが創られています。今後も、全メンバーでPrinciplesを大事にし、Visionの実現を目指して、クライアントとともに新しいリーガルサービスを少しずつ実装しながら進んでいきたいと考えています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
※記事の内容は掲載当時のものです(掲載日:2022年11月1日)
(編集:高田侑子、ZeLo LAW SQUARE編集部 トップ写真:根津佐和子)