fbpx

合同会社と株式会社の違いとは?メリット・デメリットと設立時の選び方を司法書士が解説

会社を設立する際に最初に直面する選択の一つが、「株式会社」と「合同会社」のどちらにするかという会社形態の決定です。合同会社は設立費用が安く手続も簡便なことから、設立登記の件数が平成28年(2016年)から令和7年(2025年)までの間に約1.9倍に増加しました。一方で、合同会社には種類株式や新株予約権に相当する制度がなく、株式上場もできないなどの制約もあります。本記事では、設立登記の実務を担う司法書士が、株式会社と合同会社の違いとメリット・デメリット、SPCとしての活用や事業承継も含めた選び方を解説します。

合同会社と株式会社の違いとは?メリット・デメリットと設立時の選び方を司法書士が解説
REGISTRATION
PROFILE
Yusuke Yamada

Judicial Scrivener

Yusuke Yamada

Graduated from the Department of Resources, Bioenvironmental Sciences, Faculty of Agriculture, Nagoya University in 2003. After obtaining qualification as a judicial scrivener, he worked at a judicial scrivener office specializing in corporate legal affairs and commercial registration, and later joined ZeLo. He has handled a wide range of clients, from listed companies to startups, supporting diverse corporate legal matters including various forms of fundraising, implementation of paid and free stock options, IPOs, organizational restructuring, and M&A, as well as gaining extensive experience in the accompanying commercial registration procedures.

合同会社の設立件数の推移|10年で約1.9倍に

法務省の登記統計(商業・法人登記統計表)によれば、本店における「設立」の登記の件数の推移は下表のとおりです。株式会社の設立件数が8万5,000件~10万件程度で推移しているのに対し、合同会社は一貫して増加を続けており、平成28年(2016年)から令和7年(2025年)までの間に約1.9倍となっています。

株式会社と合同会社の設立件数の合計に占める合同会社の割合も、平成28年の約21%から令和7年には約31%へと年々高まっており、設立コストの安さと手続の簡便さが、合同会社の増加を後押ししていると考えられます。

年株式会社(件)合同会社(件)
平成28年(2016年)90,40523,787
平成29年(2017年)91,37927,270
平成30年(2018年)86,99329,076
令和元年(2019年)87,87130,566
令和2年(2020年)85,68833,236
令和3年(2021年)95,22237,072
令和4年(2022年)92,37137,127
令和5年(2023年)100,66940,751
令和6年(2024年)98,67141,774
令和7年(2025年)100,16545,161
出典:法務省「登記統計 商業・法人登記」第16表「種類別 株式会社の登記の件数」及び第20表「種類別 合同会社の登記の件数」

株式会社・合同会社の法的な位置づけ

会社法上、「会社」とは株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいいます(会社法2条1号)。このうち合名会社・合資会社・合同会社の3つを総称して「持分会社」といい、合同会社は持分会社の一類型であり、社員の全部を有限責任社員とする旨を定款に記載しなければならない会社です(会社法576条1項5号・4項)。

株式会社に出資した者は株主といい、持分会社に出資した者は社員といいます。なお、ここでいう「社員」は会社法上の用語であり、従業員ではなく出資者を指します。

株式会社と合同会社の違い|「所有と経営」の分離か一致か

株式会社は、出資者(株主)と経営者(取締役)が制度上分離していることを前提とした会社形態です。取締役は株主である必要はなく、公開会社では定款によっても取締役の資格を株主に限定することはできません(会社法331条2項本文)。公開会社でない株式会社に限り、定款で取締役を株主に限定する旨を定めることも例外的に認められています(同項ただし書)。株主自身が経営の知識・能力を有していなくても、外部の専門的な経営者に会社の経営を委ねることができる点が、株式会社の基本的な設計思想です。

これに対して合同会社は、出資者である社員が原則としてそのまま経営者となります。社員は、定款に別段の定めがある場合を除き自ら持分会社の業務を執行し、社員が複数いる場合の意思決定も原則として社員の過半数で行います(会社法590条1項・2項)。

また、業務執行社員は社員の中から定款で定められ、代表社員は業務執行社員の中から定められるため、社員以外の者が業務執行社員・代表社員となることはできません(会社法591条1項・599条3項)。「所有=経営」が一致した、シンプルな機関設計であることが、合同会社の最大の特徴です。

両者の意思決定方法を対比すると、株式会社の株主総会の決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の過半数をもって行う普通決議によりますが、定款の変更等の重要事項については、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する特別決議によらなければなりません(会社法309条1項・2項11号)。

もっとも、株主総会が決議できるのは、取締役会設置会社では会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限られ(会社法295条2項)、日常の業務執行に関する意思決定はこれとは別に行われます。取締役会を置く会社では、業務執行の決定は取締役会の決議(取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数をもって行う、会社法369条1項)によりますが、取締役会を置かない会社では、取締役が2人以上いる場合、業務執行の決定は取締役の過半数をもって行います(会社法348条2項)。

これに対して合同会社では、業務執行に関する意思決定は、定款に別段の定めがある場合を除き社員の過半数によって行われ、日常的な事務(常務)については、完了前に他の社員が異議を述べない限り、各社員が単独で行うことができます(会社法590条2項・3項)。

定款そのものの変更も、原則として総社員の同意によりますが(会社法637条)、この要件は定款で緩和することも可能です。株式会社の株主総会のような招集手続の規定がないため、会議を開催しなくても必要な社員の同意が整えば、機動的に意思決定を行うことができる点が、合同会社の実務上の大きな特徴です。

なお、株式会社でも、取締役又は株主の提案につき議決権を行使できる株主全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、株主総会の決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。

また、対外的な肩書きにも違いがあります。株式会社の代表者は「代表取締役」を名乗りますが(会社法349条)、合同会社では「代表社員」となります(会社法599条)。

合同会社の仕組みと特徴

社員

出資者であり、全員が有限責任社員(会社法576条4項)となります。自然人・法人いずれも社員となることができ、法人が業務執行社員となる場合は、職務執行者を選任します(会社法598条1項)。

持分

社員としての地位。出資額にかかわらず、業務執行の意思決定は原則として頭数によります(会社法590条2項)。譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要です(会社法585条1項)。業務を執行しない社員については、業務執行社員の全員の承諾があれば譲渡できます(会社法585条2項)。これらの要件については、定款で別段の定めを置くことも可能です(会社法585条4項)。

業務執行社員・代表社員

社員は原則として各自が業務執行権・代表権を有しますが、定款で業務執行社員を定めたり、業務執行社員の中から代表社員を選定したりすることができます(会社法599条1項・3項)。

退社

社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、6か月前までに予告をして事業年度の終了時に退社できるほか(会社法606条1項:任意退社)、死亡等の法定の事由によっても退社します(会社法607条:法定退社)。

また、やむを得ない事由があるときは、定款の定めにかかわらずいつでも退社できます(会社法606条3項)。退社した社員は、原則として持分の払戻しを請求できます(会社法611条)。退社に際しては持分の評価や債権者保護手続が必要となる場合があり(会社法635条)、会社から資金が流出することにもなるため、複数人で合同会社を設立する際は注意が必要です。

なお、株式会社にはこのような退社の制度がなく、株主は株式を譲渡することによって投下資本を回収する点で異なります。

合同会社のメリット・デメリットと株式会社との比較

設立時のコスト・手続から機関設計、資金調達、事業承継に至るまで、実務上論点となりやすいポイントを、合同会社を選択する場合のメリット・デメリットという形で整理すると、以下のとおりです。

メリット

  • 新規設立数が年々増加しており、社会的な認知度も徐々に高まりつつある。
  • 設立時の実費が株式会社よりも安価。電子定款を利用した場合の目安は、株式会社が公証役場での定款認証手数料1万5,000円~5万円と設立登記の登録免許税15万円以上(資本金額×0.7%、ただし計算の結果15万円に満たない場合は15万円)の合計で約16万5,000円~20万円以上であるのに対し、合同会社は公証役場での定款認証が不要であり、電子定款を利用した場合の目安は、設立登記の登録免許税6万円以上(資本金額×0.7%、ただし計算の結果6万円に満たない場合は6万円)のみで足りる。
  • 現物出資について検査役の調査が不要(会社法33条参照)。
  • 合同会社には、計算書類(会社法617条)の承認について、株式会社の定時株主総会(会社法438条2項)に相当する開催義務や招集手続の定めがない。定款で社員の過半数による承認を要すると定めることも可能である。なお、事業報告(会社法435条2項)の作成義務はない。
  • 決算公告義務がないため、株式会社のように定時株主総会の終結後に貸借対照表等を公告する必要がない(会社法440条1項参照)。
  • 最終事業年度に係る貸借対照表について、資本金の額が5億円以上又は負債の部の合計額が200億円以上となっても、株式会社と異なり大会社(会社法2条6号)の規制が適用されないため、会計監査人の設置等が不要(会社法328条参照)。
  • 合同会社の社員には、株式会社の取締役及び監査役のような任期がないため、役員変更登記のコスト・手間を抑えられる(ただし、業務執行社員・代表社員に変更があった場合は変更登記が必要)。
  • 増資の際、払込額の全額を資本剰余金とすることもでき、株式会社のように払込額の2分の1以上を資本金に計上する義務(会社法445条1項・2項)はない(会社計算規則30条参照)。そのため、場合によっては資本金の変更登記も不要となる。
  • 総社員の同意、債権者保護手続、登記申請が必要になるため手続及び費用がかかるが、合同会社から株式会社への組織変更が可能(会社法743条以下・781条)。

デメリット

  • 実務上、株式会社に比べて社会的信用・対外的な信用力の面で見劣りするとされることがある。
  • 業務執行に関する意思決定は、定款に別段の定めがある場合を除き社員の頭数による過半数で行われるため(会社法590条2項)、社員が2名で共同経営する場合は、出資比率にかかわらず、過半数を得るには両者の賛成が必要となり、意見が対立すると経営判断そのものが停滞しやすい。
  • 持分の譲渡や新たな社員の加入には原則として社員全員の同意(定款変更)が必要となり、株式会社の株式譲渡・新株発行に比べて社員が複数の場合には機動性に欠ける(会社法585条1項・604条2項・637条)。
  • 種類株式(会社法108条)や新株予約権(ストックオプション、会社法236条)に相当する制度がなく、株式上場(IPO)もできない。
  • 社員の退社に伴う持分の払戻しでは、払戻額に応じて1か月又は2か月の債権者保護手続が必要になる場合がある(会社法635条)。
  • 出資者と業務執行者を明確に分離したい場合は、株式会社の方が適する。
  • 合同会社は、株式交換完全子会社となることができず(株式交換完全親会社となることは可能。会社法767条)、株式移転・株式交付の当事会社となることもできない(会社法772条・774条の2)。そのため、これらの組織再編を予定している場合は、株式会社を選択する必要がある。

SPC(特別目的会社)としての合同会社の活用

合同会社は、不動産・金銭債権・再生可能エネルギー設備等を対象とする資産流動化・証券化のための特別目的会社(SPC)としても広く用いられています。SPCは特定の資産・取引ごとに設立される「箱」であり、対外的な知名度や信用力は本来的に重視されません。

資産の裏付けとなるのは保有資産そのものやスキーム全体の設計であって、会社自体の対外的信用力ではないため、株式会社が備える機関設計の重厚さはむしろ不要であり、設立コストの低さや、決算公告義務がないこと(会社法440条1項参照)による管理コストの低さが評価されています。

不動産証券化の実務では、合同会社を営業者(受け皿)とし、投資家が匿名組合契約(商法535条)に基づき出資する「GK-TKスキーム」が代表的な手法として定着しています。合同会社(GK)が匿名組合員(投資家)に分配する利益は合同会社の損金として扱われるため、SPCの段階では課税所得がほとんど生じず、実質的に投資家段階で課税されるという導管的な構造を実現できます。

また、投資家は匿名組合員として出資するにとどまり合同会社の社員にはならないため、前記「合同会社のメリット・デメリットと株式会社との比較」で述べた「社員が複数いる場合の頭数による意思決定」の論点が生じにくく、機動的な運営に支障を来さない点も、SPCとして合同会社が選ばれる実務上の理由の一つです。

さらに、会社更生法は株式会社のみを対象としており(会社更生法1条・2条1項)、合同会社には更生手続による担保権実行の禁止が及ばないことも、倒産隔離の観点から好まれています。

LBO(レバレッジド・バイアウト)における買収ビークル(買収SPC)についても、合同会社が用いられる例は少なくありません。買収SPCは、金融機関からの借入れの借主となり対象会社の株式を取得する役割を担うにとどまり、買収完了後は対象会社と合併して消滅することがあるため、対外的な知名度が不要である点は他のSPCと同様です。

もっとも、優先株式等の種類株式を用いてスポンサー・メザニン投資家等の出資者ごとに異なる権利内容を設計したい場合や、対象会社が株式会社であり買収SPCを存続会社として合併させる場合には、株式会社が選ばれる傾向にあります。

また、コミットメントラインの利用等、具体的な資金調達手法によっては、借主となるSPCの法人形態により適用される規制(特定融資枠契約に関する法律上の取扱い等)が異なる場合があるため、個別の取引ごとに検討する必要があります。

事業承継・複数名で設立する場合の留意点

事業承継への備えや、複数名で設立する場合の運営のあり方も、会社形態の選択に影響します。

事業承継への備え|社員の死亡と持分の承継

株式会社では、株式に譲渡制限を定款で定めることで、株式が第三者に流出することをある程度防ぐことができ(会社法107条1項1号・136条)、株主が死亡した場合には株式は原則として相続人に承継されます。

もっとも、定款で定めておけば、相続により株式を取得した者に対し、会社がその株式の売渡しを請求することもできます(会社法174条)。

これに対して合同会社では、社員が死亡した場合、定款に承継の定めがなければ持分は相続されず退社事由となり、相続人は持分の払戻しを受けるにとどまります(会社法607条1項3号・608条)。事業を承継させたい場合は、定款で持分の承継に関する定めを置いておく必要があります。

複数名で設立する場合の注意点|意思決定の停滞と退社・除名

合同会社は、1人で設立・運営する分には機動性の高い形態ですが、複数名で設立する場合には注意が必要です。合同会社には、株式会社における特別支配株主の株式等売渡請求(会社法179条)や株式の併合(会社法180条)のように、少数の出資者に持分を強制的に手放させる仕組み(スクイーズアウト)が整っておらず、社員を除名するにも訴えによる必要があります(会社法859条)。

また、持分の譲渡には原則として他の社員全員の承諾を要します(会社法585条1項)。加えて、前記のとおり業務執行の意思決定は原則として頭数による過半数で行われるため、対等な立場の社員2名で設立すると、意見が割れた場合に決定不能な状態に陥りやすく、いったん対立すると解消が難しくなります。

複数名での設立を検討する場合は、意思決定ルールをあらかじめ定款に明記する等の設計が重要です。

株式会社と合同会社どちらを選ぶべきか|判断のポイント

  • 将来的に投資家等の外部からの資金調達(増資・新株予約権・株式上場等)を見据えている場合や、対外的な信用力を重視したい場合
    • ⇒ 株式会社が適しています。
  • 1人で機動的に経営したい、設立・維持コストを抑えたい場合
    • ⇒ 合同会社が適しています。
  • 資産管理会社、不動産ファイナンスのSPC、出資者が実質的に1名に限られる事業体の場合
    • ⇒ 合同会社が選ばれることも多くあります。
  • 複数名で共同経営したい場合や、将来の上場・大規模な資金調達を見据える場合
    • ⇒ 株式会社が選ばれる傾向にあります。
  • いずれの視点にも強くこだわりがない場合
    • ⇒ まずコストの低い合同会社で事業を開始し、事業の成長に応じて株式会社へ組織変更するという進め方も選択肢の一つです(会社法743条以下)。ただし、組織変更には登録免許税や官報公告費用等の実費に加え、債権者保護手続のため1か月以上の期間を要します。早期に株式会社への移行が見込まれる場合は、当初から株式会社を選択する方が合理的なこともあります。

定款・機関設計まで踏まえた会社形態の選択を会社形態の選択にあたっては、設立時のコストだけでなく、想定する事業規模や資金調達方針、意思決定の仕組みを踏まえた定款の内容・機関設計の検討が必要です。実際に設立手続を進める際は、専門家にご相談いただくことをお勧めします。

法律事務所ZeLoでは、商業登記に精通した司法書士が弁護士と連携し、会社設立をサポートしています。会社形態の選択や定款の設計から設立登記、将来の組織変更まで、事業のフェーズに合わせて一貫して対応いたします。ぜひご相談ください。

合同会社と株式会社の違いとは?メリット・デメリットと設立時の選び方を司法書士が解説

Mail Magazine

合同会社と株式会社の違いとは?メリット・デメリットと設立時の選び方を司法書士が解説

Contact

Page Top