【弁護士が解説】施行前に確認しておきたいフリーランス保護新法の概要と実務対応
Qualified as an Attorney in Japan (currently not registered)
Koki Yui
民間企業が宇宙空間で採取した資源について、国として所有権を認めることを定めた宇宙資源法(「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」)が2021年6月15日国会で成立し、6月23日に公布されました。施行日は12月23日となります。 この法律は、超党派の議員立法として国会に提出されたもので、同種の立法としては、米国・ルクセンブルク・アラブ首長国連邦についで、世界で4番目の立法となります。
Graduated from the University of Tokyo Faculty of Law in 1997 and registered as a lawyer (Japan) in 2000 (member of the Tokyo Bar Association). After working at Nagashima Ohno & Tsunematsu, Porter, Wright, Morris & Arthur (U.S.), and Clifford Chance LLP, he joined ZeLo Foreign Law Joint Enterprise in 2020. His practice focuses on general corporate, investment, start-up support, finance, real estate, financial and other regulatory matters. In addition to domestic cases, he also handles many overseas cases and English-language contracts. He is also an expert in FinTech, having authored the article "Fintech legislation in recent years" in the Butterworths Journal of International Banking and Financial Law. His other major publications include "Japan in Space - National Architecture, Policy, Legislation and Business in the 21st Century" (Eleven International Publishing, 2021). Publishing, 2021).
目次
宇宙資源法は、5条で、「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を行う者が宇宙資源の探査及び開発の許可等に係る事業活動計画の定めるところに従って採掘等をした宇宙資源については、当該採掘等をした者が所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」と規定しており、この規定が宇宙資源法の中心的な規定となっています。
対象となる「宇宙資源」は、月面で採取された水や鉱物などが具体的に想定されていますが、法令上ではそれ以外の宇宙空間に存在する天然資源全般を含むものとして広く規定されています。
一方で、所有権を認める対象となる主体としては、「宇宙資源の探査及び開発の許可等に係る事業活動計画の定めるところに従って」採掘等をした者とされています。ここでいう「宇宙資源の探査及び開発の許可」とは、宇宙資源法3条で「宇宙資源の探査及び開発を人工衛星の利用の目的として行う人工衛星の管理に係る宇宙活動法第20条第1項の許可」と定められており、宇宙活動法(「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」)に規定する人工衛星管理に関する許可と紐付けるものとなっています。宇宙活動法20条1項の許可の対象は、「(日本)国内に所在する人工衛星管理設備を用いて人工衛星の管理を行おうとする者」とされています。
当該許可を受ける者は、宇宙資源法3条の規定にしたがって、宇宙活動法に規定される事項のほか、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を宇宙資源法に基づき「事業活動計画」として策定申請することになります。
また、宇宙資源法は、6条で、同法の施行に際しては、日本が締結した条約等の誠実な履行を妨げないようにすることや、他国の利益を不当に害するものではないことを確認しています。7条では、国際機関等の枠組みへの協力によって、各国政府と共同して国際的に整合のとれた宇宙資源等に関する制度の構築にむけてイニシアティブをとることを国の努力義務としています。
日本も当事者となっている宇宙に関する国際条約としては、1967年の宇宙条約(「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」)があり、宇宙条約では、①宇宙空間については、各国が自由に探査し、利用できるものであることを規定し、②宇宙空間について主権の主張等の手段による国家による取得を禁止しています。
今回の民間事業者による資源の所有権の取得については、宇宙条約が明確に規定している対象ではなく、宇宙開発が国・政府・国際機関等のみによって行われていた時代から、民間事業者が事業として行う時代への移行に伴う構造変化の一部ともいえるものです。
同種立法で先行する米国での国内立法としては、2015年宇宙資源開発利用法が簡潔な規定を有しており、米国政府に対して、米国民による宇宙資源の商用開発等を促進することを義務づけ、小惑星や宇宙資源を商業的に取得した米国民は、その資源の権利を取得することを認めています。この規定でも、米国が締結した国際条約との整合性は確保されるべきものであることには触れられており、国内法として権利を認めた上で、国際的な枠組みとの整合性を図っていくことはそこでも想定されています。
日本が国として認めた宇宙資源の所有権について、国際的にどうその所有権などの権利が確保されるかは、今回の国内立法を超えた大きな国際的枠組みのなかで位置づけられる必要があり、世界でも同種の国内法を有する国が少ない段階での日本での立法は、世界的にも宇宙の資源の利用等の民間宇宙活動等の領域でも日本がリーダーシップを発揮する契機として期待されるものです。
本書は、日本の宇宙開発について、宇宙の関係機関・法令・政策の歴史を含めて網羅的に解説しています。 日本での宇宙での活動に関する主な二つの法律(宇宙二法)として、「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」と「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモートセンシング法)」の2つがあります。本書では、この2つの法律について詳しく解説しています。
また、日本の宇宙開発の大きな政策目標と具体的な計画を定めた、令和2年6月30日付の「宇宙基本計画」についても丁寧に検証しています。 さらに、日本を拠点とする宇宙活動に、海外から参加する方のために、日本への外国投資に関する規制の概要についても紹介しています。
本書は、日本の宇宙法に関心をお持ちの方、日本の宇宙開発に興味をお持ちの方、あるいは、ますます多様化する日本の宇宙関連ビジネスへの参加を検討されている方を対象としています。
Japan in Space - National Architecture, Policy, Legislation and Business in the 21st Century