平成30年度税制改正の特例納税猶予制度とは?-特例納税猶予制度を踏まえた最新の事業承継の法務と税務(第2回)

 

      目次

1 制度創設の背景 
2 特例納税制度の位置づけと手続 
 (1)  位置づけ
 (2)  特例納税猶予制度を受けるための手続
3 特例納税猶予制度の内容
 (1)  対象株式数と納税猶予割合限度の撤廃
 (2) 雇用確保要件の実質的な撤廃
 (3)  贈与者・受贈者の対象を拡充
 (4)  相続時精算課税制度との併用
  ① 暦年課税制度
  ② 相続時精算課税制度
  ③ 贈与税の納税猶予制度(一般の納税猶予制度)
 (5)  特例承継期間後の免除(譲渡・合併・解散時の減免制度創設)
4 適用を受けるための要件
 (1) 会社の要件
  ① 適用対象は中小企業者に限られる
  ② 非上場企業に限られる
  ③ 性風俗営業会社は適用対象とならない
  ④ 特定特別関係会社※が上場会社、性風俗営業会社または大会社の場合は適用対象とならない
  ④ 資産管理会社※(一定の要件を満たすものを除く。)は適用対象とならない
  ⑥ その他の要件
 (2) 先代経営者の要件
  ① 贈与における先代経営者の要件
  ② 相続または遺贈における先代経営者の要件
 (3) 後継者の要件
  ① 贈与における先代経営者の要件
  ② 相続または遺贈における後継者の要件
 (4) 担保提供の要件
5 まとめ

1 制度創設の背景

 日本企業の現状を鑑みるに、企業の経営者の高齢化が進み、今後10年間で社長の平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業の経営者は約245万人に達します。そのうち約半数にあたる127万人の経営者については後継者が未定となっています 。 また一方で、60歳以上の中小企業の経営者に後継者の決定状況を聞いたところ、経営者の2人に1人(うち法人経営者が3割、個人経営者が7割)が自分の代で廃業を予定していると答えています 。
経営者の高齢化が進み、十分な事業承継準備ができないまま(後継者の不在などで)廃業を余儀なくされるという現実は、単に会社や事業所の数が減少するというだけでなく、それに伴う雇用が数百万人規模で失われるということを意味しています。まさに日本経済がこれから10年以内に劇的に衰退することが予測されます。
 その意味で団塊の世代の経営者が70歳を迎える今、事業承継は喫緊の課題です。国も「待ったなし!」として、今年からの10年間に限定して事業承継税制の見直し(平成30年度の税制改正から)をスタートさせました。
それが「特例納税猶予制度」です。簡単にいえば、会社の支配権である自社株を誰かに継がせても(つまり第三者に贈与・相続しても)、納税猶予が100%使えるようになり、課税なしで会社を引き継がせることができるようになります。これまでの制約が多くて使いづらい事業承継税制から、まず会社を承継させる目的で新しい事業承継税制がスタートします。それでは具体的に改正内容を見ていきましょう。

 

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2 特例納税制度の位置づけと手続

(1)位置づけ

 平成30年度の税制改正によって、納税猶予制度自体が改正されたわけではありません。これまでの納税猶予制度の上に、平成30年から10年間に限って「特例納税猶予制度」として新たに創設(上乗せ)されたことになります(本稿においては、新たに創設された納税猶予制度を「特例納税猶予制度」といい、これまでの納税猶予制度を「一般の納税猶予制度」といいます。)。

(2)特例納税猶予制度を受けるための手続

ステップ1

 特例納税猶予制度を受けるには、「認定経営革新等支援機関」の指導及び助言を受けて、平成30年4月1日から5年間(平成35年3月31日まで)の間に、「特例承継計画※」を都道府県知事に提出する必要があります。
特例納税猶予制度全体では10年の期限がありますが、当初の5年間(平成30年4月1日〜平成35年3月31日まで)のうちに都道府県知事に「特例承継計画」を提出しておかないと、この特例納税猶予制度を受けることができません。したがって、実質的には最初の5年間に手続をしておくかどうかで、特例が受けられるかどうかが決まってしまいます。
※「特例承継計画」とは、「認定経営革新等支援機関」の指導及び助言を受けて、特例認定承継会社が作成した計画書のことをいいます。認定経営革新等支援機関とは、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。主に税理士を中心として、経営革新等支援機関数は平成30年6月29日現在で29,188機関となりました。

ステップ2

 都道府県知事に承継計画を提出しておくことによって、自社株を特例納税猶予制度の適用期限内(平成39年12月31日まで)に後継者に贈与し、知事の認定を受け税務署に申告することによって、「特例納税猶予制度」を受けることができます。相続の場合も同様の手続になります。

 

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3 特例納税猶予制度の内容

 特例納税猶予制度の概要は次表のとおりです。これまでの納税猶予制度(一般の納税猶予制度)との比較により、新しく創設された部分が明確にわかります。以下では、一般の納税猶予制度との違いについて、重点的に解説していきます。

特例納税猶予制度の概要(一般の納税猶予制度との比較)

 

項目 一般の納税猶予制度 特例納税猶予制度
対象株式数 発行済議決権株式総数の2/3 議決権株式の全株式
納税猶予割合 【相続税】80%【贈与税】100% 贈与税・相続税とも100%
雇用確保要件 承継後5年間平均 80%の雇用維持 実質撤廃
贈与者 先代経営者を含む複数株主 先代経営者を含む複数株主
受贈者 後継経営者1人のみ(筆頭株主のみ) 後継経営者3名まで(代表権が必要:1人最低10%以上)
相続時精算課税制度との併用 推定相続人等の後継者のみ 推定相続人等以外の第三者も適用可能
特例承継期間後の免除 民事再生・会社更生時に一定額免除 左記に「譲渡・合併・解散時」を追加
特例承継計画提出期間 平成30年4月1日から平成35年3月31日まで
特例承継計画の認定 不要 都道府県知事の認定が必要
贈与期間(特例適用のための期間) 平成30年1月1日から平成39年12月31日までに贈与

(1)対象株式数と納税猶予割合限度の撤廃

 これまでの一般の納税猶予制度における対象株式とその納税猶予割合は、
⚪︎贈与税の納税猶予の対象となる株式は、発行済議決権株式総数の2/3までで、猶予割合は100%です。
⚪︎一方、相続税の納税猶予の対象となる株式は、発行済議決権株式総数の2/3までであり、納税猶予割合はその80%です。したがって実際に猶予される額は、66.7%(⅔)×80%=全体の約53%にとどまりました。
 したがって、贈与税と相続税の納税猶予割合が異なることによる問題点や、税負担(仮に被相続人が自社株を100%保有しているとすると、贈与税でも残りの約33%に暦年課税、相続税の場合は約47%には相続税課税)が生じていました。
 特例納税猶予制度の場合は、贈与税、相続税ともに対象株式の上限の撤廃し、議決権株式の全てが納税猶予の対象となります。また、猶予割合を100%に拡大することにより、事業承継に係る金銭負担は実質的に0円となります(但し、免除ではなく、あくまでも贈与税・相続税の納税が猶予されるということです。)。
 つまり、自社株に関しては、金銭負担なしで後継者に贈与もしくは相続することができるようになります。

(2)雇用確保要件の実質的な撤廃

 一般の納税猶予制度が適用されても、承継後5年間の継続期間内に一定の継続要件を維持していく必要があります。それが維持できないと認定取り消しとなり、猶予された税額にそれまでの利子税を加えて納めなければなりません。
 この継続要件の中で最も厳しいのが、「雇用確保要件」です。具体的には相続税の場合、「申告期限後5年間の平均で、相続開始時の雇用の80%を維持できなかった場合」に相続猶予を取り消されるというものです。平成27年度の税制改正で、それまで毎年80%維持しなければならなかった要件が緩和され、5年間の平均で80%維持となりました。それでも雇用の80%を維持することは中小企業にとって厳しいものがあります。特に後継者の努力と無関係な部分(例えば、風評被害や経済情勢の急激な悪化による売上ダウンなどで雇用維持ができないなど)で継続要件未達成となった場合でも、納税猶予の取り消しとなってしまいます。
 一方、特例納税猶予制度では、雇用確保要件を実質的に撤廃し、5年間の雇用維持が80%未満の場合でも納税猶予を継続可能になりました。具体的には、雇用確保が難しく、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められる場合には、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受け、その内容を記載して都道府県知事に書面で提出することで、納税猶予が継続可能になります。

(3)贈与者・受贈者の対象を拡充

 これまで納税猶予制度は、先代経営者の保有する自社株を後継者1人へ贈与もしくは相続する制度でした。つまり、基本的に1対1での引き継ぎでした。しかし、特例納税猶予制度において、この1対1の承継が大きく変わります。
具体的には、複数人からの承継(贈与者【複数】⇨受贈者【後継者1人】)の場合、例えば、先代経営者である父(株主)とその妻(後継者の母で株主)の2人から、後継者である長男へ自社株を贈与する場合、これまで父親からの自社株の贈与しか納税猶予の適用がなかったものを、母親からの自社株の贈与についても納税猶予の適用ができるとされています(但し、代表者以外の者からの贈与等は、まずは、経営者から後継者への株式の贈与が行われ、その日から特例承継期間(5年)の末日までの間に当該贈与者に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、特例納税猶予制度の対象とするものとされます。)。
逆に、1人から複数人への承継(贈与者【先代経営者1人】⇨受贈者【後継者3人】など)の場合、例えば、先代経営者である父(株主)から、後継者である長男・次男・三男の3人へ自社株を贈与する場合でも、それぞれの納税猶予の適用ができるとされています。受贈者は最大3名までで、いずれも(この場合3人とも)代表権を有している者に限られます(複数人で承継する場合、議決権割合10%以上を有し、かつ議決権保有割合上位3位までの同族関係者など一定の要件があります。)。
 なお、贈与の場合は複数人から複数人への承継も考えられます。同時に、一般の納税猶予制度においても、複数の贈与者からの贈与について改正により認められるようになりましたが、後継者は従来どおり1人に限られます。
後継者は平成27年度の税制改正で、親族外承継(第三者への納税猶予の適用)も対象となっていますから、第三者からの贈与および第三者への贈与も、特例納税猶予制度においても対象となります。

(4)相続時精算課税制度との併用

 納税猶予制度(この場合は贈与税の納税猶予制度)の中にいきなり相続時精算課税制度が出てくると、戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。そこで理解しやすいように、自社株の贈与から考えてみましょう。
まず、自社株を後継者へ移す手段の1つに「贈与」があり、贈与の場合の課税の方法として、下記①~③があります(以下の①・②の贈与は自社株に限ったものではありませんが、ここでは自社株の贈与ということで進めていきます。)

 ①暦年課税制度

 毎年、自社株を評価(贈与時点の評価額を計算)して、1株あたりの評価額に贈与株式数を乗じて贈与価額を計算します。その贈与価額の合計額から基礎控除である110万円を控除した残額に累進税率を乗じて贈与税額を算出します。

 ②相続時精算課税制度

 平成15年からスタートした制度で、60歳以上の親・祖父母から、20歳以上の子・孫に対して自社株を贈与した場合、特別控除額の2,500万円を超える分については一律20%の贈与税がかかるというものです。

 ③贈与税の納税猶予制度(一般の納税猶予制度)

 一括贈与した分に係る贈与税額を猶予するもので、平成21年4月からスタートした制度であり、平成29年度までは、前述の一般の納税猶予制度のみが利用できました。
 うち③の贈与税の納税猶予制度については、これまであまり活用されてはいませんでした。
 それは、認定要件をクリアして贈与税の納税猶予が認められたとしても、それ以降の継続要件を満たさないと途中で納税猶予が取り消され、猶予された税額とともに利子税を含めて支払わなければならないといったリスクが常につきまとっていたからです。仮に贈与税の納税猶予制度の適用が取り消された場合、①の暦年課税により贈与税額が計算されるため、会社にとっては納税猶予対象株式評価額のおよそ半分近い金額の贈与税を直ちに支払わなければならず、もしも、取り消されでもしたら、後継者に重い納税負担が生じ、担保として提供した自社株が国に帰属してしまう事態や後継者への納税資金捻出のために会社運営にも支障が生じ、倒産にも直結しうる問題となります。そのような意味で使いづらい制度でした。
 そこで、平成29年度の税制改正により、贈与税の納税猶予制度と相続時精算課税制度の併用が認められることになりました。具体的には、贈与税の納税猶予制度を適用するには税務署に届け出る必要があります。その際、暦年贈与に係る贈与税に納税を猶予するか、相続時精算課税制度に係る贈与税の納税を猶予するか選択する必要があります。
贈与税の納税猶予の認定が取り消されるリスクがある場合には、相続時精算課税を選択・活用することにより、納税猶予の認定が取り消された時点で特別控除額2,500万円を超える部分の20%の贈与税を支払うことで済むようになりました。この場合は、相続時には相続税が課税されることになりますが、贈与税額控除で贈与税分が戻されるため、税負担は相続税と同額になり、これまでの暦年課税の場合に危惧されていた多額の贈与税リスクを回避できるようになりました。
 また、相続時精算課税の贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の贈与者の直系卑属(子や孫)とされています。後継者の3分の1以上が親族外承継となっている昨今に、この相続時精算課税の親族要件は足かせとなります。そもそも自社株の贈与税納税猶予制度では、それと併用できる相続時精算課税制度が親族(それも直系卑属)に限定されるのでは、使い勝手が良いとは言えません。
 そこで、平成30年度の税制改正では、特例納税猶予制度において、「特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年の1月1日において20歳以上であるものに限る)であり、その贈与者が同日において、60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることとする」とされることになりました。つまり、後継者が第三者であっても、特例納税猶予制度に限って、贈与税の納税猶予制度と相続時精算課税制度が併用できることになります。

(5)特例承継期間後の免除(譲渡・合併・解散時の減免制度創設)

 納税猶予額はそれをスタートさせた時の株価を基に猶予額が決定されます。しかし、その後、経営環境の変化によって株価が下がっても、一般の納税猶予制度の場合には、納税猶予額は当初のままで計算することになっていました。つまり、経営承継期間経過(申告期限の翌日以後5年を経過する日)後に会社を譲渡・合併・解散した場合の納付金額は、当初の株価のままで計算した金額でした。
 これが特例納税猶予制度の場合には、経営環境の変化とそれに伴う株式評価額の変化に応じて一定の納税猶予額が免除されます。具体的には、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合、例えば、直前3年間のうち2年以上赤字である、同じく直前3年間のうち2年以上にわたって売上高が減少している、有利子債務が売上高の6ヶ月以上あるなどの場合において、特例承継期間(納税猶予認定から5年)経過後に、特例認定承継会社の株式を譲渡、合併、解散等するときは、譲渡等の時点で株価を再計算し、当初の評価額をもとに計算した税額と再計算後の評価額をもとに計算した税額の差額が「免除」されることになりました。

 

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4 適用を受けるための要件

 本制度の適用を受けるためには、以下のような「会社の要件」、「先代経営者の要件」、「後継者の要件」、「担保提供の要件」を満たす必要があります。

(1)会社の要件

 ①適用対象は中小企業者に限られる

 非上場株式等の納税猶予制度の適用対象となる中小企業者の範囲は、中小企業基本法の中小企業で、一定の要件に該当する会社とされています。なお、適用対象は会社法上の会社に限られますので、株式会社、特例有限会社、合同会社、合資会社、農業生産法人の株式又は出資に限られます。したがって、医療法人の持分や社会福祉法人、NPO法人などは適用対象になりません。

 ②非上場企業に限られる

 非上場株式等の納税猶予制度なので、株式市場に上場すると納税猶予の適用を受けることはできません。会社の経営戦略上どうしても株式市場に上場して、資本市場での資金調達をしなければ国際競争に打ち勝てないという場合には、非上場株式等の納税猶予制度の適用は断念するしかありません。
 なお、納税猶予期間後5年以内に上場した場合には、納税猶予は取り消され、猶予税額の全額と経過期間に対応する利子税を一括して納付しなければなりません。しかし、5年経過後であれば上場しても納税猶予は継続され、贈与者が死亡した後に切り替え確認が認められると相続税の納税猶予を受けることができます。

 ③性風俗営業会社は適用対象とならない

 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)上の性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社(以下、「性風俗営業会社」といいます。)は非上場株式等の納税猶予の適用対象となりません。一般の風俗営業にはパチンコ、ゲームセンターなどの遊技場業やバーなどが含まれますが、性風俗関連特殊営業ではありませんので、これらは納税猶予の適用対象となります。

 ④特定特別関係会社※が上場会社、性風俗営業会社または大会社の場合は適用対象とならない

 その中小企業者の特定特別関係会社が上場会社等、大会社等または性風俗営業会社に該当している場合も、納税猶予の適用を受けることができません。

※「特定特別関係会社」とは、「特別関係会社」(認定会社、会社の代表者(後継者)と当該代表者の同族関係者が合わせて総株主等議決権数の過半数を有している内国会社および外国会社をいいます。)のうちその特別関係会社の議決権を保有する代表者の親族の範囲が「代表者と生計を一にする親族」に限定されたものをいいます。

 ⑤資産管理会社※(一定の要件を満たすものを除く。)は適用対象とならない

 事業承継を行う中小企業者が資産保有型会社や資産運用型会社に該当する資産管理会社の場合には適用対象外となります。資産管理会社の判定上、対象となる中小企業者の特別関係会社の株式や持分については、当該特別関係会社が資産保有型会社もしくは資産運用型会社に該当しない場合には、特定資産から除かれますが、該当する場合には特定資産に該当し、判定上、資産管理会社に該当することとなってしまう可能性もありますので留意が必要です。なお、その場合でも一定の従業員要件を満たせば、資産管理会社に該当しないものとされます。
※「資産管理会社」とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産の保有割合が総額の70%以上の会社(資産保有型会社)やこれらの特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社(資産運用型会社)をいいます。

 ⑥その他の要件

 常時使用する従業員数が原則1人以上であること、直前事業年度の主たる事業活動からの総収入金額が零ではないこと、拒否権付き株式を有していないこと、贈与又は相続開始前3年以内に一定の者から受けた現物出資等資産の割合が総資産の70%未満であることなど、多くの要件を満たすことが求められています。

(2)先代経営者の要件

 ①贈与における先代経営者の要件

1)会社の代表者であったこと(贈与までに代表権を返上する必要がある)
2)贈与の直前において、先代経営者と同族関係者で総議決権数の50%超の株式を保有し、かつ、その同族関係者(特例経営承継受贈者を除く)の中で筆頭株主であったこと(代表者であった当時のいずれかの時点と贈与直前に要件を満たす必要がある。代表権返上直後に贈与した場合は贈与直前のみで良い)

 ②相続または遺贈における先代経営者の要件

1)会社の代表者であったこと(直前に代表者であってもなくてもよい)
2)相続開始直前において、被相続人と同族関係者で総議決権数の50%超の株式を保有し、かつ、その同族関係者(特例経営承継相続人等を除く)の中で筆頭株主であったこと(代表者であった当時のいずれかの時点と相続開始直前に要件を満たす必要がある。相続開始直前に代表者であった場合は相続開始直前のみでよい)

 なお、筆頭株主であるという条件はあくまでも同族関係者間においてですから、あまり事例は多くないとは思われますが、同族関係者以外の第三者に筆頭株主がいても対象となります。

(3)後継者の要件

 ①贈与における後継者の要件

1)会社の代表者であること(代表者は当該者以外にいてもよい)
2)20歳以上であり、かつ、役員就任後3年を経過していること
3)同族関係者と合わせて総議決権数の50%超を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと(後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数において、それぞれ上位2名又は3名の者で、総議決権数の10%以上を有する者)
4)贈与のときから認定申請日まで引き続き贈与により取得した特例認定承継会社の株式等のすべてを保有していること

 ②相続または遺贈における後継者の要件

1)特定代表者であった被相続人の死亡の直前において役員であったこと(被相続人が60歳未満であったときは役員でなくともよい)
2)相続開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日までに代表権を有していること
3)相続または遺贈により株式等を取得した代表者であり、同族関係者と合わせて総議決権数の50%超を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと(後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数において、それぞれ上位2名又は3名の者で、総議決権数の10%以上を有する者)
4)被相続人の相続開始のときから認定申請日まで引き続き相続または遺贈により取得した特例認定承継会社の株式等のすべてを保有していること

(4)担保提供の要件

 納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う一定の財産を担保として税務署に提供する必要があります。なお、特例納税猶予制度の適用を受ける非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、納税が猶予される贈与税及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。

 

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5 まとめ

 今回新たに創設された特例納税猶予制度は、今までの一般の納税猶予制度と比較すると内容と使い勝手が格段に良くなっており、適用可能な企業にとっては非常に有用な自社株承継対策の1つとなると考えられます。しかし、手続の解説で述べたとおり、事業承継を10年以内に考えている場合には、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの5年間のうちに、都道府県知事へ特例承継計画を提出しておく必要があります。まず、この提出を行わないと、特例納税猶予制度を活用することができません。
 また、最後に解説した「会社の要件」、「先代経営者の要件」、「後継者の要件」及び「担保提供の要件」を全て満たす必要があり、満たしているかどうかの判断には専門家の知見が欠かせません。もし、本制度の活用を検討されている場合は、早めに専門家の意見を仰いでみることが大切です。

文  責:税理士 山口 祥平
     弁護士 松永 昌之

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