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日本と世界各国のICOの法規制(2018年3月のG20の行末は?)―法律事務所ZeLoの弁護士が自らビットコインを購入し、仮想通貨の法的意義について考察してみる(第4回)

仮想通貨元年と呼ばれた2017年以降、ICOは大規模な資金調達方法として注目を帯びています。一方、その簡便性・有用性のために詐欺事案も増加し、各国では、ICOに対する法的規制を強める傾向にあります。本稿では、日本及び各国のICOの法規制についてご紹介します。

日本と世界各国のICOの法規制(2018年3月のG20の行末は?)―法律事務所ZeLoの弁護士が自らビットコインを購入し、仮想通貨の法的意義について考察してみる(第4回)
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PROFILE
Masataka Ogasawara

Attorney admitted in Japan

Masataka Ogasawara

法律事務所ZeLo代表弁護士。2009年早稲田大学法学部三年次早期卒業、2011年東京大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2017年法律事務所ZeLo創業。主な取扱分野はブロックチェーン・暗号資産、FinTech、IT・知的財産権、M&A、労働法、事業再生、スタートアップ支援など。

日本と世界各国のICO規制

仮想通貨元年と呼ばれた2017年からICOの件数とその調達額は、ともに伸び続けています。一方、詐欺的なICOも多く出現し、2017年9月頃から各国が利用者保護のために規制を強化する流れとなりました。 ICOで形成されるトークンコミュニティが多くの方から賛同を得られる性質のものであれば、ICOは、資金調達の方法として優れたものとして機能するといえます。

日本では、ICOを行う場合のの規制は、未だ議論の中途であり、今後新設の認定団体にて、自主規制ガイドラインが公表されるとともに、金融庁においてもICOを行うにあたって必要な仮想通貨交換業の審査基準が策定されることになっています。 日本では、まさに、規制官庁、有識者及び弁護士にて議論を行っている最中であるため公表されるまで当職から議論を行うことは避けますが、各国のICO規制はどのようになっているのでしょうか。日本でのICO規制がどうあるべきかを考える素材として、海外のICOの規制がどうなっているかを分析したいと思います。

なお、筆者は、日本法の弁護士であって、海外の法規制に関してアドバイスできる立場にはないため、下記は、公表情報から導き出した情報に留まる点には留意が必要です。

ICOを禁止している国

①中国

2017年9月4日、中国政府より以下の発言がなされ、中国におけるICOは全面禁止されました。 「ICOによる資金調達は、経済や金融の秩序を著しく乱す活動だ。ICOの90%は違法な資金調達か詐欺、ネズミ講(pyramid scheme)であり、実態があるICOは全体の1%にも満たない。」 国内の投資家保護という名目での禁止ですが、実際のところは自国通貨が国外に流通することを恐れての禁止であるとも言われています。この中国ICO禁止をきっかけに、各国におけるICO規制の流れが形成されたといえます。

2018年3月現在でもICOは禁止されていますが、中国の高官が国内TVのインタビューで、ライセンス規制が整備されたのちにICO禁止を解除することを示唆する発言をした情報もあり、今後はICOを制限付きで容認する立場に変わることも想定されます。

②韓国

2017年9月29日、韓国金融委員会(FSC)はICOによって投資家が詐欺や市場操作の被害に遭うリスクに言及し、あらゆる形式のICOを禁止する方針を明らかにしました。  韓国といえば仮想通貨投資が盛んになされている国の一つであり、サムソングループも含めた産業界もブロックチェーン技術の導入について積極的である立場を明らかにしています。韓国IT大手のカカオも韓国国内におけるICOを予定していましたが、国の規制方針から断念せざるを得ず、シンガポールなど海外でのICOを実施することになってしまうとのことです。

 このような状況を踏まえ、国内におけるブロックチェーン産業の育成を図りたい韓国政府としては、ICOの禁止を解く方向で話を進めていると韓国日報が報じています。 

ICOを既存の枠組みで規制しようとしている国

①アメリカ

アメリカにおけるICO規制のきっかけは、まだICOという用語が浸透する前のある事件から生じました。2016年6月17日、自律分散型投資ファンド「The DAO」のプログラムがハッキングを受け(後の「The DAO 事件」)、これによりDAOに参加した投資家は360万ETH(当時の価値で換算して65億円程)を一時的に失うことになりました。

 同年7月25日、この事件を受け、アメリカの証券取引所委員会(SEC)はトークンDAOを米国証券法上、有価証券であると位置づけたレポートを発表し、認可を受けないICOによる資金調達は証券取引法規制の対象となることを明言しました。 なお、有価証券にあたるかについて、最高裁判例では下記Howey Testという基準を設け判断しており、ICOについてもこの基準が用いられるとされています。

Howey Test 
①It is an investment of money (金銭による投資か) 
②There is an expectation of profits from the investment (投資により利益を期待できるか) 
③The investment of money is in a common enterprise (共同事業に対する投資か) 
④Any profit comes from the efforts of a promoter or third party (他社の努力により利益がもたらされるものか)

2017年11月米サンフランシスコの法律事務所Velton-Zegelman PCは、中国のブロックチェーン・プロジェクトBytom(バイトム)に関するHowey Test報告書をリリースし、単にBytomを所持するだけではなく、使用することをもって利益が得られるとして上記④は満たさない等述べ、有価証券に当たらないと報告をするなど、有価証券に当たらないICOを模索する動きも出てきました。  

しかし、2017年12月11日、SEC委員長のJay Clayton氏により公式声明が発表され、これまでICOで販売されてきたトークンのほとんどが米国法における有価証券として規制されるべき可能性が高いとの発言がありました。 

また、証券専門弁護士や会計士、コンサルタントを含む市場専門家に対し、投資家を保護する彼らの責任を強調し、呼び名が何であれ、ICOの実質を精査し、既存の法律の枠組みで規制すべき有価証券であるのかを判断するよう専門家に促しました。 最後に、ICOの資金調達の有用性に肯定的な意見を持っていることを見せながらも、特有のリスクがあるとして、証券法違反には厳しく取締を行っていくとの立場も明らかにしております。 

■参考(米国証券法概説) 
トークンが有価証券に当たるとなると、米国証券法により、全ての有価証券の勧誘/募集ならびに販売は証券取引委員会に登録されていること、もしくは登録が免除されていなければならないと規定されています。しかし登録には費用も時間もかかってしまうことから、登録免除がされるように検討することが一般的です。 登録免除規定として、ICOにおいて対象となりそうなものは、 ①Regulation Dと②Regulation S の2つがあります。

①Regulation D 私募を対象とするRule 504、Rule 505及び公募を対象とするRule 506があります。インターネット上で募集をするICOには性質上、私募の適用は困難であるため、公募を対象とするRule 506に適用されるかを検討することが多くなるかと思います。当該規定においては、投資家が適格投資家(※)であることをICO主催者がSECに報告しなければなりません。
※適格投資家 過去2年間の年収が20万ドル以上、または純資産が100万ドル以上である等、特定の条件を満たした投資家を指す。

②Regulation S 国外における証券の募集については、登録義務が課せられません。SECは、証券の募集がどのような場合に国外のものとみなされるかについての基準(Regulation S)を設けています。ICOがアメリカ合衆国の外で行われ(アメリカ国民を対象とせず)、かつICO主宰者が、米国向けの販売の勧誘を行わないことが必要となります。 ICOの中には、SECの規制を避けるために、アメリカ国民を参加させないように、「あなたはアメリカ国民ですか?」というチェックボックスをあえて設けているものもあります。

シンガポール

シンガポールは自国通貨の電子化に努めていることもあり、ICO規制には抑制的であろうとの投資家の楽観的な見方がありましたが、シンガポールの中央銀行であるシンガポール金融管理局(MAS)は2017年8月1日、ICOで発行されるトークンを証券先物法の対象として規制する考えを公表しました。 2017年11月にはガイドライン(A GUIDE TO DIGITAL TOKEN OFFERINGS )が公表され、実質が株式としての取り扱いがされている場合や、発行者の負債をトークン化する場合には既存の有価証券と同視できるとして目論見書の提出等を求めています。

なお、ICOの規模が小さい場合(例えば12か月間で500万シンガポールドルを超えない等)や、適格投資家を対象としている場合には例外を認めているということです。

(参考)A GUIDE TO DIGITAL TOKEN OFFERINGS 

2.6 An Offer may nevertheless be exempt from the Prospectus Requirements where, amongst others – 2.6.1 the Offer is a small offer of securities of an entity, or units in a CIS, that does not exceed S$5 million (or its equivalent in a foreign currency) within any 12-month period, subject to certain conditions; 2.6.2 the Offer is a private placement offer made to no more than 50 persons within any 12-month period, subject to certain conditions; 2.6.3 the Offer is made to institutional investors only; 2.6.4 the Offer is made to accredited investors, subject to certain conditions.

アメリカの証券法にも規制を免除する例外規定があることを紹介しましたが、ICOガイドラインに明確な規制の例外規定を設けたことが特徴的です。 加えて、このガイドラインの末尾にはケーススタディーが付いており、実際にどのようなケースが規制の対象となり得るのか解説がなされていることが興味深いです。

例えば、ユーザー間のコンピュータ技術の売り買いの決済手段のみを目的として発行されるトークンAは規制に服しないケース、とある企業の持ち分としてユーザーが企業を所有する手段として発行されるトークンBは規制に服するケースなど、ケース同士の比較解説も含めて、丁寧に解説がされているのが印象的です。 

③スイス

スイスは仮想通貨に寛容な国とされており、人口3万人の小さな町のツーク(Zug)はサンフランシスコのシリコンバレーのように「クリプトバレー」と呼ばれ、暗号通貨・ブロックチェーン関連企業が世界中から集まっています。その中にはEthereumなどの有名企業も名を連ねており、ICOが国をあげて盛んになされている国の一つといえます。 

しかし、スイス金融規制当局(FINMA)の2017年9月29日プレスリリースにて、FINMAは現在スイス国内で行われているICOの一部は金融関連の現行法に抵触している可能性が高いと報告しました。FINMAはいくつかのICOに対し、詳細な調査を進めており、違反に対しては法的措置を執行する立場を明確にしています。

 2018年2月16日には、FINMAはICO規制ガイドラインを発行し、以下のとおり取引あるいは譲渡が可能なトークンとして以下の3つに分類し、既存のルールをどのように適用すべきか解説をしております。

①Payment tokens (支払いトークン) 単に支払い手段のみとして機能するトークンであり、有価証券として扱われない。しかし、マネーロンダリング規制には服することになる。
②Utility tokens (ユーティリティトークン) その価値に将来のプロジェクトで生じる商品やサービスの利用料が含まれており、いわばクーポンとして機能するものである。単に引換券としての機能であるのならば、有価証券として扱われない。
③Asset tokens (資産トークン) 配当や投票権が含まれており、株式に近い機能を有している場合、有価証券として扱われ、スイス証券法や民事法の要件(目論見書など)を満たす必要がある。

既存の金融商品との同質性を規制の根拠とすることは他国と同じですが、スイスではトークンを分類して規制の要否を解説しているのが特徴的です。FINMAはガイドラインの中で、実際のICOトークンにおいては、これら3つのトークンのどれかに明確に定まるわけではなく、ハイブリットな形のトークンも登場しうることを想定し、例えば、ユーティリティトークンであっても支払いトークンとしての実態があるとして、マネーロンダリング規制に服する可能性も示唆しています。 

ガイドラインでは最後に、FINMAのCEOであるMark Bransonのコメントとして、ブロックチェーン技術は金融界において革新的な技術であり、バランスの取れたICO規制を通じて、起業家を成功に導くことが使命であると述べています。

④ドイツ

2017年11月15日、ドイツ監督官庁であるBundesanstalt für Finanzdienstleistungsaufsicht (BaFin) はICOのボラリティの大きさ、詐欺の温床になっていることなどを挙げて危険性を警告しました。 2018年2月27日、BaFinはICO規制に関するガイドラインを発表し、他国の規制状況について概観したうえで、既存の規制枠組みで規制すべき実態を備えたICOについては規制対象となることを解説しています。

 例えば、トークンが以下のとおりの金融商品と評価できるのであれば、各既存の法律に規定される目論見書等の関連書類の提出義務が生じる可能性が述べられています。

⑤オーストラリア

オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、ICOに関して、規制ガイドラインとなる文書を2017年9月28日に発行しました。当時は他国に先駆けてガイドラインを示すことで大きな注目を集めていました。

 ガイドラインではICOが消費者法や企業法の適用がある可能性があることを示唆し、投票権があるなどの要件を満たし、MIS (managed investment scheme)に該当するのであれば、既存のルールに沿って各種関連資料の開示要求の可能性があるとしています。 

⑥イギリス

2017年9月12日、イギリス金融監督官庁であるFinancial Conduct Authority (FCA)によりICOの以下のリスクを紹介し、各ICOについて十分調査をした上で、参加するよう注意喚起をした。

  •  多くのICOは、海外で実施され、FCAによる規制の対象外である。
  •  一般的に仮想通貨と同様に、トークンの価格ボラリティが高い
  •  詐欺の被害に遭う可能性がある ・ICOにおいては、十分な情報公開がされないことが多く、誤った情報が提示されることもある 
  • 典型的なICOプロジェクトはかなり初期段階のもので、実験段階である 他国と同じように規制対象か否かは、ICOの性質によって判断されるとし、証券に該当する場合、目論見書開示制度によって規制される可能性がある

とし、今後規制の立場を明らかにしていくことを示しています。 

ICO特有の規制を構築する国

①フランス

2017年10月26日にフランス金融市場庁(AMF)により、仮想通貨に関する法制度不在の状況に対処することを目的としてUNICORN(Universal Node to ICO’s Research & Network)プロジェクトで規制の今後について議論することを報告しました。

 UNICORNでは、ICOの規制の今後あるべき形について、以下の3つの案を提示したうえでメールアドレスを公開し、国民から意見を公募しました。

①Promote best practices without changing existing legislation; (①既存の規制を変えることなく最善の施策を進めていく)
②Extend the scope of existing texts to treat ICOs as public offerings of securities; (②有価証券の公開に関する規定をICOでも扱えるよう拡張する)
③Propose ad hoc legislation adapted to ICOs. (③ICOに適用できる特有の法規制を策定する)

2018年2月22日には、AMFはプレスリリースで意見公募の結果を公表し、上記①が3分の1ほど、②が2名、③が3分の2ほどであるとして、最も強い支持を得たICO特有の法規制を策定する方針を報告しました。

意見の中には、トークンの購入者に最低限知らせておくべき情報として以下のものがありました。

・The project related to the ICO and its advancement; (ICOに関するプロジェクトの内容とその進展) ・The rights conferred by the tokens; (トークンによってもたらされる権利等)
・The accounting treatment of funds raised during the ICO. (ICOによって生じたファンドの会計上の取り扱い内容)

また、得られた意見の中には発行主体の同一性確認を求めることや、AMFの許認可を要すること、ファンドのエスクローを立ち上げること、及びマネーロンダリング規制やテロ資金規制を防ぐ方策を設けることがありました。 同日、別のプレスリリースでAMFはレバレッジ取引などの仮想通貨デリバティブについてはAMFの承認が必要であること、電磁的手段による広告を禁止することを方針として報告しております。 

既存の規制と折り合いをつけようとする国が多くみられる中で、フランスは独自の規制を定める動きとなっており、非常に注目度が高いといえます。

②ジブラルタル

スペイン半島の南端にある英領ジブラルタルは本格的なICO規制が整備されようとしています。 ジブラルタルの政府とジブラルタル金融委員会(GFSC)は、ジブラルタル内におけるICO規制法案ではICO主宰者に情報の開示と金融犯罪防止のルールを順守させる責任を負う「公認スポンサー」という役割を導入させ、販売、流通を規制する法案を議論すると述べています。  

 2018年3月時点においては、国公認のジブラルタル・ブロックチェーン取引所(GBX)を開所する予定であるとして、開所前から、200件ものICO候補を集めたと公式声明で伝えています。 

【参考文献】

③アラブ首長国連邦(ドバイ)

アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)の金融サービス規制庁(FSRA)は2017年10月8日に仮想通貨取引やICO規制に関するガイドラインを他国に先駆けて発行しています。

内容としては他国と同様にICOが有価証券と同視できるのであれば、既存の規制に当てはまる場合として、目論見書の発行等を義務付けるというものである。例外として一定人数の私募、適確投資家、または100万ドルの資産を有する投資家へのICOは規制の対象外としています。 

 2018年2月11日、FSRAは上記ガイドラインを見直し、仮想通貨取引、ICOに関する一連の規制の準備を有識者との協議のうえで進めていると発表しています。この発表でADGMは、「仮想通貨は法定貨幣ではないが、商品やサービスの交換手段として世界中の関心を集めつつある」として、仮想通貨に世界的需要があることを認めています。 

 アラブ首長国連邦の首長国の一つであるドバイでは、2020年までにブロックチェーン国家とすることを目指すことを表明し、政府の機能にブロックチェーン技術の導入を用いるなど先進的な活動を他国に先駆けて行っています。 

 しかし、ICO容認派であるはずのドバイでも、各国のICOリスク警告の流れに合わせ、投資家に注意を払うように警告をしております。 

④ロシア

ロシアの情報技術・通信省が2017年2月12日、ICOプロジェクトについてライセンス認可を定める文書を発行しました。そこではトークンを開発・発行するためのライセンスの必要性を述べ、さらにICO主宰者に対する必要条件の一つとして、約1億ルーブル(約170万ドル相当)の名目資産を有することが必須となり、また、これに関連して特別に認可された銀行口座を保有することも義務付けました。ICOライセンスの有効期限は5年間になるとしています。 

同年2月27日に開催されたロシア連邦経済発展省の会議では、ICO投資の個々の投資額の上限を、当初提案されていた5万ルーブル(約900ドル)から50万ルーブル(約9000ドル)へと10倍増する案が提案されています。 

ICOを特段規制しない国(ベラルーシ)

2017年末、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領によりデジタル経済発展命令(Digital Economy Development Ordinance)が交付され、仮想通貨、ICOが国家レベルで合法化される予定です。この命令は公布から3ヵ月後の2018年3月に発効するとされています。 各国がICOへの規制を強める中、あえて逆に規制を緩め、海外からの企業を誘致しようとしている興味深い動きです。注目に値するのは、仮想通貨のマイニング、取得、売買に関しては5年間、すなわち2023年まで課税されないということです。 

 ICOが合法化されることで、ICOを実施に当たって規制を気にすることなく自由な活動をもたらすと説明する記事もあります。  

まとめ

合計13か国の規制内容を紹介しましたがいかがでしょうか。これだけでもかなりのボリュームであったかと思います。表にして分類するとこのようになります。

 規制に対するスタンス 国
 1.ICOを禁止する国 中国 韓国
 2.ICOを既存の枠組みで規制しようとしている国 アメリカ シンガポール スイス ドイツ オーストラリア イギリス ドバイ
 3.ICO特有の規制を構築する国 フランス ジブラルタル アラブ首長国連邦(ドバイ) ロシア
 4.ICOを特段規制しない国 ベラルーシ

世界におけるICO規制は、上記のとおり、様々であることがわかります。特に、ICOを規制するにあたっては、時系列的には、以下の過程を経ることが多いといえます。

①ICOの危険性を警告

②既存の枠組みで規制する方針を掲げる

③既存の枠組みに沿ったICOガイドラインを策定

④ICOを対象とする法令の策定

昨年までは①と②の段階の国がほとんどでしたが、2018年に入り急速に③のフェーズにまで到達する国が現れ、3月には早いところでは④に到達するところも散見されます。この動きは加速し、2018年は数多くの国がICOを対象とする法令を策定し、ICO規制元年となることも予想されます。

この傾向に沿わない例外としてはICO禁止国がありますが、各国の規制が整備されるにつれて、他国同様の規制に落ち着く可能性も相応にあるように思います。 また、規制を行わない方針を掲げる国もあります。

このように国がどこまでICO規制をしない方向で徹底するのか詳細は不明ではありますが、他国が規制に乗り出す中からこそ、投資家を呼び込むために規制をあえてしないという国が現れるのも自国のブロックチェーン産業を育てるという効果を狙った施策として理解できるところではあります。

2018年3月のG20とICO

2018年3月19日・20日、アルゼンチンで開催されたG20において、ICO規制への取り組みについて話し合われました。

結論としては、Crypto-assets (暗号資産)(通貨の特性を欠き、暗号資産に過ぎないと言及)は未だ世界経済に与える影響は軽微なものであるとして、現状では監視を継続し、具体的な規制への取り組み方針決定は7月のG20に再度持ち込まれる方向になりました。

その中で、参加国からは仮想通貨・ブロックチェーン技術のもたらす経済システムへの効率促進化を阻害しないような規制を試みたいとする一方、マネーロンダリングやテロ資金確保というマイナスの面には規制が必要であるとの声があがりました。G20では、仮想通貨がCrypto-assets (暗号資産)と呼ばれましたが、仮想「通貨」の規制法としての資金決済法ではなく、金融商品としての金融商品取引法の規制が及ぶという立法が今後なされる流れにならないかについては、法律家としては気になるところではあります。

Crypto-assets(暗号資産)との表現が今後に及ぼす影響も想像しつつも、今年は全世界的なICO規制に向けて着実に議論が進んでいくことが予想されますので、ICO規制動向について注視していきたいと思います。

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