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法律事務所ZeLoの弁護士が自らビットコインを購入し、仮想通貨の法的意義について考察してみる(第2回)

本記事では、2017年8月末時点におけるビットコインの動向と、仮想通貨の規制について解説しています。ビットコインについては、高騰やリップル騒動後の動向、今後の展望について語っています。仮想通貨については、登録に係る行政の制限と、仮想通貨交換業申請の方法について解説しています。

法律事務所ZeLoの弁護士が自らビットコインを購入し、仮想通貨の法的意義について考察してみる(第2回)
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PROFILE
小笠原 匡隆

代表弁護士

小笠原 匡隆

法律事務所ZeLo代表弁護士。2009年早稲田大学法学部三年次早期卒業、2011年東京大学法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2017年法律事務所ZeLo創業。主な取扱分野はブロックチェーン・暗号資産、FinTech、IT・知的財産権、M&A、労働法、事業再生、スタートアップ支援など。

リップル騒動とまだまだ冷めない市場の熱気

(1) 1ビットコイン=50万円の高騰

前回の記事を書いた平成29年8月12日には、1ビットコイン=約40万円でありましたが、本記事作成日である同年8月30日には、初めて1ビットコイン=約50万円を超え、さらに最高値を更新しました。当職が研究のために保有しているビットコインも高騰しています…

(出典:coincheckHP:https://coincheck.com/exchange/tradeview

(2) 8月リップル騒動

また、前回の記事と本記事の間には、リップル(Ripple:XRP)のカウントダウン(https://twitter.com/Ripple/status/900403412700872705)があり、同年8月22日には1リップル=約20円が、翌日の23日に1リップル=約34円と高騰するも、翌日24日には約23円まで落ち込むという騒動がありました。当職が研究のために保有しているリップルも例外に漏れず高騰し、恐怖のあまり28円になったあたりで研究を放棄し、手放しました。

(3) 当職の研究成果と今後の展望

当職は、研究のためその後コインを買い増し(総計200万円)、リップル騒動をうまく切り抜け、現在の総資産額を約230万円としています。
株式会社三菱東京UFJ銀行は、平成29年7月8日に米コインベースと資本提携、SBIホールディングス株式会社はリップルを使用した銀行間送金を検討し、株式会社リクルートライフスタイル同年7月3日よりAirレジを使う一部店舗で導入し、三ッ輪産業株式会社三は同年9月26日に仮想通貨で電気代の支払いを可能にすることを決定しています。また、企業のICOによる資金調達と、既存アセットのトークン化技術等をワンストップのソリューションとして提供し、実ビジネスへのブロックチェーン技術導入を一からサポートするCOMSA(https://comsa.io/ja/)のトークンセールが同年10月2日に迫るなど、仮想通貨に関するイベントも目白押しで仮想通貨市場そのものに期待が高まっています。
日本経済新聞社編『日経 業界地図2018年版』37頁によっても、仮想通貨業界の来年の業界天気図は「晴れ」となっています。

(出典:COMSA HP:https://comsa.io/ja/

前回に引き続き、今回は、世間を賑わせているビットコインを含む「仮想通貨」について、仮想通貨を用いたビジネスを行うにあたっての法規制について分析してみたいと思います。

仮想通貨交換業に対する規制の創出

改正資金決済法により仮想通貨交換業は、登録制へ

平成29年4月1日に施行された改正資金決済法により、仮想通貨に関して改正がなされました。重要なポイントは、新たに「仮想通貨交換業」(資金決済法2条7項)との概念が追加され、内閣総理大臣の登録を得なければ当該業務を行えなくなった点にあります(資金決済法63条の2)。無登録で「仮想通貨交換業」を行った者や、不正の手段により登録を受けた者は、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」とされ、刑事罰の対象となります(資金決済法107条2号、5号)
登録が必要となる「仮想通貨交換業」とは、以下の行為を行うものと定義されています(資金決済法2条7項)。

① 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換、
② ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理、
③ その行う①②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

現状、仮想通貨の取引所であるcoincheck(https://coincheck.com/ja/registrations/accounts/consumer)やbitFlyer(https://bitflyer.jp/ja/)などのサービスが「仮想通貨交換業」にあたり、当該業者は「仮想通貨交換業者」(資金決済法2条8項)に該当することとなります。但し、資金決済に関する法律の一部改正に伴う経過措置により、平成29年4月1日より前に、現に仮想通貨交換業を行っていた者は、平成29年4月1日から起算して6月間は、新資金決済法第63条の2の規定にかかわらず、当該仮想通貨交換業を行うことができることとされていますので、これらの業者も、現時点において、登録は取得していません。

なお、金融庁のHPによれば、平成29年6月30日の段階で、登録に係る具体的な相談が約50件程度寄せられているとのことですが(http://www.fsa.go.jp/common/saitenken/20170707/02-5.pdf)、同年7月31日では、仮想通貨交換業者の登録は一件もありません。

(出典:金融庁HP:http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf

したがって、現状は、同年4月1日よりも前にサービスを行っていた業者が市場を仮想通貨交換業に関するサービス市場を独占している状態となっています。今後、仮想通貨交換業を行う場合には、いかに素早く仮想通貨交換業の登録を取得できるかがポイントとなってきます。

■資金決済に関する法律(平成21年 6月24日法律第59号)
(定義)
第二条7 この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換 二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理 三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。8 この法律において「仮想通貨交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。(仮想通貨交換業者の登録)
第六十三条の二 仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

■情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律62号)附則(抄))
(資金決済に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第八条 この法律の施行の際現に仮想通貨交換業(第十一条の規定による改正後の資金決済に関する法律(以下この条において「新資金決済法」という。)第二条第七項に規定する仮想通貨交換業をいう。以下この条において同じ。)を行っている者は、施行日から起算して六月間(当該期間内に新資金決済法第六十三条の五第一項の規定による登録の拒否の処分があったとき、又は次項の規定により読み替えて適用される新資金決済法第六十三条の十七第一項の規定により仮想通貨交換業の全部の廃止を命じられたときは、当該処分のあった日又は当該廃止を命じられた日までの間)は、新資金決済法第六十三条の二の規定にかかわらず、当該仮想通貨交換業を行うことができる。その者がその期間内に同条の登録の申請をした場合において、その期間を経過したときは、その申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間も、同様とする。2 前項の規定により仮想通貨交換業を行うことができる場合においては、その者を仮想通貨交換業者(新資金決済法第二条第八項に規定する仮想通貨交換業者をいう。)とみなして、新資金決済法の規定を適用する。この場合において、新資金決済法第六十三条の十七第一項中「第六十三条の二の登録を取り消し」とあるのは、「仮想通貨交換業の全部の廃止を命じ」とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。3 前項の規定により読み替えて適用される新資金決済法第六十三条の十七第一項の規定により仮想通貨交換業の全部の廃止を命じられた場合における新資金決済法の規定の適用については、当該廃止を命じられた者を同項の規定により新資金決済法第六十三条の二の登録を取り消された者と、当該廃止を命じられた日を同項の規定による同条の登録の取消しの日とみなす。

 仮想通貨交換業の登録に必要な手続

仮想通貨交換業の登録申請

では、仮想通貨交換業の登録を取得するためには、どういった手続が必要となるでしょうか。資金決済法の登録要件を充足するために(資金決済法63条の3、63条の5)、金融庁作成に係る事務ガイドライン(http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20170324-1/19.pdf)を参照しながら、申請書等を作成する必要があります。
登録要件を充足するために、極めて多岐にわたる書類が必要となり、社内の体制も整備する必要があるため、登録申請にあたっては、弊所を始めとする弁護士等の外部専門家に依頼するのが現実的です。

(登録の申請)
第六十三条の三 前条の登録を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。一 商号及び住所 二 資本金の額 三 仮想通貨交換業に係る営業所の名称及び所在地 四 取締役及び監査役(監査等委員会設置会社にあっては取締役とし、指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役とし、外国仮想通貨交換業者にあっては外国の法令上これらに相当する者とする。第六十三条の五第一項第十号において同じ。)の氏名 五 会計参与設置会社にあっては、会計参与の氏名又は名称 六 外国仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者の氏名 七 取り扱う仮想通貨の名称 八 仮想通貨交換業の内容及び方法 九 仮想通貨交換業の一部を第三者に委託する場合にあっては、当該委託に係る業務の内容並びにその委託先の氏名又は商号若しくは名称及び住所 十 他に事業を行っているときは、その事業の種類 十一 その他内閣府令で定める事項 2 前項の登録申請書には、第六十三条の五第一項各号に該当しないことを誓約する書面、財務に関する書類、仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類その他の内閣府令で定める書類を添付しなければならない。(登録の拒否)
第六十三条の五 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。一 株式会社又は外国仮想通貨交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)でないもの 二 外国仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者(国内に住所を有するものに限る。)のない法人 三 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない法人 四 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない法人 五 この章の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていない法人 六 他の仮想通貨交換業者が現に用いている商号若しくは名称と同一の商号若しくは名称又は他の仮想通貨交換業者と誤認されるおそれのある商号若しくは名称を用いようとする法人 七 第六十三条の十七第一項若しくは第二項の規定により第六十三条の二の登録を取り消され、又はこの法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録(当該登録に類する許可その他の行政処分を含む。)を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない法人 八 この法律若しくは出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない法人 九 他に行う事業が公益に反すると認められる法人 十 取締役若しくは監査役又は会計参与(外国仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者を含む。以下この章において「取締役等」という。)のうちに次のいずれかに該当する者のある法人 イ 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらに相当する者 ロ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者又は外国の法令上これに相当する者 ハ 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者 ニ この法律、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者 ホ 仮想通貨交換業者が第六十三条の十七第一項若しくは第二項の規定により第六十三条の二の登録を取り消された場合又は法人がこの法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録(当該登録に類する許可その他の行政処分を含む。)を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内にその法人の取締役等であった者で、当該取消しの日から五年を経過しない者その他これに準ずるものとして政令で定める者 2 内閣総理大臣は、前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を登録申請者に通知しなければならない。

登録までに必要な期間

金融庁長官は、仮想通貨交換業の登録の申請を行ってから2ヶ月以内に当該申請に対する処理をするよう努めるものとされています(仮想通貨交換業者に関する内閣府令36条)。しかし、金融規制に係る登録と同様に、登録の申請にあたっては、行政指導に基いて事前審査が行われるため、登録までに相当の期間を見ておく必要があります。

金融庁HP(下記参照)によれば、事前審査では、概ね以下の事項を調査するものとされています。重要なのは①利用者保護措置、②利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理、③システムリスク管理の点であり、この点の整備が必須となります。

金融庁HP(http://www.fsa.go.jp/common/saitenken/20170707/02-5.pdf
事前相談として、事業者から申請概要等の提出を受け、当該業者の概要・取り扱う仮想通貨の概要・サービスの概要等(資金決済法上の仮想通貨の該当性、仮想通貨交換業の該当性を含む)について、説明を受けることとしている。当該サービスが仮想通貨交換業に該当する場合、まずは、登録申請書のドラフトを提出してもらい、申請書の記載内容に過不足がないか、会社の社内体制等が「資金決済法第 63 条の5(登録の拒否)」や「事務ガイドライン 第三分冊:金融会社関係 16. 仮想通貨交換業者関係」としての要件(「仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われているか」など)を満たしているかについて、事前審査を行うこととしている。

【先方への主な確認事項】
① 利用者保護措置(事務ガイドラインⅡ-2-2-1)
・ 利用者に対する説明や情報提供を行うに当たっては、取り扱う仮想通貨や取引形態に応じて、内閣府令第 16 条第1項及び第2項各号、第 17 条第1項各号及び第2項各号並びに第4項に規定された事項を説明する態勢が整備されているか(例えば、「法定通貨ではないこと」「価格変動に伴う損失リスクがあること」といった、取り扱う仮想通貨の特性について利用者に説明するための態勢が整備されているかなど)。
② 利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理(事務ガイドラインⅡ-2-2-2)
・ 分別管理に係る社内規則に、金銭・仮想通貨それぞれについて、分別管理の執行方法が具体的に定められ、利用者との契約に反映しているか。
・ 自己の固有財産である金銭・仮想通貨と、利用者が預託した金銭・仮想通貨が、上記の執行方法に基づいて明確に区分され、個々の利用者の持分について、直ちに判別できることとしているか。また、その遵守状況について適切に検証することとしているか。
③ システムリスク管理(事務ガイドラインⅡ-2-3-1)
・ 取締役会は、コンピュータシステムのネットワーク化の進展等により、リスクが顕在化した場合、その影響が連鎖し、広域化・深刻化する傾向にあるなど、経営に重大な影響を与える可能性があるということを十分踏まえ、リスク管理態勢を整備しているか。
・ システムリスク管理態勢の整備に当たっては、その内容について客観的な水準が判定できるものを根拠としているか。また、システムリスク管理態勢については、システム障害等の把握・分析、リスク管理の実施結果や技術進展等に応じて、不断に見直しを実施しているか。事前審査終了後、事業者に対して登録申請書の提出を依頼することとしている。

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