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2021年国際仲裁調査「変化する世界への仲裁の適応」の主な結果、ロンドン大学クイーン・メアリー校が公表

ロンドン大学クイーン・メアリー校(QMUL)の国際仲裁スクールは、White & Case LLPと共同で、国際仲裁に関する実証的な調査結果を発表しています。本記事では、2021年春に発表された最新の調査結果の特徴やコロナ禍・国際政治情勢を踏まえた動向について解説します。

2021年国際仲裁調査「変化する世界への仲裁の適応」の主な結果、ロンドン大学クイーン・メアリー校が公表
DISPUTE-RESOLUTION
PROFILE
Satoshi Nomura

Attorney admitted in Japan, US lawyer

Satoshi Nomura

Graduated from the University of Tokyo Faculty of Law in 1997 and registered as a lawyer (Japan) in 2000 (member of the Tokyo Bar Association). After working at Nagashima Ohno & Tsunematsu, Porter, Wright, Morris & Arthur (U.S.), and Clifford Chance LLP, he joined ZeLo Foreign Law Joint Enterprise in 2020. His practice focuses on general corporate, investment, start-up support, finance, real estate, financial and other regulatory matters. In addition to domestic cases, he also handles many overseas cases and English-language contracts. He is also an expert in FinTech, having authored the article "Fintech legislation in recent years" in the Butterworths Journal of International Banking and Financial Law. His other major publications include "Japan in Space - National Architecture, Policy, Legislation and Business in the 21st Century" (Eleven International Publishing, 2021). Publishing, 2021).

Joel Greer

US Lawyer

Joel Greer

In his 20 years of practice, Joel has represented Asian, European, and North American companies in numerous international arbitration or pre-arbitration matters, including under the rules of the International Chamber of Commerce, Japan Commercial Arbitration Association, and London Court of International Arbitration, as well as in international mediation under the rules of the Singapore International Mediation Centre. These matters have concerned disputes arising from licensing agreements, construction contracts, joint venture agreements, and sales and purchase agreements, among others. More recently, Joel has advised on space law and policy matters, as well as geotechnology issues.

最新の調査は、「変化する世界への仲裁の適応(Adapting Arbitration to a Changing World)」と題して2021年春に発表されました。この調査は、企業内弁護士・法律事務所所属の弁護士・仲裁人・仲裁機関のスタッフなど、幅広い分野の国際仲裁の実務家から寄せられた1000件以上のアンケート回答と200件近くのインタビューによる回答を反映しています。

2021年の調査での、主な結果は以下の通りです。

  • 回答者の90%が、クロスボーダーの紛争解決方法として国際仲裁を選択しています。
  • 仲裁地として人気があるのは、ロンドン・シンガポール・香港・パリ・ジュネーブの5都市です。回答者の間では、ロンドンとシンガポールが同数でトップでした。次いで香港が選ばれています(最近の政治情勢にもかかわらず、前回の調査から大幅に増加しています)。この結果は、現地の司法が仲裁を支援していること、現地の司法が公平であること、仲裁合意や仲裁判断の執行について信頼できる実績があることなど、これら5つの仲裁地が「安全」であるという回答者の見解に基づくものです。
  • 最も人気のある仲裁機関は、国際商業会議所(ICC)・シンガポール国際仲裁センター(SIAC)・香港国際仲裁センター(HKIAC)・ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)・中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)の5つです。SIACHKIACを選択した回答者は、前回の調査と比べて大幅に増加しました。これらの機関の一般的な評判と回答者の以前の経験が、回答者の選択の主な要因となっています。
  • もし、例えば、新型コロナのパンデミックのため、口頭審理を直接面談形式で行うことができない場合、回答者の80%近くは、期日を延期せず、バーチャル審理を行うことを選択すると答えたのに対し、直接審理が行えるようになるまで審理を延期すると答えたのは16%でした。
  • 新型コロナの感染拡大によるバーチャル審理の最近の経験に則して、回答者は、バーチャル審理の主な利点として、審理日程を柔軟に変更しうる点を挙げ、次いでテクノロジーの利用による効率性の向上、手続きやロジスティックの柔軟さを挙げています。一方で、回答者は、バーチャル審理では、異なるタイムゾーンに対応することが困難であることや、弁護士とクライアントが協議することが難しいこと、証人のコントロールや、証人の信頼性の評価に関する懸念を指摘しています。
  • 将来的には、回答者は、バーチャルと直接面談での審理を混在させることに前向きで、手続審理ではバーチャル審理がやや好まれ、責任や損害賠償に関する審理などの実質的な審理では直接面談による選択肢を維持したいと考えています。
  • 回答者の50%以上が、近年、仲裁廷における性別のダイバーシティに進展があったと答えました。一方で、地理的・年齢・文化的・民族的なダイバーシティについては、進展があったと考える回答者は限られています。

2021年の調査結果について、QMUL国際仲裁スクールの副Directorは、「今回の調査結果は、世界的な激動の時代における仲裁実務の変化についての、興味深いスナップショットでしょう。仲裁に関するコミュニティは、これに迅速に適応しなければならず、こうした変化の一部はパンデミックが去った後も残るでしょう。バーチャル審理やテクノロジーの利用拡大は、今後も続くであろう変化の明確な例です。」と述べています。

結果やコメントの詳細については、リンク先の Adapting Arbitration to a Changing World をご参照ください。

本記事は、当事務所外国法事務弁護士のJoel Greerによる英語記事 ‘Key Results from the 2021 Queen Mary International Arbitration Survey’ を野村諭弁護士が和訳した記事です。英語版と日本語版に何らかの齟齬があった場合、英語版が優先するものといたします。

この記事で提供されている情報は、法律上のアドバイスを構成するものではなく、一般的な情報提供のみを目的としています。特定の法的問題に関してアドバイスを求める場合は、弁護士にお問い合わせください。


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